廃墟からのLINE11
まだ考察回。TRPG動画が好きなので、全体のノリがそれっぽいかもしれない。クトゥルフ要素は出てこないのでインセインに近いか。またちょと時間かかるよ。評価ありがとう!
- 前回のあらすじ
直泰
- クラスLINE大盛り上がり
アキ
- 大昔に人魚の神様が恋して暴走したっぽい
アキ
- 縁結びってロマンチックじゃね?
佐崎
- あれ僕の話の感想そんな感じ?
梶本
- 図書館前
直泰
- なるほど。それが人魚沼伝説の概要か
直泰
- つーか図書館来た意味無かったな
尾崎
- 郷土資料から何か分からないかと思ったんだが…
直泰
- まさか何も引っ掛からないとは
直泰
- ネットのほうがまだ情報出てくんぞ
尾崎
- …いちおう新聞記事から、過去実際に集団自殺事件があったことはわかった
直泰
- しかし村が一つ滅ぶほどのことなんだろうか?
確かに凄惨な事件だが
直泰
- ばーちゃんが言うには、ほんとは新聞に載ってるよりもっと酷いことがあったんだってよ
尾崎
- でも全然報道されなかったし、すぐに誰も話さなくなったらしい。
尾崎
- 戦時中だったのもあるけど、それにしても不自然だったとかで、何かバックででけー力が働いたんじゃねーかっていってた
尾崎
- 戦時中?
い、意外と最近の話なんだな
てっきりもっと昔の…言い伝えみたいなもんかと
直泰
- いや、最初の沼の話はけっこー昔の話だったはず?歴史わかんねーから詳しくはわかんね
事件が起こったのはそのくらいの時期だったってだけだな
尾崎
- バックででけー力…まあ何か都合が悪いことがあって揉み消されたのか
あるいは
直泰
- 人魚さまの力なのか…
直泰
- やっぱ信じてんじゃねーか
尾崎
- 僅かでも可能性があれば考えるさ
直泰
- まーでも、ここまではただの昔話
ばーちゃんのホラーはこっからな
尾崎
- ほう?
直泰
- …ある日、人魚沼のあるあたりに、ダムの建設計画が持ち上がった
尾崎
- そういえば、沼から続く川があったな
直泰
- で、糸良村がダムの底に沈むってことになった。
尾崎
- ああ、確かにあの位置ならそうなるのか
そういう話自体は一昔前は結構よくある話だったようだし、不自然でもないな
直泰
- しかし村はともかく、信仰のあるような沼にそんな真似すれば、住民の反感を買うだろうに
直泰
- まー、そのころには糸良村は今のA町の一部の地区って扱いになってたから、決めた役人方も、あの村のヤバさをあんま知らなかったんだとさ
尾崎
- もう村からの反発が凄くて、すんげー反対運動?ってのがあったらしい
尾崎
- …やっぱヤバい村だったのか
直泰
- ばーちゃんからすれば、フツーのヤバい村ってかんじだったとか
尾崎
- フツーのヤバい村
直泰
- 昔はそういう閉じられた村があちこちにあって、独自の変な慣習なんかがあるのは珍しくなかったんだとよ
尾崎
- だからまあ、よくあるヤバい村って印象だったと
尾崎
- ばーちゃんは何してた人なんだ…?
直泰
- なんか昔からフラフラしてたらしい
今はアラスカにいる
尾崎
- おう…
直泰
- でだ。そんな中で、ある変な噂が広がってな
尾崎
- 生け贄か?
直泰
- いや
尾崎
- 村の住民が増えれば、ダム計画が中止になるって噂
尾崎
- ほう?
直泰
- いやデマだったらしいが。
とにかくその時は村人皆、その噂を信じた
尾崎
- それで村人たちは自分の親族、友人、知人、手当たり次第に手紙を送った。
「糸良村へ来てくれ」
「糸良村の住民になってくれ」ってな
尾崎
- 村人はとにかく誰でもいいから、新しい住人を欲しがった。手紙を送る相手はだんだん範囲が広がって、友人の友人、知人の知人。ついには何の関係もない他人にまで送られるようになった
尾崎
- 身近な人間に送られるうちは上手くいくこともあったらしい。でも会ったこともない他人から送られる手紙とか、正直怖いだろ
しかも「住民になれ」って
尾崎
- だからすぐそれは「悪い噂」として広まったし、中には手紙を破り捨てるやつもいた
尾崎
- それでも糸良の村人は何通も何通も手紙を送った
来てくれない相手には何度も何度も何度も
尾崎
- それが人魚さまからのお告げだったから、らしい。
尾崎
- 人魚さまの指示だったと
直泰
- (生け贄を欲しがっていたなら、案外そのデマ自体、人魚さまがでっち上げたかもしれんが)
直泰
- 「糸良村からの手紙」は噂とともに広まっていった
尾崎
- …そして、何度も送られるうちに変化が起こった
尾崎
- 手紙を捨てると、怪我や病気にかかる、という話が広がり始めた
尾崎
- というか実際、そういうことが起き始めてた
尾崎
- 送られた手紙を破り捨てれば怪我をして、燃やしてしまえば火傷を負った
尾崎
- 「手紙はいらない」と返事を送れば次の日には何故か「糸良の村へ行く」。たとえ読まずに放置しても、手紙が積まれるにつれ村へ行く気になっちまうんだと
尾崎
- そんで結局、手紙を送られた誰もが、糸良村に行っちまった
尾崎
- 行かなかったのは、「手紙の宛字が間違っていた人」、「手紙をすべて読んだが、返事を保留にしていた」人間だけだった
ばーちゃんがそれだ。嫁入りする前は難しい名字だったからだろうな
尾崎
- 本当に僅かなんじゃないか?それ
直泰
- まあ適当な相手に送ってるんなら、宛字を間違うのもよくあったんじゃねーの?
尾崎
- 破ったら不味いって話も直ぐ広まったみたいだし、案外、無事な人間は結構いたんじゃね?
尾崎
- でないとあんな小さな村、直ぐ人で溢れちまうだろ
尾崎
- そうだろうか…
直泰
- で、結構人が集まって…最初の二倍くらいっつってたっけな?
そのくらいの時に事件が起こった
尾崎
- …集団自殺事件
直泰
- それで、村人は皆死んだ
尾崎
- …
直泰
- …?
直泰
- え、それは。なんだ
村人のうちの何人…
直泰
- 全員
尾崎
- そのとき住んでたやつ全員
尾崎
- いやいやいや無いだろ
直泰
- そんなもの、流石に記録に残らない訳が
直泰
- なんかそのタイミングで空爆があったとかで、ほとんどはその被害者として記録に残ったらしい
あと大半は行方不明として処理されたとか
尾崎
- そんな無茶苦茶な…
だが実際そんな記録は無い…
うそだろ…
直泰
- いやしかしその話…物凄く今の状況と共通点があるな
直泰
- ちゃんと話してみればそうだな
尾崎
- つまりこのLINEは、糸良村からのLINEなのか
直泰
- 糸良。いとよし。
聞いたことがあるような…
直泰
- あー、あれだろ
尾崎
- 糸良小学校
俺んとこの学区じゃねーけど。隣だったわ
尾崎
- それだ
何かで見たと思ったんだ
直泰
- 手掛かりがあるかもしれない
行ってみよう
直泰
- うわ遠いじゃん
ダリーな…
尾崎
- 言ってる場合じゃないだろ…いつまで返事が「保留」出来るのか分かったもんじゃないし
手紙よりLINEのほうが既読が積まれるのは早いぞ
直泰
- へーへー
尾崎
- そうだ。肝心のオチを聞いてなかったな。
結局どうなったんだ?生け贄を用意して力を高めて想い人は手に入ったのか?
直泰
- いや?なんかそいつだけ逃げ出したらしい
尾崎
- 結局その最後の一人の生け贄が足りなくて、信者も全員居なくなっちまってで、人魚さまが眠ったままなんだとか
尾崎
- つーか達成されてたら今こんなことになってないんじゃねーの?
ぜってーそいつ、男を探してんだろ
尾崎
- ふーむ。
どうなんだろうな
直泰
- だが逃走に成功してるなら、その男が何かしらの対抗策を使ったということだろう
直泰
- つまり、「手紙」から逃れる術があるということだ
直泰
- そいつに手紙が送られたかはわかんねーぞ
なにせ外国人だし
尾崎
- だが「逃げ出した」ということは、村に一度は戻ってるということだろ?
直泰
- ぶっちゃけ細かいとこはうろ覚えだからあんま自信ねーな
尾崎
- ばーちゃんに聞くか
尾崎
- アラスカ大丈夫か?
直泰
- ディスコードでまあ
尾崎
- 元気なばーちゃんだな
直泰
- …にしても、そこまで分かっててなぜ放置したんだ
直泰
- というか既読無視していたのも、その話を知っていたからなんじゃないか?
直泰
- …べつに、大したことねーと思ってただけだ
尾崎
- 小学校行くんだろ。とっとといかねーと、夜になるぞ
尾崎
- 桐島が関係してるんじゃないか?
直泰
- ……
尾崎
- さっき、「最後の一人が足りなかった」と言ったな
直泰
- 小池は桐島は死んだといっていた
お前たちは最後に、糸良村の廃墟に居た
直泰
- …桐島は、最後の一人の生け贄になってしまったんじゃないか?
それで人魚さまが目覚めて、今こんなことに…
直泰
- ごちゃごちゃうるせぇな?
尾崎
- 尾崎は直泰を睨み付ける
尾崎
- なんか勘違いしてねぇか?俺は意味分かんねぇLINEがウザッてぇからお前らと協力してやってるだけだぞ?
尾崎
- 桐島は関係ねー。
それ以上その話すんならぶちのめすぞメガネ
尾崎
- …鈴木だ
直泰
- 関係はある。つまりだ
直泰
- 生け贄になったという人は、本当に死んだのか?
直泰
- あ?
尾崎
- 今、俺の幼なじみは消えたはずの廃墟に居る
直泰
- LINEによって呼び出された人たちもどうやらそこに居るらしい
直泰
- この人たちが生け贄だというなら、やっぱり昔の生け贄になった人たちも、この場所に行ったんじゃないか?
直泰
- それなら死体も出ないし、行方不明とされたのもわかる
直泰
- いや、つまりな
直泰
- 桐島は、生け贄にはなっているが、生きてるんじゃないか?
直泰
- だから俺の幼なじみと合流して、脱出しようとしてるんじゃないか?
直泰
- …あー
尾崎
- お前も、その可能性を考慮して桐島のLINEを待っていて…
直泰
- あー。違う違う
無い。それは無い
尾崎
- ……尾崎。
直泰
- 正直に話すと、俺は幼なじみ以外はどうでもいい
直泰
- …ほー?
尾崎
- 桐島が生きてるか死んでるかもどうでもいい
お前が何をしでかしたのかも、まあ、別に咎めようとは思わない
直泰
- ただ無事に解決出来ればいいんだ。お前らが何をしていたとしても、喋って俺に不利益がありそうなら黙っている。
俺は正義感溢れる人間じゃないんだよ。ヒロと違ってな
直泰
- 何があったのか話してくれ。桐島は恐らく、この怪奇現象の鍵になる。
直泰
- 敵か味方かだけでも検討をつけたい。利用できそうなことがあれば、上手く丸め込んでヒロだけでも助けたい。
直泰
- …あ、この話はアキには言わないでほしい。
あいつは優しいんだ。同情してしまうかもしれないからな
直泰
- ははは。なるほどな
尾崎
- お前案外小賢しいやつだな
尾崎
- メガネだからな
直泰
- はは、まー、分かった
尾崎
- 誰かに言ったらただじゃおかねーからな…?
尾崎
- 了解した
直泰
- まあ事故だよ。桐島が死んだのは。
階段から転げ落ちて首が折れた。ほとんど千切れそうなくらい曲がってたから、生きてるってことはねえよ。
尾崎
- でもよぉ。そんな状況だと俺たちが疑われかねないだろ?
只でさえ印象よくねーし、やらかす人間だと思われてんだ。人殺し扱いされんのは目に見えてる
尾崎
- だから捨てたんだ
尾崎
- あの沼に、桐島の死体を捨てた。
生け贄になって人魚さまが復活したってのは、多分合ってるんじゃねーか?
尾崎
- …なら、このLINEしてる桐島は?
直泰
- ユーレイか何かかもな
はは、クソ陰気なあいつらしいな
尾崎
- …もう少し詳しく話せないか?
だとしたら、今桐島が何のために動いてるのかが分からん
直泰
- 昔ヒロから聞いた話だとそんなに悪い奴でもなさそうだったが、今の桐島の周りからの印象はかなり悪い
直泰
- お前はどう思う。
桐島は、今いったい何が目的でヒロと行動している?
直泰
- 知るかそんなもん
本人に聞けよ
尾崎
- 大体、あいつの考えが分かってたらあの日、あんなとこには呼び出さなかったんだからな
尾崎
- どういうことだ
直泰
- ……関係ない話だ
それより、時間ねーんだろ
尾崎
- …小学校は、アキの居る位置のほうが近い。
行ってもらったほうが早い。連絡しておく。
直泰
- 直前で裏切られたりしたら不味いんだ。ヒロと行動してる限り、人質がいるようなもんだからな
直泰
- 話してくれ
直泰
- …チッ分かったけど、多分本当に関係ねーぞ
尾崎
- リンゴン
尾崎
- リンゴンリンゴンリンゴン
尾崎
- ん?何…
直泰
- お、どうした
ついに廃墟からLINE来たか?
尾崎
- ……いかん
不味いことになった
直泰
- …なんだよ
まさか桐島からか?
尾崎
- さっきアカウント名を変えたんだが
直泰
- クラスLINEで弄り倒されている…
直泰
- †深淵の黒騎士†
尾崎
- …お前やっぱアホなんじゃねーか?
尾崎
- えっ
直泰
尾崎
- …
宏考
- ……
宏考
- ……行かなきゃ
宏考
- 行かなきゃ。行かなきゃ
宏考
- ヒロは手斧をカラカラ引き摺り、重い足取りでズルズルと歩く
宏考
- 体には何か…粘性のある黒い液体をあちこちに飛び散らせている
表情は暗く、濡れた地面を見つめ足だけは前へ前へ進む
宏考
- 奥へ行く。導かれるように、奥へ
宏考
- 既読11 糸良村
宏考