魔女ハーノスの日記3(雪ノ季6日)
とある別世界に住む魔女の日記です。
- 雪ノ季 6日
ハーノス
- 昨日……私は昨日、日記の事を忘れていた訳ではない
ハーノス
- 断じて………
ハーノス
- ……先日、鍋をすると言っていただろう?
ハーノス
- 鍋は、食って、そのあとだった
ハーノス
- 実は、鍋用にと、前に日記を録音した後、山菜を採りに、山へ行ったんだ
ハーノス
- ふふ、その山菜というのは、このスノゥ地域の、冬、極寒の時期にしか生えてこない、伝説の雪ノ花という植物なのだが
ハーノス
- その……何だ……
ハーノス
- 地域の民にすら入手困難な物なのだがな
ハーノス
- 私は奇跡的に3輪も採取出来たのだ
ハーノス
- 私は意気揚々とした気持ちで下山し、家へ戻った
ハーノス
- 後は、あらかじめ街で買い足しておいた調味料や、その他の具材を鍋で混ぜ込み、グツグツといい音を立てるまで煮る……
ハーノス
- うむ……とても美味かったぞ
ハーノス
- 買い足しなどの時によく世話になる街の皆にも分けてやりたい程であったな
ハーノス
- 1日限りではあったが、小さな贅沢と至福の時を味わえた
ハーノス
- そして、次の日……
ハーノス
- 私は腹痛で寝床を起きる事が出来なくなったのだ
ハーノス
- 恐らく、食あたりというやつだ
ハーノス
- なんと、例の雪ノ花が原因とみられた
ハーノス
- どうやら、雪ノ花には、瓜二つの全く別の花が存在してな
ハーノス
- 本物の方は、植物のからだのどの部位を食っても無毒なのだが、もう一つ、偽物の方は、花以外全てに毒素が含まれているそうだ
ハーノス
- 魔女として、様々な毒を作ってはきたが……
ハーノス
- 流石に、自分でその毒を食うなぞ、馬鹿な真似はしてこなかった
ハーノス
- その為、私には耐毒性が、無いのだ
ハーノス
- まぁ……自ら作った毒を飲んで、毒の苦しみを快楽として味わっていた魔女はいるのだがな
ハーノス
- (くくっ)アイツは特別だな
ハーノス
- 奴の耐毒性は半端が無い。当然だ。毎日毒を飲んで、毒健康法とか言って、致死量の毒を平気の顔で薦めてくるからな
ハーノス
- 取り敢えず、毒の耐性の無い私は、その、偽物の雪ノ花の毒に当たり、1日寝込んでいたわけだ
ハーノス
- 嗚呼。辛かった
ハーノス
- しかし、今回は1日の苦しみで済んだが……
ハーノス
- もしも、もっと強い毒に当たっていたらと思うとぞっとするな
ハーノス
- 何しろ独り身だからな
ハーノス
- 私は、1日でも長く、生きていたい
ハーノス
- 魔女は、人……では無いようだからな……
ハーノス
- 死んだ後、無事、天にいけるのか分からん
ハーノス
- 正直言うと、今回の、毒に当たった事もあり、孤独や、死を深く感じた
ハーノス
- 私は死にたくない
ハーノス
- 独りで、こんな小さな、友すらいない、寒い場所で、死にたくない
ハーノス
- ……なんてな
ハーノス
- もはや、私の命運なんぞ、どうなるのかさっぱりだ
ハーノス
- ……自分で占うこともしたくないしな……
ハーノス
- 以上だ
ハーノス
- はぁ……毒が、完全に引いていれば良いのだがな……はぁ……
ハーノス
- 完
ハーノス