廃墟からのLINE14 解散と合流
ちょっと回想入ります。少々残酷描写入るので注意。あと長い。分かりにくいのでサブタイも入れることにしました。どっちにしろ読み返しにくいけども。評価いつもありがとう!
- 前回までのあらすじ
アキ
- アキさん来て下さい
桐島
- いくわ
アキ
- 調べ物はまかせろ
いってこい
直泰
- トイレ行ってからいこ
アキ
- 着いちゃった
アキ
アキ
宏考
- あれは、一年が入ってすぐの春だったか
宏考
- 桐島は入部したての頃からなんというか、目立っていた。
あの目を引く金髪だったり。態度のデカさだったりで、先生にも目をつけられていたらしい
宏考
- 何かと反抗的だからか、先輩方の反感を買うことも多くて、よく呼び出されたりしてたな。
にも関わらず一年の中では抜きん出て上達のスピードが速かったのも相まって、そう
宏考
- 正直悪目立ちしていた。孤立するのも早かった。
宏考
- 俺はというと、まあ…あの時の三年生の先輩マジ怖かったし、桐島も悪いとこあるから正面から何か言ったりは出来なくて…かといって放っておくのも違うと思って、いつもアイツにくっついて勝手に面倒見て、ついでに先輩方との間に入ってフワッとしたフォローを入れたりしてた
宏考
- なんか迷惑そうだったけど
宏考
- あの日はなんだったかな。委員会の用事で部活に行けなかった日、どういう訳だか桐島が1人で後片付けを任されてたんで、帰りに手伝ったんだよな
宏考
- 理由は教えてくれなかったけど、本人曰く「下らないこと」だったそうで、苛立ちながらもたった1人で広いグラウンドにトンボかけてたのが窓から見えた
宏考
- 理不尽だと思っても投げ出さずにしっかりやってるあたり、素直というか真面目だと思うんだけど、何せ普段の態度がすげぇ悪い。誤解されるのも無理ないんだよなぁ
宏考
- 桐島さあ
宏考
- ん?
桐島
- つらくない?
宏考
- しんっどい
僕なんでこんな目にあってんの?
桐島
- いや…
やっぱ態度かな…
宏考
- 言われたことはちゃんとやってるし、何が気にくわないんだか
桐島
- まあ意味分かんないと思ったら反論するけど
桐島
- それなんだよな…
原因それなんだよな…
宏考
- だって疑問に思うでしょ
今時うさぎ跳びとか非効率的だし。筋痛めるだけだし。練習内容が全体的に全時代的というか
桐島
- うちの顧問野球詳しくないから、前の先輩方の練習内容を受け継いで練習してるみたいだな
宏考
- なら尚更自分達で改良しなきゃいけないんじゃない?
桐島
- そうなんだけど、今の先輩方、伝統を重んじる感じだから…
入ったばっかの一年に言われるのも嫌なんじゃねえかな…
宏考
- ふーん
クソだな
桐島
- そのへんは、俺たち二年がちゃんと改善していくつもりだから、今は我慢してほしい
宏考
- 我慢ね。いちおうそれでも従ってんだけど
桐島
- …桐島がちゃんと真面目に練習してるのは、先輩にも伝わってるんだぞ?
宏考
- ただ何というか…先輩方も面子があるというか…どう打ち解ければいいか分かんなくなってるというか…
宏考
- なんとかこう…
宏考
- …つまり、僕から歩み寄れって?
桐島
- せめて敬語で接して欲しい…
宏考
- 俺も、仲良くして欲しいというか、やっぱり野球はチームでやるものだから…
宏考
- …あんたからすれば、怖い先輩を説得するより、後輩に折れさせた方が楽だろうな?
桐島
- うっ
宏考
- まあいいよ。それで納得して付きまとわないでくれるなら。そろそろ鬱陶しいし。
桐島
- あんただって、僕に構ってるよりもっと他にやることあるで…
桐島
- よっっっしゃありがとう!!!!!
桐島はやっぱりいいやつだな!!!!
宏考
- うるっさ…
それで今さら変わるとも思えないけど
桐島
- 確かに、なんかもうひとつ後押しがほしい
宏考
- あとは…そう、あいさつだな!!!
宏考
- 宏考は桐島の帽子をひっつかむ
桐島
- え、なに
桐島
- ありがとうございました!!!!
宏考
- 帽子を頭上へとやり、お辞儀とともに膝へ下ろす
宏考
- このように、元気よく!!
宏考
- …僕にそれをやれと?
桐島
- おはようございます!!!
宏考
- お疲れさまです!!!
宏考
- ざっす!!!あざっす!!
宏考
- このようにバリエーションがあってな。
宏考
- やっぱり人間関係はあいさつが大事だからな!!桐島も一発かませばきっと…あっれちょっと待ってどこ行くの桐島
宏考
- 前向きに検討しまーす
桐島
- それやんわり断るニュアンスのやつ!!!
宏考
- ちょちょちょ、マジだから!!本当絶対効果あるから騙されたと思って…桐島ぁ!置いてかないで桐島ぁ!
宏考
- もう絶対流されたと思ったのに、桐島は翌日即座に実行してくれた
桐島
- 多少ヤケクソだった気がするけど
宏考
- だけどそれで三年生に「一応やる気はある」って認められて、それ以降はちゃんとチームの一員として受け入れられたんだ
桐島
- 距離を置いてた同学年の奴らとも打ち解けて、なんかこう、いい具合に収まっていて
桐島
- 「先輩にイビられてる時は遠巻きにしてたくせに」とか言ってたけど、結局は許してたな
宏考
- 懐かしいな。なんで今さらこんな昔のこと思い出して…
宏考
- …
宏考
- …きり、しま?
宏考
- うわ起きた
桐島
- …!ほ!は!
桐島血だらけアワワ
宏考
- 落ち着いて下さい
返り血です
桐島
- ああ、なん…あれ動け…ない…俺びちゃびちゃ…
宏考
- 僕もずぶ濡れですよ
桐島
- まあ、起きたならよかった。とりあえず縄ほどくんで、大人しくして
桐島
- きりしまおれ
宏考
- はい
桐島
- 行かなきゃ
宏考
- …どこへ?
桐島
- どこだろう…分からないけど
宏考
- 帰るんでしょ。家に
桐島
- 家…
宏考
- 家は、ここだろ?
宏考
- …そうきたか
桐島
- とにかく僕についてき…
チッ
桐島
- パチャン、と足音が近づく
宏考
- きり…なに
宏考
- いいからそこでじっとして下さい
桐島
- 床を二回叩く。振り子のようにバッドを回し、肩へと乗せる。
桐島
- 桐島のルーティン。選手がプレッシャーのかかる場面で緊張してしまった時に、何か一つ決めた動作を挟んで、切り替えるためのおまじない。去年の試合に一度だけ見た。
桐島
- 試合中に自分のペースを取り戻すためにはどうしたらいいのか、って桐島に聞かれて教えたんだ。桐島も緊張するんだな、なんて言ったら、当たり前でしょ、とか言われたっけ
桐島
- なんだよ
宏考
- お前限界じゃねぇか
宏考
- 桐島
宏考
- あとで聞きます。忙しいんで
桐島
- 足引き摺ってる
宏考
- これくらい大丈夫です。
そのうち復活しますよ。
桐島
- 桐島、もういい
宏考
- こっちは良くない
あいつらの仲間になりたいんですか?
桐島
- 俺のことは、もういい
1人で逃げろ。家に帰れ。
宏考
- は?なにそれ馬鹿にしてんの
桐島
- 俺は多分、もう駄目だ
宏考
- 何弱気になってるんです。あんた先輩でしょ。しっかりして下さ
桐島
- 走り出した瞬間、水で足を滑らせ、転倒する
桐島
- いっ
桐島
- 余計なこと言うから…ぐっ
桐島
- とたんに肉の化け物に引き潰され、苦しく声を上げる
桐島
- 向こうでヒロが引きずられていく
桐島
- 待て
桐島
- 桐島は片足を持ち上げられ、見せしめるように高く掲げられる
古い家のすきま風のような呼吸音を鳴らして、かれらは吊られた男をじっとみている
桐島
- ヒュー、ヒュー 、
- 痛ってぇんだよクソが!!
桐島
- 吊るされたままバッドで殴りかかるが、掴む力がゆるまない。痛覚が無いのか、少し叩かれたくらいじゃ怯まない。
桐島
- そのうちに周りに居た二、三体も集まり、それぞれ彼の腕や足を引っ張り出す。
桐島
- ぎっ、あ、
桐島
- 不味い。非常に不味い。僕はまだワンチャンあるけど、あの状態の先輩を連れていかれるのはまずい。
桐島
- 手足の関節がいやな音をたてて軋む。やめてくれそっちには曲がらない。今立てなくなるのは困る。
桐島
- 痛みに喘ぐうち先輩を見失う。しまったどこだ。ここで見失ったらもう…
桐島
- …あ?
桐島
- ヒロの真横で、彼女は微笑む
- 待っています
- …なん
桐島
- 両腕が、両足が、好き放題に引っ張られる
桐島
- ぐっ
桐島
- 2mはある巨大な体に集まった小さな二体は、親にすがり付く小さな子供のように桐島の腕をつかみゆらゆらとぶら下がる。紐のように扱われたそれは歪んで、ねじれ、やがて千切れたので、歪な化物は後ろへと転んだ。
桐島
- 彼は床にべちゃりと落とされる。胴体を下へ押し付け立ち上がろうとするが、膝下まで水が張っているせいで、体が浮いて上手く立てない。足を払われて頭から水に突っ込む。
桐島
- 再び伸ばされる手を転がって避け、壁に寄りかかってなんとか立ち上がる。バッドはどこだ。いや、腕が無いんじゃ意味が無い。それより先輩は。
桐島
- 足音が増える
桐島
- くそ、こんな状態で追い付いても駄目だ。逃げるしかない。
恐らく先輩はしばらく無事だろう。あの女が彼処に現れたなら、多分人質として生かしてくれているだろう。多分。
桐島
- …ちょっとこの考えは都合が良すぎるかな。いや分かってるけど、分かってるんだけど、もうどうしようもないんだって
桐島
- 小魚の皆様がご到着された。
桐島
- とにかく歩き出そうとすると急に力が抜けて片膝をつく。なんだ?
桐島
- 足が上手く動かない。出血がひどくてフラフラする。こんなとこで立ち止まってる場合じゃないのに。
桐島
- 考えがまとまらない。そうだ先輩が無事だなんて保証は無いじゃないか。早く行かなきゃ。早く早く早く…
桐島
桐島
- あれからどれくらいたったのか
桐島
- …
桐島
- 気が付くと僕は引きずられていた。水が口に入って苦しい。腕がすりおろされて痛い。
桐島
- 引きずっているのはさっきのデカいのか。横に小さい二体を引き連れている
桐島
- ごぼ、ぐ、
桐島
- 尾崎たちは無事だろうか。梶本が関わっているなら、この騒動自体はいずれ解決するんだろうけど、間に合うかどうか。
桐島
- いずれにしろ、このままだと先輩は間に合わない。僕も多分戻れない。
桐島
- なんでだろう。生きている時には言えなかったのに。何もかも手遅れになってなぜ今更「助けて」だなんて送ってしまったんだろう。
桐島
- 来てくれたのに、ちゃんとお礼も言えなかった。謝りたかったのに、胸が詰まって言葉に出来なかった。結局また優しさに甘えた。
桐島
- 声にならない謝罪を繰り返しても、なんの意味もない。自己満足にすらならない。
桐島
- そうだ。僕の自省も悔恨も、どうでもいい。どうでもいい終わったことだ。
桐島
- ただこの状況をどうするかだけ考えろ。僕に出来る贖罪なんて、それくらいだ
桐島
- …早く、動かなきゃ。立ち上がらなきゃ。今なら間に合うかもしれない。行かなきゃ。行かなきゃ。人魚のもとへ、行かなきゃ…
桐島
- …
アキ
- …
桐島
- …?!
桐島
- しまった。アキさんを呼んでしまったんだった
桐島
- アキさ…ごぼっ
桐島
- ていうかあれアキさんだよな?パッと見正気っぽいからそうだよな?
桐島
- ボロボロすぎるので死んでると判断されると困る。いや死んでるけど。叫ぼうとするが半分水に浸かっているのでなかなか喋れない。腕がないので起きられない。
桐島
- いやまて。女子だぞ。
逃げないとヤバくないか?
桐島
- ご、ぼ…
桐島
- ……あれ、君もしかして桐島くん?
金髪だし…違う?どう?
アキ
- がぼ…
桐島
- 横の人たちはどういう人なの…?
アキ
- (これを人間にカウントするのか)
桐島
- ていうか大丈夫…?
アキ
- (大丈夫なわけあるか)
桐島
- バチャン、と桐島の体が投げ出される
桐島
- 化物…もとい糸良の信者たちは、新しい住民へと足を向ける
桐島
- えっ…えっ…
アキ
- …っぶは
桐島
- 逃げて下さい!そいつらに捕まると、化物にされますよ!
桐島
- マ!?
アキ
- 化物は少女へとつかみかかる
アキ
- アキさ…
桐島
- 見間違いだろうか
アキ
- 巨体がふっと浮き上がる
アキ
- バシャン、と響く音と共に、化物は勢いよく地面へと叩きつけられていた。
アキ
- 最初のLINEを思い出す
桐島
- 特技は背負い投げ…!
桐島
- 今行く!
アキ
- いや、無理は…
桐島
- 瞬く間に小さな二体をのして、桐島の元へと走る
桐島
- え…つよ…
桐島
- 桐島くん!桐島くんでしょ!
私アキだよ!!
アキ
- 桐島です。合ってます。
桐島
- ヒロは?
アキ
- …連れ去られました。すみません。
桐島
- 追って話します。今はとにかくこの場を…うわっと!
桐島
- アキは桐島を抱え上げる
アキ
- あれ腕なくない…?てか片足も無くない…?
アキ
- そのうち生えてくるんで大丈夫です。僕死んでますから。
桐島
- そっか!まあ、軽くていいや!
アキ
- マジかよ
桐島
- 坂を登る方へ進んで下さい。化物が少ないので。
桐島
- わかった。
…ついでに先に聞いておきたいんだけど、いい?
アキ
- …な、なんですか?
桐島
- ここって、トイレある…?
アキ
- ………………………済ませてから来るべきでは?
桐島
- ちっがうんだって!!トイレのドア開けたら着いちゃったんだって!!
アキ
- そんな仕組みなんだ…
いっぱいあるんで大丈夫ですよ
選び放題
桐島
- べつにいっぱいはいらない…
アキ
- さっきはありがとうございます
桐島
- いいよ。LINEした仲じゃん
アキ
- …ふ
桐島
- ほんと、ありがとうございます。助かりました。
桐島
- 色々と。
桐島
- 既読14 解散と合流
アキ