ルービックキューブ
偽悪者やってるシオンくんだよ。聖戦の終盤までは一周目の通りに物語を進めなきゃいけないのでみんなと関わらないようにしてるマンだよ
- -談話室-
- コレぐらい簡単さね〜
ラビ
- すっかり整ったキューブを机に置くと、
拗ねたリナリーが頬を膨らませる。
- 違うわ。だってラビは、面の動きを記録してるだけでしょう
リナリー
- うっ…
ラビ
- 痛いトコを突かれた。黒の教団に来て二年。なかなかオレについて詳しくなったリナリーに、反論の仕様もない。
- もしかして、隠して回しちゃえば分からないんじゃないかしら?
リナリー
- リナリーが、これは名案とばかりに手を合わせる。そしてその手を机の下へ持っていき、キューブ特有のカチカチという音を響かせた。上段右、中段上、右段下……
ダメだ。肩の動きだけじゃあ予測にも限度がある。
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- これ、どーすんの
ラビ
- 端的に言おう。戻らなくなった。
- 他の誰かに戻して貰えば良いわ。リーバー班長、とか…。
リナリー
- “ルービックキューブのために、睡眠を削ってまで得た時間を費やせ”ってか?
ラビ
- うっ。
リナリー
- うっ。今度はリナリーが息を詰まらせる番だった。やり、仕返し大成功。なんて言ってる暇じゃあない。つーか、計算式を一つずつ解決していく数学者はな、解の先読みをする職業とはちげーんさ。アイツに渡したら、ただ回していって…永遠に式だけを書き続けるんじゃ、きっと答えが出ないまま終わっちまうだろ?
- どうしたんだい、二人して顔を突き合わせて。コムイに目を付けられるよ?
シオン
- 入り口の方から声が投げ掛けられた。思わずヒヤリとさせられる内容に、オレとリナリーは慌てて顔を上げる。
- シオンくん
リナリー
- やあ、と口元だけで笑う。シオン・エインズワース。瞳は変わらず冷えきっていて、まるで間に引かれた一線が目に見えるようだった。そのままオレとリナリーの間のソファー、水平的に捉えるとおよそ垂直に並べられた朱色へと腰を下ろす。
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- ホラ、これで良いのかい?
シオン
- ええっ、本当に!?
リナリー
- おいおい。ウソだろ?何かイカサマしてんじゃねェだろうな?
ラビ
- あんなに戻らなかったルービックキューブは、いとも簡単にその顔を揃えた。身を乗り出す二人とは対象的に、飄々と構えるシオン。
…あれ、なんだこの悔しさ。
- まさか。アレンでもあるまいし…なんならもう一度やっても構わないよ?
シオン
- 余裕綽綽。相変わらず鼻につくヤロウだ。
- まあまあ、そう拗ねないでよ。
先の事を考えるの、慣れてるんだ
シオン
- オレは目を細めた。――気分屋。 残酷なコトを言ったかと思えば、こうして歳相応にオレらと戯れる。だけど、ゼッタイに心は開かない。コイツがブックマン後継者なら、ジジイも早々に引退していたことだろう。
いつもオレらを見張っているようなその目は、敵意と言うよりも………監視や観察に近いものを感じる。他のヤツらは気付いてねェけど、その強さの割に オレら下っ端エクソシストの動向を一々警戒しているのにも最近気付いた。
オレがコイツについて記録できてんのは、それくらい。
- もう終わりかい?
シオン
- あとは、ルービックキューブが病的に上手いってコト。