あなたは誰か(最後)
玲子と祖父と正一
- 玲子さんがここにいるのは今日で最後
- 荷物整理を手伝っていた
- あれから、だいぶ落ち着いた時に玲子さんに聞きたいことがあった
正一
- 玲子さん、もし違ってたのなら否定して下さい
正一
- 何でしょう?
玲子
- 最初に来店した時、初めてここへ来たというのは嘘ですか?
正一
- ・・・
玲子
- なぜそう思ったんですか?
玲子
- ここの島の雑誌を見てここに来た
正一
- 最初は、雑誌を見てきてくださった人なんだなと思いました
正一
- でもよく考えるとおかしいんです
正一
- どこがです?
玲子
- 雑誌にはここのお店と僕が映っている写真を載せています
正一
- 複数枚、宣伝もありますが
正一
- ですが、玲子さんはこう言いましたよね?
正一
- すみません、この辺りの方ですか?
玲子
- 僕は自分で言うのも何ですが、メガネにオーバーオールの姿で写真に載せていたので
正一
- 後ですね
正一
- 祖父は、日記を毎日欠かさず付ける人でした
正一
- 祖父は最後に燃やしてくれと言いましたが、私は聞きませんでした
正一
- 届かなかった手紙と祖父が去年までのつけていた日記を見て
正一
- 玲子さんと祖父の写真が日記に挟まれていた
正一
- 写真と一緒にこう書いていたんです
正一
- ◯月△日
ニット帽子
- 正一は元気にしてるだろうか、
この夏の時期は、観光客も多い
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- 体の節々に老いを感じる
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- 家族づれの多いお客さんの中で、1人のお客さんがいた
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- 高校生ぐらいの
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- なぜか放って置けなかった
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- だから少し他愛のない話をした
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- その子は、自分探しをしているらしい
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- 自分のルーツを辿っていると言って
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- その子は、自分は絵を描きたいと言っていた
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- それで自分の孫の話をした
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- その子はしばらく夏休みの間よくお店に顔を出してくれて、店の手伝いもしてくれる優しい子だった
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- 自分の進路に悩んでいて、自分のやりたい事をしますと言った
ニット帽子
- 私は、孫も絵を描いていることを伝えた
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- 夏休みが終わるので、写真いいですかと言われて写真を撮った
ニット帽子
- 私は、その子の名前を聞いて
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- まさかと思った
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- そんなはずはないと
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- 美優の旧姓と同じ
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- 私は、君のおばあちゃんの名前はと聞いた
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- 清水美代子
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- だがこの子は気づいてはいない
ニット帽子
- この子は、無意識にここへ来たのだと
ニット帽子
- ・・・
ニット帽子
- この子は、清水玲子さんと言った
ニット帽子
- 正一にも会わせてやりたかったなと思った
ニット帽子
- 私は、言うことができなかった。この子には関係ないことだと
ニット帽子
- 喫茶店のマスターとして振る舞おう
ニット帽子
- 私はどこかで、面影が似ているから放って置けなかったのだろう
ニット帽子
- 私と玲子さんとの写真
- 20××年◯月△日
- ・・・
玲子
- 微笑
玲子
- ・・・
正一
- 懐かしいなぁ
玲子
- 私も本当は認めたくなかったんですよ
玲子
- 美優おばあちゃんに頼まれて
玲子
- 正一さんのおじいちゃん
玲子
- 安道賢治
玲子
- 大事に写真持っててくれたんですね
玲子
- 正一さんもいつ気がついたんですか?
玲子
- 私がここへ来た事あると
玲子
- この1ヶ月の間です
正一
- あまり祖父の遺品整理ができなかったんです
正一
- その事実を受け止めるのには時間がかかりますからね
正一
- お互いに
玲子
- 知ってたと言う事でしょ
玲子
- まぁそう言うことになるんじゃないですか
正一
- 僕も、正直驚いたんですよ
正一
- 船乗り場
- 玲子さん
正一
- はい?
玲子
- また、来てくれますか
正一
- いいですよ
玲子
- また冬休みになったら来ますね
玲子
- またあのお店で、紅茶を飲みに来ます
玲子
- その時は、ケーキを添えて
正一
- 楽しみにしてます
玲子
- 最後に
- またのご来店をお待ちしています
正一
- ♪
玲子