ソードアート・オンライン 黒紫の英雄譚 第27話
第10層も決戦前夜に突入です。キリト達は果たしてこの層を生き残り、突破できるのか。
- アインクラッド第10層が解放されて今日で10日が経過した。迷宮区こそ発見されたものの、ボス部屋に辿り着く前に攻略メンバー8名が死亡。現在最前線で戦っているプレイヤーは30名。第1層の時とほとんど同じ数になってしまった。
????
- 全く...迷宮区まで蛇だらけだな。
キリト
- もう...嫌だ....蛇...無理....
アスナ
- アスナ...?無理なら帰っていいのに。
ユウキ
- それはもっと嫌!少しでもサボったらキリト君とユウキに置いていかれるもの!
アスナ
- 確かにキー坊はレベル上げ効率が頭おかしいからナ。1日でもサボればレベル差をつけられるゾ。
アルゴ
- しかし、これだけメンバーが居るといつもより安定するな。いっそアルゴも一緒に攻略しないか?
キリト
- あ、それいいね!情報屋さんと一緒なら心強いかも!
ユウキ
- 残念だが組むのはこの層までだナ。もうすぐで金もある程度貯まるシ。
アルゴ
- そっか...少し残念。
ユウキ
- ところでキリト君?ボス部屋はまだ見つからないの?もうこの迷宮区攻略してから4日だよ?
アスナ
- 正直そろそろ見えてきてもいい頃だが...
キリト
- まぁ、もう少し進めば見つかるんじゃないカ?
アルゴ
- あぁ。今は進むしかない。ボスの偵察も行わなきゃいけないし。
キリト
- キリト達は滅入る事を考えずに前に進む事にした。この層は最初から難易度が高いが一々こんな事を考えていたら、残り90層に立ち向かう事など不可能だろう。
????
- 進む事40分
????
- ......なんだか敵の数が減ってきたね。
ユウキ
- 俺達がモブを討伐しまくったからこの辺のリソースが薄くなってるのか...?
キリト
- いや....多分これは恐らク...
アルゴ
- ボスの部屋が近いんじゃない?今までもボス部屋周辺にはモンスターは大して居なかったじゃない。
アスナ
- でも見渡した感じ周囲にあるのは壁だ....
キリト
- 確かに行き止まりだね。ボス部屋って迷宮区の最奥にあるんじゃないの?
ユウキ
- ボス部屋が迷宮区の1番奥に無いなんて初めてだゾ....
アルゴ
- どこかで見落としたのか...?それともボス部屋を解放するためのキークエストがあるのか?
キリト
- じゃあ、現時点ではボス部屋に入れないの?
アスナ
- もう少し散策しないカ?何からしら仕掛けがあるはズ....
アルゴ
- アルゴが言い終わる前に目を疑う光景があった。
アルゴ
- ボス部屋が本来ならあるらずのダンジョンの最奥の壁。そこには宝箱がポツンと置いてあったのだ。
アルゴ
- ....怪しいわね。
アスナ
- 間違いなくダミー宝箱だなこれは。
キリト
- これを開けたらボス部屋が解禁されるって可能性は?
ユウキ
- 五分五分ってとこだナ。リスクが高イ。
アルゴ
- 悔しいが...一旦主街区に戻るか。ボス部屋が見つからなかったって情報も攻略プレイヤー内で共有しなきゃいけないし。
キリト
- 残念だな....
ユウキ
- いいわよ、転移結晶で帰る?それとも徒歩?
アスナ
- 別に動けるなら徒歩の方がいい。転移結晶だって安くないんだ。
キリト
- そうね.....
アスナ
- .....みんな、ひとついい?
ユウキ
- どした?
キリト
- なんかさ....ボク達の体が光ってるんだけど。
ユウキ
- そう言われキリトはすぐに自分のアバターを見た。それは輝いてるわけではなく...
キリト
- (強制転移!?何かのイベントか..!?)
キリト
- (いや...ボスのいるダンジョンのこんな奥に強制転移のイベントがあるとは思えない...)
キリト
- なになに?何が起こるの!?
アスナ
- キー坊...まさかコレっテ....
アルゴ
- さっき言った事取り消し!俺達はこのままどこかに転移すると思うが、俺が指示したらすぐに転移結晶を使って街に飛べ!
キリト
- 了解!
ユウキ
- ユウキの合図を最後にキリト達はどこかへ転移させられた。
ユウキ
- .......どこだここは。
キリト
- とてつもない広さ....円状のフィールド....
アスナ
- これってまさか....
ユウキ
- あァ。
アルゴ
- ボス戦だナ。
アルゴ
- その刹那、ステージ中央に一体モンスターが降ってきた。ただのモンスターにしてはデカすぎる。そして気迫もそこら辺のモブとは大違い....
アルゴ
- キリト君!
アスナ
- ヤバいな.....ドアを開ける系のボス戦じゃなくて、特定の位置に行くとボス部屋まで転移するタイプか!実際に体験するとすごいなこれ!
キリト
- 何ゲーマー魂爆発させてるの!?早く指示を!
ユウキ
- キー坊!アイツが本当にフロアボスなラ、オレっち達じゃ絶対に勝てなイ!今すぐ撤退した方ガ...
アルゴ
- 嫌、もうこの層に留まるのもやめだ!出来るだけ情報を集めてから撤退するぞ‼︎
キリト
- 大丈夫なの!?4人で!
ユウキ
- 危険すぎるわよ!
アスナ
- 問題ない‼︎
キリト
- 俺達は恐らく他のどのプレイヤーよりも強さを着実に上げてる。つまり、俺達が先行してボス情報を集めた方がきっと早い‼︎
キリト
- でも..!
アスナ
- 生憎だがナ、アーちゃん?もうお相手さんも待ってはくれなさそうだゾ?
アルゴ
- アルゴの言う通り、フロアボスはキリト達目掛けてつっこんできた。
アルゴ
- 戦闘態勢!回避のタイミングは俺が指示する!
キリト
- おっけー!任したよキリト!
ユウキ
- あーもう!ヤケクソにやってやるわよ!
アスナ
- さて、まずはボスの名前...
キリト
- 《Kagachi the Samurai Lord》
????
- なんて読むの?
キリト
- キリト君!?基礎英語読めない人!?
アスナ
- いや違う、読める!が、正しいか分からないんだ!
キリト
- あぁ、もう!いいわ私が名前読む!
アスナ
- えーと....《カガチ・ザ・サムライロード》ね。変な名前。
アスナ
- 侍?だから剣持ってるの?
ユウキ
- まず攻撃パターンの解析ダ。みんな気を付けろヨ!
アルゴ
- ボスは刀を構えると猛スピードで突進してくる。繰り出さられるその剣技は、まさしく侍のようだ。
アルゴ
- 早スギィ!
キリト
- ちょっ、これ、防御間に合わない..
ユウキ
- 言い終わる前にキリト達4人はボスの高速剣技に圧倒され、1人ずつ吹っ飛ばされてしまった。
ユウキ
- 何あれ..?早すぎない!?
アスナ
- こりゃタンクに受け止めてもらうしかなさそうだナ!
アルゴ
- しかしボスは攻撃の手を緩めない。尻尾から生えた白い蛇が突然伸び、キリト達に襲いかかる。
アルゴ
- うわ、でかいでかいでかい!みんな緊急回避!
キリト
- 幸い誰にも当たりはしなかったものの、地面に蛇が激突した時の轟音と衝撃は凄まじいものだ。擦ればどうなるか分かったものではない。
キリト
- ふぅ....今の所攻撃が早いだけで大した事はな...
キリト
- そう言ったキリトだが、直ちに発言を脳内で訂正した。なぜならボスは他のメンバーには見向きもせずに自分に特攻してきたのだ。
キリト
- ちょっ!?それはないだろ!
キリト
- キリトは避けて避けて反撃のパリィを挟んだ。ボスが体制を崩し、その隙にキリトは退避する。
キリト
- クソ...侍だから一対一がお好みなのか?悪いがボスモンスターと一人でやれるわけが...
キリト
- キリト君!ボスこっちに来るよ!
アスナ
- 次は4人でやろう!
ユウキ
- キー坊にばっか負担かかっちまうからナ!
アルゴ
- おう!背中任せた!
キリト
- が、現実は非常なものである。ボスの狙いはあくまでキリト。他の3人には全く興味を示さない。
キリト
- 何でだよ!何でまたこっちに来るんだよ!
キリト
- キー坊!大丈夫カ!?
アルゴ
- 同情するなら助けてくれ!
キリト
- キリト、大変だとは思うけどボク達は出来る限りボス情報を集めないと!
ユウキ
- 今見た感じの行動パターンじゃボス戦には厳しいと思うけど。
アスナ
- あの、あなた達は鬼ですか?情報を集める前に俺が死にそうなんだよ!?
キリト
- 私達だってキリト君からボスを引き剥がそうとしてるのよ?でもボスのタゲがキリト君に向いてばかりなの。
アスナ
- 何でこうなるんだよ!死ぬ!死んじゃう!
キリト
- でも、キリトなんだかんだ言いながら攻撃受け流してるよね?
ユウキ
- もうキリトがいっそのことソロで倒すのはどう?
ユウキ
- クソ!俺の味方はどこにもいないのか!?
キリト
- あー...キー坊。何となく分かった気がするゾ、ボスの攻撃パターン。
アルゴ
- マジでか!もう役目放棄して良い?転移結晶で帰って良い?
キリト
- てか、早くしないと流石の俺も死ぬ!
キリト
- おっけーダ!転移するゾ!
アルゴ
- アルゴの合図でキリト達は転移結晶を使い、第10層の主街区に転移した。
アルゴ
- ふぅ...大苦戦の第10層も終わりが見えてきたね。
ユウキ
- これも私達が強くなり始めた証拠よ!
アスナ
- これから各地を攻略してるメンバーを招集して攻略会議だナ!
アルゴ
- ハァ...ハァ...攻略会議?
キリト
- 少し...休ませて...チーン
キリト
- キリトーーーー‼︎
ユウキ
- 死んだカ。(無慈悲』
アルゴ
- いや、HP普通にあるし疲れたんじゃない?
アスナ
- 今は14時だから...18時くらいに攻略会議にする?
ユウキ
- そうだナ。オレっちもキー坊程ではないが疲れタ。
アルゴ
- キリト君?起きてる...?
アスナ
- 宿屋に戻るよー。
アスナ
- ..................
キリト
- 返事がなイ。ただの屍のようダ。
アルゴ
- 4時間後....
アルゴ
- よく集まってくれたみんな。今日は第10層ボス攻略会議を始めたいと思う。
キリト
- キリトォ....お前顔が死んでるぞ?
エギル
- ついに過酷なゲームスタイルに限界を感じたのか?
クライン=おっさん
- 違う。一定時間フロアボスボスとソロでやりあう羽目になっただけだ...
キリト
- おやおや、リーダーともなると情報収集のためにフロアボスとタイマン張るんですか?
ノーチラス
- んな訳ないだろ!
キリト
- キリトさん...よく生きてましたね。
モブプレイヤー
- さすが俺らのリーダー!
モブプレイヤー
- で?ボスの情報はどんな感じなんだ?
エギル
- それについてはアルゴから話してもらう。
キリト
- おっす、オレっちの出番だナ。
アルゴ
- 情報屋が口頭でボス情報を伝えるなんてレアだな!
モブプレイヤー
- ボスの名前は《カガチ・ザ・サムライロード》。名前の通り侍を模したモンスターで武器は刀ダ。
アルゴ
- 初手で高速切り刻みを行ってくるかラ、前衛にタンクをある程度配置しないとキツイ。
アルゴ
- その後は剣を叩きつけたリ、尻尾から生えている巨大な蛇を素早くしならせて攻撃してくル...
アルゴ
- おまけに剣の当たり判定がやたら広いからある程度距離を取らないと危険ダ。
アルゴ
- おいおい、今までのフロアボスと比べて随分盛り沢山だな。
クライン=おっさん
- 実際に攻撃受けたから分かるけど、威力も今までとは桁違いだよ。
ユウキ
- 1発たりとも無駄に受けたくはない。回避と防御をしっかりしていくのが重要になる。
キリト
- さっきも言った通り、タンクがそこそこの人数が欲しいんだけど...
キリト
- タンク....居ましたっけ?
モブプレイヤー
- 俺がいるぜ。
エギル
- ............
エギル
- ...他は?
キリト
- .....
ノーチラス
- ......
モブプレイヤー
- ......
モブプレイヤー
- うん...そんな気はしてた。
アスナ
- やっぱり...こうなるよな。
キリト
- 実は...前から懸念してた事があるんだ。
キリト
- 何?
ユウキ
- .......
アルゴ
- 俺達攻略メンバーは...このままだと圧倒的に数が足りない。
キリト
- これから先、100層に到達するまでに今の攻略メンバーの数倍は人数が居ないと、今回みたいに一部の役割が不足してしまう事があるんだ。
キリト
- そもそもボス戦は最大48人のレイド式なのに...いつも参加するメンバーは40人にも満たない。
キリト
- もう一つ言うなラ、今の攻略メンバーにはギルドが明らかに少ないナ。
アルゴ
- ギルドを作っておけバ、メンバー内である程度統制が取れるシ、人数を増やす事で死亡件数を大幅に減らせるはずダ。
アルゴ
- ....今回のボス攻略はどうなるんだ?
モブプレイヤー
- このまま新しいタンクを待つより、今居るメンバーで最善を尽くした方が良いと僕は思いますが。
ノーチラス
- キリトは...どう思う?
ユウキ
- 俺もノーチラスと同意見だ。タンクは実質エギルのみだが、パリィやスイッチでボスの攻撃をキャンセルすれば、タンクが少なくても何とかなる。それについては俺が現地で指示する。
キリト
- 今回集まったのは30名。正直みんな不安だと思う。でも俺達はどんな壁だって乗り越えて来た。今回も俺は勝てると信じている。
キリト
- ついて来てくれるか?
キリト
- もっちろん!この世界をクリアする時までボクはキリトに付いて行くよ!
ユウキ
- 私も同意見よ。ここまで一緒に来たんだもの。あなたとならどこにだって付いて行く。
アスナ
- 人数が少ないのが何だ!俺たちなら勝てるさ!
モブプレイヤー
- ボスに泣きっ面させてやろうぜ!
モブプレイヤー
- もうそこそこの付き合いだしな。ある程度の無茶にも付き合ってやるよ。
ノーチラス
- 素直じゃねえな。
クライン=おっさん
- よし...!明日、第10層迷宮区前に1時に集合!
キリト
- 全員、今日中に装備を万全にしておけ!
キリト
- 了解‼︎
モブプレイヤー
- こうしてキリト達攻略プレイヤーはいつもの様に決戦前の下準備に入った。
モブプレイヤー
- ギルド....ギルドか。
キリト
- キリト御一行は宿屋に戻ろうとしていた。が、キリトは会議が終わってからブツブツ何かを唱えていた。
キリト
- どしたのキリト?
ユウキ
- いや、俺はギルドを作ろうと思った事無かったから特に気にして無かったけど、そういうのあったほうがやっぱりゲーム攻略としては安定するのかなと思ったんだ。
キリト
- 確かに安定はするかもナ。が、どっちにしろ今の攻略メンバーの人数じゃ意味ないけどナ。
アルゴ
- ....じゃあさ、キリト君が作れば?ギルド。
アスナ
- キリト君がリーダーのギルドなら、入る人多いんじゃない?
アスナ
- .....
キリト
- キリトはギルドに関しては苦悩し続けていた。前にエギルにも似たような事聞かれたが、その時は上手い具合に誤魔化してしまった。あの時はここまで攻略人数が過疎るとは思っていなかったが...第10層の時点で最前線にギルドが1つも無いのはあまりにも心許ない。ギルドの少なさは、もう無視できない問題だ。
キリト
- (アスナの言う通り...俺が作るか?)
キリト
- リーダーという役目を背負ったキリトに、一つの決断が迫られていた。
キリト
- To be continued...
キリト