ヒプノシスバレンタインの空騒ぎ
ホワイトデーにすら間に合わない時代の敗北者
- 2月14日!バレンタインデー!
山田一郎
- そう!それは女が意中の男にチョコレートを手渡す日!
山田一郎
- 故に!物凄くソワソワするッ!男もッ!女もッ!
山田一郎
- そしてそれは!各ディビジョンの野郎共もッ!例外ではなかったッッッ!!
山田一郎
- ◆◆イケブクロ・ディビジョン◆◆
山田二郎
- さて、三郎…今日こそは…
山田二郎
- ああ、二郎…今日こそは…
山田三郎
- 俺はッ!
山田二郎
- 僕はッ!
山田三郎
- チョコでッ!
山田二郎
- お前を負かしてみせるッ!
山田三郎
- …ククク…というわけでだ。
まず俺が今日貰ったチョコの数だ!よーく見ておけよ?(ドサドサー
山田二郎
- ……!この量は!?
山田三郎
- ざっと15個…いやそれ以上か?今日はこれだけ貰えた。当然野郎から貰ったのはノーカンだ。
山田二郎
- さらに言えば、俺は特にバレンタインですよアピールなんかしちゃいない!自分から貰っていこうなんて事ぁしてねぇんだ!!
山田二郎
- ………。
山田三郎
- ふっ…この勝負、どうやら早くも俺の勝ちのようだな?友達少ないお前じゃ、到底こんな数貰えねぇだろ?
山田二郎
- ……そうだね。確かに数では敵うことはない、かな。
山田三郎
- フン、やけに素直じゃねえか?
山田二郎
- ……そう。『量』では敵うまい。けど…!
山田三郎
- 『質』ならどうかな!?(ドンッ☆
山田三郎
- !?
な、なんだそのデッカイ箱は!?
山田二郎
- チョコレートケーキだ。見たところ既製品ではなさそうだ…。
山田三郎
- 二郎…確かにお前のチョコの量は多い。だが量だけだ!既製品で満足して、天狗になってるようじゃまだ甘いんだよ!!
ハッハッハッ!!
山田三郎
- 三郎ォォォォォォ!!!
山田二郎
- 二ィ郎ォォォォォォ!!!
山田三郎
- こげ
つん
山田一郎
- あだっ!!
山田二郎
- いでっ!!
山田三郎
- お前ら…喧嘩だけじゃ飽きたらず、チョコ自慢合戦か?情けねぇことしてんじゃねぇ!!
山田一郎
- に、兄ちゃん…
山田二郎
- 一兄…
山田三郎
- いいか?贈り物ってのは、送り主の想いってのが詰まってんだ。それは量なんかでも、既製品かどうかでも決められねぇ。
山田一郎
- 大事なのはチョコに託された想いだ。
二郎。チョコ沢山貰って嬉しいのは分かるが、それを自慢してるようじゃ送り主に恥ずかしいと思わねぇのか?
三郎。託された想いに、既製品も手作りも関係ねぇだろうが?
山田一郎
- そ、それは…
山田二郎
- その通り…です。
山田三郎
- せっかく貰った想いだ。自慢なんて餓鬼くせぇことしてねぇで、一つ一つに感謝して食え。分かったな?
山田一郎
- …うん。わかったよ、兄ちゃん!
山田二郎
- 僕たちが間違ってました、一兄。
山田三郎
- よし、それでいい。
じゃあちょっと、俺は一旦自分の部屋行くから、くれぐれも喧嘩はするなよ?
山田一郎
- よっ……と。(ガシャッ
山田一郎
- ………おい、三郎。見たか…?兄ちゃんのアレ……
山田二郎
- 見たよ……あの肩のデッカイ袋に入ってるの、あれ全部チョコだよね?
山田三郎
- まるで季節外れのサンタクロースだよ……
山田二郎
- やっぱり、一兄はすごいや……
山田三郎
- ◆◆ヨコハマ・ディビジョン◆◆
碧棺左馬刻
- …ついにこの日が来たな…
入間銃兎
- ああ…そうだな。
碧棺左馬刻
- バレンタインデー。
女が意中の男にチョコを送るなんて、菓子会社の営業戦略ダダ漏れの馬鹿げた祭り…。
入間銃兎
- 最近では友チョコ、なんてのも流行ってやがる。くだらねぇ…
碧棺左馬刻
- そうだな。くだらない。
それだけで済んでいたんだ。今までの俺達なら…。
入間銃兎
- ああ……問題は……
碧棺左馬刻
- 理鶯……!
入間銃兎
- アイツ絶対友チョコ送ってくるよなぁぁぁぁぁ!!!!
碧棺左馬刻
- 理鶯…確かにアイツからものもらうのは別にいいが、何が入ってんのかも分からねぇ。
碧棺左馬刻
- どうする左馬刻…?俺はまだ死にたくない。
入間銃兎
- 大袈裟だボケ。とにかくアイツにあったら、どうにかこうにか話を逸らして…!?
碧棺左馬刻
- ……!?
入間銃兎
- おお、二人とも来ていたのか、丁度良かった。
実は今日はバレンタインデーということで、小官が作ったチョコレートを食べて貰いたいんだ。
毒島メイソン理鶯
- (……話を逸らす隙すら与えてくれねぇじゃねぇかド畜生がッ!!!!)
碧棺左馬刻
- ……な、な何を言っているんです理鶯?今日はバレンタインデーですよ?バレンタインデーと言えば女性が男性にチョコレートを送る日。男性が男性になど…
入間銃兎
- 最近では、友チョコというのが流行っているんだろう?シブヤの、有栖川帝統から聞いた。
毒島メイソン理鶯
- (アイツいつかしょッッッ引いてやる!!!!)
入間銃兎
- …ああ、そうだな。そんなこともあったな。(腹くくれ銃兎。もう無理だ)
碧棺左馬刻
- ありがとう、ございます…。(もはやこれまでか…。)
入間銃兎
- そうか、ではこれを。小生特製、木苺のチョコレートだ。
毒島メイソン理鶯
- は?木苺…?
入間銃兎
- ?木苺は嫌いだったか?
毒島メイソン理鶯
- いや、そんなことは…(木苺…?普通?)
入間銃兎
- おい、銃兎…。これ、うめぇ。普通にうめぇよ!
碧棺左馬刻
- 左馬刻…?それじゃあ私も…
入間銃兎
- う…美味い!
入間銃兎
- やるじゃねぇか、理鶯!(助かった…のか。俺たちは)
碧棺左馬刻
- 気に入って貰えたようで何よりだ。では…
毒島メイソン理鶯
- 甘いものばかりでは飽きるだろう。コーヒーも淹れてきた。ネコのフンから採取した豆で作った、特製のコーヒーだ。
毒島メイソン理鶯
- おう、気が利…ッ!?
碧棺左馬刻
- ありが……!?
入間銃兎
- (コポポポポポ…
毒島メイソン理鶯
- 結論から言うと、コーヒーは旨かった。
旨かったけど、心なしか二人の顔はげっそりとしていた。
ああ、憎々しきバレンタイン。
入間銃兎
- ◆◆シブヤ・ディビジョン◆◆
入間銃兎
- …乱数。
今日はいつもより、事務所が散らかっているように見えるが…?
夢野幻太郎
- へへーん!
今日はバレンタインデーだからね!おねーさんたちからたーっくさん、チョコレート貰っちゃった!
飴村乱数
- お返しに飴をあげたんだけど…やっぱりホワイトデーには三倍返ししないとねっ!
飴村乱数
- 全く…貰い物なのだから、保管もちゃんとしておくべきでは?
夢野幻太郎
- そういえば幻太郎は、チョコ貰ったの?
飴村乱数
- 小生ですか?小生は読者から頂くことが多いですね。ファンレターと一緒に。
夢野幻太郎
- それと面白いことに、小説の中の人物にまでチョコが送られることもあるんですよ。まあ、その場合は小生と編集で美味しく頂きますが。
夢野幻太郎
- 小説のキャラにまで…でもそれって、それだけ幻太郎が魅力的なキャラを作ってるってことだよね!やっぱり幻太郎はすごいや!
飴村乱数
- そういうものなのでしょうか…。
そういえば、帝統が見当たりませんね?乱数は知りませんか?
夢野幻太郎
- うーん、僕にも分からないなぁ…。またギャンブルかな?
飴村乱数
- ……た……
た゜す゜け゜て゜く゜れ゜…(ガチャ
有栖川帝統
- うわぁ!どうしちゃったの幻太郎!?
飴村乱数
- 余には随分と、まるで餓鬼の如く痩せ細っているように見えるが?
夢野幻太郎
- ああ…今日はバレンタインデーだから、チョコのお情けがあるだろうと思って…
食費をギャンブルに宛てたんだよ…。
有栖川帝統
- そしたら有り金全部スッた上に…チョコも貰えず…助けてくれ…死にそうだ…
有栖川帝統
- …無計画というかなんというか…
夢野幻太郎
- それは大変だね…。そこにあるチョコ、少し食べていいよ?
飴村乱数
- あ"、あ"り"か"て"え"……(バリボリ
有栖川帝統
- ああ因みに、バレンタインに他人のチョコを食べると金運と恋愛運、それと仕事運ですか。その辺が下がるという噂ですので気をつけて。
夢野幻太郎
- モガッ……!?そ……それマジ?
有栖川帝統
- まあ嘘ですけど。
夢野幻太郎
- こ、こんな時に嘘つくなよもぉ~~!!
有栖川帝統
- あっはは!帝統の元気が戻って良かったよ!
飴村乱数
- おう!あんがとな!
それじゃ、気を取り直してまたギャンブルと行くか!
有栖川帝統
- ……?有り金全部スッたのでは?
夢野幻太郎
- 靴のなかに百円だけ仕込んでた。
有栖川帝統
- それで賭けが出来るんですか…?
夢野幻太郎
- ◆◆シンジュク・ディビジョン◆◆
夢野幻太郎
- あっ、先生!
少女
- ああ、君は先日まで入院してた…。身体の調子はどうだい?
神宮寺寂雷
- お陰さまでとってもよくなりました!
少女
- ふふっ、それは良かった。
神宮寺寂雷
- それでなんですけど…。今日はバレンタインデーなので、今までの御礼も込めてチョコを作ったので、受け取ってもらえませんか?
少女
- バレンタインデー…。そうか、もうそんな時期か…。最近は忙しくて意識していなかったな…。
神宮寺寂雷
- ありがとう。後で食べさせてもらうよ。
神宮寺寂雷
- どういたしまして!
少女
- ……なんか、微笑ましいですね。こういうの。
観音坂独歩
- 独歩くん、来ていたのか。
神宮寺寂雷
- そうだね。ああいう子が、ああして元気でいられる。そういう姿を見ると、僕も医者で良かったと心から思うよ。
神宮寺寂雷
- …それで独歩くん。今日はどんな用事で?
神宮寺寂雷
- …なんでも、一二三が僕たちに相談したいことがあるみたいで。ここで待機しててほしい、と。
観音坂独歩
- 待機…?
神宮寺寂雷
- センセイに独歩ちん、チーッス!
伊弉冉一二三
- 来た…。
一二三、病院を待ち合わせ場所にするんじゃない!
観音坂独歩
- それに関してはマジスンマセンッス!賞味期限があるから、夜まで待ってもいられなかったんス!
伊弉冉一二三
- 賞味期限…?何だろう、なにか嫌な予感がする…。
神宮寺寂雷
- とりあえずこっちに来て下さいッス!
伊弉冉一二三
- ━━駐車場━━
伊弉冉一二三
- こ、これは……!!
神宮寺寂雷
- 軽トラにこんもりと積み上げられた、箱の山…。多分これって…。
観音坂独歩
- 店に来てくれる女の子たちから貰ったんスけど、この量は流石にどうしようもなくて…。
もしよかったら、好きなの持ってっていいッスよ!
伊弉冉一二三
- ……そ、そうかい。あ、ありがとう…。
神宮寺寂雷
- 一二三…。先生が困ってるだろ…。
観音坂独歩
- 独歩も、なんか持っていきなよ?
伊弉冉一二三
- そ…そうだな…。
俺、まだチョコ貰ってないからな…。
観音坂独歩
- …そうなんだよ…。
生まれてこのかた、義理チョコすら貰ったことがない…
観音坂独歩
- 八歳と九歳と十歳と、十二歳と十三歳の時もずっと、親からのお情けチョコなんだよ…。
観音坂独歩
- …独歩くん。またそんなに卑屈にならないで…。
そうだな…じゃあ私はこれと…これでも貰っていこうか。
神宮寺寂雷
- それじゃ、私はまだ勤務中だから。失礼するよ。
神宮寺寂雷
- センセイ、マジアザーッス!
伊弉冉一二三
- あ、ありがとうございます!
一二三、もっと丁寧に礼を言えよ!
観音坂独歩
- あっ!そうだった!俺っちとしたことが!
伊弉冉一二三
- ったく…後でちゃんとした礼を言えよ?
観音坂独歩
- 分かってるって…
ん?
伊弉冉一二三
- ……
…………
んあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
伊弉冉一二三
- ど、どうした!?いきなり大声出して!?
観音坂独歩
- やべぇ…やべぇよ…
センセイの持ってったチョコ…
伊弉冉一二三
- ウイスキーボンボンだ……
伊弉冉一二三
- ………!?!!?!???!?
観音坂独歩
- ばっ!?な、なんで事前に抜かないんだよそう言うの!?
観音坂独歩
- だっ、だって箱デコってあって見分けつかねーんだもん!!
伊弉冉一二三
- あぁヤバい!!マジヤバい!!先生の後を追うぞ!!
観音坂独歩
- うおおおおおおおおお!!!!
伊弉冉一二三