探偵社と海
「文豪ストレイドッグス」の創作話。
- あー、こうも毎日働き詰めだと過労死してしまいそう
太宰治
- 何を云っている。働き詰めと云える程、働いておらんだろう
国木田独歩
- 国木田君は厳しいなぁ。大切なのは量じゃなくて質だと思うよ、私は
太宰治
- でも休暇ってのは欠かせないもんさ。人間何処かで気を抜かなきゃねぇ
与謝野晶子
- 確かに休みは欲しいですよね。誰かしら仕事だから探偵社の皆で出掛けた事がありませんし
中島敦
- 都会の人は働き過ぎな気がします。何時も時計を見て…
宮沢賢治
- そうですわ、皆様で休暇を取りません?
谷崎ナオミ
- それは楽しそうだけど、皆居なくなったら困るンじゃない?
谷崎潤一郎
- 話は聞かせて貰った。休暇届けは受理する。明日は全員休みだ
福沢諭吉
- 社長ー、またそんな事言ってー
江戸川乱歩
- 不服か?
福沢諭吉
- 不服じゃない訳ないでしょ。社が機能しなくなるってのに
江戸川乱歩
- なら仕事がてらに出掛けるぞ。丁度依頼が一件来ている
福沢諭吉
- 何それ、事件なんて直ぐ解いちゃうの知ってる癖に
江戸川乱歩
- では私は予定の調整を立てますわねっ!
谷崎ナオミ
- 楽しみだね、鏡花ちゃん
中島敦
- …うん
泉鏡花
- そして待ちに待った休暇の日
- 海だ!砂浜だ!青い空だ!
中島敦
- いやぁ、海は善い。浜辺に散りばめられた宝石の如き女性達の麗しき水着姿……
太宰治
- 太宰、あまり女性にちょっかいを出すな
国木田独歩
- 判ってる判ってる。…ヘイ、そこのお嬢さーん!私と心中をー!
太宰治
- ……行っちゃいましたよ、太宰さん
中島敦
- 放って置け。直ぐに戻ってくる
国木田独歩
- そういえば乱歩さんと社長は?
谷崎潤一郎
- 二人は近くの温泉に行くって云ってました
中島敦
- 女性社員の方々はまだ着替えてらっしゃるんですか?
宮沢賢治
- 女の人は時間がかかるからね。もう直ぐなンじゃないかな
谷崎潤一郎
- 私も実に愉しみだ
太宰治
- って太宰さん何時の間に湧いたんですか!
中島敦
- 湧いたとは酷い言い様だね、敦君…。浜辺の女性には粗方声を掛けたから戻って来たまでだよ
太宰治
- この数をあんな短時間で…!?
中島敦
- 張り切ったからね!
太宰治
- 全く…仕事にもこの位の意気込みなら善いのだがな……
国木田独歩
- それは無理。愉しくないもの
太宰治
- お兄様ー!
谷崎ナオミ
- おっ、着替えが終わったみたいだね
太宰治
- ナオミ、その水着も凄く似合ってる
谷崎潤一郎
- お兄様に喜んで貰えてナオミも嬉しいですわ
谷崎ナオミ
- 遅くなったね。更衣室が混んでいて時間を取られちまった
与謝野晶子
- お待たせ…
泉鏡花
- 鏡花ちゃん…!
中島敦
- おやおや?どうしたんだい、敦君。鏡花ちゃんに自分の上着を羽織わせて前に立ち塞がるなんて
太宰治
- と、特に意味はないです…
中島敦
- さては少年……鏡花ちゃんの水着姿を我々に見せたくない、とか?
太宰治
- 違います!!
中島敦
- …図星なンだね
谷崎潤一郎
- えー勿体無い。鏡花ちゃんの水着姿すっごく可愛らしいのに
谷崎ナオミ
- こうなったら…ナオミちゃん!
太宰治
- はいですわっ、太宰さん!
谷崎ナオミ
- ちょっ、一寸!何するんですか太宰さん!!
中島敦
- 何って君と鏡花ちゃんを引き剥がしてるんだよ
太宰治
- 上着脱がせちゃいますね
谷崎ナオミ
- おぉ〜…これは……
太宰治
- とても可愛いです!
宮沢賢治
- …悪くないな
国木田独歩
- そんなに見られると恥ずかしい…
泉鏡花
- むー…
中島敦
- そんなに不満そうにして。自分の鏡花ちゃんが他人に見られるのは厭かい?
太宰治
- 厭じゃない訳…ってだからそういうのじゃありませんってば!
中島敦
- ふふ、なら違うという事にしておこうじゃないか
太宰治
- 行こっ、鏡花ちゃん!
中島敦
- うん…!
泉鏡花
- 鏡花ちゃんは海を見るのって初めて?
中島敦
- 初めて。こんなに広い水の塊があるなんて知らなかった
泉鏡花
- 僕もね、初めてなんだ。孤児院じゃ連れてきて貰えないから。だから本の中でしか見た事がなかった
中島敦
- …そうなんだ
泉鏡花
- この水は色んな国に繋がっていて、何処までも塩辛い。何だか凄いよね
中島敦
- 来年も来たい。…連れて来てくれる?
泉鏡花
- 勿論だよ!
中島敦