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ひとり劇場

人狼ゲームinアルケミアストーリー

0日目[夜]〜役職決定〜

時刻は20:00。魔物ちゃんに指定された時刻まで、あと1時間ある。 数名を除く一同は、食堂に着席し、エイダの拵えた料理に手をつけ始めた。
見習い冒険者アネリ
「美味しい!」
拳闘士ユータ
「やっぱエイダの料理は最高や!」
料理人エイダ
「エヘヘー、嬉しみを感じマース!」
アイドルロメオ
「美味しい美味しい!すごいねー!」
バイオリニストセリーヌ
「ロメオ様。食事の席で騒ぐと、埃が飛び散ることとなります」
戦士レオン
「これ全部エイダが作った系!?うんめぇなー!」
メイドシルヴィア
「アタシもちょっと手伝ったんだからねっ!このサラダとかアタシが作ったんだからっ!」
お針子リリアン
「…………サラダ……美味しい……」
メイドシルヴィア
「あ、当たり前でしょ!アンタ達のために作ったんだからねっ!」
バーテンダーラスティ
「そういえば、エラリーとケリーは?」
見習い冒険者アネリ
「エラリーさんには私が声かけたんだけど……」
アネリは、数分前の出来事を思い浮かべた。
見習い冒険者アネリ
『エラリーさん、今から食堂で皆でご飯食べるって……』
司書エラリー
『お前は馬鹿か?得体の知れない奴の作った得体の知れない飯なんか食えるか』
見習い冒険者アネリ
『え、得体の知れないなんてことはないわ!エイダさんが作ったんだから!』
司書エラリー
『お前は馬鹿だな。馬鹿は俺に話しかけないでくれ』
見習い冒険者アネリ
『なっ……』
司書エラリー
『俺達の置かれている状況を考えればわかることだ。気安く他人を信用するなど、馬鹿のやることだな』
エラリーはそのまま、早足に立ち去ってしまった。
見習い冒険者アネリ
『い、嫌な人……!勝手にすればいいんだわ!』
見習い冒険者アネリ
「……って」
花屋ハーヴィー
「まぁ、おおかたケリーもそんな感じだろう。わからないことはないが」
戦士レオン
「おーいお茶のおかわりくれ!」
メイドシルヴィア
「自分で行きなさいよっ!今回は特別にアタシが取ってきてあげるんだからねっ!」
拳闘士ユータ
「シルヴィアはん、ホンマに優しいんやけど……色々損しとるよなぁ」
画家パトリシア
「スープ美味しい……あっ!」
吟遊詩人ダリウス
「ヴァチャチャチャチャチャァ!」
技巧士キャンディス
「あーっ!スープのおかわりを取って戻ってきたパトリシアが躓いて転んだ拍子に投げてしまったお皿が宙を舞ってダリウスの頭に当たって割れて中身がぶちまけられたっす!」
拳闘士ユータ
「説明おおきに」
画家パトリシア
「ご、ごめんなさいごめんなさいっ!」
吟遊詩人ダリウス
「アチャチャチャチャ!」
料理人エイダ
「パトリシアさーん、大丈夫ですカー?」
バイオリニストセリーヌ
「パトリシア様、お怪我はありませんか?」
アイドルロメオ
「パトリシア、大丈夫!?立てる!?ほら!」
メイドシルヴィア
「あーもー何やってるのよ!仕方ないからお皿とかはアタシが片付けてあげるんだからねっ!」
吟遊詩人ダリウス
「あれ!?僕様の心配は!?」
戦士レオン
「おいダリウス!パトリシアが転ぶ先に座ってんじゃねー!」
吟遊詩人ダリウス
「アンヴァー!」
画家パトリシア
「あわ、あわわわわわ」
花屋ハーヴィー
「やれやれ……」
バーテンダーラスティ
「ふふっ、賑やかでいいね」
見習い冒険者アネリ
「そうね……」
しかし、この喧騒は永くは続かない。アネリは心のどこかで、それを確信していた。
宴は終わり……
時刻は21時。一同は会議室に集合し、巨大な丸テーブルに着席していた。 放浪者ニコルの場所であった椅子の後ろに魔物ちゃんが立ち、注視を集めている。
魔物ちゃん
「それじゃあ今から、人狼ゲームの役職について説明するね!」
魔物ちゃん
「まずは【人狼】!この中に既に三人いるよ!人狼は殺した人に成りすます。つまり、この中の三人は、既に死んじゃってるってことだね!」
画家パトリシア
「そ、そんな……」
戦士レオン
「未だに信じられない系!」
料理人エイダ
「つまり人狼ッテー、ソの人のフリした別人ってことデスヨネ?」
技巧士キャンディス
「それなら、確かめるのは結構簡単なんじゃないっすか!?」
魔物ちゃん
「残念だけど、人狼は成りすましてる人物の、記憶や人格も引き継ぐことができるんだよ!だから、いつもとちょっと様子が違うとか、昔のことを覚えてないとか、そういうことはないから!」
お針子リリアン
「…………ハードモード……」
司書エラリー
「当然だ。それで判別が可能ならゲームが成り立たん」
魔物ちゃん
「次に【狂人】!この中に既に一人います!」
メイドシルヴィア
「狂人ならいるじゃない。ここに」
吟遊詩人ダリウス
「えっ、なんで僕様」
バイオリニストセリーヌ
「どちらかというとケリー様かと」
ギャンブラーケリー
「クク……褒め言葉だぜェ……」
魔物ちゃん
「狂人っていうのはね、人狼のことを崇拝してる人間だよ!人間よりも人狼の味方をする人なんだ!」
拳闘士ユータ
「ふぁ!?そんな奴がおるんかいな!」
バーテンダーラスティ
「なるほど、やっかいな存在だね。人間だから処刑しても意味がないのに、敵だなんて」
戦士レオン
「じゃあ、その狂人は誰が人狼か知ってる系なのか?」
魔物ちゃん
「いや、知らないよ!人狼も狂人が誰だかわからない!」
メイドシルヴィア
「バカじゃないのそいつっ!なんで人狼の味方なんてするのよっ!」
花屋ハーヴィー
「おれたちの戦うべき敵が増えたな」
魔物ちゃん
「これだけじゃないよ!君たちの中には1匹【妖狐】も混じっているね!」
技巧士キャンディス
「あわわわ、人外のオンパレードっすか!?設定に無理ありすぎて収拾のつかなくなった物語みたいっす!」
司書エラリー
「で、そいつはどういう存在なんだ」
魔物ちゃん
「妖狐というのは人狼の天敵!だけど人間の味方でもない。つまりは第三勢力!人狼と人間の決着がついた時に妖狐が生き残っていた場合、妖狐はその場の人間や人狼全員に術をかけて、自分の下僕にしちゃうんだ!」
バイオリニストセリーヌ
「ある意味では、全員が手を取り合って生きることのできる道なのでしょうか」
戦士レオン
「いや、ありえねーって、」
吟遊詩人ダリウス
「下僕か……美しい女性の下僕なら、まぁ考えてあげなくもないね」
お針子リリアン
「…………キモ……」
魔物ちゃん
「ようは人間と人狼の戦いの漁夫の利を狙おうって生き物だね!妖狐に限っては、つい先日本物と入れ替わった人狼と違って、生まれたときからバリバリ妖狐って感じだよ」
アイドルロメオ
「だったらパトリシアは大丈夫だ!僕たち小さいころから知り合いだもんね!」
画家パトリシア
「う、うん……」
技巧士キャンディス
「いくらウチでもフラグの建築は見過ごせないっす」
見習い冒険者アネリ
「ほ、他には何かいるの?」
魔物ちゃん
「これだけだよ!人狼、狂人、妖狐……合計5人は、既に君たちの中に!」
拳闘士ユータ
「いやおかしいやろ!1/3が敵て!」
技巧士キャンディス
「詰んだっす!第三部完!」
アイドルロメオ
「大丈夫だよー!僕たちなら大丈夫!」
魔物ちゃん
「そう、大丈夫!確かに君たちに何の力もなければ厳しいかもしれないね!でも、人狼ゲームでは、人間チームの中の数名に特別な役職を与えちゃうよ!」
バーテンダーラスティ
「特別な役職?」
魔物ちゃん
「まず【占い師】!この人間はびっくり!毎晩一人だけ、指定した相手が人間か狼かわかっちゃうんだ!」
アイドルロメオ
「すごーい!」
お針子リリアン
「…………つよい……」
魔物ちゃん
「さっきは言い忘れてたけど、妖狐ってのは人狼に襲われても、特殊な力で逃げることができるんだ!だけど、占い師に占われると、妖気を奪われて死んじゃうんだよ!」
バイオリニストセリーヌ
「なるほど。この役職の存在は、人間にとって大きな価値となり得ますね」
戦士レオン
「オレ、なりてえ!」
魔物ちゃん
「次に【霊能力者】!この人は、処刑された人物が人間かそうじゃないかがわかるんだよ!」
アイドルロメオ
「すごーい!」
お針子リリアン
「…………つよい……」
司書エラリー
「人間かそうじゃないか?人狼か妖狐かの判別はつかないのか」
魔物ちゃん
「鋭い!そう、そこはわからないよー!」
料理人エイダ
「オオカミに襲わレた人の正体は、わカらないんデスカー?」
花屋ハーヴィー
「狼に襲われて死んだらそいつは人間だろ」
料理人エイダ
「あア、ナルホドデース!」
拳闘士ユータ
「占い師ほどのインパクトはあらへんが、大事な役職やなぁ」
戦士レオン
「オレ、なりてえ!」
魔物ちゃん
「次に【狩人】!この人は、毎晩一人だけ、指定した相手を人狼の襲撃から守ることができるんだ!」
アイドルロメオ
「すごーい!」
お針子リリアン
「…………つよい……」
魔物ちゃん
「ただし、自分は守れないから要注意!」
メイドシルヴィア
「す、すごいじゃないっ!うまくいけば誰も死なずに済むわっ!」
ギャンブラーケリー
「クク、そううまくいくかなァ……」
戦士レオン
「オレ、なりてえ!」
魔物ちゃん
「最後に【共有者】!この役職は二人で一組!お互いが共有者であるとわかってる人たちだよ!」
アイドルロメオ
「すごーい……の……?」
お針子リリアン
「………………」
魔物ちゃん
「この役職をどう使うかは君たち次第だね!」
戦士レオン
「オレ、そこまでなりくねえ」
魔物ちゃん
「以上5名!これらの役職は今から、君たちに部屋に戻ってもらった後、ランダムに配布するよ!」
吟遊詩人ダリウス
「ところで、何も役職を持たない人は何と呼べばいいんだい?」
魔物ちゃん
「うーん、【国民】かな!今決めた!」
拳闘士ユータ
「適当やな」
魔物ちゃん
「というわけで役職の説明はおしまい!今からそれぞれの部屋に戻ってもらうよー!」
魔物ちゃん
「朝会議は明日の9:00から!君たちは8:50まで部屋から出ることができないから、気をつけてね!」
バーテンダーラスティ
「えっ、起きれる気がしないんだけど」
魔物ちゃん
「大丈夫!首の後ろの紋章が叩き起こしてくれるよ!」
技巧士キャンディス
「これ、どういうテクノロジーなんすかね……!」
魔物ちゃん
「さー戻って戻って!消灯の時間だよ!」
魔物ちゃん
一同は自室に散り……
見習い冒険者アネリ
「…………」
見習い冒険者アネリは、用意された自室に唯一置いてある机に向かっていた。魔物ちゃんの指示であったが、これから何が起きるのか、皆目見当もついていない。
『みんなー、聞こえるかなー!?』
見習い冒険者アネリ
「!?」
突如、机の上に魔方陣が浮かび上がり、そこから魔物ちゃんの声が発せられた。
魔物ちゃん
『今からみんなに役職を配るよ!人間チームの特殊な役職はとっても大事だから、簡単に他の人に明かさないこと!』
魔物ちゃん
『じゃー行くよ!ルーレットスタート!』
魔法陣が淡い光で明滅を繰り返す。
見習い冒険者アネリ
「…………」
否応にも心臓が高鳴る。果たして自分には、どのような役職が与えられるのだろうか? やがて魔方陣の明滅が収まる。中央には、一つの文章が浮かび上がっていた。
『16.見習い冒険者アネリ。あなたの役職は【共有者】です』
見習い冒険者アネリ
「……共有者……」
ピンとこなかった。魔物ちゃんの説明の中でも、特に目立った能力のない役職。 果たして自分は、この役職で何をすればいいのだろうか?
思慮していたその時、魔方陣の上空に長方形の光が浮かび上がった。 それは、どこかの部屋の様子を映し出しているようだ。中央には、見慣れた人物の顔が移っている。
司書エラリー
『よりにもよって、馬鹿のお前が相方とはな……。先が思いやられる』
見習い冒険者アネリ
「……はは」
乾いた笑いしか出なかった。魔方陣の中の文章は、新たに一行追加されている。
『もう一人の共有者は【03.司書エラリー】です』

16  

投稿日時:2018-03-02 19:30
投稿者:ヤオ

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