試合と気持ちのこと
試合2日目の事です。書くことがまとまらず放置していましたが、ようやく完成させることが出来ました
- 『んん…』
- 団体戦が始まってから約4時間。
- 私達、〇中の剣道部は男子も女子も決勝戦まで這い上がってきた。
- で、今はその決勝戦30分前、昼食の時間である。
- 『なんか…お昼が胃に落ちてる気がしません…』
- 「それな…」
- 「じゃあどこ通って落ちてるのwwwwwww」
- 「…小腸?」
- 『消化されないじゃないですかwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』
- 草が生えるほどには割と元気である。
- 「うーん…〇中には勝てるんじゃん?」
- 《唐突な真面目モード》
- 『私の相手1年生ですよね、いけます、2本取りしてぶっ叩きますよ』
- 「じゃあその後私引き分けるわ」
- 『取れなくても先鋒次鋒の先輩が多分カバー出来ると思います』
- 「あー、おけおけ」
- 『んー、じゃあアップしますか』
- 昼食を早めに切り上げてアップを始め、決勝戦は始まってしまった。
- 1校に勝って、2校に引き分けて、
- 3校目。
- これで決まる。
- 皆全力だった。
- 昼食前に2本取られて泣いた私も、まだチャンスがあると聞いて、この時を待ってた。
- 勝てるのでは?
- 引き分け?
- 分からない、でも、全力だった。
- 結果
- ……
- あと一本取れれば、県大会出場。
- 惜しいところで落ちてしまった。
- 折角這い上がってきたのに、蹴落とされてしまった。
- 誰も泣かなかった。
- 「これもまた次の団体戦に向けての進歩だしね〜」
- 『そうですねぇ』
- 『…ああ、そういえば男子の先輩は?』
- 「あっ、そうだ。結果聞いてくるね」
- 男子の先輩の元へと走っていった先輩は、とても興奮した様子で帰ってきた。
- 「代表戦だって!」
- 『え』
- は??
- 3年生の時と、同じだった
- 一本勝負か、そうか。。
- しんどい…
- 『ま、まぁうちの先輩の方が強いですし』
- 「いや…次戦うのは優勝候補の大将だから…」
- 『うわしんどいッッッッッッ』
- 「まぁ、うん…、ここまで来れたんだしね、頑張ってくれるよ」
- 『そうですね(しんどい目つき』
"はじめ!!!!!!!!"
- ワァッと大きな歓声と共に、試合場の空気はガラリと変わり、さっきまでとは打って変わった張り詰めた空気になる。
- 私達は試合枠から一番近い所で、男女並んで先輩を見ていた
- 正直不安だった。これでもし負けてしまったら。
- 先輩、泣いてしまうだろうなぁ。
県大会、行きたかったと。
- また、夏みたいに、泣いてる先輩を何も言えず眺めることしか出来ないのかな
- 考え始めたらいてもたってもいられなくって
- ここからもう泣きそうだった。
- 隣にいた先輩も、手を組んで祈る様に試合を見ていた。
- そして
"コテあり!!!!!!!!"
「嘘…」
- 『~ッッッッッッ』
勝ったのは
- 『っやった…!!!!』
- 先輩。
- 〇中の男子は、無事に県大会出場が決定した。
- 女子は号泣。もう本当に感動した。
先輩かっこいい。
あぁもうなんで私後輩なんだろうか。
今とてつもなく先輩ぎゅってしたい。
- 一方男子はお前らなんで泣いてんだよ的な目でこちらを見ていた。
- とにかくよかった。
女子はベスト5、男子は県大会。
絶好調じゃないですか。
女子の分も頑張ってきてくださいね、先輩。
県大会出場のチャンスはまだ失ってません、このメンバーで県大会出場したいです、試合に出れなくなる前に、ね。
- ………………………………………………………
- 『たんぼだ』
- 2日目、個人戦です。
- バスの中でゆらりゆらりと揺られながら、私は緊張感など全く持たずに窓の外を眺めていた。
- …数分前から思ってた事がある。
- 『道違くないですか?』
- 「それ~!!!!!!」
- そう、今は昨日通った道と全く違う道を走っている。
- つーかここ何処だよ。
- と、車内がざわつき始めた所で、運転手がコンビニでバスを停車。
- おいおいおいどこ行くのーーーーーーーーーーー???!!!!!!!!
- 運転手さん(ぱっと見定年超えてる)はバスを降りてコンビニへ入ってしまった。
- 車内は爆笑の渦である。
- 「何あのおっさんwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwトイレ???wwwwwwwwwwwwwwww」
- 「なんか買うのかよwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
- こんな中、さらに追い打ちをかけた出来事があった。
- 「ちょwwwwwwwwwwwwww」
- なんと全身赤タイツの人物がコンビニへ入っていったのだ。
- これには私も先生も爆笑。
- 「それコンビニ来る時の格好じゃねぇだろwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
- 『窓閉めてwwwwwwwwwwwwww』
- 暫くして運転手さんが戻ってきた。
やはり道を迷っていたらしく、店員さんに聞いていたらしい。
- 「はぁー面白かった…」
- 思ってもいなかったハプニングに爆笑から苦笑いに変わっていく。
- 「ついたぁ…」
- 『やっとですね、30分の道のりが1時間かけてここですよ』
- 「いやー予想外だったねw」
- 『逆に誰が予想できたんですかww』
- 運転手さんに挨拶をすませてから、団体戦と同様の試合場へ向かう。
- 昨日とは何もかも違う、自分の子どもの試合を見に来たのか、保護者の数も多い。
- 『…荷物置くところありますかね』
- 「ほとんど親でいっぱいだね」
- 『んあ"ー朝からイライラするなぁもう通してすいませーーーん(ど真ん中を堂々と突っ切る)』
- 「はるちゃん強い」
- 『いや親より選手優先ですから』
- 「なるほどねーw」
- アップをすませて個人戦のトーナメント表に名前を書きに行く。
- 「はるちゃんシード枠いける?」
- 『えっ、マジすか』
- シード枠とは
基本3回勝てば県大会出場のチャンス、もしくは敗者復活戦に出れるのだが、
シード枠は2回勝てばベスト8に入ることができて、敗者復活戦にも出れる枠である。
しかしその代わり、前回県大出場者が固定されていて、1回戦目で勝てば次にその人と戦うことになる。
まぁ簡単に言えば強い奴と戦うのだ。
私の事だから簡単にぶちのめされるだろう。
まぁそれはそれでお昼お腹いっぱい食べれるからいいんだけど。
- 『んー、分かりました。やれるとこまでやってみます』
- 多分先輩が私をシード枠に入れたのは、自分が勝つためなのだろう。
後輩より先輩が県大会出場した方が部活的にも先輩的にもいい事だから。
- いや別に自分は個人じゃ県大会出場とか言ってられないのでいいんだけどね
- 「ありがと」
- 『はい』
- さて、結果シード枠に入りましたがここでまさかのハプニング(私的な)
- 『え、これ全体の1回戦目じゃないですか?』
- 「そうだね」
- 全体で1番最初に戦う。マジか。。
- 『無理…』
- 「大丈夫だよ」
- …
- 団体戦より緊張する。
- 私の場合打つことより防ぐことの方が多くなるから、試合は長引くと思われる。
- 最初→長引く=注目される
- ため息しか出ない。。
- でもこんな時、何より心強いのは
- 昨日、貰った言葉。
- 「はるちゃん凄いよね、頑張れって言えば必ず結果残してくれる。」
- 「頑張れ」
- 「大丈夫」
- 先輩の言葉に今後どれだけ励まされるのかわかったもんじゃない。
- "結果を残してくれる"
- ほんの少しの私への期待が、私の力になった。
- 泣きそうな程胸がいっぱいになって
- 息ができなくなるんじゃないかって不安になるほど
- 先輩を愛しく思った。
- この言葉は、多分
- 一生忘れないだろう。
- この言葉ひとつで
- 今までの事、全部吹き飛んだ。
- 大事なものだけ見せてくれたんだ
- 私の味方
- 大丈夫。
- 私なら、
『…いける』
1回戦目 私が2本取り。
- 次で終わりだって、私の中から何かが告げている
- 固定された人と戦ったってどうせ負けるんだし、早めに終わらせたいな
- 前の私ならこう思っただろう
- でも今は違う
- 大丈夫。
- 不安な心を抱きしめるような何かが、私を安心させてくれていた。
- 言葉って、気持ちがこもっていれば
- なんでもできちゃうんだよ
シード枠初参戦。
延長戦まで持ち込んで敗退。
- 泣きたくなった。
- 悲しい訳じゃない。
- 寧ろ悲しい気持ちなんてこれっぽっちもない。
- 初めて自分の実力が目に見えた。
- 今までボロクソ言われてきて
- でも
- 強くなっていたんだ
- 嬉しくて仕方がなかった。
- "必ず結果残してくれる"
- この一言が全てを変えた
- 私の気持ちも
- 行動も全部
- 全力でその期待に応えようとした私の気持ちが、
- 大きなものになった
- 退部したいなんて二度と言うもんかと思った。
- 確かに辛いこともいっぱいある。
- でもそれ以上に
- 溜め込んだ辛い思いや出来事が、
- 想像の斜め上をいくいい事となって帰ってくる事を
- 私は知ったんだ。
- 当たり前の事を、当たり前だと実感した
- 誰だって褒められると嬉しい。
- 応援されたら、
- 元気だって出ちゃうよね
- 頑張れ
- 負けないで
- 大丈夫
- これっぽっちの言葉だけでも、
- どれだけ安心できることか
- 期待とか
- 応援の言葉とか
- そんな事の印象は多分
- プレッシャーをかける一言
- って人も多いと思う
- だから全力が出せなくて勝てなかった
- って、言い訳する人もいるかもしれない
- でもそれは悔しい想いがあるからそう思えるんじゃないかなと思うんだ
- 自分にも見えないところで
- 一生懸命それに応えようとしてるんだよ
- 泣きそうに顔を歪めて先輩の所へ戻った。
- 凄かったね、強くなったねって沢山褒められて
- 凄く嬉しかった
先輩3人が県大会出場
- 『はぁ〜っ、やっと帰れますね』
- 「長かったね〜」
- 『でも楽しかったです』
- 「うん」
- バスに乗りこんで、帰り道をゆらゆらと走る。
- 2日間の出来事を思い出していた。
- なんだか凄く幸せなんだ
- なんにもないし、勝てなかったし、いつもと変わらないのに
- 今笑っていられる意味もわからないし
- よくわかんない
- でもやっぱり、なんだか
- 『(幸せなんだなあ)』