ひとり劇場

廃墟からのLINE10

人魚沼伝説の説明回前半。いちいち茶々が入るので長い。忙しくて投稿が遅れてしまいました。申し訳ない…次回も多分少々時間がかかります。評価ありがたい!ごめんね!

佐崎
リンゴン
佐崎
リンゴンリンゴンリンゴン
佐崎
鳴ってるよ
アキ
これはほっといていいの
佐崎
…まさか、あんたも呼ばれた?
アキ
佐崎
まーほら、
私もあいつもLINE来てるけど無事だし、まだ平気でしょ?
元気出しなよ
アキ
…大丈夫
これはちがうの
アキ
アカウント名を大胆変更したのが見つかって、クラスLINEで総ツッコミ受けてるだけだから…
アキ
陰キャだから…盛大に弄られてるだけだから…
佐崎
佐崎
別のホラー起こってるじゃん…
佐崎
前回のあらすじ
佐崎
詳しいオッサン呼び出すから話聞こう
アキ
らじゃ
小池
ふええ
直泰
尾崎と図書館行くぞ!
いやなんでこいつと…?
尾崎
さっさといくぞ
アキ
 
アキ
あ、そうだ。
ここでアカウント名を本名にするとヤバいってこと伝えようかな
佐崎
いんじゃない?ちょうど注目集めてるし
アキ
ていうかこのままだと心が挫けて元に戻したくなってしまうから…
アキ
私だけ悪目立ちしないようにみんなトンチキアカ名に変えてほしい
仲間よ増えろ
佐崎
かわいーのにねー
佐崎
てか名前変わっただけでそんなに騒ぐ?
好きにすりゃいーじゃんね。ほっとけっての
アキ
そうだよね。ちくわ美味しいし
アキ
あ、よかった…なんか知らないけど練り物を司る神々が増えていく。
アキ
トークルームがおでん
佐崎
…それ、あんたのクラスの人、結構いいやつなんじゃね…?
アキ
え、そう…?
アキ
あ、あの人かな
アキ
公園の前に止まった車から、小綺麗な身なりの男性が降りてくる
梶本
遅くなってすまない
梶本
君たちが桐島くんのお友達かい?
アキ
友達…?桐島くんと私が友達…?
佐崎
えっ違った?
勝手にそうかと思ってそう伝えちゃったけど
アキ
まあ友達の友達…知り合い…よく知らんけど会話してる協力者…いや協力的ではないような
アキ
友達ですね!!
佐崎
あー、仲悪いの?
アキ
ん?
梶本
…LINEで廃墟の中の友達と連絡をとっていると聞いたんだが、合っているかい?
アキ
そうです
梶本
そうか…それはまずいな…
梶本
ああ、僕は梶本哲夫。話は聞いているよ。お友達を助けたいんだってね?
アキ
えっと…
おじさんは何者なんですか?
梶本
ああそうだね。不信に思うのもしょうがない。実は桐島満くんの関係者でね
梶本
満くんの父の従兄弟にあたるかな
梶本
もっとも、息子さんと会ったことはないんだがね
お父さんは叔父さんに勘当されてから、実家にはほとんど寄り付かなくなっていたようだから
佐崎
なんか急に複雑な家庭の事情出てきた
アキ
とにかく桐島くんの親族だけど、彼との面識は無いということですね
梶本
ああ、だがこれは恐らく、僕の一族に関わる問題だからね。
責任は僕らにある
アキ
一族?
アキ
人形沼伝説?というのと関係があるんですか?
梶本
そこまで知っているのか…
アキ
や、名前しか知らないです。
アキ
えっと、今の状況をまとめますと…
アキ
…私の幼なじみが、三日前から噂の廃墟に閉じ込められているんです。
LINEで連絡はとれるんですけど、廃墟があったはずの場所から消えてしまって、助けに行けないんです
アキ
桐島くんも一緒にいるんですけど、脱出方法が分からないみたいで…
外で方法を探して欲しいって頼まれました
アキ
それでおじさんが何か知ってるって聞いたので、話してみたかったんです
廃墟については何も知りません。
梶本
なるほど
アキ
あ、自己紹介が遅れてすみません。
私はA中学校の3年生の岡本アキです。
梶本
ああ、どうぞよろしくね
梶本
…桐島くんも一緒にいる、と幼なじみさんが言っていたのかい?
アキ
ていうか桐島くんと直接LINEしてます
梶本
それは…
梶本
んん?どういうことだ?
アキ
え?あれ?
梶本
いやしかしこの状況からすれば彼は…つまり抗っていると…?いやもしくは…
アキ
あ、ID教えましょうか?直接連絡とったほうが早いかと
梶本
いや遠慮しておこう。危険だ。こわい。君ももう連絡しないほうがいいだろう。
梶本
廃墟に呼ばれるかもしれない
アキ
えー。ヒロとの連絡手段が無くなっちゃうと困るからなー…
アキ
まあ呼ばれたら呼ばれたでなんとかなりますよ
アカウント名変えたし
梶本
それで耐えられるのも、時間の問題だろう。
結びのハードルはどんどん下がっているし、時間と共に彼女の力も増している
佐崎
いや意味不だし
佐崎
分かるように説明してくんね?
アキ
そうだそうだ
梶本
す、すまない。そうだな。
まずどこから話すべきか…
アキ
…廃墟って、なんの廃墟なんですか?
佐崎
そーいや何の建物かは聞いたことないかも
梶本
廃墟というか、あれは廃村なんだ。
梶本
昔、人魚さまと呼ばれる神様を奉っていた村があった。
ある事件をきっかけに村人のほとんどが不審死を遂げ、廃村となってしまったが。
佐崎
人魚さまって、リトルマーメイドみたいな?
梶本
いや、それは西洋の文化だね。人魚さまは下半身が魚というわけではないよ
梶本
お魚の姿をした神様が、人の形をとって人間と交流なさったから、人魚さまと呼ばれていたんだ
梶本
当時は結構有名な縁結びの神様だったようだ。遠くから人が集まるくらいだったらしい
アキ
縁結び?
梶本
そう。縁結び
梶本
もともと、糸良の村では狩猟が盛んでね。ここの土地はかつてとても豊かで、山に獲物が豊富にあった。旅人やマタギが他所から来ることがよくあって、村の人々は彼らに宿や食事を与え、丁重にもてなしたらしい。
梶本
古い時代の村はそういう外から来るお客さんを歓迎する風習が多くあってね。新しいモノや情報を運んでくれるからっていうのもあるけど
梶本
村に新しい血を入れるため、というのも重要な事柄だった
アキ
新しい血?
梶本
血縁関係の近い者同士で子供をつくると、病弱な子供が生まれやすくなるという話は知っているかな?
小さな村だとどうしても段々、血が濃くなってしまうんだ
アキ
あ、そういう
梶本
それで、遠くからお出でくださったお客さんを、若い娘さんがもてなす、という慣習があってね
梶本
一夜限りの関係を結んで、新しい血を村に入れるということさ
佐崎
ワンナイトでワンチャンってことね
梶本
ん、んん。言ってしまえばそういうことだね
梶本
そういう決まりがあるくらいだから、産まれて来た子供は村で協力して育てる訳だけど、産んだ方からするとやっぱり、父親が欲しいだろう?
梶本
ある時、相手の男性を気に入った娘さんが、神様がいらっしゃると言われていた沼に、お願いをした
梶本
あの人とどうか縁を結んで下さい、と
梶本
そうしたらその夜、村を発ったはずの男が娘の前に現れて、結婚を申し出た
村に留まり、娘さんと末永く暮らしたそうだ
梶本
娘さんは神様に感謝し、お礼に沼の近くに社を建てた
梶本
それが噂を聞いた村の女たちに奉られ、信仰が始まったと言われている
佐崎
縁結びの神様…
この寂れた町にそんなもんあったんだ
アキ
廃村になってるなら、今はもう無いんじゃない?
佐崎
あ、でも糸良ってなんか聞いたことあるな…
アキ
え?なんだろ
地区の名前では無いと思うけど
アキ
ていうか気になったんですけど、その話だと、縁結びが起こる前から沼に神様がいたことになってますよね
梶本
申し訳ないがその点は詳しく無いんだ…それ以前の資料が残っていなくてね
梶本
とにかく、その一連の話が人魚村伝説の前提だね
アキ
あ、その話は伝説では無いんですね
梶本
まあここまでは、なんでもない昔話なんだがね
梶本
人魚さまのおかげで村には次々人が訪れるようになり、少しずつ発展し、社はどんどん大きくなっていった。信仰の高まりとともに人々の間には規律、しきたりが生まれ、村人の殆どは信者となった。
宗教として確立していく中で、しかしとある変化が起こった
梶本
ある日人魚さまは、森で道に迷い、行き倒れていた彼を介抱した。男性は、美しい女性の姿のそれが人魚さまだと知らぬまま、彼女と交流を深めていった
梶本
人魚さまは次第に男性に惹かれていき、村に留まってほしいと思うようになる
梶本
しかしそれは叶わなかった。男性は人魚の求婚を断った。
梶本
人魚の正体を知ったからではない。男は国へ帰らなければならなかった。
梶本
彼は母国に妻子を残して日本に来ていたから。
アキ
外国人だったのか
佐崎
は?てかそれ男が悪いやつじゃん
既婚なら最初から思わせ振りな態度とんなし
アキ
不倫だ不倫
梶本
い、いや、まあ聞きたまえ
梶本
人魚は自分と男の縁を結ぼうとしたが、結んだとしても海の向こうの家族との縁が切れる訳ではない。彼女は縁結びの神であって、縁切りすることは出来なかったんだ。
梶本
それならば、と人魚は考えた。切ることが出来ないのなら、より強い力でこちらへ引き寄せれば良い。
梶本
人魚は、生け贄を求めだした。
梶本
 
桐島
パシャパシャ、と入り組んだ部屋を駆けていく
靴が濡れて重い
桐島
なんだこの水……
どこから来てるんだ?
桐島
方向的には入口…というか、
奥とは逆方向から来てるっぽいな
桐島
この廃墟は奥へと緩く傾斜がかかっているから、湧き出た水は最奥の部屋へと流れて行くのだろう
桐島
……時間が経てばあの部屋は水で埋まるのだろうか。
桐島
それどころか、この場所すべてが最後には…
桐島
急がないと
桐島
…あれ、やっぱり卵だったのかな
桐島