正義によって滅びた村
それぞれが正義のため戦った。結果は……皮肉なものだった。
- ある高い山の頂上
紫憐の魔女
- 紫憐の魔女が棲む城にて……
紫憐の魔女
- …村が荒れているわ。
紫憐の魔女
- 一部の村人はストライキを
起こしてる…
紫憐の魔女
- 王のかける負担が大きいの
かしら…
紫憐の魔女
- なら、私は……
紫憐の魔女
- 王を殺すわ。
紫憐の魔女
- 場所は変わり、近い孤島
紫憐の魔女
- 蒼怜の魔女が棲む城にて……
紫憐の魔女
- ……村が荒れてる。
蒼怜の魔女
- ストライキ起こしてる村人も
いるね。
蒼怜の魔女
- あいつらのせいで、農民の
畑が踏み荒らされてる。
蒼怜の魔女
- あいつら、富裕層だな。
すこしだけ我慢すれば
済む話なのに…
蒼怜の魔女
- よし……あの村人たちを、
殺そう。
蒼怜の魔女
- そして、村の城。
紫憐の魔女
- ……村が荒れている。
王
- 嘆かわしいことだ…。
王
- ストライキだと?
多くを持つ者の財産を一部
貧困層に支給しているのだぞ…
なにが悪いものか。
王
- これも、孤島に棲むと
云われる蒼怜の魔女の仕業か…。
王
- よし、『魔女殺し』を手配する。
王
- 最後に……城の前。
紫憐の魔女
- はんた~い!
村人たち
- 貧窮支給制度はんた~い!
村人たち
- なぜ私達がそんなことを
しなくてはならない?
村人たち
- ちくしょう!
村人たち
- ちくしょうめが!
村人たち
- 王は、山に棲む紫憐の魔女に
誑かされているのだ!
村人たち
- 紫憐の魔女を殺せ!
エイエイオー!!!!!
村人たち
- こうして、
紫憐の魔女
- それぞれが
それぞれの正義をかざし
紫憐の魔女
- 迷走していった。
紫憐の魔女
- 『哭け、我の刃となり血液となる聖なる柊よ』
紫憐の魔女
- 『王を自らの為滅ぼさんとする悪徳の王を、汝の呪いで葬り給え』
紫憐の魔女
- 『嘶け、吾が望み求むままに臓を啜り涙を呑む樫の枝』
蒼怜の魔女
- 『慈悲深き王に変わり、悪魔と成り果てようものを滅せよ』
蒼怜の魔女
- 魔女はそれぞれに、それぞれの
呪いをかけました。
紫憐の魔女
- 誰かを傷つけた分だけ
自分もダメージを受ける呪い
でした。
紫憐の魔女
- ここかァ…
魔女殺し
- このくらいで良いかねェ。
魔女殺し
- 魔女殺しは、魔女を殺すための
銀色の罠を
海底に沢山仕掛けました。
紫憐の魔女
- みんな!武器を手に取れ!
村人たち
- 行くぞォォォォオオォ!!
村人たち
- 村人たちは、血気盛んに
銃や刀を持って
猛然と城へ進んでゆきました。
- みんな、自分が正しいと
思い込んでいました。
- すでに他の視点から
ものを見られる状態では
ありませんでした。
- !?
紫憐の魔女
- あれは…村人!?
紫憐の魔女
- お前が王をたぶらかして
俺たちの財産を奪おうとして
いるのだろう!
村人たち
- 殺してやる!
村人たち
- 待ちなさい…誤解よ、
話を聞い…ッ
紫憐の魔女
- 槍、刃、弾。
- 紫憐の魔女の、
色白な美しい躰は
無残に穢されていきました。
- ……かは…っ…………待っ…て……
紫憐の魔女
- 紫憐の魔女は息絶えました。
- それと同時に、蒼怜の魔女が
村人たちにかけた呪いが
発動しました。
- ………!?
村人たち
- げほごほ……ごぼっ!?!?
村人たち
- その場にいた人々皆が、
吐血して死に絶えました。
- 遺された家族は、
魂を天へ還すという蒼怜の魔女の屋敷へと
出向きました。
- それを見た蒼怜の魔女は、
顔面蒼白になって呟きました。
- まずい……呪いをかけたのが
バレたんだ…!
復讐しに来たんだ…
逃げないと…紫憐のように、
殺される!
蒼怜の魔女
- 屋敷の窓から出て
水面上をすれすれに飛んだ時…
- 銀色の罠が、炸裂しました。
- ぐわぁぁ!?
蒼怜の魔女
- うわーっ!
村人たち
- 周囲にいた人達皆、
塵と成り果てました。
- 亡者の怨念と、蒼怜が王にかけた
呪いによって、
王は城で、魔女殺しは
遠い場所の山奥で死にました。
- 城に仕えている人達も、
次第に無くなるお金のもと
死んでゆきました。
- こうして、
かつて栄え賑わっていた
ひとつの村、否…国が、
滅びました。
- 力を持つものの
自分手前な正義のせいで。
- 正義が四つあれば、
それぞれ他の三つは悪?
- なにが正義でなにが悪なのか?
- それはきっと、
- 神様でもなくては
わかりませんね。
- もしかすると、神様すら
わからないのかもしれない。
- それでも
『より犠牲の少ない』
正義を貫けば
いいのではないですか。
- ちがいますか。
- 考えてみてください。
- 正義のもとに、生きてますか?
- 正義のもとに、生きられますか?