あの子が亡くなった日 10
- そして十月の終わり。
心音
- あの子は話せなくなりました。
心音
- ごはんも食べなくなりました。
心音
- 3DSを手の下に重ねたまま
寝たきりでした。
心音
- 学校で、KがHといっしょに
ふざけて……~~…
心音
- 今までとちがって、
私が話し続けるように
なりました。
心音
- 学校での話がほとんどでした。
心音
- あの子は、
それを聞いて
泣いたり笑ったりしていました。
心音
- 時々痙攣を起こしました。
心音
- 目に見えて、死への道を
歩いていました。
心音
- 十月が終わると、
あの子は一日のほとんどを
寝てすごしていました。
心音
- 元気に起き上がることも、
人懐こく話すことも、
弾けるような笑顔で笑うことも、
グラウンドを走り回ることも…
心音
- あの子はできなくなって
しまったのです。
心音
- 私はそこで
独り言みたいに、
誰も聞いていない話を
し続けました。
心音
- あの子に残されたのは、
病院の白い天井と
時折聞こえる私の声だけ。
心音
- ●▲林に栗ができてましたよ。
誰かモンブランでも作って
くれませんかね。
心音
- ああ、あと、校庭のイチョウがメスでしたから
銀杏が取れたんですよ。
心音
- すごい悪臭です。
持ってきてあげましょうか?
心音
- ……………………
N
- 十一月も半ばに
差し掛かりました。
心音