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ひとり劇場

キャンディー

‪①“マリア”はエインズワース元帥の宿主‬ ‪②時間軸てきには、マリアが元帥に飲まれて消えたあと(アレンがネアに飲まれて消えるように)‬

マリア
コムイ。私の部屋にキャンディーを届けるのをやめろ。
マリア
エクソシストは街に出られないこともあるからな。確かに、定期的に部屋へ送ってもらうというのは賢い選択だ。
だが、キャンディーなんてイカれてる。萎びたシガレットをくわえてるほうがずっとマシだね。
任務から帰ったアレンとリンクが室長室に入ってくる。
マリア
いい所に来た。コイツの部屋に宛先を変えろ。
マリアが指を指す。部屋に入るなり突然話題の中心へと引き出されたアレンが、目を瞬かせた。
アレン
えーと……僕?
マリア
おかしいと思ったんだ。調べてみたら、団服のポケット、ウエストポーチ、筆記具…。あちこちにキャンディーが入ってる。
アレン
そりゃあ沢山お菓子が貰えるのは嬉しいですけど…
マリアがそんなにキャンディーを食べるなんて。僕、全然知りませんでしたよ
アレン
(言わずもがな、いなくなった“彼女”の話。ふとすぐ隣の金色に目を遣る。
なんだろう…僕らがどれだけ会話を進めても、リンクはずっと黙ってる。)
マリア
馬鹿者。高燃費のウォーカー、お前が任務中に腹をすかせるからだ。
お前らリー兄妹やジュニア、ロットーやノイズ、ハースト……
任務が上手くいかなくて落ち込んでる時。怪我をした誰かを心配してる時。大き過ぎる事実に打ちのめされている時。
大抵の者は、一声と甘味があれば嬉しい顔をする。
コムイ
“マリアちゃん”らしいねぇ。
マリア
それに、ウォーカーが時々難しい顔をして考え込む時があるから、現実に引き戻すためだとも。指摘すると一瞬影のある顔を見せるから、言葉の代わりにキャンディーを渡す。
アレン、君は君だ…ってね。
アレン
(マリアは、振り返って僕にキャンディーを突き付けてる。耳から入った音が、全部全部反対側の鼓膜から抜けて出ていくみたいだ。)
アレン
(―――ああ。いつの間にか両目から溢れる涙にも気付けず、両手で顔を覆う。コムイさん達は先ほどまで同じだったはずの空間から切り取られたみたいに、僕を見つめてた。)
アレン
(小さく “アレンくん…”、と聞こえた。耐えられなくなって膝をつく。さながら懺悔する罪人。)
マリア
なんだ、知らなかったのか
アレン
(顔を覆った僕を淡々と見下ろす“マリア”の声だけが、遠くに聞こえた。)

 

投稿日時:2017-02-17 21:43
投稿者:夢椿

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