ソードアート・オンライン 黒紫の英雄譚 第36話
25層編、ついに完結。果たしてこれからキリト達を待つものとは.....。 諸事情により、次回の更新は遅れてしまいます。申し訳ございません。
- ボス戦が終わったその瞬間、歓声が上がった。生き残り、勝利したのだから当然だ。だがキリト含む黒紫の剣豪団のチーム及び仲間を失ったり者達はとても歓声を上げる気にはならなかった。
キリト
- ........
キリト
- ラストアタックボーナス
・エンペラーソード
キリト
- 本来のキリトならラストアタックボーナスに胸躍らせているところだろうが今はそんな気分ではない。
キリト
- いや.....もう切り替えたんだ。サチの死だけを特別扱いするのは......卑怯だ。
キリト
- 彼女の『死』を乗り越えてでも.....俺達は前に進まなきゃいけないからな。
キリト
- やっといつものやかましい顔に戻りましたね。
ノーチラス
- ブチッ
キリト
- 全く....切り替えが遅いんですよ。悲しいのは自分だけと思ったら大間違いですよ?
ノーチラス
- 分かってるよ.....自分の未熟さを感じたさ。
キリト
- 本当ですよ。悔い改めてどうぞ。
ノーチラス
- お前.......一々言い方がムカつくんだよ‼︎
キリト
- そう言うとキリトとノーチラスはお互いに取っ組み合いになり、まるで小学生の喧嘩のような図になった。
キリト
- なんですか!?反論出来なくなったから実力行使ですか!底が知れますね!
ノーチラス
- 黙れぇぇ!ギルドリーダーの権限を持って命ずる‼︎お前はここで一度矯正してやるぅぅ!
キリト
- 何やってんだか.....
エギル
- まぁまぁ。ずっと暗いムード通すよりマシだろ。
クライン=おっさん
- キリトも強えけどまだ若いだろ?こういう苦難を乗り越えてこそ成長ってもんだ。
クライン=おっさん
- 俺達は歳食ってるみたいな言い方だな?
エギル
- バカ言えよ!俺はまだ若いっつうの!
クライン=おっさん
- すると周りのプレイヤーも彼らの空気に呑まれ、少しづつ和やかな雰囲気が作られていく。
アスナ
- .......やっぱりかー。
ユウキ
- まぁ....覚悟はしてたけどね。
アスナ
- ユウキとアスナはボス戦中に投げた剣の今を見ていた。本来剣は投げるものではない。おまけに力任せに無茶苦茶に投げ、挙げ句の果てに投げた剣は半ばボスの下敷きになったのだ。恐ろしく剣はズタボロになっていた。
アスナ
- ユウキの聖剣ラグナロクは相変わらずの出来のため一応まだ耐久値はあるが2桁程だ。あと数回振ったら耐久値は全損だろう。しかしアスナのキング・フルーレは既に耐久値が0になっており、今すぐにでも消滅するだろう。
アスナ
- この剣とは5層の頃からの付き合いだったし....思い入れもあったけど.....仕方ないわよね。
アスナ
- アスナ.....
ユウキ
- 起きた事を責めてもしょうがない!新しい剣を見つけるわよ!
アスナ
- うん!ボクも手伝うよ!
ユウキ
- えー...ゴホン。そろそろ次の層のアクティベートに向かいたいのだが...元気の残っている者は?
ヒースクリフ
- そんな奴お前以外居るか。
キリト
- アクティベートが楽しみならアンタ1人で行けばいいだろ。
キリト
- なら....そうさせてもらう。
ヒースクリフ
- 君達はゆっくり休みたまえ。
ヒースクリフ
- そう言うとヒースクリフは26層の主街区を見つけるために先に進んでいった。
ヒースクリフ
- さて、俺達一般人は帰るか。
キリト
- .....亡くなった奴らの墓も作ってやりたいしな。
キリト
- うん....そうだね。
ユウキ
- こうしてヒースクリフ以外の疲労組は25層の主街区に戻ることにした。
ユウキ
- ひっさびさの〜〜〜!
モブプレイヤー
- フロアボス突破!祝☆勝☆会!
モブプレイヤー
- イェェェェェイ‼︎‼︎
クライン=おっさん
- はぁぁぁぁ。お前ら元気だな。
エギル
- とか言いつつお前も来てるじゃねえか。
クライン=おっさん
- いや何でも酒は全部お前の奢りと聞いてな。
エギル
- あーそれでか......じゃねえよ!誰だそんなデマ流したのは‼︎
クライン=おっさん
- 私ダ☆
アルゴ
- お前だったのか....
クライン=おっさん
- いやナ?折角激闘から帰還したならこういう宴会には全員出た方が良いというオレっちなりの善意ダ。
アルゴ
- でもキー坊とユウキ.....ユーちゃんが来てなくてナ。
アルゴ
- お、ついにユウキにも仇名が....
エギル
- 一体どこで乳繰り合ってるんだカ....
アルゴ
- 一方 キリトとユウキは10層のフィールドに来ていた。場所は初めてサチに会った場所。墓を作るならこことキリトは考えたのだ。
アスナ
- 何でユウキまで....俺1人で事足りたぞ。
キリト
- キリトが心配だもん。気が変わって自殺でもされたら嫌だし。
ユウキ
- もうしないよ.....そんな事であの世に行ったらサチに笑われる。.......それにディアベルにもな。
キリト
- ........そうだね。
ユウキ
- そしてその帰り道....
ユウキ
- なぁ、ユウキ。
キリト
- どうしたの?
ユウキ
- あの時さ....お前が声をかけてくれなかったら俺はきっと死んでたと思う。
キリト
- あの時ユウキは俺をヒーローと言ってくれたけど....本当は俺の方が君に救われてたんだ。
キリト
- え....?
ユウキ
- 本当はさ、このデスゲームが始まった時は....怖かったんだよ。ユウキと別れてから、1人で宿屋で寝た時.....家族の夢を見て。
キリト
- 情けなく泣いちまったんだ。寂しいって.....
キリト
- 分かるよ.....ボクも姉ちゃんを何度も夢に見たよ。
ユウキ
- でもユウキと一緒に戦ってから、そんか夢をあまり見なくなったんだ。
キリト
- きっとそれは、俺の中でユウキが.....寂しさを埋めてくれる存在だったから。家族みたいに大切な存在だったからなんだと思う。
キリト
- どうしたのキリト?恥ずかしいんだけど....
ユウキ
- ユウキ....これは俺の勝手な我儘かもしれないけど...側にいてくれ。この世界で俺にとって君は.....1番大切な人なんだ。
キリト
- .....!!!!
ユウキ
- その瞬間、ユウキの頭の中ではこの世界でのキリトとの思い出が次々と蘇ってきた。楽しいことや辛かったこと.....少し恥ずかしかったことも。
ユウキ
- その思い出の全てが....自分にとってはかけがえのないものになっていた。気づけば自分はキリトに対して憧れや尊敬以上の心を向けていたのかもしれない。きっとその心の名前は....
ユウキ
- (愛情.....?)
ユウキ
- 絶対に側にいるよ....ボクも、キリトが居てくれないと.....辛いんだ。
ユウキ
- 心が恥ずかしがっているのに自分の口は気恥ずかしい事をペラペラと喋ってしまう。何故だろう。恥ずかしすぎて顔からマグマが出そうなのに全然悪い気はしない。自分はここまでキリトに惹かれていたのかと認識していく。
ユウキ
- だから....今居るみんなで、100層を絶対にクリアしようね!
ユウキ
- あぁ....さて、そろそろ俺達も祝勝会に行くか?さっきからアルゴから参加への催促メールが死ぬほど来てるんだ。
キリト
- ふふっ。そうだね、ボク達も行こうか!
ユウキ
- 25層 祝勝会 会場
ユウキ
- 申し上げます!リア充が現れましたァ!
モブプレイヤー
- キリトとユウキは祝勝会をやっている会場に訪れた。その瞬間近くにいたプレイヤーに告げられてしまった。
ユウキ
- ......
キリト
- ....
ユウキ
- お、今来たのか。
ノーチラス
- 2人とも、例の件は終わったの?
アスナ
- あぁ。10層のフィールドに建てといたよ。
キリト
- そう。分かった。
アスナ
- いつまで辛気臭い話してんだよぉ!?お前も早くこっち来いぃ!
クライン=おっさん
- 何だよ....うわっ!酒臭ッ!
キリト
- デロンデロンに酔ってるね..
ユウキ
- キリトとユウキは既にカオス状態にある祝勝会に参加した。
クライン=おっさん
- よォキー坊。大変だったみたいだナ。
アルゴ
- .....相変わらず情報の根回しが早いやつだな。
キリト
- それが仕事だからナ。
アルゴ
- .....にしてもあのサチってプレイヤー。大したもんだナ。自分が死んじまってでも誰かを助けようとするなんテ。
アルゴ
- 全くだ。彼女は間違いなく攻略組だったよ。
キリト
- こりゃますますキー坊は死ねなくなったナ。
アルゴ
- 絶対に死なないさ。
キリト
- キリトはアスナやユナと楽しそうに笑い合ってるユウキを見つめて言った。
キリト
- 絶対に護りたい....傍にいて欲しい存在ができたからな。
キリト
- ふーン....
アルゴ
- (ようやくキー坊も素直になったという事カ...)
アルゴ
- さて、明日からまた攻略だからな。今日は羽目を外させてもらうぞ?
キリト
- 良いんじゃないカ?まだまだ今日はこれからだゼ?
アルゴ
- 攻略組は今日の25層を境に、さらに強くなっていくだろう。この時キリトもアルゴもそう感じた。
アルゴ
- 一方で...攻略組を壊滅させんとする動きが....既に始まっていたのだった。
アルゴ
- 25層 迷宮区前
アルゴ
- .........
モブプレイヤー
- 攻略が既に終わった迷宮区の前に立っていたそのプレイヤーは、サチに命がけで助けられた、死にたくないと叫んだプレイヤーだった。
モブプレイヤー
- そろそろ....良いよな?
モブプレイヤー
- ふぅ......
モブプレイヤー
- そのプレイヤーはかぶっていた羽織りを脱ぎ捨て、かわりにいつも自分が付けている装備品を装着した。
モブプレイヤー
- はぁぁぁぁぁ。やっぱり俺に羽織は似合わねえよな。
ザザ
- その時、ザザに近寄るように近くの木陰から2人のプレイヤーが現れた。
ザザ
- お疲れだったな、ザザ。悪かったな...攻略組のスパイなんか頼んじまって。
Poh
- いや〜さすがボスですね。攻略組内に俺ら犯罪者プレイヤーが潜り込み、奴らの情報を抜き取る作戦!俺なんか思いつきませんでしたよ!
ジョニー・ブラック
- まぁお前のミジンコ並みの脳味噌じゃあな。
ザザ
- んだとテメェ!?
ジョニー・ブラック
- で?どうだったんだ?何か有効な情報は取れたか?
Poh
- 当然ですよ。攻略中は勿論のこと、ボス戦内の状況を結晶に残したり...映像では分からないプレイヤーの使ってるスキルやレベルなど...怪しまれない範囲で調べ尽くしましたからね。
ザザ
- Hooo!!!優秀な仲間を持てて俺は幸せって気分だぜ!
Poh
- で、どうだ?攻略組の主戦力は潰せたか?それがお前の第1目的だっただろ。
Poh
- あの盾使いのおっさんは残念ながら。ですが....キリトとかいう剣士....その仲間を消す事には成功しましたよ。
ザザ
- え?どうやったんだ、お前みたいな堪え性のない奴が!
ジョニー・ブラック
- 殺すぞお前。....簡単だ。わざと自分のHPを減らして助けを呼んだ。正義感の強い上位勢なら突っ込んでくると思ったからな。
ザザ
- 無事俺の狙い通り庇ってくれましたよ。
ザザ
- うわぁ...引くわー..
ジョニー・ブラック
- よしお前、表出ろやぁ‼︎
ザザ
- ふっ...落ち着けよ。
Poh
- ほら、ボスもそう言ってるぜ?
ジョニー・ブラック
- ったく....
ザザ
- で、次はどうするんです?攻略組に殴り込みにでもいきますか?
ジョニー・ブラック
- 悪魔達は、次なる獲物を見定めるために話し合いを始めた。
ジョニー・ブラック
- いや...まだその時じゃねえな。
Poh
- 奴らを滅ぼすのはまだ先....俺らの《同胞》をもっと多く見つけてからだ。
Poh
- 了解したボス。俺はまだ潜伏してた方がよろしいか?
ザザ
- いや...勘づかれると面倒だ。お前はもうこっちに戻れ。
Poh
- 御意。
ザザ
- おーーい!俺の事忘れてない?俺には仕事ないんすかボス!
ジョニー・ブラック
- やや半切れ気味のジョニー・ブラックが突っかかってくる。
ジョニー・ブラック
- 心配すんな。俺たちはこれから忙しくなるぜ?
Poh
- 3人の悪魔は闇夜の迷宮区で不気味な笑みを浮かべるのであった。
ジョニー・ブラック
- それじゃあみんな、また明日から攻略だ。今日はゆっくり休めよ!
キリト
- そうだな....帰らせてもらおう。
ノーチラス
- エーくん...顔色悪いよ?食べすぎたんじゃない?
ユナ
- オエッ....吐きそう
ノーチラス
- エーくん! ごめんね、みんな!お先にあがりまーす!
ユナ
- そう言うとユナはノーチラスを背負って自分達の宿屋に帰っていった。
ユナ
- 何故だろうか、ノーチラスの背中が女子に背負われて悲しいと我々に訴えかけるようだったが、気のせいという事にした。
ユナ
- ほんじゃ、俺も帰るぜ。またなキリト。
クライン=おっさん
- お前もなクライン。変な所でくたばるなよ?
キリト
- テメェこそ!色気付いて剣の腕を鈍らせるんじゃねえぞ?
クライン=おっさん
- ふっ...!
キリト
- はははっ!
クライン=おっさん
- 2人は仲良く笑い合っていた。今まで同じ死線を共にしたのだ。友情も芽生えるというものである。
クライン=おっさん
- さて...他の人も続々と帰ってるし、俺達も帰るか。
キリト
- そうだね、キリト!明日からもっと強くなるために日々精進するよ!
ユウキ
- それでこそよね。
アスナ
- ?
キリト
- こういう無茶無軌道なのが...あなたの良い所よ、キリト君。
アスナ
- あなたの無茶は....「無茶」であっても「無謀」じゃないから。
アスナ
- そっか...じゃ!俺も無茶無軌道でこの世界を救うとしますか!
キリト
- 何それ!面白い!
ユウキ
- .....
アスナ
- アスナは心のどこかで安堵していた。今のこの光景は、責任やら重圧やらを背負う前の....キリトとユウキと自分だけの特別な空間のようだった。
アスナ
- それほど前でもないのに、何故か妙に懐かしく感じられた。
アスナ
- (この空気....やっぱり好きだな。)
アスナ
- しかしアスナがここで感じたのはある意味予兆だったのかもしれない。
アスナ
- なぜなら....キリトとユウキはもう気付いてしまったからだ。
アスナ
- 自分の....本心に。
アスナ
- 25層 宿屋 キリトの部屋
キリト
- うーん......
キリト
- ユウキを....アスナを守るにはこんなんじゃ足りない。
キリト
- もっと強力なスキルが....必要だ。
キリト
- .........
キリト
- ま、今考えても仕方ないか。
キリト
- この世界にはクエストや報酬で会得するスキルもある。上層に行けば自ずと手に入るだろう。
キリト
- よし、おやすみ......zzzzzz
キリト
- 瞬く間に眠りについた剣士。しかしこの数分後、彼の身に....奇跡が舞い降りたのだった。
キリト
- zzzzzzzzz
キリト
- 新スキルを取得しました
二刀流
キリト
- To be continued...
キリト