ソードアート・オンライン 黒紫の英雄譚 第32話
25層も中盤に入りました。アリブレやってて少し投稿が遅れましてすいません。
- アインクラッド25層 フィールド
キリト
- ハァ...このクエストも外れかよ!
キリト
- キリト達はボス攻略の手口になる情報を手に入れるためのクエストを探すため、片っ端からクエストをクリアしていた。
キリト
- が、クリアせどクリアせど関係ないクエストばかり。おまけに手間のかかるクエストばかり、道中のモンスターも一筋縄ではいかない強さという事もあり、ギルドメンバー全員が披露していた。....当然、メンバー入りしたばかりのサチも。
キリト
- いつも...こんなにハードなの?
サチ
- 精神的疲れもあるが....ここまでハードなのは久しぶりだぜ。
エギル
- しかし良くついて来れてるな。本格的な攻略は初めてなのに今の動き....有望だぞ。
ノーチラス
- ノーチラスの言う通り、サチのレベルは36。使用武器は槍。パーティーに所属していたからか、連携の取り方も上手く、今まで攻略組に所属していなかったにしてはプレイスキルは高かった。
ノーチラス
- ふー...今日はこんなものじゃない?疲れすぎると危険よ?
アスナ
- 既にフィールドに出て6時間...ほぼ休みなしでやってるしね。
ユウキ
- 流石に俺も疲れたぞ...よし、今日はもう撤退!無理は体に良くないしな!
キリト
- 賛成!
ユナ
- 全員の総意で本日は撤退することになった。既に25層が解放されて6日。順調にいけば迷宮区はあと少しあれば見つかるだろう。
ユナ
- ふぅ....街に到着‼︎
キリト
- 晩ご飯だぁぁ!
ユウキ
- エネルギーの付くもの食べましょう!
アスナ
- じゃ、俺は下層に降りるぜ。
エギル
- じゃあな、エギル。
キリト
- おう!
エギル
- じゃあ僕らも。
ノーチラス
- バイバーイ!
ユナ
- エギルとノーチラス、ユナはいつも通りそれぞれの帰路へ着いた。
ユナ
- 私は...キリト達とご飯食べたいかな。いい?
サチ
- もちろんよ!色々お話ししましょう!
アスナ
- キリトもいいでしょ?
ユウキ
- あぁ...
キリト
- ?
ユウキ
- (あのプレイヤー...)
キリト
- キリトは少し前に取得していた《索敵スキル》を使用して1人のプレイヤーを見つめていた。
キリト
- キーリートー!?どうしたの!?
ユウキ
- ユウキ。あのプレイヤーどう思う?
キリト
- キリトが指差した方向には1人のプレイヤーが居た。全身が小柄で持っている武器は短剣。肩に何かを載せている...。
キリト
- 何って...普通のプレイヤーじゃないの?
ユウキ
- 容姿はな。でも肩に乗せてる《アレ》。俺は見た事ないぞ...
キリト
- 肩に乗せてるのは生き物じゃないの?ペットシステムなんてSAOにあるのか分からないけど。
アスナ
- 見た感じ鳥っぽいよね...でも羽も尻尾もあるし...何だろう?
サチ
- ペット....まさか!
キリト
- キリトは件のプレイヤーの元へ走っていった。
サチ
- ちょっ!キリト君!?
アスナ
- そこの君!
キリト
- は、ハイッ!?
シリカ
- その肩に乗せてるのは...ひょっとして《テイム》したモンスターか?
キリト
- え、あ...はい。そうですけど...
シリカ
- テイムというのはSAOのシステムの1つであり、モンスターに特定の餌を与えると、与えたプレイヤーに懐いて共に行動できるようになるものだ。テイム自体成功確率が低い上、デスゲームと化したこの世界でモンスター相手に餌をやる事などするプレイヤーは居ないとキリトは思っていた。
シリカ
- あの...パーティーの誘いなら申し訳ないんですけど遠慮を...
シリカ
- あ、いや...そうじゃなくてだ。
キリト
- するとキリトは話しかけたプレイヤーの耳元で小声で話した。
キリト
- テイムに成功しているプレイヤーは俺が知る限りは君だけだ。色んな人から注目の的にされるかもしれないし...気をつけるんだぞ。今だって気付いてるかもしれないが、十数人のプレイヤーが君をガン見している。
キリト
- !
シリカ
- シリカは驚いていた。いきなり自分に駆け寄ってきた男性プレイヤー。何を言い出すのかと思えば自分への警告だった。こんな殺伐とした世界に他人に気を遣えるプレイヤーがいる事が自分にとっては驚きだったのだ。
キリト
- あの...ご忠告ありがとうございます。
シリカ
- その...あなたは?
シリカ
- 俺はキリト。攻略組だ。
キリト
- ちょい!キリト!何してんの!?
ユウキ
- ヤベーイ
キリト
- まーた女の子口説いてるの!?いい加減にしなさい!?
アスナ
- キリト...お友達作るの上手だね!
サチ
- サチさん!あなたは甘い!
アスナ
- アハハハハ...!
シリカ
- シリカは思わず笑ってしまった。こんなに賑やかな風景を見たのは久しぶり...この世界では初めてだからだ。
シリカ
- わたし、シリカって言います。よろしくお願いします。
シリカ
- そうか。生憎もう食事に行かなきゃいけないから長話はできないが...また機会があれば話そう!
キリト
- あ、ちなみにボクはユウキでこの栗色の髪をした可愛い人がアスナで、ショートヘアの大人しい雰囲気を出してるのがサチね!覚えておいてねー!
ユウキ
- じゃあねー。
サチ
- さぁ、キリト君?お説教よ。
アスナ
- 不幸だ...
キリト
- それ言う人違う気がする。
ユウキ
- 25層宿屋にて
ユウキ
- 夜食を食べてからサチと別れ、キリト・ユウキ・アスナの3人は宿屋でそれぞれ休んでいた。
ユウキ
- はぁ.....
キリト
- (考えたくないが..この世界じゃいつ別れが来てもおかしくないんだ...話すなら早いうちがいい。)
キリト
- (現在時刻は21時。応答してくれるだろうか。)
キリト
- キリトは話そうと思っていた人物にメッセージを送った。
キリト
- ん...?
ユウキ
- message
いきなりすまない。話したい事があるんだ。1人で宿屋の前に来てくれないか?
Kirito
ユウキ
- えっ...
ユウキ
- ん...どうしたの、ユウキ?
アスナ
- えーとね、アスナ?ボクちょっと夜風に当たってくるよ!
ユウキ
- あ、そう?どうぞごゆっくり。
アスナ
- 宿屋前
アスナ
- 来てくれたかユウキ。
キリト
- キリト、どうしたの?こんな夜に。
ユウキ
- ユウキに話しておきたい事があったんだ。
キリト
- ボクに?
ユウキ
- ユウキはキリトの言っている話したい事に相当する事をいくつか考えた。ギルドの事、最近加入したサチの事、25層攻略の事。だがわざわざこんな夜に自分1人を呼んでまで話す事ではないはずだ。
ユウキ
- ほら...25層で命を落とすプレイヤー...もとい、この世界で亡くなったプレイヤーも増えてきてしまっただろ?
キリト
- 信じてるけど...自分のギルドメンバーには、伝えられる事を伝えておきたくて...
キリト
- もし俺が..他のみんなが死んだ時に、伝えておきたい事を伝えられなかったら...後悔し続ける事になるって思って。
キリト
- (そう...サチみたいに。)
キリト
- ..........
ユウキ
- ユウキ。思えば俺達はこのデスゲームが始まった始まりの日から面識があったよな。あの頃は今みたいに同じギルドで肩を並べて戦うとは正直思ってなかったよ。
キリト
- そうだったね。何故か凄い昔の事みたいだよ、
ユウキ
- その後アスナと出会って...アルゴとも協力したりして...色々あったよね。
ユウキ
- (.....気になって付いてきたけど、2人は思い出を振り返ってるのかしら?)
アスナ
- なあユウキ...初めて会った日、君を半端無理やり攻略組に誘ってしまった感じだったけど...
キリト
- 後悔してないか?
キリト
- キリトはユウキにこの言葉を問いかけるべきだと思っていた。もし自分もユウキが出会っていなければ、ユウキはもっと安全にこの世界で暮らせていたのではないかと。
キリト
- してるわけ...ないでしょ。
ユウキ
- ボクは... 攻略組で戦えて、プレイヤーの役に立てて....何よりキリトに出会えて!本当に幸せだよ!
ユウキ
- ユウキ....!
キリト
- 終わらせたりしないよ!キリトもボクも、アスナも...他のみんなも!誰一人欠けさせずに100層をクリアしよう!
ユウキ
- あぁ....その言葉が聞けてよかった。
キリト
- 俺も言わせてくれ...ユウキに、仲間に、攻略組のみんなに出会えてよかった!
キリト
- キリトとユウキの間にはこの世界で出会った最初の頃よりも穏やかな雰囲気が流れていた。これまで死線を共にした者同士だからこそ得られる信頼の賜物だろう。
キリト
- 他のギルドメンバーにはこの事話さないの?
ユウキ
- 明日話す予定だ。なんなら、ユウキも一緒に来ていいぞ?
キリト
- いや、これは一対一で言うべきだと思うよ?
ユウキ
- なら、そうするか。
キリト
- じゃあこれで話終わりだ。もう寝るか。
キリト
- そうだね!よし、気合入ったよ!明日には迷宮区見つける勢いで行こう!
ユウキ
- おっ、言ったな!?何ならボス部屋まで見つけちゃうか!?
キリト
- 互いに意気込みを語った後、2人はそれぞれの部屋に戻った。
キリト
- ただいまーアスナ!ごめんね、遅くなっちゃって!
ユウキ
- うん...お帰り。夜風は気持ちよかった?
アスナ
- も、もちろんだよ!アスナも明日やってみれば?
ユウキ
- うん...そうするわね。
アスナ
- アスナの声はなぜか活気が失せ、顔色もあまり良くはなかった。
ユウキ
- ....アスナ?どうしたの?
ユウキ
- ごめんユウキ....私もう眠いのかも。もう寝るわね。
アスナ
- あ、ボクも寝る!
ユウキ
- 2人はそれぞれのベッドで布団をかぶって明日に備えて眠りについた。....が、1人は寝付けずにいた。
ユウキ
- (気付いてないのね....2人とも。)
アスナ
- アスナは後悔していた。興味本位でも2人の会話を盗み聞きするものでは無かったと。その結果、気付きたくもない事に気付いてしまったのだから。
アスナ
- (ユウキ....キリト君...2人は互いに出会えて幸せだとだったんだよね。)
アスナ
- (それってどういう事か...少し考えたら分かるよね?)
アスナ
- 恐らくキリトもユウキも先ほどの会話の本質に迫っていない。2人は自分の気持ちを正直に話しただけなのかもしれないが、きっとそれだけではない。アスナは確信していた。あの2人が....
アスナ
- 知らずの内に惹かれあっていた事に。
アスナ
- (こんな事知っちゃったら...あの2人に対してどう接すればいいのかな。)
アスナ
- お互いに気づいていない今なら今まで通り仲間として接すれば問題ないだろう。だが2人が気付いてしまった時、取り残された自分はどうなるのだろうか。あの2人の事だ。自分を蚊帳の外にしたりはしないだろう。が...アスナには確かな不安があったのだ。
アスナ
- 翌朝...
アスナ
- おっはよー!さぁ、今日も攻略ガンガン行こう!
ユウキ
- 迷宮区まで突っ走るぞ!
キリト
- 今日は朝っぱらから随分と元気だな。
エギル
- それに比べてこちらは...
ノーチラス
- ....zzzz.....zzz
アスナ
- アスナさん?大丈夫?
ユナ
- ハアッ‼︎....大丈夫。
アスナ
- (考え事してたら全然寝れなかった...)
アスナ
- 珍しいな。アスナが朝からこんなに疲れてるなんて。
キリト
- 普段は違うの?
サチ
- あぁ。
キリト
- アスナは普段から規則正しい生活を心がけているため、朝にどっと疲れている事など一度たりとも無かった。故にこうしてアスナが朝から疲労が出ているのがキリトにはとても気がかりだったのだ。
キリト
- アスナ?キツいなら休んでていいぞ?
キリト
- 平気よ...ちょっとぼーっとしてただけ。
アスナ
- そんなはずないとキリトは言おうとしたが、アスナは意外と頑固な性格のため自分から何言ったところで無駄だろう。本人の意思を汲み取ってやったほうがいいのだ。
キリト
- オーケー。じゃ、攻略に行くぞ!
キリト
- おぉー!と、ギルドメンバー全員が応えてくれた。
キリト
- 午後1時 25層フィールド
キリト
- この層も大分奥まで進んできたな...フィールドもかなり散策したはずだし...もうすぐ迷宮区が見えてもいい頃なんだが...
キリト
- 難易度が高い層らしいですし、単純に今までのマップより広いのでは?
ノーチラス
- 俺もそう思ったんだが...それにしたって迷宮区の一部すら見えてこないのは少し妙だな...
キリト
- ねぇキリト?あの山の裏...何か見えない?
サチ
- 山..?
キリト
- キリトは目を凝らしてサチの見ている方向にある山を見つめる。が、見れど見れどそこには山以外存在していない。
キリト
- ごめんサチ...何も見えない。
キリト
- でも言われてみるとあの山の頂上にかすかに黒い影があるような無いような...
ユウキ
- 多分だけど...あの上にあるのが...
サチ
- ご名答!迷宮区ダ!お嬢ちゃん目が凄く良いんだナ!
アルゴ
- お帰りはあちらです情報屋さん。
キリト
- 辛辣!
アルゴ
- アルゴさん!相変わらず出てくるの唐突ですね...
アスナ
- そんな事はどうでもいいんダ!それよりもそこのお嬢ちゃんが言った通リ、あの山の裏側にあるのがみなさんお探しの迷宮区ダ。
アルゴ
- あの山って...めっちゃ遠くじゃね?
キリト
- その通りダ。なんとびっくり、この層の迷宮区はフィールドの最奥にある山の頂上に存在していル。
アルゴ
- ええ....
キリト
- 随分と面倒くさいな。迷宮区に行くためには山登りしろってのか?
ノーチラス
- さらに迷宮区に着いてからボス部屋探し...やはり一筋縄ではいかない層だな。
エギル
- てかアルゴ。お前何でここにいる?
キリト
- 簡単ダ。迷宮区が見つからなくて迷ってる子羊達ヲ、無償で助けてやろうとしてたんダ。
アルゴ
- で、適当に攻略組を探してたらキー坊達に会ったって訳ダ。
アルゴ
- じゃあ俺らはあの山に向かわなきゃな。...にしてもサチ。君は目がとても良いんだな。俺なんか全然分からなかったぞ?
キリト
- 私もびっくりしてる...
サチ
- これはサチの才能じゃない?
ユナ
- 遠くまで隅々を見渡せるなら、ボス戦でも役に立つわよ。
アスナ
- 確かに...何のスキル補正もなしでここからかなり遠い山の奥が見えるとは...天才カ?
アルゴ
- 俺も気になるけどその話は後だ。とりあえず迷宮区...というより山に向かうぞ。
キリト
- はーい!
ユウキ
- アルゴと別れ、一行は山に向かった。が、そこから先は地獄だった。モンスターとの戦闘がではなく山の道の長さだ。迷宮区が設立されている山は見た目ほど単純な道のりではなく、現実の山のように階段やら橋やらが設備されてもいなかったので、不安定な足場を歩く羽目になったのだ。幸いモンスターこそ大して居なかったが、一歩踏み外せば落下ダメージで死亡というのも十分あり得た。
ユウキ
- エギルが山登りの経験があり、彼の指示のおかげで安全に進めたが、他のメンバーは山登りなどしてこともなかったため、あたふたしていた。
ユウキ
- 結果的に約3時間半の山登りの末、迷宮区の入り口に辿り着いたのだった。
ユウキ
- ハァ...ハァ...運動音痴?
キリト
- 取り消せよ...今の言葉!
キリト
- 誰も言ってないわよ。
アスナ
- いやぁ...疲れたね。
ユウキ
- この迷宮区に来るたびにこの山登らなきゃいけないのか...?
ノーチラス
- それは...キツいね。
サチ
- あれ...?あそこに居るのって..
ユナ
- .......
ヒースクリフ
- おや。キリト君のギルドか。
ヒースクリフ
- そこに居たのは攻略組トッププレイヤーの1人、ヒースクリフだった。
ヒースクリフ
- ゲッ!ヒースクリフ...
キリト
- ボス戦以外では初めて会いますね。ヒースクリフさん。
アスナ
- 1人で攻略?
ユウキ
- 正確には違う。私の他のパーティーにはボス戦に向けての情報収集とアイテム補充を頼んでいてね。その間に私は迷宮区攻略を進めようとしていたのだよ。
ヒースクリフ
- 余程自信があるのか?1人で攻略は危険だぞ。
エギル
- この25層はたくさんの犠牲者が出てるって聞きました。あまり無茶しない方が...
サチ
- ん...?
ヒースクリフ
- あまり見ない顔だが、君は?
ヒースクリフ
- 彼女はサチだ。訳あってこの間から俺のギルドに所属している。
キリト
- なるほど...戦力が増えるのは良いことだ。
ヒースクリフ
- それよりも、本当に1人で行くんですか?
ユナ
- なんなら、僕達と一緒に行った方がいいと思うが。
ノーチラス
- あ、それいいわね。
アスナ
- え
キリト
- いいじゃん!ヒースクリフだって強いけど万が一があるかもしれないんだよ?
ユウキ
- キリト...ダメかな?
サチ
- キリトは少し考えた。基本的に自分はヒースクリフという人物にあまり好意的ではないからだ。別に信用してない訳ではないしむしろ戦闘面においては頼れる存在だろう。だがヒースクリフの底知れぬ強さに何かただならぬ裏を考えてしまい、あまり親しくできないのだ。
キリト
- もし自分が1人で攻略していてヒースクリフとコンビを組めと言われたら十中八九断っているが、今はギルドで行動している。人数が増えれば安全は増すだろうし、何よりサチはレベルが一定以上あるとはいえまだ戦闘慣れしていない。万が一を考えてサチのためにもヒースクリフと行動するのは合理的だろう。
キリト
- 分かった...ヒースクリフ、迷宮区は俺たちと組もう。
キリト
- ただし、お前にはサチの援護に回ってもらう。
キリト
- ほう、良いのかね?
ヒースクリフ
- 何度も言わせないでくれ。行くぞ。
キリト
- こうして黒紫の剣豪団 ヒースクリフの迷宮区攻略が始まった...
キリト
- To be continued...
ユウキ