暗殺物語
シチュエーション消化の為のヤツです。内容は基本的に憂鬱で、命についての話です。前提として【誠寺】は自分の命を軽くみる暗殺チームのリーダー。【晴次】は社畜暗殺者。双方ヴィオレッタというチームに居、お互いがお互いを失う悪夢をみたと言うことです。また、文字の時系列が漫画のように加工されているので読みにくいかと思いますが、最後まで読んでくれるとありがたいです。
- 【この物語は暗殺者の物語】
何時かの言葉
- 【そして、命の物語】
何時かの言葉
- 【そして──】
何時かの言葉
- (──誰もいない公園。雨がシトシトと降り頻る中、静かにビニール傘をさし、猫の居る箱を見据えながら立っている青年が一人。愛するモノの命を子猫に見出だしながら、雨のようにシトシトと、ポツリ。ポツリ。と呟いている)
ナレーター
- ───利用させてもらうぞ
暮迥 晴次
- ………………ごめんな
暮迥 晴次
- 数分後
ナレーター
- ……何してる
梁瀬 誠寺
- (雨降る夜、仕事の終わりに待ち合わせるべき公園のベンチにて、びしゃびしゃに濡れる相手とその相手の傘を上にさされ、雨を凌ぐ子猫の姿を見据えれば、嫌そうな声を出して)
ナレーター
- んぁ"……?何って、待ってたんだよ
暮迥 晴次
- (シトシトと降り続ける優しい雨に打たれ、黄金の髪を下に垂れ、ポツリ。ポツリと水滴を落としていた)
ナレーター
- ……そうじゃない
梁瀬 誠寺
- (そう言いながらミカンの入っていたであろう大きくも小さくもない箱に入れられた、明らかに捨て猫でありながらも、美しい白毛で赤い瞳をした猫を指差して。潤んだ瞳で指先を見詰めれば、猫は一度にゃぁと声を出して)
ナレーター
- 猫だよ。捨て猫。見付けたからよォ
暮迥 晴次
- (そう言いながらクイッと顎で猫のいる箱を指して。不意に猫が彼の方をみれば、首をかしげ、一度、二度と鳴いてみせ)
ナレーター
- ……だからお前が雨に晒されるのか。傘はお前がさせ。飼いやしないんだから
梁瀬 誠寺
- (言葉は降り頻る雨よりもずっと冷たく、悲しい声をしていた。自分のさしている傘をふっと上に上げてから肩に当て、傘の持ち手を掴む手に入れる力をふっと緩め)
ナレーター
- 別に……だって俺じゃなくてお前が飼うんだから良いじゃねぇか
暮迥 晴次
- (何時もなら見れないであろう、疲弊しきった姿の青年の花火のような笑顔。雨に隠れて直ぐに消えてしまったが、確かにその笑顔と言葉は残雨のように残っている)
ナレーター
- ……俺とお前は同居してるんだぞ仕事も同じだ他にも居る
梁瀬 誠寺
- (するすると口から零れる言葉は雨よりも早く青年に届く。静かなる口喧嘩の中、白き子猫は首をかしげながら、みぃ、と小さく鳴いて)
ナレーター
- ……っふ、っははははは。ははは。らしくねぇぜリーダー。何時もならアンタの方が余裕あるぜ
暮迥 晴次
- (ふはっと笑い飛ばせば猫をみて、ツンと口を尖らせ猫に言う。[死ぬなら愛されてから死にたいよな]と。現実味ある言葉の奥底には、水溜まりのように身近にありながらも深海よりも遠く、深いその悲壮が泳いでいた)
ナレーター
- ………………里親が見つかるまでだ
梁瀬 誠寺
- (ふぅーー……と。重たくも呆れた、少しだけ柔らかい笑顔を浮かべながらそう言い、猫の方に向かい、ふっと片腕で易々と子猫を抱上げ)
ナレーター
- へへっ、やったな
暮迥 晴次
- (そう言いながら自分の傘を手に取り、びしゃびしゃに濡れた自分にその傘をさして)
ナレーター
- 良くもまぁ……そんな余裕でいられるな……俺は悪夢の余韻が……スゴい
梁瀬 誠寺
- (そう言いながら細い指で大人しい白猫を優しく撫でてやり)
ナレーター
- haha……俺は慣れてんだよ
暮迥 晴次
- (そう言いながらへらりと笑い。少し弾む足で水溜まりを踏み潰して)
ナレーター
- ──────────────
ナレーター
- (…アイツは狂ってる。命の天秤が狂ってやがるのを、俺は知ってる)
暮迥 晴次
- (水溜まりを蹴飛ばしながら隣を歩み。白い猫を優しく包む腕は暖か暖かく、柔らかいその瞳を真っ直ぐ見詰め)
ナレーター
- (自分の命は軽く。他者の命を重く見すぎる。それはどんな場面でも同じ……)
暮迥 晴次
- (脳内で思考を巡らしながらも進み続け)
ナレーター
- (──どんな場面でも、アイツは自分を切り捨てる癖がある)
暮迥 晴次
- (ジトッと湿った瞳を向けながらも歩み行く。雨のなか白い毛は柔らかく揺れている)
ナレーター
- (……だから、俺はあの小さい命を利用することにした。アイツが自分を切り捨てようとしたとき。なにか──些細なモノでも、踏み留まれるように──)
暮迥 晴次