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- ッ、てぇ……ここは……
- (目覚めりゃ背中に柔い感触がある
仰向けに見る天井はありゃ木材か?
アジトがリフォームしたってぇ話は聞いちゃいねぇが……)
- お目覚めになりましたか
- げ、テメェ……マーセナリ!
- おおお、落ち着いてください!
こちら危害を加えるつもりはありません!!
- アア……!?っつーかどこだよ此処
牢獄にしちゃべらぼうな扱いじゃねえか
- 落ち着いて聞いてください
ここはリーン、貴方の故郷と違う異国の地です
- …………………………………………
- は?
- ううむ、一体どこから説明したものか……
- ひとまず、目覚める前に何か覚えていることはありませんか?
- なるほど……そのように伝えられていたと……
- …………馬車の襲撃計画を実行していた筈だ
外郭砦の占領戦に怖気づいた貴族の連中が金と人に物言わせて逃げ出すっつーから、引っ張り出してクソッタレな象徴として晒しあげる
そういう扇動計画だぁな
- それが一体どうしてこうなってる、そもそも テメェはマーセナリだろう?貴族じゃねぇ
- ええ、ええ……結論から先に話しますと……レネゲイドの皆さまが襲撃した馬車に目標の貴族は一人もおりません
- あの馬車は私のようなマーセナリ、或いは霧の檻に閉じ込められた商人や旅人、そういった外部の者たちが強行突破するために集った、そういう一党です
- っつーことはなんだ?
俺達はニセの情報を掴まされたってのか?
- おそらく、誰が流したかは分かりかねますが
- ……考えられんのはまぁパラディン筆頭だぁな、マーセナリのお前が交流してた相手ならさておき、話したがらねぇような連中が疎まんで来るってのは想像つくだろう?
- 正直、針のむしろですよね
- 或いは裏通りとか、貿易に関わる連中かもな テメェら外部の連中がアルガダっつうネズミと金取りの中身をバラすのを恐れたか……
- ああ、貴族連中が逃げ出したってのがマジで、
その本命に目を向けられないようにタイミングを合わせながらなすりつけたって線もあるかもしれねぇな?
- ふむ……何れにしても真実は謎のままですね
- なるほどな……そこのところは理解できた、
で?そこがどうしてリーンに繋がるんだよ
- 元よりアルガダの地に詳しい貴方ならば言わなくてもご理解頂けるかと思われますが……
- ……そうか、思い出したぞ
あんときゃ確かミストギアが
- ええ……元より取りうる限りの魔霧対策や戦力の確保など万全を期して挑みましたが、
ミストギアとレネゲイド、その両方までは対処できませんでした
- 結果として双方に負傷者を出し、突破は命題として帰還が困難である以上、意識を失い重傷を負ったレネゲイド主共運ばざるを得なかった……そういった顛末です
- ……結局俺はまたやられてたってワケだぁな……情けなくて笑えてくるぜ
- ……おしっ、わかった 情報提供感謝しとく
- ……行かれるのですか?
- ああ、世話してくれたのは礼を言うわ
ありがとうよ
- で、あれば私は止めなければなりませんね……
- …………なんだテメェ
いっちょまえにマーセナリ気取ってんのか?
- 一人前ほどでもありません。ですが、
御熱の信心浅い傭兵紛いが郷にあだなす優秀な斥候を食い止めたとなれば、大金星でしょう?
- こっちは止めてくるやつごと
吹き飛ばしても良いんだがなぁ……
- 残念ながらそれは叶いません……
そちらの武器は予め押収させて頂きました
- …………(ベッドの内側、自分の腰元のホルスターに手を伸ばす)
- 無論、エーテルの銃器もです……そもそも故障していましたが
- ちっ、まさぐってんじゃねぇよ……
- そして私も、魔法の触媒に用いる花は全て手元から離しております。勿論これ以外に攻勢手段がないわけではありませんが……手の内を明かすというのも信頼を勝ち取る手段の一つと思ってください
- お互い決め手に欠けてるワケだ……
- そちらの拳を受け止めてみせますし、私の魔術を貴方は交わしきるでしょう……
- ……………………
いいぜ、わかったよ。そこまで引き止めるには何かしらの交渉があんだろ
- 理解してもらえて助かります……実は今素寒貧でして
- ああ…………あァ?
- いえあの、暫く長居していた国が作物の出来高が最悪で差別階級の差が酷く物価が地獄で、
挙げ句の果てには自給自足の狩猟を妨げる魔物ならざるものがいたりしてですね?
- オイ待てぇ冷静に面面と事実の悪評を並べるんじゃねぇ。一応故郷だぞこちとら
- とにかく、傭兵の真似事で日銭を稼いでいたのですがそれでも足りないものは足りなくなり、手持ちの金がもう無くなっていたのですよ……
- 一か八か、テキサスホールダムなどにも挑戦してみたのですがそもそも種銭が少なく……稼ぎは僅かばかりです
- ギャンブルは稼ぎじゃねぇだろうがよぉ!
っつーか、真面目な顔してやるこたぁやってんだぁな!
- と、とにかく今現在我々の財布事情は前例無いほどの緊急事態に及んでいます!どうにか協力して頂けませんか!?
- 勝手に我々にすんじゃねぇよ……
- ん?ああ、いえ……我々というのは……
- 扉の開閉音
- 戻ったぞ
- ああ、ちょうどいい。お帰りなさい愚かさん
- ほう、目を覚ましたのか
- ……何だコイツ、ガキか?
- 愚かしいな、貴様は見目の判断だけで結論を急ぐのか
- 悪かったな、こちとら外国で目が覚めたのも初めてなんだ。目に見えるやつは見えるがままだろうがよ
- ふん……その様子だとある程度話は聞いていたか
- ああ、テメェが我々の々の方か。
難儀な奴とつるんでるんだな
- 今に始まったことではない。元よりこやつが愚かなことを目論むからだ……
- 面目次第も……
- 愚かな話を纏める。貴様はこれよりこの宿場「羊のしっぽ」が新たな住まいだ。故郷を外れ民の証も持ち得ぬ愚か者に元より選択肢は無い
- 貴様が国へ戻るというのならば勝手にしろ、
だが……この愚か者はそれを止めるだろう。
ならば貴様にはそれすら封じ込める証明をこの宿場に残す必要がある。
- (←この愚か者)
- いずれにしても、貴様の目的が果たされるには時間を要する。精々愚かに考えるべきだ
- ったく、有無も言わさぬってヤツかぁ……?
仕方ねぇ。こうなったら出たとこ勝負だぁな……
- で、あれば引き受けてくださるのですね!
- いや決めたわけじゃねぇよ
何グイグイ来てんだよ
- 何はともあれです……そういえば、
自己紹介をしておりませんでしたね
- 私、[お花の遊牧民]の修行者。ヌルギティと申します、魔法と精霊の狭間を進み太陽へ至ることを目的としております
- テメェが何言ってるかはよくわかんねぇが……
- ホローベックだ、よろしくな
- 愚か者だ
- ……………………
- ……………………
- オイ、本当に難儀なのはもしかしてアッチの方なのか?
- 慣れれば、慣れれば大丈夫なんです、ホント……
- 愚かしいな……