過去
身内向け
- 以前から聞きたいことがあったんだけど、いいかい?
露芝鈴緒
- ああ
伊藤宏美
- 君の瞳や髪は大部色素が薄いけど、親戚や肉親に海外の人がいるのか?
露芝鈴緒
- 生まれつきだったらすまない。
露芝鈴緒
- わかんねぇ
伊藤宏美
- わかんねぇって…親御さんから聞いたことないのか?
露芝鈴緒
- あー…
そういや話してなかったな
伊藤宏美
- 俺、養子なんだよ
伊藤宏美
- あ
露芝鈴緒
- その、すまん…
露芝鈴緒
- 無神経だった…。
露芝鈴緒
- いいよ。気にすんな
伊藤宏美
- …折角だから話しとくか
伊藤宏美
- え、いや、話したくないことなら、無理しなくていいから。
露芝鈴緒
- いや、なんつーか、聞いといて欲しいんだよ
伊藤宏美
- 知ってる奴がいてくれると、俺も気が楽だし
伊藤宏美
- …なら、聞こう
露芝鈴緒
- あんま覚えてねぇけど、俺の親父はすっげえクソ野郎でさ、日がな一日酒呑んで働きもしなくて、気に食わねぇとすぐ母さん殴ってた。まぁ典型的なクズだったわけだ。
むしろ記憶少なくてありがてー
伊藤宏美
- でも、母さんのことは全部覚えてる。
すっげぇ優しくて、花が好きで、俺のこと目一杯愛してくれて、
伊藤宏美
- …伊藤?
露芝鈴緒
- わりぃ。
伊藤宏美
- 母さん、男見る目なかったんだろうな。
クソ野郎の借金返すために、多分、ソープで働いてたんだ。それなのにあの野郎は、礼も言わずに、クタクタで帰ってきた母さんを、毎日毎日毎日毎日毎日、
伊藤宏美
- 伊藤!
もういいから、無理するな!思い出すな!
露芝鈴緒
- 大丈夫だ
伊藤宏美
- 続けるから、きけよ
伊藤宏美
- 母さんはクソ野郎に殺された。…俺の親父にな。
母さんをあんまり殴るから、噛みついてやったんだ。そしたらあいつ、俺のこと殴って、庇った母さんがずっと殴られて
伊藤宏美
- あいつは、母さんが動かなくなるとゴミ見るみたいな目で、俺たちを見て家を出ていったよ。
そっから、隣のおばさんが来るまで、俺はずっと母さんと一緒だった。
伊藤宏美
- そっからはよくある話だ。
あいつは逮捕、俺は養護施設行き。殺人犯の子供なんて、当然引き取り手なんてないからな。
伊藤宏美
- 今の母さんは、俺の本当の母さんの親友だったんだ。
殺人犯の子供なのに、引き取ってくれて、本当の子供みたいに愛してくれてる。
伊藤宏美
- もちろん二人共な?
殺人犯の子供を、名門私立にまで入れるとか、どんだけお人好しなんだよって話だよな
伊藤宏美
- …私は、君に何が出来る?
こんな話を聞かせられて、何もするなとは言わせないからな
露芝鈴緒
- 別にそういうわけじゃなかったんだがなぁ…
伊藤宏美
- 俺はなんか、知ってるうえで俺と今まで通り接してくれたらそれでいいんだ。
それだけで、十分だよ
伊藤宏美
- 伊藤…
露芝鈴緒
- あーーーー
なんで鈴緒にこんな話しちまったんだ俺は!!
伊藤宏美
- …プリン買っとくから、明日。
露芝鈴緒
- …おう
伊藤宏美
- あ、お前の小さい頃の恥ずかしい写真見せてくれれば、めっちゃ心癒されるかも
伊藤宏美
- さっさと寝ろクソガキ
露芝鈴緒
- 最近のでもいいぞ
伊藤宏美
- あと、プリン二個がいい
伊藤宏美
- はいはい
露芝鈴緒
- ありがとな
伊藤宏美