Calamity
古から代々物語として受け継がれてきた「災厄」というバケモノ。中学三年生の飯田まりなは、その物語の真相へと近付こうとするが、思いもよらぬハプニングに見舞われて…?
- むかしむかし
語り手
- 2つの「災厄」(バケモノ)がいた。
語り手
- 「災厄」は人々から忌み嫌われた。
語り手
- 醜い容姿、人からかけ離れた膨大な力
語り手
- それは人々を遠ざけるには十分過ぎたのだった。
語り手
- やがて「災厄」がいるとされる土地には、災害・疫病・飢饉などに侵されると噂され、
語り手
- 「災厄」は打ち滅ぼすべき存在として、言い伝えられた。
語り手
- 何世代に渡って「災厄」は、
語り手
- いや、バケモノ達は
語り手
- 愛されることなく、人々に命を狙われて生き続けた。
語り手
- そんなある時
語り手
- 一人の少女が誕生する。
語り手
- 夜の闇を柔らかな絹に染めたような黒髪
語り手
- ダイヤの原石のような大きな瞳の少女だった
語り手
- 残酷なことに、少女は奴隷商人に捕まえられ、とある屋敷の主人に売り飛ばされてしまう。
語り手
- その屋敷の主人は「黒魔術」精通している変人だった。
語り手
- 少女を含め、主人に買われた奴隷達は黒魔術の怪物の生贄とされた。
語り手
- その黒魔術の怪物が、「災厄」だ。
語り手
- 「災厄」は次々と逃げ惑う人間達を殺し、殺した。
語り手
- 女は犯し、事が済めば殺される。
語り手
- だが、少女だけは違った。
語り手
- 何をされようが泣きもしない喚きもしない少女に、「災厄」達は興味を持った
語り手
- 次第に、「災厄」達は少女に心を開き、彼女を一心に愛した。
語り手
- 少女も「災厄」達の全てを愛し、彼らの永年の心の闇を拭ったのだった。
語り手
- そして彼らはずっと一緒に幸せに暮らしたとさ…
語り手
- そう言う終わり方なら良かっただろう
語り手
- 美しい花嫁衣装を纏う少女に、「災厄」達が愛の口づけをした。
語り手
- ぎゃああああああああっっっっっ!!!!!
2号(災厄)
- 少女がバタバタと床を転げ回った。
語り手
- 少女の顔は醜く焼けただれ、体全身に火傷を負ったようなおぞましい傷が浮かび上がった。
語り手
- 馬鹿め
2号(災厄)
- 私たちが人間の女など愛するわけがないではないか。
2号(災厄)
- お前だってそうだろう。
2号(災厄)
- 我らのようなおぞましい存在を愛するなど、ありえん。
2号(災厄)
- 全て演技だったのだろう。
2号(災厄)
- クスクスと笑う「災厄」達。
語り手
- 少女はギロリと「災厄」達を睨みつけた。
語り手
- 私は、貴方達を愛していたのに!!!!
2号(災厄)
- すっくと立ち上がった少女の腕がぼとりと落ちた。
語り手
- 私はずっと貴方達を想っていました。
2号(災厄)
- ですが、それは私だけだったのですね…
2号(災厄)
- 少女は狂ったように笑った。
語り手
- ボトボトと少女の体は壊れていく。
語り手
- さようなら。
2号(災厄)
- もし、また人間に生まれ変わる事があっても、絶対に貴方達を愛さないわ!!!
2号(災厄)
- ボロボロと泣く少女。
語り手
- 少女の体は跡形もなく溶けて消えてしまった。
語り手
- それを見て、「災厄」達は愕然とした。
語り手
- 彼らは彼女への口づけに呪いをかけた。
語り手
- それは「偽りを語れば、醜い傷を負い、一生苦しみながら生きる」と言うものだった。
語り手
- 「災厄」達は少女が本当に自分たちを愛しているのか不安だった。
語り手
- だからこの呪いをかけた。
語り手
- しかし、醜くなろうが、嘘をついていようが、彼らは少女を愛していた。
語り手
- 一生苦しみながら自分達と共に生きてほしい。
語り手
- 醜くなれば周りの人間はお前を見つめやしない。
語り手
- そして、お前を愛するのは我々だけ。
語り手
- そうなったお前は我々以外に見向きもしなくなる。
語り手
- 歪んだ愛情から精製された呪いだった。
語り手
- だが、彼女は死んだ。炎の中、死んだ。
語り手
- 彼らは悲しみに暮れ、心に深い傷を負った。
語り手
- 今も「災厄」は、少女を探している。
語り手
- きっと貴方のところにも訪ねてくるであろう。
語り手
- 間
- 何その話ー!
妹(みき)
- なんか酷い話じゃね…?
弟(ゆきすけ)
- わぁ…!ロマンチックな話!!
まりな
- マジか…
弟(ゆきすけ)
- まりなってやっぱ頭おかしいわ…
妹(みき)
- なんでそうなった…別に人それぞれだし、いいじゃん。
まりな
- そうねぇ。
確かに、まりなの言う通りだ。
祖母
- この話は随分昔に語られ、私の代まで繋ぎ持ってるからねぇ。
祖母
- いろんな人が聞いてるから、解釈は十人十色さ。
祖母
- じゃあ、私は酷い話だと思う。
妹(みき)
- だって、最後の最後まで女の子は嘘ついてたんでしょ?
妹(みき)
- だから燃えちゃったんだよ!
妹(みき)
- 「災厄」達が可哀想…
妹(みき)
- 俺も酷い話だと思う…
弟(ゆきすけ)
- だけど、嘘ついても死なない呪いなのに、なんで少女は死んだんだ?
弟(ゆきすけ)
- そこは昔からわからないまま…
祖母
- 私も若い頃はよく空想していたねぇ…
祖母
- 呪いをかけ間違えたんじゃないか!?ってねぇ
祖母
- なるほど…
妹(みき)
- ウチは、少女は嘘ついてないと思う。
まりな
- え、なんで?
弟(ゆきすけ)
- うーん…
まりな
- 勘…?
まりな
- わかんない。
話聞いてた時にそう感じたからかな。
まりな
- へぇー…
妹(みき)
- 私はずっと女の子酷いっ!!って思ってたから。
妹(みき)
- ほほほ。人それぞれさ。
祖母
- で、その話とおばあちゃん家がなんか関係あるの?
弟(ゆきすけ)
- 実はね、この家は「災厄」を封印するから家系の末裔なんだってね。
祖母
- 父は笑い話として話していたから私は本気にしていないけれど。
祖母
- この家のどこかに「災厄」が眠ってるぞー!って脅かされたわ。
祖母
- こ…こわい!
妹(みき)
- えー…それぐらいで?
まりな
- 私も怖かったよ。
夜中、厠に行けなかったぐらいさ。
祖母
- おばあちゃんそれ、何歳の時?
弟(ゆきすけ)
- 確か…4歳ぐらいの時だったかしら…?
祖母
- (みきは今…)
まりな
- (中学一年だぞ…)
弟(ゆきすけ)
- お母さん、お父さんがそろそろ買い物に行くって言ってるけど、一緒に行く?
母(美久)
- あら、美久ちゃんありがとう。
祖母
- 分かったわ。お父さんと車で待ってて。
祖母
- 三人ともどうする?
母(美久)
- 下の二人は行くらしいけど。
母(美久)
- 〜あ!…ねぇ、みきとゆきすけ。〜
まりな
- 〜ん?〜
妹(みき)
- 〜三人で「災厄」の場所、探しに行かない?〜
まりな
- 〜お!いいね!〜
弟(ゆきすけ)
- 〜やろうやろう!〜
妹(みき)
- ウチ行かない
まりな
- 俺も
弟(ゆきすけ)
- 私も
妹(みき)
- 分かった。
母(美久)
- 何か買ってきてほしいものとかある?
母(美久)
- 紅茶!
まりな
- うーん、カルピス
弟(ゆきすけ)
- レモンスカッシュ
妹(みき)
- OK〜
母(美久)
- じゃあ行ってくるね
母(美久)
- いい子にしてるのよ
祖母
- いってらっしゃい!
まりな