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ひとり劇場

最果ての狩人

愚かな半端者の話をしよう

化け物(デフォルメ)(3号)
さて、話をしようか
化け物(デフォルメ)(3号)
今回は何の話をしようかな?
化け物(デフォルメ)(3号)
修羅の話でもいいし弓の英雄の話でもいいな
化け物(デフォルメ)(3号)
ああ、そう言えばあいつがいたな
化け物(デフォルメ)(3号)
最果ての狩人が
化け物(デフォルメ)(3号)
その男は物心がついた時にはもう盗みや殺しをしていた
化け物(デフォルメ)(3号)
生きる為
化け物(デフォルメ)(3号)
その免罪符を持って少年はスラム街に生きた
化け物(デフォルメ)(3号)
親なんて知らないし知る必要も無かった
化け物(デフォルメ)(3号)
かろうじて言葉が分かる程度の知能だった
化け物(デフォルメ)(3号)
そんなある日盗みに失敗した
化け物(デフォルメ)(3号)
相手が悪かった
化け物(デフォルメ)(3号)
教会騎士団長
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何故そんな相手をターゲットにしたかって?
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知らなかったからさ
化け物(デフォルメ)(3号)
生きていくのに必要ない知識だったからさ
化け物(デフォルメ)(3号)
そんでもって馬鹿な団長さんは
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捕まえて育て出したんだよ
化け物(デフォルメ)(3号)
まぁ、そんなこんなで平和な日々を少年は過ごした
化け物(デフォルメ)(3号)
少年はやがて青年になり、教会騎士団に入るまで実力を伸ばした
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そしてある日
化け物(デフォルメ)(3号)
団長に「最果ての地の開拓」の任が降った
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最果てって何?って顔してるな
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最果てって言うのはその地域の人間が立ち入れない地域を指す語でその要因は強力な魔獣の生息や地形などに起因する
化け物(デフォルメ)(3号)
ようは前人未到の地だ
化け物(デフォルメ)(3号)
団長が派遣されたのは森林型の最果て、要因は超強力な魔獣が多数生息と言う最悪な任務だ
化け物(デフォルメ)(3号)
それを開拓なんぞ勇者であっても難しいだろう
化け物(デフォルメ)(3号)
教会本部と魔導具を使用して1ヶ月単位で連絡を取る約束の筈だが
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最初の1ヶ月から報告は来なかった
化け物(デフォルメ)(3号)
いやぁ、そりゃあそうさ
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大英雄中の大英雄でも一年も暮らせないと言われているふざけた魔境に強いとは言えただの人が1ヶ月も生き残れるはずはない
化け物(デフォルメ)(3号)
そして団長が亡くなったのをいいことに次期団長を狙う人が争いあった
化け物(デフォルメ)(3号)
誰も団長の死なんて気にしちゃ居ない、ただ1人を除いては
化け物(デフォルメ)(3号)
青年は誰も団長の死を悲しまないことに憤りを感じたがそれを表に出すほど馬鹿じゃなかった
化け物(デフォルメ)(3号)
しかし、教会の権力者が、自分の子供を団長にするため騎士団の中で一番強く、元団長の養子ということで次期団長になりそうな青年を親と同じ最果てに送り込むことにしたんだ
化け物(デフォルメ)(3号)
その事に他の人達も1番の脅威が無くなるなら、と賛同していき
化け物(デフォルメ)(3号)
本当に青年は最果て送りになった
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それは事実上の死刑宣告と同じだった
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青年は知り合いの親友とも言える鍛冶屋に最上級の、魂の籠った武器と防具をもらい最果てに旅立つのだった
化け物(デフォルメ)(3号)
最果てにて青年は渋とく生き延びた
化け物(デフォルメ)(3号)
泥を啜り、糞尿に塗れて魔物をやり過ごし、草木を齧り、正確に魔物を殺す
化け物(デフォルメ)(3号)
1秒たりとも気が抜けない、地獄すら生ぬるい修羅の地で生き延びた
化け物(デフォルメ)(3号)
月日が経つにつれて青年の心は荒んでいった
化け物(デフォルメ)(3号)
機械の様に敵を殺し、機械の様に生きる
化け物(デフォルメ)(3号)
しかしその生活の中で変化……いや、過去との対峙が起きた
化け物(デフォルメ)(3号)
それは唐突な出会いであった
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アンデッド型の魔物が出てきた、殺すだけだ
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青年はそう思い、敵を観察した
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それがいけなかった
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教会の鎧
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見知った剣、見知った兜
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団長のアンデッドだった
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アンデッドには2種類ある、一つは死体に死霊が取り付く場合
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もう一つは
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生前の憎悪によって突き動かされる場合だ
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後者の場合、生前の技術などもそのまま引き継がれるため、非常に危険な相手である
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それでも最果ての魔物より弱い
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そして青年は
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いつもの様に殺し、その場を後にした
化け物(デフォルメ)(3号)
その程度では何も感じないほど青年は荒んでしまったのだよ
化け物(デフォルメ)(3号)
かつて憤った教会の権力者のように団長の死に何も感じなかった
化け物(デフォルメ)(3号)
しかし、その事実に気付いた青年に現実は容赦なく心を締め上げる
化け物(デフォルメ)(3号)
青年は亡霊のように魔物を屠り、幽鬼のようにフラつきながら生を送った
化け物(デフォルメ)(3号)
いっそ死んでしまえば楽なのだろう
化け物(デフォルメ)(3号)
現実は容赦なく心に牙を突き立て、なにも感じなくなった自分に怯え、それでも死にたくないと逃げるように生きる
化け物(デフォルメ)(3号)
そして突然の開墾はまたも訪れる
化け物(デフォルメ)(3号)
ある伝承には灰の竜と呼ばれる竜が存在している
化け物(デフォルメ)(3号)
それは灰色の鱗を持ち、太古の刻を生きて、その吐息は国を燃やし、爪撃は森を薙ぎ、その尾は大地を割る
化け物(デフォルメ)(3号)
そんな化け物と出会ってしまった
化け物(デフォルメ)(3号)
青年は観察した、敵の弱点を、短所を
化け物(デフォルメ)(3号)
自らが持てる全ての技術を駆使して生きようとした
化け物(デフォルメ)(3号)
しかし逃走は困難、敵は神話の竜であり戦力差は絶望的
化け物(デフォルメ)(3号)
その差は絶望的、どこかで掛け算でもしない限りその命に刃は届かず、無残に散りゆくのみ
化け物(デフォルメ)(3号)
だから青年は
化け物(デフォルメ)(3号)
命を掛けた
化け物(デフォルメ)(3号)
その命を代償に人を凌駕し、神話の英雄と同等の力を得て、神話に立ち向かった
化け物(デフォルメ)(3号)
左翼を断ち、尾を引き千切り、爪を砕き、目を潰す
化け物(デフォルメ)(3号)
青年はついに神話を屠ることに成功する
化け物(デフォルメ)(3号)
しかし、青年も深いの一言でも言い切れないほどの重傷を負うことになった
化け物(デフォルメ)(3号)
それを教会本部に報告した
化け物(デフォルメ)(3号)
そして帰ってきた返答は一言
化け物(デフォルメ)(3号)
「で?こちらに被害が無いなら報告するな、いや、まて、素材はどうした、後日使いをよこすからそれまでに確保しておけ」
化け物(デフォルメ)(3号)
あぁ、笑えてくるぜ
化け物(デフォルメ)(3号)
命まで掛けてコレだ、人とは度し難いほどに醜悪だな
化け物(デフォルメ)(3号)
なんとか素材を剥ぎ取り、住居に放り込み、そしてベッドに倒れこんだ
化け物(デフォルメ)(3号)
そして教会から来たのはなんと新団長だった
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青年はもう動けない身体を酷使し質問を投げかけた
化け物(デフォルメ)(3号)
「なぜ貴方が来たんですか?部下にやらせればいいじゃないですか」
化け物(デフォルメ)(3号)
皮肉のつもりだったのだろう
化け物(デフォルメ)(3号)
しかし新団長の返答は
化け物(デフォルメ)(3号)
「竜殺しの称号を得るためだよ」
化け物(デフォルメ)(3号)
「それも神話の竜のね」
化け物(デフォルメ)(3号)
その言葉で青年は全てを察した
化け物(デフォルメ)(3号)
「分かったよ、全て持っていけよ、俺には報酬もなしかよ」
化け物(デフォルメ)(3号)
「クッハハハハ、何を勘違いしているんだ?お前はもう用済みだ、みたところ動けないようだしな、気が違えて襲われでもしたらたまったもんじゃあない」
化け物(デフォルメ)(3号)
「だから死ね」
化け物(デフォルメ)(3号)
そう言って新団長は青年の首を刎ねた
化け物(デフォルメ)(3号)
そうして新団長は竜殺しの名を得て、富を築き上げた
化け物(デフォルメ)(3号)
一般には新団長が最果てに竜を討伐に行って見事に成功させたので新団長は民衆からの支持も得て、国の一大権力者にまで成り上がったと言われている
化け物(デフォルメ)(3号)
哀れだよな、馬鹿だよな、さっさとラクに死ねば良かったのに
化け物(デフォルメ)(3号)
誰にも知られないなら逃げれば良かったのに
化け物(デフォルメ)(3号)
中途半端な愚か者に相応しい末路と思わないか?
化け物(デフォルメ)(3号)
さて、ご静聴ありがとう御座いました
化け物(デフォルメ)(3号)
ではまた

7  

投稿日時:2017-10-05 02:50
投稿者:ニャル
閲覧数:2

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