フユカと買い物
- これは、書類の山を処理している時のある日の出来事──────
- あぁ、つっかれるぜ…
シオン
- そう言いながらも手際よく書類処理こなすから怒るに怒れないわ…
フユカ
- けどよ、この書類の山…一日で終わらせられるかよ
シオン
- だから手を休めず、書類の処理をやってるのでしょう
フユカ
- ……はぁ、息抜きしてぇな
シオン
- シオンはため息を吐く、書類の山はうんともすんとも言わず机の上にそびえ立っている。疲れた視線からは書類の山はエベレストぐらい高い山と思えるほどかもしれない
- すると突然、執務室の扉が開いた
- シオン、フユカ、書類処理は終わったか?
マーリン
- 見ての通りだ…終わるわけねぇよ
シオン
- 申し訳ありません、すぐに片付けますので
フユカ
- そうか、まぁ…頑張ってくれ
マーリン
- 人事だと思いやがって…
シオン
- マーリンは書類処理の状況を見て、執務室を後にした。
- 仕方ねぇ…やるか
シオン
- 全く…
フユカ
- シオンとフユカはしぶしぶながらも万年筆を手に取り書類処理を再開した。
- ……えっ、何だこれ!?スラスラと処理できるぜおい!
シオン
- …急に手がスラスラと・・どうして
フユカ
- (ふむ…執務室に入った瞬間、思考力強化の魔法を付与したんだ。これなら書類処理も早く終わるだろう)
マーリン
- マーリンの魔法のおかげで、午後になるころには書類の山は全て平地となった。
- はぁーっ!終わったぜー
シオン
- …(多分、マーリン様のおかげね)
フユカ
- よっこいせ…っと
シオン
- シオンは椅子に寄りかかり身体を伸ばすと立ち上がり、執務室を出ようとする。
- どこか出かけるの?
フユカ
- …ん?あぁ、書類処理も終わったし出かけてこようかと思っただけだ
シオン
- そう
フユカ
- ま、これといった予定はねぇけどな
シオン
- だったら、私の買い物に付き合ってくれないかしら?
フユカ
- 突然フユカから誘いが来る、シオンも驚いたのか反応が少し遅れた。
- 買い物…?あ、あぁ別にいいぜ
シオン
- 助かるわ
フユカ
- じゃあ、早速行くわよ
フユカ
- あぁ
シオン
- シオンとフユカは執務室を出る、そのまま外出の準備をして本部を後にした。
- 訪れたのは何げない商店街。
- で…何を買うんだ?
シオン
- 生活用品よ
フユカ
- …え、じゃあ我は雑用?
シオン
- その通りよ
フユカ
- ひっでぇなおい…
シオン
- ほら、ぼさっとしてると日が暮れてしまうわ
フユカ
- へぃへぃ
シオン
- そしてお昼も食べず、シオンはひたすらフユカが買った(尋常ではない量の)生活用品が入った袋を両手に引っ下げながらふらふらと歩く。
- おい…雑用にも権限というものがあるぞ、ひとつぐらい持ってくれてもいいんじゃねぇか?
シオン
- だらしないわね
フユカ
- それが人に買い物袋持たせてる奴の態度ですか?
シオン
- 次行くわよ
フユカ
- ことごとくスルーしやがったな
シオン
- そして買い物袋は増えていく、気がつけばとっくに日が暮れていた。
- …そろそろお腹が減ってきたわね
フユカ
- 多分、我はお前の5倍は腹減ってるぞ
シオン
- フユカは自分の腕時計を見る
- 今不死団本部に帰っても遅くなりそうね…どこかで食事を済ませするとしましょうか
フユカ
- そうだな
シオン
- この近くに私の行きつけの小料理屋があるわ、そこで食べましょう
フユカ
- へぇ…フユカの行きつけの店か、そりゃ楽しみだ
シオン
- そうと決まれば、フユカはそそくさと歩き出す。買い物袋を両手に引っ下げたままシオンは一つぐらい持てよと悪態を吐きながらしぶしぶとついていく。
- 数分歩いて、素朴な雰囲気の小料理屋についた。さっそく店の中に入る。
- あらフユカちゃん、今日も来てくれたのね
ナレーション
- 出迎えてくれたのは、優しそうな表情をした女将さんだった。どうやら一人でこの店を切り盛りしているらしい。
- こんばんは
フユカ
- どうも
シオン
- あらフユカちゃん、そちらの男の子は?
ナレーション
- もしかして彼氏さん?
ナレーション
- 仕事の同僚よっ!!!
フユカ
- なはは…
シオン
- うふふっ、冗談ですよ
ナレーション
- もうっ…
フユカ
- フユカと女将さんのやり取りを見て、シオンはどこか含み笑いを浮かべる。自分たちの他に客はおらず、カウンター席に腰を下ろした。
- いつもの頼むわ
フユカ
- 分かったわ、鯖の味噌煮、味噌濃いめね
ナレーション
- …ええっとじゃあ我は、・・我も鯖の味噌煮にするか
シオン
- 分かったわ、少し待っててね
ナレーション
- 女将さんはさっそく料理をし始めた、カウンター席なので手際の良さがよく伝わった
- 凄く手際がいいんだな
シオン
- 当たり前よ、私よりも料理の腕は格段に上だもの。ここで料理を教えてもらっていたこともあったわ
フユカ
- へぇ、フユカも認めるんだから凄く美味いんだろうな
シオン
- 数分後…
- お待ち堂様
ナレーション
- いただきます
フユカ
- いただきます!
シオン
- 注文した鯖の味噌煮が来た、香ばしい味噌の煮汁が食欲をそそる。シオンとフユカはさっそく食べ始めた。
- う、美味ぇ…!
シオン
- 相変わらず美味しいわね
フユカ
- そう言ってもらえると嬉しいわぁ
ナレーション
- うふふっ、何か飲みます?
ナレーション
- 焼酎水割り
フユカ
- (親父かよ…)
シオン
- 僕は何にする?
ナレーション
- え、じゃあ…炭酸水
シオン
- (チョイス・・)
フユカ
- 分かったわ
ナレーション
- はい、どうぞ
ナレーション
- (コクコクと出された炭酸水を飲む、シュワシュワした感覚が乾いた喉を刺激する)
シオン
- …ふぅ、落ち着くわ
フユカ
- そして、ゆったりとした時間の中、女将さんと話した。凄く聞き上手な方で日頃のストレスをうんうんと相槌を入れながら聞いてくれた。
- ………
フユカ
- …どうしたフユカ?
シオン
- 私だって頑張ってるのにぃ…もっと褒めてくれたっていいじゃない…っ
フユカ
- あ、フユカちゃん酔いが回ったのね
ナレーション
- ええっ!?
シオン
- フユカちゃん、酔いが回ると本音がポロポロ出ちゃうのよ。今日は知り合いが一緒に来たから水割りにしたけど…酔っちゃたようね
ナレーション
- ううっ…マーリン様にも最近褒められてない…ううっ、私って必要とされてるのかしらっ…ううっ
フユカ
- ちょ、ちょっとフユカさん!?
シオン
- うふふっ、こういうフユカちゃんを慰めるのもここに来た時の日課みたいなものなのよ
ナレーション
- は、はぁ…
シオン
- ちょっど…きひへるのシオン〜
フユカ
- (呂律回ってねぇ!?)
シオン
- あらあら、今お水持ってくるわね
ナレーション
- あ、はい…すみません
シオン
- わたひを褒めなさいよ…ううっ
フユカ
- …はぁ、偉いぞフユカ、偉い偉い
シオン
- シオンはため息を吐いた後、少し気持ちを込めてフユカを褒める。頭を優しく撫でてやった。
- えへへ…うれひいです、、
フユカ
- (…フユカってお酒弱いんだな)
シオン
- はい、お水です
ナレーション
- すみません…
シオン
- 酔ったフユカに水を飲ませる、数分したら寝息を立てて寝てしまった。
- ・・・誰が背負って帰るんだおい
シオン
- ……すぅ…zZZ
フユカ
- あらあら、大変ね
ナレーション
- じゃあ我らは帰るか、今日はご馳走様でした、美味しかったです
シオン
- 嬉しいわぁ、また来てね
ナレーション
- はい、ほら帰るぞフユカ
シオン
- シオンは寝ているフユカを背負い、片手に今日買った日用品のビニール袋を持って、ゆっくりとした足取りで店を後にした。
- もう夜だ、空を見上げれば星空とは言い難いが幾つかの星が輝いていた。今日は書類処理、買い物など疲れることもあったが満足のいく晩飯を食べることができた。
- ったく…酒弱いなら飲むなよ
シオン
- …z Z Z
フユカ
- フユカは満足した顔で寝息を立てながら、シオンの背中で眠りについていた。背中に柔らかい違和感がある…が、気にしないでおく。
- なはは…
シオン
- まぁでも…ちっと可愛いフユカも見れたことだし、チャラでいいか
シオン
- …ん、z Z Z
フユカ
- どんな夢見てんだか…はぁ、不死団本部まで遠いなぁ
シオン
- …ぁりがと、しぉん…
フユカ
- ・・・そうか、どういたしましてだ
シオン
- ……また、飲みに行こうな
シオン
- ゆっくりと含み笑いを浮かべるシオン、寝ているフユカに声が聞こえたかは分からない。
- 夜空の星はまだ輝いていた
- 翌日…
ナレーション
- 昨日の記憶が無いわっ!!どうやって帰ってきたの私っ!?
フユカ
- …知らん
シオン
- 完
ナレーション