2章「愚者は酔狂を求めるか」2
ストレリチア
- 2章「愚者は酔狂を求めるか」2
- 雨上がりの朝、情報部の集まる本部
- アーテル、調査の進捗はどう?
スカーレット
- ジェットと名乗る男のリストを作成しているところです
アーテル
- 歳は私達くらいと聞いていますので、若者を中心に情報を集めています
アーテル
- シュエットさんとクリムゾンさんの情報によると、彼は『破壊神』と言われているということなので、その他の情報も併せて収集しています
アーテル
- 破壊神?
スカーレット
- 理由は定かではありませんが…
アーテル
- 魔法使いという印象でなかったというなら、恐らくは怪力の類の能力があるのではないでしょうか?
アーテル
- 戦えば分かりそうな能力だけど、戦わないで退場していったみたいだから……不明点が多いのは仕方ないわね
スカーレット
- やっほーお2人さん!今日も綺麗だね!天使が集ってるのかと思ったよ!
カリンカ
- どうしたのカリンカ。何か困っているのかしら?
スカーレット
- ううん!困ってないよ!情報交換しに来たんだ
カリンカ
- カリンカさんは何を調べているんですか?
アーテル
- バグダンジュ社の警備体制!それから、出入りしてる人間の情報も募集してるよ
カリンカ
- そう。残念だけどこちらは全く違う仕事をしているのよ
スカーレット
- ジェットという男を探しているの。カリンカは心当たりない?
スカーレット
- ジェット?知らない人だなぁ。何のために?
カリンカ
- シュエットの指令。特徴は聞いたけれど、どこの組織かわからないのよ
スカーレット
- 戦闘員だと接点ないからなー
カリンカ
- あなた、追跡得意よね。似た人がいたら追いかけて調べて欲しいの
スカーレット
- 了解っ!じゃあスカーレットとアーテルも、バグダンジュ社の関係者がいたら情報教えてね!
カリンカ
- ええ。協力します。バグダンジュ社関連の任務も大切です
アーテル
- カリンカ、ここにいたのか
コルネイユ
- わわ!コルネイユさん!
カリンカ
- サボってないからね!2人と情報交換中だったんだ!
カリンカ
- そうか。バグダンジュ社現場の図が仕上がった。皆の情報をもとに警備の配置図を作成する。お前も手伝え
コルネイユ
- あわわぁ……
根気のいる作業になってきちゃった
カリンカ
- コルネイユさんはカリンカさんと一緒に動いているのですね
アーテル
- 大抵一緒だ
コルネイユ
- コルネイユさんとは、私もストレリチアに入りたての時に組んでいたわ。今は別行動が多いけど
スカーレット
- スカーレット、どこ行ってたのかと思ったら……良い匂い!紅茶?
カリンカ
- この時間はいつもお茶をしているの。
紅茶はいかが?
スカーレット
- わーい!いただきまーす!
カリンカ
- ふん、優雅なものだな
コルネイユ
- 忙しいとはいっても、朝から晩まで根を詰めていると良くないわ
スカーレット
- 俺の手を離れたら随分自由にやっているんだな
コルネイユ
- ええ。楽しみがあると1日心豊かに過ごせるの
スカーレット
- スカーレットさんの淹れる紅茶、美味しいですよ。コルネイユさんもぜひ
アーテル
- ふん……そんなに言うならいただこう
コルネイユ
- (素直じゃないんだから……という顔で肩をすくめている)
カリンカ
- ふふ、飲んでくれた
スカーレット
- 淹れ方に心得はあるようだな
コルネイユ
- 紅茶にはこだわっているの
スカーレット
- 香りと風味を殺さない淹れ方、見事だな
コルネイユ
- ありがとう
スカーレット
- 茶葉も良いものを使っているな
コルネイユ
- 分かってくれるのね
スカーレット
- コルネイユさんは味覚が鋭いのですね
アーテル
- うん、とってもグルメなんだよ!
カリンカ
- 人のことを勝手に喋るな
コルネイユ
- だってコルネイユさんが返事しても素っ気なくて、コルネイユさんのこと全然分からないじゃん!
カリンカ
- 俺の味覚について宣伝して回るつもりはない
コルネイユ
- それじゃあコルネイユさんの良いところが伝わらないじゃないか〜!
カリンカ
- 伝える気はないのだが…
コルネイユ
- カリンカさん、コルネイユさんと居て楽しそうですね
アーテル
- うん!楽しいよ!
カリンカ
- コルネイユさんの良いところを伝えたいのですね
アーテル
- そうだよ!コルネイユさんは凄いんだ。なのにみんなには全然良さが伝わってないんだもの
カリンカ
- たとえば、どんなところですか?
アーテル
- コルネイユさんは強いんだ!情報を集めるだけじゃなくて、戦うこともできるんだよ!
カリンカ
- それにね、行動がお上品なんだ!
今もほら、紅茶の飲み方なんか優雅でしょ?
カリンカ
- なるほど……お育ちが良いのでしょうね
アーテル
- コルネイユさんは、どんな情報に詳しいですか?
アーテル
- 調べれば何だって情報持ってくるけど…
カリンカ
- 貴族の情勢や構成員には少しばかり詳しい
コルネイユ
- それでバグダンジュ社の関係者も調べているのね
スカーレット
- そうだな。以前魔弾銃を持ち込んで捕らえられた人物が貴族の影の者だった場合、バグダンジュ社の支援者たる貴族が事件に関わっている可能性が高い
コルネイユ
- この町を丸ごと傘下にするほどの構成員数を誇るストレリチアとはいえ、抗争で市民や貴族を殺すこともある。公国としても黙ってはいられない存在だろう
コルネイユ
- 特に貴族は自分にとって面白くない存在を消すことには熱心だからな。ストレリチアの持つ富や流通経路が邪魔であれば、潰すことや奪うことを考えかねない
コルネイユ
- 爵位を持っていないだけで、総統の持つ富は貴族並とも言われていますから。
面白く思わない貴族がいてもおかしくないですね
アーテル
- 奴らはひとたひ野心を抱けば、あらゆる手を使ってでも相手を破滅に導こうとする。殺し屋でも何でも雇うだろう
コルネイユ
- 殺し屋といえばだけど、コルネイユさん、ジェットって名前の男の人知ってる?
カリンカ
- そうね。コルネイユさんにも聞きたいわ。私達、ジェットという金髪の男のことを調べているの。私くらいの年齢の男よ
スカーレット
- クリムゾンの証言によると、後から1人だけ遅れてきて、とても足が速かったって。あと、少しアホっぽいと……
スカーレット
- アホなんだ……
カリンカ
- ……俺の把握している貴族の中には思い当たらない
コルネイユ
- だが、貴族に従う組織や、関わりのある殺し屋の中には該当する人物がいるかもしれない
コルネイユ
- 1人で来るなら尚更ただのチンピラとも考えにくい。それなりの実力者と考えられるが、お前達くらいの年齢なら、まだ名が知れていないのだろう
コルネイユ
- そういった方面でも調べてみろ
コルネイユ
- さっすがコルネイユさん!
カリンカ
- ありがとう。貴族の従者も詳しく調べてみるわね
スカーレット
- 参考になります。感謝します
アーテル
- ふん。礼には及ばない
コルネイユ
- 夜から違う仕事に行くから、アーテルに下調べをお願いするわ
スカーレット
- 任せてください。無事に帰ってきてくださいね
アーテル
- ええ。必ず
スカーレット
- スカーレット引っ張りだこだね
カリンカ
- クリムゾン達の任務に呼ばれているの
スカーレット
- クリムゾンの?珍しいね
カリンカ
- 私の幻術が必要だっていうから、行ってくるのよ
スカーレット
- 夜・クリムゾン隊
- クリムゾン様!今日の任務も楽しくなりそうですね!
ジェンシャン
- ジェンシャンよー、女がいるからってテンション高すぎねぇ?
クリムゾン
- スカーレット殿がいるなら心強い。俺も嬉しく思います
ヘデラ
- ヘデラはいつも通りすぎるというか……
クリムゾン
- 思ってた通りの反応だから。
気にしてないわ
スカーレット
- 俺はお前がいても新鮮味ねぇんだよな
クリムゾン
- それはこっちのセリフよ
スカーレット
- そしたら新鮮味のある俺と組もう?
ジェンシャン
- いや組むも何もねーだろこの任務
クリムゾン
- つーか上司の幼馴染を目の前でナンパすんのやめろよ。なんか嫌だろ
クリムゾン
- えっ 嫌なら早めに思い伝えといてくださいよ!横取りになっちゃうでしょ!
ジェンシャン
- そういう対象じゃねーけど!目の前でやられると!見てらんねぇの!
クリムゾン
- どうでも良いことで騒がないで
スカーレット
- すんませ〜ん
ジェンシャン
- この道を使って敵が来るのよね?
スカーレット
- おう。どうやら敵がストレリチア地区に来るのに、ここが近道として使われてるみたいでな
クリムゾン
- この道を警戒しておいて損はねえ
クリムゾン
- 道が狭いから、追い詰めて挟み撃ちにするんだ。けど脇道もあるんで、逃げられるとやだなーって
ジェンシャン
- そこでクリムゾン様が、スカーレット殿の幻術を使うことを考えた
ヘデラ
- 逃げられないよう幻術を使い、ここに来る者を惑わせて欲しい
ヘデラ
- そういう作戦なのね
スカーレット
- ところで、幻術を展開している場所に入ると、あなた達にもかかると思うけれど。いいの?
スカーレット
- かける範囲は変えられるんだろ?
いい方法がある
クリムゾン
- この通りの建物の屋根の上に行くんだ。ついて来てくれ
クリムゾン
- ここなら見下ろして状況確認ができる。
裏路地に繋がる脇道が多くてな。迷路みたいだろ?
クリムゾン
- スカーレットにはこの裏路地迷路に、幻術で行き止まりを作って、敵を逃さねぇようにして欲しいんだ
クリムゾン
- 要するに、変化する迷路を作るって作戦だ
クリムゾン
- 俺とジェンシャンが挟み討ちを担当する。スカーレット殿は幻術で敵を上手く誘導してくれると助かる
ヘデラ
- なるほどね
スカーレット
- 変化する迷路……面白そうね。敵を夜道の迷宮に彷徨わせてやりましょう
スカーレット
- さすがスカーレットさん!
ジェンシャン
- よし……ヘデラ、ジェンシャン、早速張り込め。怪しい奴がいたら絡んでけ
クリムゾン
- 承知いたしました
ヘデラ
- ういーす
ジェンシャン
- 〜〜〜
- ……何か来ているな
ヘデラ
- え、どこどこ?
ジェンシャン
- あそこだ。2人組が歩いてる
ヘデラ
- ホントだ。キョロキョロしてるのを見るに、地元民っぽくないね
ジェンシャン
- 始めるか。スカーレット、頼む
クリムゾン
- ええ。今曲がったから、行く先に壁を作っておくわ
スカーレット
- 〜路地裏〜
- あれ?行き止まりじゃん
ジェット
- はァ…これだから路地裏は嫌いなんですよォ
ニベ
- 真っ直ぐ進めないからなー。戻って別の道探してみるか
ジェット
- 数分後
- なんかここ入り組んでるな!
ジェット
- さっきから同じ場所をぐるぐるさせられてるような…
ジェット
- あーもう!わかんなくなった!
ジェット
- ジェット、まさか方向音痴じゃないでしょうねェ?
ニベ
- 方向音痴じゃないと思うぞ!ちゃんと地図読んで行きたいとこ行けるし!
ジェット
- ふむ……。
なら、そこまで方向音痴ではないでしょうねェ
ニベ
- 困ったなー。この辺地図と違うんだよな。地図古いのか?
ジェット
- まさか。この辺りは建物が古いですから、大きく変わることなんて滅多に……
ニベ
- こんばんは!なにしてんの?
ジェンシャン
- こんばんは!
それこっちのセリフだから!
ジェット
- 見回り!最近この辺夜煩いらしいからね
ジェンシャン
- ここを通ってどこに行くつもりだ?
ヘデラ
- え?むしろすごい近くに目的地があるはずなんだけど。行きかた教えてくれ!
ジェット
- さっきから行き止まりばっかりでワケ分かんなくなってさ
ジェット
- え〜〜〜怪しいからやだ
ジェンシャン
- あなた達の方が怪しいですよォ。どこから来たんですかァ?
ニベ
- それ聞いちゃう?
ジェンシャン
- この先がどこに繋がってるか、まさか知らないわけないでしょ〜
ジェンシャン
- …………
ニベ
- この先はストレリチア地区。ハッキリ言って用事はありませんねェ
ニベ
- 私達はこの路地にある家にお邪魔しに来ただけですよォ。声をかけるならハズレじゃないですかァ?
ニベ
- まだそうとは言い切れない
ヘデラ
- 確かにこの先はストレリチア地区の中心街に繋がってるよ?地図持ってるなら、知ってるんでしょ?
ジェンシャン
- てことは、わざわざ君たちに話しかけた俺がどこの人間だか、分かってるよね?
ジェンシャン
- ……ストレリチア、ですか
ニベ
- 地図が何たらと言ってた時から聞いてたみたいですし、さすが警備体制がしっかりしてますねェ
ニベ
- 仕事だからね〜
ジェンシャン
- てかさ、お前らこの辺詳しいだろ?
ペール荘までの行き方教えてくれ!
ジェット
- 俺たち、ただの友達の家に行きたいだけの迷子の一般人だから!
ジェット
- ペール荘ねぇ……そこ行くならそもそもこんな所を通らなくてもいいじゃない?ますます怪しい
ジェンシャン
- ……教えるつもりがないならもういいです
ニベ
- ジェット、この道から出ましょう
ニベ
- はーい
ジェット
- (怪しい人を逃すわけないんだよな〜)
ジェンシャン
- ヘデラ〜!
ジェンシャン
- うむ
ヘデラ
- ヘデラはニベに殴りかかった
- !!
ニベ
- ニベはヘデラの気配を察知し、咄嗟に結界を張ってガードした
- うわっ!
ジェット
- ……危ないじゃあないですかァ
ニベ
- そんなガードできる人が一般人なわけないよね!
ジェンシャン
- 何をしに来た?詳しく聞かせてもらおう
ヘデラ
- だーかーらー!話すことはないの!
ジェット
- ええ、話すことなんかありませんよ。
あなた達には必要ないことですから
ニベ
- 必要なくすんですけどねェ
ニベ
- !!
ヘデラ
- うっわ!?何今の!
ジェンシャン
- 魔術師か…
ヘデラ
- やるのかニベちゃん!
ジェット
- あっちがやる気なんでねェ
ニベ
- じゃあ俺もやる!
ジェット
- 戦えるとあれば容赦はしないぞ
ヘデラ
- おー!来いよ!
ジェット
- 屋上
- なあスカーレット、あいつら戦ってね?
クリムゾン
- そのようね。
どうする?あなたも行くの?
スカーレット
- 行ってくるか。ちっとばかし苦戦してるみたいだからな
クリムゾン
- 私も行った方が?
スカーレット
- スカーレットは他に侵入者がいないか見張っててくれ
クリムゾン
- そうだな……10分経っても決着ついてなかったら加勢して欲しい
クリムゾン
- わかった。行ってらっしゃい
スカーレット