ある夏の日
初投稿です。
- あふれかえる夏が僕を襲って
- どうしようもない僕は
- 明日なんてくそくらえと空をけとばした
- ーーーーーーー
僕
- 僕のからだがフェンスを離れて
- 宙になげだされた瞬間、瞬間、瞬間、
- 空でも飛びたいの?
高嶺さん
- ああ 彼女はいつも僕の邪魔をする
- 手、離してくれないかな
僕
- 君に翼があるようには見えないけど
高嶺さん
- 彼女が不敵にほほえんだ
- 自殺志願者の腕をつかむなんて、
君はどうかしてるよ
僕
- 自殺なんて馬鹿なことする君も
どうかしてるよ
高嶺さん
- 彼女の華奢な腕が僕をひっぱりあげた
- 前、ラムネの瓶より重いものは持てない
って言ってなかったっけ?
僕
- あれ、そうだった?
高嶺さん
- 駄目だよ、今さら誤魔化したって
僕
- か弱い乙女にこんなことさせる君が
悪いんでしょ
高嶺さん
- 誰も自殺を止めてくれだなんて
言ってない
僕
- 君に死んでほしくないもの
高嶺さん
- 屋上で彼女はやっと僕の手を離した
- どう?この世界に戻った感想は?
高嶺さん
- 不思議な気分だよ
僕
- ついさっきまで生と死の丁度真ん中に
いたわけだから
僕
- 私のおかげね
高嶺さん
- 君のせいで僕はなかなか死ねないよ
僕
- 私は君が生きててくれて嬉しい
高嶺さん
- そう、それはよかった
僕
- 次はどんな自殺をするの?
首吊り?水死?どんな自殺だって止めて
みせるわ
高嶺さん
- 君はホントに僕の邪魔ばかりする
僕
- どうしてか分かる?
高嶺さん
- 僕がいないと君の家の猫の世話をする
人がいないからね
僕
- ピンポーン!これからも生きてうちの
ナナちゃんに餌をあげてね
高嶺さん
- 空に向かってからからと笑う君の横顔
- 見つめながら僕は問う
- じゃあ、どうして僕が自殺したいか
僕
- 分かる?
僕
- 彼女がふりかえった
- そしてまた、不敵な笑みを浮かべる
- あら、どうして?
高嶺さん
- 彼女の白い腕が透けて見えた
- きっとこれは夏のせいだよ
- 頼むから
- 君に会いに行くためだよ
僕
- 2年前に交通事故で亡くなった彼女は
- 僕を死なせてくれない