あなたに食べられるまで
お馬鹿な羊とクールな狼のいまいち噛み合わない会話をお楽しみください!
- ねえ、大切な人に恩返しするには私はどうしたらいいの?
お馬鹿な羊
- 君の大切な人って誰なの?
???
- 狼さん
お馬鹿な羊
- 私は狼さんに助けてもらったの
お馬鹿な羊
- 崖から落ちそうになったところを助けてもらったの
お馬鹿な羊
- 可愛い可愛い羊さん、君は本当に彼を信じてもいいのかい?
???
- 彼は君を助けたふりをしていつかその肉体を喰らうかもしれないんだよ。
???
- 君は呆気なく裏切られるかもしれないんだよ。
???
- 狼さんはそんな事する人じゃない。
お馬鹿な羊
- だって、嵐の夜に大きな雷が鳴って私が泣いている時だって…
お馬鹿な羊
- 私を抱きしめて朝まで撫でてくれた。
お馬鹿な羊
- 君は幼い頃に両親を亡くしているからね。彼の温もりが有り難く感じたのだろう。
???
- でもね…可愛い可愛い羊さん、そんな事で彼を全面的に信じてしまっていいのかな?
???
- 彼は今も君のその脂が乗った肉体を舌舐めずりしながら眺めているかもしれないよ。
???
- …いいの。
お馬鹿な羊
- 狼さんが私を食べて満足できるのなら私はとても嬉しいもの。
お馬鹿な羊
- それで恩返しが出来るならたとえ残虐な囚われ方をしたって別に構わないわ。
お馬鹿な羊
- そうか…。君がそこまで彼を思うなら、恩返しは好きにするといい。
???
- 所詮肉食の狼なんて生命の大切さなど分かるはずがない。
???
- 可愛らしくて頭の悪い羊は、残酷な結末に絶望するんだ…
???
- 数時間後…
- 狼さん…どこですか?
お馬鹿な羊
- …その声はあの時の羊か?
狼さん
- 俺はここにいるよ。
狼さん
- よかった。やっぱりここにいたのね。
お馬鹿な羊
- 何の用?
狼さん
- あのね…狼さんに恩返しがしたくて。
お馬鹿な羊
- 恩返し…?
狼さん
- 泣き虫な私を優しくなだめてくれた。他の動物に優しくされたのなんて初めてで、私…どうお詫びをしたらいいか
お馬鹿な羊
- もし、よかったら…私のことを食べてくれませんか?
お馬鹿な羊
- …は?
狼さん
- 何言ってるの?
狼さん
- いえ…だから私を食べてくれませんか。
お馬鹿な羊
- 狼さんは私のような脂の乗った動物が大好きなのでしょう?
お馬鹿な羊
- 好きだよ。
狼さん
- お前みたいに美味そうで馬鹿で泣き虫で放って置けなくなるような奴は。
狼さん
- そこまで言うことないじゃないですか!
お馬鹿な羊
- これだから馬鹿な羊は…。
狼さん
- いいよ、恩返しなんてしなくても。
狼さん
- ただ俺のそばにいてくれればそれでいい。
狼さん
- あなたのそばにいてもいいの…?
お馬鹿な羊
- 俺がそう言ってるのだから当然だろ。
狼さん
- お前は俺のそばにいて毎日笑っててくれればそれでいいから。
狼さん
- だから、絶対に他の奴に食べられるなよ。
狼さん
- わかりました。
お馬鹿な羊
- ずっと狼さんのそばにいます。
お馬鹿な羊
- あなたに食べられるその日まで。
お馬鹿な羊