Name 第6話
オリジナルストーリー。もともと演劇の台本用に作ったものなので、地の文はト書きとなっています。
- 三年前。
森の中を逃げる少女。
- いたぞー!追えー!
研究者
- っ!
少女
- 1度、止まりかけた少女は、その声を聞いて再び逃げ出そうとする。
しかし、つまづいて転んでしまう。
- あっ!
少女
- 研究者たち、少女にナイフを突きつける。
- さあ、もう逃げられない。
君も、ここで終わりだ
研究者
- いやだ…お願い…!殺さないで…
少女
- 私たちにそんなお願いをしても無駄だよ
研究者
- 少女に近づく研究者たち。
- そこへ、どこからともなく男がやってくる。
つかつかと歩み寄り、研究者たちの前で止まる。
- …ん?なんだね、君は。邪魔をするなら容赦はせんぞ。
研究者
- 次の瞬間、男は研究者を殴る。
次々と倒れていく研究者たち。
- そして、男は少女の腕をつかむ。
- 行くぞ
男
- えっ!あ、あの…!
少女
- 男はそのまま走り出す。
- ………………。
- 森の中の小屋。
- ここまで来れば、誰も来ないはずだ
男
- …あの、ここは?
少女
- 私の研究所だ
男
- 研究…?まさか、あなたも私を!?
少女
- 違う。研究者ということだけで疑うな。
そもそも私が研究してるのは数学だ
男
- ……そうなんですか…
少女
- ま、あんなことがあった後では、疑うなという方が難しいか
男
- ………………
少女
- ………………
男
- 男、沈黙に耐えかねたのか、パソコンを使い始める。
- …なんで、私を助けてくれたんですか…?
少女
- 逆にあの場面で助けない方がどうかしているだろう
男
- でも、私なんか助けてもらう価値なんて…
少女
- 価値など関係ない
男
- だけど、私は不老者なのに…
少女
- ああ。少し前に世間を騒がせていた奴らか。
まさか、生き残りがいたとはな
男
- こ、殺さないんですか…?
少女
- 私は別に、その不老者とやらに興味はない
男
- 少女、安堵のため息。
- そういえば聞きたかったんだが、何故あんなことになったんだ
男
- …裏切られたんです。友達に。
密告されて、私の仲間は全員殺されてしまいました。
少女
- …ほう。なるほどな
男
- ……あの、私これからどうすればいいと思いますか?
少女
- ここに留まるなり、なんなり、好きにすればいい
男
- …ありがとうございます。
そうですよね、ここにいた方が安全かも知れません
少女
- ただ、いつかはバレる
男
- !
少女
- その時は、もう助けてやることはできない
男
- ……………
少女
- ……生きたいか?
男
- え?
少女
- これからも生きていきたいと思うか?
男
- …はい
少女
- それなら、近いうちにここから離れた方がいい。誰にも見つからないように
男
- そんなの、どうすれば…
少女
- 存在を隠せ。それしかない
男
- どうやって、そんなこと…!
少女
- 知らん。私に聞くな
男
- じゃあ、人と関わるなってことですね?
少女
- …別に、そう言っている訳では無い。
関わりたければ関わればいい
男
- …でも、どうせきっと、また裏切られる…
少女
- いいか。よく聞け。世の中そんな奴らばかりだと思ったら大間違いだ。
ごく稀にだが、単純でバカで純粋な奴もいる
男
- そいつは絶対に裏切ったりしない。
裏切るという考えも浮かばない
男
- 関わるならそういう奴にしておけ
男
- 単純でバカで純粋……
少女
- 私から言えることは以上だ。
あとは、自分でなんとかしろ
男
- ……もう、充分です。
ありがとうございました!
少女
- …生きろよ、必ず
男
- はい!
少女