廃墟からのLINE12後編
後編は比較的短め。ようやく廃墟編にいけそう。夏といえばホラーだからナイスタイミングでは?評価ありがとう‼
- 前回までのあらすじ
アキ
- みんなで引っ張る!
廃墟からLINE来たぴえん
廃墟に行ってヒロに会う!!
アキ
- なんか桐島くんからLINEが…
ヒロが危ないってなに?
アキ
アキ
- はぁ…はぁ…
宏考
- 足元に散らばった肉塊を眺め、息をつく
宏考
- 魚の頭をした化け物は数は多いが非力で武器も無く、数匹ずつ相手する分にはさほど脅威では無かった
宏考
- 細い通路を出て、足首ほどに高くなった水で身体中に飛び散った赤黒い血を洗い流す
宏考
- 生臭い
宏考
- 全身びしゃびしゃになっちったな…
寒い…
宏考
- つーかこの水、もっと水位が上がったら流石にやばいな
あの魚マン、水の中のほうが強そう
宏考
- 多分だけど、今倒したのは幼体というか……
もっと大きいやつもどこかにいるだろうな
宏考
- 子供、という言葉を思わず飲み込む
やはり「人間に近い生き物」だと心のどこかで感じているからか
宏考
- 追い詰められている時にはぼんやりとしていた罪悪感が、落ち着いたことでせりあがってくる
宏考
- …いや、今はさっきのオッサンを探す方が先だ
無事だといいけど
宏考
- 後ろめたさを振り払い、元来た道を戻る。
宏考
- しょうがない。しょうがなかったんだ。
宏考
- 行き止まりまで戻ると、茫然とした表情の中年の男性が、壁の角にはりつくように、もたれ掛かって立っていた
宏考
- 大丈夫ですか!
宏考
- 声をかけると男はゆったりと顔を上げる
宏考
- ……
- さっきのやつはとりあえず何とかしたんで、この辺暫くは安全だと思います!
宏考
- おっさんも、廃墟に呼ばれたんすか!!
宏考
- 後輩がまだ向こうにいるんで、とりあえず移動しましょう!
ここ、行き止まりで危ないんで!
宏考
- ……
- ……?
おっさん、大丈夫っすか?
もしかしてさっき魚の化け物に群がられてたときに何かされたとか?
宏考
- ……きゃ
- ん?
宏考
- 行かなきゃ
- 目の前にいるはずなのに、自分を通り越して遠くを見ているような顔に、どこか薄ら寒くなる。
宏考
- 男がよたよたと歩き出す。足取りは危なげだが、顔は真っ直ぐに前を見ている。
宏考
- いや、おっさん危ないっすよ
ちょっと休んだ方がいい……
宏考
- 肩を掴み呼び掛けるが、止まる気配が無い。桐島の言っていた通り、洗脳されているような状態なのかもしれない
宏考
- そうは言ってもこのままじゃどうなるか目に見えてるわけで。
見捨てる訳にもいかないしなぁ
宏考
- やや強引に手を引き、適当な部屋に入る。
転がっていた椅子無理やり座らせ、近くにあったカーテンで縛りつけておく。抵抗されたが振りほどくほどの力は無かったようで、とりあえず拘束することには成功した。
宏考
- でもなー。この状態でいてもその内化け物が…
宏考
- 水の無い場所まで来たため、奥へと近づいてしまった
宏考
- 遠くから足音がする
宏考
- げ。化け物か?
宏考
- 急いで通路へ出る
宏考
- ……んん?
宏考
- 確かB高校の制服だったか。見覚えのあるベストとリボンをつけた女子高生が居た
宏考
- 追加の行方不明者か!
無事でよかった!
おーいお姉さん俺も…
宏考
- いやまて……また騙されるかもしれない
慎重にいこう
宏考
- 近づいてみるとどうやら手元のスマホに集中しているようだった
こちらに気付いた様子はない
宏考
- ん…?あれ…?
それ…俺のスマホじゃね?
宏考
- おねーーさん!!!それ俺の!!!!
宏考
- …
- 拾ってくれてありがとうございます!!!
それ多分俺の…
宏考
- 女は画面をこちらへ向けた
宏考
- LINEのトーク画面が表示されている
遠くで読めない
宏考
- 呼んだ
- え?呼んだって
宏考
- 呼んだ
- …………まさか、それ使って誰か廃墟に呼んだ?
宏考
- 女はにい、と笑う
- やっ止めろよ!!!何やってんだ!!!
宏考
- 返せ!!!
宏考
- 飛びかかったが、女はひらりとかわしてけたけた笑う
- あっ
宏考
- おいで、おいで、みんな廃墟においで
- 呼んでどうすんだよ!!!
マジで何もねーぞここ!!!
宏考
- 来るよ。みんな来るよ。みんなで人魚さまと暮らすの
- あの化け物マーメイドだったんだ?!
宏考
- 廃墟へおいで
廃墟へおいで
- つーか誰呼んだんだよ!!!
宏考
- ちくわ大明神
- ………?
宏考
- 誰だよ!!!!
宏考
- あはは
- 待ちやがれ!!!
宏考
桐島
- マジでどこいったあの馬鹿野郎
桐島
- しまった……はぐれると本当に連絡手段が無い…
桐島
- なんでこの状況でスマホ落とすかな…はぁ
桐島
- 愚痴ってもしょうがないか
桐島
- まあいいや。
どうせ全部蛇足だ
桐島
- コンコン、とバッドで床を二回叩き、振り子のように勢いをつけて振り、肩へと持ってくる。
桐島
- 大丈夫。いつも通りに
桐島
- さー張り切っていこう
桐島
- 歩き出して直ぐ、 どこからか不快感のある臭いが漂っていることに気がつく
桐島
- 辺りを見渡すと臭いの正体は直ぐに分かった
桐島
- 入り組んだ道の先、細い通路の壁や薄く水の張った床には、バケツでぶちまけたように血と内臓が散乱し、何人もの小さな人間のようなものの下半身が横たわっていた
桐島
- なんだこれ
桐島
- ……まさか先輩が?
桐島
- こんなことできる人だっけ
桐島
- 破損の少ない死体を良くみると、体は鱗に覆われた人間のようだが、首から上は魚の頭のようなものがへばりついている。
桐島
- 孵ったのか
桐島
- 不味いな。多分これであの女との縁が結ばれた
LINEの目的が縁結びなら、LINEが届かなくても縁が結ばれるだけで引かれるかもしれない
桐島
- 落ち着け。まだこちらから引けば間に合うか?
先輩はこの近くにいるはずだ
桐島
桐島
- ……
宏考
- 先輩!大丈夫で……
桐島
- 女子高生の体が床に落ちている
桐島
- ……先輩?
桐島
- その、なんていうか
桐島
- しょうがないですよ
この人、もう駄目だったんでしょう?
桐島
- ……
宏考
- ヒロはずるずると前へ進んでいく
宏考
- …先輩
桐島
- そっちは駄目です
奥へ行けばボスと出会っちゃいますよ
化け物になりたいんですか?
桐島
- ……
宏考
- 前へと進む
宏考
- 女子高生をよくみると、ヒロのスマホを持っている
桐島
- 画面が割れている
壊れているようだ
桐島
- あー、なるほど
桐島
- 取り返そうとして壊れちゃったんですね。
でもほら、まだ大丈夫。僕が連絡とってあげますから
桐島
- 先輩
桐島
- ……きゃ
宏考
- 行かなきゃ
宏考
- ヒロ先輩
桐島
- 行かなきゃ
宏考
- 駄目ですよ先輩
帰るんでしょう
桐島
- こっち来て下さい
桐島
- 桐島は幼い子供を嗜めるように呼び掛ける
桐島
- 行かなきゃ
宏考
- 幼なじみさんも待ってますよ
帰りましょう
桐島
- 行かなきゃ
宏考
- ほら、先輩ホラー苦手でしょ
ボスは凄く怖いんですから、会ったらきっと先輩泣いちゃいますよ
桐島
- こっちに来てください
桐島
- ヒロは奥へ奥へと進んでいく
桐島
- 先輩、せんぱい…
桐島
- ……ああやっぱり、僕じゃ駄目だなぁ
桐島
- 分かってたけど
桐島
- 桐島は深くため息をついて、虚ろにヒロを眺める
桐島
- あーどうしたもんかな。僕の体格じゃヒロ先輩を抑えつけるのは無理そうだし
桐島
- まあ、
桐島
- 動けなくするしかないか。
桐島
- 桐島は、ヒロの後頭部めがけて頭上へとバットを振り上げ__
桐島
- 直前で軌道を変え、勢い良く床を叩いた
桐島
- カァン、と金属の甲高い音が響き渡る
桐島
- ………………は?
桐島
- ば、馬鹿か?僕は。
今何しようとした?
桐島
- 人間だぞ人間。頭殴ったら普通に死ぬだろうが。くそが。何やってんだ。ついに狂ったか?
桐島
- 先輩。なあ先輩
桐島
- 桐島はヒロの胸ぐらを掴む
桐島
- あんた僕を助けに来たんだろう?何こんなとこで他人助けに行って勝手に駄目になってんだよふざけんな
桐島
- 大体引っ張りこまれるくらいなんだから、それなりに強い縁で結ばれてんじゃねーのかよ
とっとと戻ってこいよ、ほら、はやく
桐島
- パシャン、と水の音が後方で響く
続いてペタペタと足音が近づいてくる
桐島
- 糞が
桐島
- 宏考の腕をひっ掴み、力いっぱい引っ張って近くの部屋へと駆け込む
桐島
- 離れた通路を振り返り見ると、後方で女が起き上がるのが確認できた
桐島
- …あー女の子無事っぽいですよ!!
よかったですね!!
桐島
- ……行かなきゃ
宏考
- ああもううるさいな!!!
行かせるかアホ!!!
桐島
- 比較的新しめの部屋で立ち止まる。が、ヒロは手を離せば直ぐに奥へと進んでいってしまう
桐島
- 両手で体重をかけても、段々と引きずられていく
彼はこちらを見もしない
桐島
- はぁ、はぁ、くそ、
…………咎の縁は強いか
桐島
- どうするかな。先輩のスマホがぶっ壊れてるから幼なじみは使えないし
桐島
- ……この手はあまり使いたくないけど
桐島
- 桐島は自分のひび割れたスマホを見つめる
桐島
- …良くみると、最初の状態から全く電池が減っていない。
あれだけやりとりしたのに
桐島
- まあ、そういうことなんだろうな
桐島
- 相変わらず中央にぽつんと一つだけ浮かぶ、LINEのアイコンをタップする
桐島
- 新しい住人の部屋なら外との縁がある
伝っていけば、LINEが使える
桐島
- 憎しみ合う者が互いに引き合ってしまうのも、愛し合うものが都合の良いの出会いを繰り返すのも、ひとえに縁のつながりによるものである
桐島
- 好きも嫌いも「関心」に違いなく、愛も憎も方向は違えど強い感情であり、執着であり、固く結ばれた縁である
桐島
- 好感を勝ち取るのが難しいなら憎まれるほど嫌われればいい。それで縁は繋がる
桐島
- 父の言葉が甦る
あいつは本当にろくでなしの糞野郎だが、残念ながら僕は悲しくなるほど父の息子らしい息子だった。
桐島
- さて、賭けになるが
桐島
- 感触は悪くない。引っ張りが上手くいくかは微妙だけど
桐島
- ……ここはまあ、シンプルに。
切実な感じで
桐島
- スワイプ、タップ、スワイプ
桐島
- SOS完成。送信
桐島
- 時間にズレがあるみたいだから何時届くのか分からないけど
桐島
- あとは僕が時間を稼げばいい
桐島
- 水音がする。バッドを構える
桐島
- 大丈夫。慣れてる。横目に先輩を見ながら左右確認
殴ったら逃げる。今まで通り。
桐島
- リンゴン
桐島
- 早いな。どれどれ
桐島
桐島
- マ?
アキ
桐島
- …………………………
桐島
- …………………………
桐島
- マ
桐島
- 賭けるしかない。今大分不安になったけど。ヒロ先輩の幼なじみだし大丈夫だろう。多分
桐島
- 桐島はスマホを大事にしまい、再びバッドを構え直した
桐島
- 廃墟からのLINE12 さらにSOS
桐島