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ひとり劇場

待ち人来らず 〜雨女と晴れ男〜

少し長めの恋愛小説です。※ごめんなさい、しんどかったので会話文が「」です。

いつにも増して暗い空。友人から聞いた話によると、私たちは無意識のうちに天気に気分を左右されるらしい。
私はこの日、まさに天気そのものの気分であった。
「…。」
流れる人波を虚ろな目で見つめる。友達とお揃いの買い物袋を手に下げて笑い合う女の子や、お母さんと手を繋いで歩く男の子。彼氏と手を組む私と同い年くらいの女性。
ため息も溢れない。ただただ乾いた感情が私の中を駆け巡っていた。
なぜ、あんな事を言ってしまったのだろう。どうしてデートの前日に喧嘩などしてしまったのだろう。
腕時計を何度も確認する。時刻はとっくに約束の時間を過ぎていた。華やかな街並みや人々を目で追って行くうちに1人ぽつんと立ち尽くす自分が惨めに思えてきて、それに苛立ちを覚えた。
もういっそ、1人でショッピングでもして休日を満喫してしまおうか。あいつのことなんて忘れてしまえばきっと楽になれる。
「…。」
あ、雨だ。
そう思った頃にはもう遅く、賑わっていた人波もどんどん活気を失っていった。代わりにぽつぽつと色とりどりの傘が揺れ動くのが見えた。
当の私はというと傘を片手に持っているにも関わらずそれを使う気配を見せずに濡れて行く自分を自嘲気味に眺めた。せっかく新調した淡いピンクのワンピースも、雨のせいで鮮やかな色に染まっていった。
ふと自分の目から雨ではないものが溢れ出していることに気づく。
「…うっ。」
それは暖かくて塩っぽい。私の心に染み込んで感情をむき出しにさせるのであった。
もう、きっと私たちダメなんだろうな。
「…ごめん。」
「え?」
「ごめん、遅れて。」
顔を上げなくてもわかる。
私を青い影で覆う傘。この色は見覚えがあった。忘れるはずがない。あの日、2人で一緒に入った大きめの青い傘。
「ごめんな。1人で長い間待たせて。」
私の涙を袖でそっと拭き取る。しかし雨でびしょびしょだった私は拭いてもほとんど意味がなかった。
「なんで来るのよ!」
「このまま、あなたが来なければ私は…」
私は…
この真っ青な傘に頼ることなく、1人で濡れながら帰って…やけ食いして大泣きしながら眠ることが出来たのに。
あなたの優しさを忘れることが出来たのに。
「泣かないで。」
「…バカ…。」
私は自然と彼の服を引っ張って自分の方に引き寄せていた。1つは自分のぶさいくな泣き顔を隠すため。
もう1つは、私だけの彼の優しさに甘えるため。
「持ってるなら傘さしとけよなー」
「う、うるさい!濡れたい気分だったの」
「タオル貸してやるから、一旦俺の家に行こう?」
「それから美味しいものたくさん食べに行こう。」
「…うん!」
結局私は憎いあいつの事が大好きで、天気になんて左右されないほど彼の存在は大きかったんだって、わかったんだ。
「まだ雨が降ってる…」
「ん?もう少し寄りな。肩が濡れるよ。」
「もう濡れてるし。」
「の割にはご機嫌だな。」
「何、悪いの?」
「いいえー?なんでも。」

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投稿日時:2017-06-25 09:00
投稿者:夢魔
閲覧数:6

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