お父さんと娘。
いくつになってもこういう会話ができる親子っていいですよね。
- ねえ、マイちゃん。
お父さん
- なに?お父さん。
マイ
- お父さんさ、最近、だいぶ淋しい感じになってきたじゃない?
お父さん
- 何が?
マイ
- いや、だからさ、こう…ちょっと、ボリュームダウン?してきたじゃない?
お父さん
- いやだから何が?
マイ
- ほら、こ、この辺が、さ?
お父さん
- ああ。
マイ
- はっきり言いなよ。
マイ
- いや、ちょっとそれは言いにくいというかなんというか。
お父さん
- ってか、お父さんにそれ言わせるのは酷じゃない?
お父さん
- じゃあ、私が言ってあげる。
マイ
- 要はハゲでしょ?
マイ
- …ッ…そ、そんなはっきり言わなくても…
お父さん
- もうちょっとこうオブラートに包んでもいいんじゃない?
お父さん
- 40超えたおっさんにオブラートは要らないよ
マイ
- で、ハゲがどうしたの?
マイ
- またハゲって言った…
お父さん
- ハゲでもマゲでも何でもいいから。
マイ
- で?どうしたの?
マイ
- いやさ、一度失ったものはしょうがないじゃない?
お父さん
- そうね。
マイ
- だからさ、考えたんだよ。
お父さん
- 上がだめなら下を生やせばいいんだ、って。
お父さん
- ま、まさか…
マイ
- お父さんが生やそうとしてるのって陰も
マイ
- こ、こら!!!
お父さん
- 女の子がなんてことを!
お父さん
- …はあ
マイ
- じゃあ何を生やしたいの?
マイ
- よくぞ聞いてくれた!
お父さん
- ココ!
お父さん
- ?
マイ
- ほっぺ?
マイ
- ほっぺに毛って生えるの?
マイ
- 違う違う。
お父さん
- ここ!あご!
お父さん
- まさかお父さん…
マイ
- ヒゲ生やすなんて言わないよね?
マイ
- バレちゃった?
お父さん
- ヒゲってやっぱ男の象徴っていうか…
お父さん
- お父さんもいい歳だし?
お父さん
- ダンディズム目指そうかな?
お父さん
- みたいな?
お父さん
- うん。
マイ
- 言いたいことはわかった。
マイ
- でもね、お父さん。
マイ
- 娘としてひとこと言わせてほしい。
マイ
- ん?
お父さん
- なにかな?
お父さん
- 絶対やめて。
マイ
- え?!
お父さん
- な、なんで…?
お父さん
- 理由はひとつ!!!!!
マイ
- ど、どんと来い!!!!!
お父さん
- 似合わないから!!!
マイ
- ?!?!?!
お父さん
- 絶対にお父さんには!!!
マイ
- 似合わないから!!!!!
マイ
- …そんな。
お父さん
- そんなはっきり言わなくても…
お父さん
- あのねお父さん。
マイ
- 頭の毛が薄くなってきたからってヒゲ生やせばプラマイ0とかならないからね?
マイ
- …うん…
お父さん
- だからさ?
マイ
- 今ある毛を誤魔化すよりも、残り少ない毛を大事にしよう?
マイ
- …うん…
お父さん
- END