ソードアート・オンライン 黒紫の英雄譚 第20話
第5層完結。アスナに迫る危機とは..?
- 2022年12月24日。今日、第5層ボス攻略が行われる。
キリト
- 第5層 迷宮区前
キリト
- いよいよだ。いつも通り落ち着いて戦おう。いざとなったら転移結晶で逃げてもいい。絶対に死なないでくれ。
キリト
- おー!
ユナ
- 誰がこんな低層で死んでやるか。
ノーチラス
- その通り!ボクは逃げないからね!最後までキリトと一緒に戦うよ!
ユウキ
- 私も同じ。あなたを置いて逃げたりしないわ。
アスナ
- いやー好かれてますねリーダー!
モブプレイヤー
- 羨ましいなぁ!もう!
モブプレイヤー
- 俺達も最後までお供しますからね!
モブプレイヤー
- そもそもお前みたいな戦闘大好きマンをボス部屋に置いていけるかよ。
クライン=おっさん
- 全くだ。お前をボス部屋に置いてきたら、どんな無茶やらかすか分かったもんじゃないからな。
エギル
- ここにいる奴は全員、戦いの終わるその時までお前と共に在るさ。
エギル
- 全く...言う事聞かない奴らだな。
キリト
- でも、ありがとな‼︎
キリト
- 今回も俺たちが勝つ‼︎みんな行くぞ!
キリト
- おおおおおおおおおおおおお‼︎
キリト
- 迷宮区内部
キリト
- へぇへぇなるほど。クラインは他のMMOゲームではギルドのトップ張ってたのか。
ノーチラス
- 応よ!ボス戦でのレイドバトルも何度もやった事あるぜ!そこまで足手まといにはならねぇから安心しとけ!
クライン=おっさん
- クラインさん!漢気溢れてますね!
モブプレイヤー
- リーダー!絶対に勝ちましょう!
モブプレイヤー
- (あそこにいるのはクラインのパーティの奴らか。)
キリト
- まぁ、程々に期待しとくよ。
ノーチラス
- ユウキ、聞いたよ?凄い武器手に入れたんだって?
ユナ
- うん...今は全然振れないけどね。
ユウキ
- すぐ振れるようになるわよ!元気出して!ボス戦頑張るわよ!
アスナ
- もちろん!絶対勝ってみせるよ!
ユウキ
- みんな...着いたぜ。
キリト
- ボス部屋前
キリト
- みんなに言うことはただ1つ。
キリト
- 絶対、死ぬなよ!勝つぞ!
キリト
- おぉー!
ユウキ
- うぉぉぉぉ!!!
モブプレイヤー
- よっしゃァァァァァァ!気合いだァ!
クライン=おっさん
- 行くぞ!
キリト
- キリトがボス部屋を開け、攻略メンバーが突撃する。
キリト
- その瞬間、暗かったボス部屋が明るくなり...
キリト
- あれがボスか。
エギル
- うぉっ情報通りゴーレムだな!色は黒で...目が赤。the・敵って感じだぜ!
クライン=おっさん
- いいかみんな!まずは敵の攻撃をしっかり見ろ!
キリト
- 了解!
モブプレイヤー
- ....!最初の攻撃、腕のなぎ払いくるぞ!
ノーチラス
- 後方に退避して!
アスナ
- アスナの指示で、全プレイヤーが退避する。
モブプレイヤー
- うぉぉ!動きは単調だけど見ただけでわかる!あれは喰らったらヤバい!
モブプレイヤー
- おいお前!赤いライン踏みそうだぞ!
クライン=おっさん
- え、俺?うわ本当だ!JUMP!
モブプレイヤー
- (あの赤いラインは何だ?攻撃予測線かと思ったがそうじゃない...)
キリト
- よし。
キリト
- みんな聞いてくれ!俺は次、あえてあの赤いラインを踏む!今から2分間は攻撃を中止して、防御に徹してくれ!
キリト
- り、了解!
ユウキ
- 大丈夫なのか!?無理はするな!
エギル
- このラインを踏むとどうなる!?
キリト
- すると、別のプレイヤーを攻撃中のはずのボスのタゲが、ラインを踏んだ自分に突然切り替わった。
キリト
- そして、ボスの攻撃をもろに喰らってしまった。防御はしたのにだ。
キリト
- (これがこのボスの攻撃の威力!?半端じゃない!)
キリト
- みんな!あの赤いラインを絶対に踏むな!踏むとボスのタゲが切り替わって踏んだプレイヤーに攻撃が飛んでくるぞ!
キリト
- その身をもって教えるとは、たまにはリーダーらしい事するんだな!相変わらず無茶苦茶だが!
ノーチラス
- あの攻撃力は痛そうだな。
エギル
- とりあえず、相手の隙にソードスキルを叩き込むの繰り返しよ!回避を怠らないで!
アスナ
- 了解!アスナさん!
モブプレイヤー
- いくぞテメェら!チキンプレイがなんぼのもんじゃいい!!
モブプレイヤー
- キリト君!HP大丈夫!?
アスナ
- 1発で3割減った。でも今ポーションで回復したから平気だ!
キリト
- おし、パリィ成功だ!みんな攻めろぉ!
クライン=おっさん
- くらえゴーレム‼︎分解してやるよぉ!
モブプレイヤー
- せやぁ!
ユウキ
- おい、HPゲージ一本削り終わるぞ!
エギル
- どうなる...!
ノーチラス
- ボスのHPゲージが一本削り終わると、ボスに異変が起きた。ボスのHPバーの横にアイコンが1つ出現したのだ。その内容は..,
ノーチラス
- 攻撃力UPだと!?
キリト
- 今でさえ危険な攻撃力がさらに上がるっていうの!?
ユウキ
- これは...まずいわね。
アスナ
- こんなものβテストの時には無かった!
キリト
- これが変更点か!
キリト
- 気を付けろ!ボスの火力が上がったぞ!
エギル
- 関係ない!倒すだけだ!
ノーチラス
- うん!負けないよ、絶対に!
ユナ
- それから10分が経過した。攻撃力が上がったとところで攻撃範囲は大して変わらず、回避して攻撃を繰り返す事で順調にHPを減らせた。
ユナ
- だが、最後のHPバーになる時に、優勢は崩れる。
ユナ
- ハァ...ハァ...
キリト
- (ボスのHPゲージの4本の内3本を削ったが、その度に攻撃力UPバフがボスに入り、今のボスは攻撃力が3段階上昇してる状態だ。攻撃を喰らえばほぼ間違いなく即死...)
キリト
- みんな!最後のゲージだ!油断するなよ!
キリト
- ....ちょっと待て!ボスの様子がおかしいぞ?
エギル
- ゲージが最後の1本になると、急にボスが大きく雄叫びを上げた。その瞬間、近くにいたエギル目掛けて飛んで行ったのだ。
エギル
- ぐぉぉぉっ!
エギル
- エギル‼︎
ノーチラス
- 大丈夫!?
ユウキ
- エギルさん!
アスナ
- 馬鹿な...ゴーレムがあんな速度で動くなんてあり得ない!
キリト
- あ...あ...
モブプレイヤー
- んなの有りかよ...
モブプレイヤー
- ヤバいよエーくん。攻撃力が上がってるのにあんな速度でこっちに来られたら...!
ユナ
- 不意を突かれれば即死だ!
ノーチラス
- クソ!HPゲージが6割持ってかれた!すまない、回復させてもらう!
エギル
- (タンクであるエギルが6割のダメージ!?)
キリト
- これってさ、やばくない?攻撃力3段階上昇に加えて猛スピードで突進してくるボス...
ユウキ
- みんなが対応しきれてないよ!
ユウキ
- おいおい、こりゃ近づいたらヤベェぞ!しかも赤いラインはまだ出てるし!
クライン=おっさん
- キリト!対応し切れてない人を助けなきゃ!死んじゃうよ!
ユウキ
- ユウキ、半分任せていいか?
キリト
- もちろん!絶対に助けるから!
ユウキ
- 待ってろ、今行く‼︎
キリト
- すまないキリトさん...
モブプレイヤー
- 無理するな。下がってろ!
キリト
- 大丈夫!?動けるなら出来るだけ遠くに回避して!
ユウキ
- すまない...足を引っ張ってしまった。
モブプレイヤー
- わ、私も...
アスナ
- うわァァァァァァ!!
モブプレイヤー
- ...!(距離的に間に合わない!早くしないと、助けないと、あの人は死んでしまう!)
キリト
- くそッ!諦めるな、間に合え間に合え間に合えッ!
キリト
- (何も...出来ない。)
アスナ
- (キリト君とユウキも...みんな必死に戦ってるのに、私は!)
アスナ
- (この世界と戦うと決めたのに!逃げないって誓ったのに!)
アスナ
- (...私は!)
アスナ
- (あの人を助けようとすれば、キリト君も危ない。あの人も、キリト君も助ける方法は...!)
アスナ
- この時、アスナの中では1つの案が思いついていた。実行すれば、キリトとキリトが助けようとしたプレイヤーは守れる。代わりに自分が命の危機に瀕するが。
アスナ
- (それでも...決めた。)
アスナ
- (...信じてるよ。キリト君..ユウキ..みんな!)
アスナ
- ...!?
キリト
- そうするとアスナはあえて赤いラインを踏んだ。
アスナ
- その刹那、ゴーレムの攻撃対象がアスナに切り替わり、襲いかかる。
アスナ
- 馬鹿野郎!
ノーチラス
- そうしてアスナにゴーレムの攻撃が直撃する。武器防御も容易く貫通して。
アスナ
- アスナはそのまま、ボス部屋の端まで吹き飛ばされた。
アスナ
- アスナーーーーーッ!!!!!
キリト
- キリト!後ろだ!回避しろ!
エギル
- くそッ!
キリト
- アスナさんは私たちが!キリトはボスをお願い!
ユナ
- .......
ユウキ
- (落ち着け..!態勢を立て直すんだ!)
キリト
- キリトさん!指示を!
モブプレイヤー
- .....俺が、相手をパリィさせる。その隙にソードスキルを打ち込め。
キリト
- パリィ!?あの高速で動くゴーレムを!?
モブプレイヤー
- それくらいしなきゃ勝てない。命の1つくらい懸けなきゃ、アレは倒せない!
キリト
- ボクも同感だよ、キリト。
ユウキ
- この世界で敵にここまで怒りが沸いたのは初めてだよ。
ユウキ
- 安心しろユウキ。...俺もだ‼︎
キリト
- わかりました。俺たちも2人に続きます!
モブプレイヤー
- 行くぞ...!!!
キリト
- せやぁぁぁぁ!!
ユウキ
- (確かにボスの動きは早い。けどね、アスナを傷つけた罪は....重いよ‼︎)
ユウキ
- (俺の大切な仲間...友達...それに手を出すなら、例え設定されたプログラムの存在でも容赦しない!)
キリト
- ここだ!
キリト
- パリィ成功だねキリト!
ユウキ
- 今だぁぁぁ!動けるやつ全員でかかれぇぇ!
キリト
- うぉぉぉぉ!!!
モブプレイヤー
- ユナ、アスナを任せたぞ!
ノーチラス
- うぉぉぉぉ!!!
ノーチラス
- てりやあぁぁぁ!
クライン=おっさん
- 絶対に、ここで倒す‼︎
ユウキ
- 喰らえ!俺達の剣を‼︎攻略プレイヤーの、意志の刃を!!
キリト
- ボスへの総攻撃、もし再びボスが動けば今近くにいるプレイヤー全員が即死圏内だっただろう。が、ボスが再び刃を剥く事はなかった。
キリト
- これで止めだぁぁ!!!
キリト
- その言その言葉と共にボスはポリゴンの欠片となり果て、この世界に散った。
キリト
- た、倒した!
ノーチラス
- やったのか!?
クライン=おっさん
- Congratulations!
モブプレイヤー
- この文字が出たって事は!俺達の勝ちだぞ!
モブプレイヤー
- うぉぉぉぉ!!!やった!俺達の勝ちだ!
モブプレイヤー
- ....アスナは?
エギル
- 勝利に浸っていた者達の歓声も、その一言で消えた。
エギル
- .......
アスナ
- HPは全損してないわ。でも、目を覚さないの...
ユナ
- アスナ!嘘だよね!?こんな所で居なくならないでよ、アスナぁぁぁ!
ユウキ
- ......クソッ!
ノーチラス
- アスナ!しっかりしろアスナ!君はこの世界と闘うんじゃなかったのか!?こんな所で終わるようなプレイヤーじゃない!君は...君は!
キリト
- ............
キリト
- ............
キリト
- ............
キリト
- (暗い...)
アスナ
- (さすがに無茶だったかな。)
アスナ
- (私はここで...終わるんだね。)
アスナ
- キリト君と..ユウキならこの世界を終わらせられる。
アスナ
- それに私は....生きて帰ったところで、また待ってるのは残酷な現実世界だけ。
アスナ
- だったら...誰かのために...命を...
アスナ
- ....
アスナ
- ...スナ! アスナ!
キリト
- 聞き覚えのある声。自分を導いてくれた、共に戦ってくれた、大切な仲間の声。
ユウキ
- そう....あなたは手放さないんだね。1人たりとも。
アスナ
- 本当に....変なの。
アスナ
- キリト達が5分ほど呼びかけると、アスナは目を覚ました。
アスナ
- アスナ.....!
キリト
- うっ...うわぁぁぁぁぁん!
ユウキ
- 良かった、目が覚めたのね!
ユナ
- 冷や冷やしましたよ...
ノーチラス
- 全く...此処に居るみんなが心配してたぜ?
エギル
- さすがアスナさんだ!あんたは強い!
モブプレイヤー
- 生きて帰ってくると信じてましたよ!
モブプレイヤー
- 話せるか?
キリト
- ....うん。
アスナ
- どうして、あんな無茶したんだ。一歩間違えれば死んでいたんだぞ...
キリト
- キリト君だってそうじゃない。あなた他の人を助けようとすると自分を顧みないし...
アスナ
- 確かにね....
ユウキ
- それでも俺は...アスナもユウキも、この世界ではもう誰一人死んで欲しくないんだ。
キリト
- 君は優しすぎだよ....
アスナ
- でも、最近はそんな君の優しさも....嫌いじゃないかな?
アスナ
- そう言うとアスナは、キリトに抱きついてきた。
アスナ
- !?
キリト
- !?!?!!?
ユウキ
- チーン
クライン=おっさん
- わぁ///
ユナ
- これは荒れますね...
ノーチラス
- ごめんキリト君...少しだけこうしてていい?
アスナ
- あっ.....ごゆっくり。
キリト
- キリトー!ニヤけるなぁぁ!
ユウキ
- に、ニヤけてないしから!みんなが無事だってから嬉しかっただけだから!
キリト
- 本当にーー!?
ユウキ
- するとキリトとユウキはいつも通り微笑ましい言い合いを始めてしまった。
ユウキ
- (私が命を投げ出しても、その度にキリト君は私の所へ飛び込んでくる。あーあ...死ぬ覚悟したのに恥ずかしいなぁ〜。)
アスナ
- (本当に恥ずかしいなぁ...仮想世界なのに体熱くなってきちゃったよ。)
アスナ
- (....今なら聞いてもいいよね。)
アスナ
- ねえ、キリト君。
アスナ
- 私の事、仲間として好き?
アスナ
- ...当たり前だよ。
キリト
- ありがと。
アスナ
- こうして攻略プレイヤー全員はボス部屋を突破し、第6層に到達した。
アスナ
- 第5層突破!祝☆勝☆会!!
モブプレイヤー
- イェェェェェイ‼︎
モブプレイヤー
- よっ、お疲れー!
クライン=おっさん
- おう、始めてなのによく動いてたと思うぜ?使う武器が刀で珍しいから心配してたんだけどな。
エギル
- さすがMMO経験者...ボス戦での臨機応変は素直に凄かったぞ。
ノーチラス
- よっ、今回も生き残ったな。
キリト
- あらら、女を侍らせる剣士殿。こちらには如何様で?
ノーチラス
- それはお前が言える事か...?
キリト
- 全くだぜ!キリトもノーチラスも!あんな可愛い子連れてるなんて...羨ましすぎるぞチクショー!
クライン=おっさん
- クラインさん!アンタは仲間だ!いま確信した!
モブプレイヤー
- もう俺達に壁なんて存在しねぇ!今日は飲み明かそうぜ!
モブプレイヤー
- テメェら....!おう!飲みまくるぜ!!
クライン=おっさん
- コイツは明日、攻略で使い物にならないくらい酔うな。
エギル
- はぁ....
キリト
- しかしキリト。アスナさんに注意した方がいいぞ。
ノーチラス
- お前アスナには敬語なのか。
エギル
- 今回でわかった。彼女からはゲームクリアを優先しすぎるあまり、自分の身を確立できてない節がある。ユウキもそうだが、彼女達の精神面の補助もしてやらないと、いつか潰れるぞ。...もちろんお前もな。
ノーチラス
- それについては同感だよ。俺達を導いてくれてるのはありがたいが、たまには前線を離れてのんびりするのも悪くねえと思うぜ?
エギル
- この間3人で1日買い物とかしたりしたから平気だ。
キリト
- お前はそれでいいと思うが、彼女達が同じという証拠はどこにある?
ノーチラス
- キリト。何も全てを背負うのがリーダーじゃないぞ。リーダーを支える者があってこそお前が成立するんだ。
エギル
- まぁ...また機会があったら休暇とるかな。
キリト
- それがいいぜ。
エギル
- かくして、第5層攻略は幕を閉じた。キリト達の目指すこのゲームの最果ては、まだ遥か先だ。
エギル
- To be continued...
エギル