廃墟からのLINE2
※微ホラー注意。ストック無いので次回はそこそこ時間かかります。自粛で暇だからちょっと続く。折角だから立ち絵一新したよ
- 放課後 宏考宅
宏考
- え、昨日から帰ってないんですか?
アキ
- 宏考の母へ玄関先で数枚のプリントを渡す。
彼女の顔色はあまり良くない。
宏考
- アキちゃんも行き先、知らないのね?
高橋
- はい…あ、でも、最後に送ってきたLINEで、廃墟の話をしていて…
アキ
- 廃墟って、最近話題になってるあの、昔一家惨殺事件があったとかっていう…?
まさかそんな所に、どうして…
高橋
- でもそこに居るかどうかは分からないです。LINEが既読にならなくて、詳しいことは聞けなかったので…
アキ
- 今までこんなこと無かったから、もう心配で…
これから警察へ相談するつもりなのよ
高橋
- そうですか…私も、思いあたる所は探してみます!
アキ
- ありがとうね。でも、危険なことはしちゃだめよ?
アキちゃんに迄何かあったら…
高橋
- そうですね…気を付けます!
アキ
- あの馬鹿…あんな優しいお母さんにまで心配かけて…
見つけたら怒ってやんなきゃ。
アキ
- 横断歩道で足を止めると、視線を鞄へと落とし、スマートフォンを取り出してLINEを確認する。
桐島
- 相変わらず昨日送ったLINEへの既読はつかない
桐島
- 普段は例え夜中でも5分以内には返信が帰ってくるような奴だからこそ、不自然だ。
桐島
- その5分以内に返したLINEへの返信は既読3日後に「ねてた」だの「り」だの各々雑に返される。いつものことだ。
アキ
- ヒロが最後に話してた、心霊スポットになってる川の近くの廃墟…
アキ
- ここから自転車で二時間はかかるし、今から行くと…
アキ
- 着くのは夜になってしまう。流石に心霊スポットへ夜一人で向かう度胸は無い。
アキ
- たとえ心霊スポットではなくとも、廃墟には浮浪者やホームレスなどが住み着いていることもあり、中学生が一人で近づくのは危険だ
アキ
- ていうか、警察に相談するならそっちは警官が探してくれるだろうし、とりあえずいつも行くところから探してみるかな
アキ
- 心配ではあるが、警察に任せるのが今のところ最善に思えた
アキ
アキ
- だめだ…どこにもいない
アキ
- いつも三人で寄っていた公園や空き地、時々遊びにいく隣町のお店など、一通り探し回ったが、彼の姿は無い。
アキ
- 少し前までは、部活に青春を捧げていたような人間だ。普段の行動範囲はそこまで広くない。
アキ
- 彼の所属していた野球部の部員にも聞いてみたが、期待したような情報は得られなかった
アキ
- 彼が引退してからは少し、距離を置いていたため、あまり最近の彼をよく知らないんだとか
アキ
- 理由は、聞いてもはぐらかされてしまった
アキ
- 正直、野球部の人とそんなに仲良くもないからそれ以上は聞けなかった
アキ
- ただ、手掛かりは無くもない。
アキ
- 後輩の桐島さん…明日聞いてみよう
アキ
- 今日はもう暗くなっちゃったし、帰るしかないか…
アキ
- それにしても、怖がりだから絶対行きたくない!とか行ってたくせに、どうして廃墟の話なんかしたんだろうな
アキ
- ヒロ…ほんとにどうしたんだろ
アキ
- 時間が経つごとに、悪い想像ばかりが頭を巡る。
アキ
- 心配だ。心配だけれど、今はこれくらいしか出来る事はない
アキ
- 最初からもっと親身になって聞けばよかった、なんて後悔してもしょうがない
アキ
- だってアイツ普段からあんなだし。同じ調子で普段から「部屋にクモ出た!」だの「タッチペン無くした!」だの「定規で凄いキレイに正方形が書けた!!!」だのクソどうでもいい報告を受けていれば、そりゃあ、あんな態度にもなる
アキ
- あ。悪くないなこれ。私全然悪くない。百%相手の過失。
アキ
- 見つけたら一発ぶん殴ろう…グーで殴ろうそうしよう
アキ
アキ
- やばたにえん…これはやばたにえん…
宏考
- やばたにえんて初めて使ったな…これであってんのかな…
宏考
- いや言ってる場合じゃねえ
宏考
- こっわ…暗ぁ…道暗…
夜じゃーん。すっげえ夜じゃん…
宏考
- こわたにえん…こわたにえん…
あ、アキにLINEしょ…
万が一アキがこんなとこ来たら不味いし…
ナオがいるなら大丈夫だろうけど…
宏考
- 駄目だ電波が届かねえ…さっきの電波ポイント戻るか…?でもなあ…
宏考
- 廃墟?をさまよい一時間は経過しただろうか。一向に外に出られそうな扉が見つからず、彼はため息を漏らした
宏考
- いやー広すぎない…?
宏考
- 歩けど歩けど廊下があり、階段があり、部屋がある。外観からは明らかにかけ離れた広さの廃墟内は、角をひとつ曲がるたびに暗さが増していくような気がしてくる。
宏考
- 広さは異常だが、隣接された部屋内を覗いてみても、長い間放置されていたことが分かる以外は、普通の民家の一室だ。キッチンだったり寝室だったりお風呂だったり。
宏考
- これでトイレ6個目だな。何人家族なんだこの家
宏考
- なんていうか、部屋ごとに家具とか壁紙とか…雰囲気がバラバラなんだよなぁ
宏考
- たとえば別の家同士が沢山くっついてる、みたいな…?
やっぱここ現実じゃないよなー
異世界だよ異世界。アキ俺間違ってないって
宏考
- ってうわぁ…なにこの長い廊下…学校みたいじゃん。
宏考
- あっれほんとに学校だこれ!?
登校してる俺!?
宏考
- ていうか今更だけどこれ、あんまりうろちょろしない方が良いのか…?
大人しく見つけてもらうのを待ったほうが…
宏考
- ガタッ
宏考
- ひいっ!?
宏考
- 無理無理無理こんなとこでスタンバるの無理!!!!
宏考
- さっきの場所にやっぱり…いや駄目だ!
宏考
- 本当は、LINEが届くと分かった時点で助けを呼び、あの場所で待っているつもりだった
宏考
- 今はもう、戻れない。戻ってはいけない。
宏考
- というか助けは来るんだろうか…アキにしかLINE出来なかったけど、場所は伝わったよな?
宏考
- テンパって変なこと言っちゃったからな…いや嘘は言ってないんだけど
宏考
- そもそもここって…本当に廃墟の中なのか…?
宏考
- 思い出せる最後の記憶では、確かに廃墟の中だったはずだ
宏考
- 廃墟へ来て、桐島と会ってそれで…
宏考
- ぺた
宏考
- あっ!?
宏考
- 急いで目の前の教室へ入り、音を立てないようロッカーへと逃げ込む
宏考
- 長箒やバケツを押し込みなんとか体を滑り込ませ、息を殺して隙間から外を伺う
宏考
- (あれが、あれがくる)
宏考
- ぺた
宏考
- ぺたぺたぺた
宏考
- ぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺた
宏考
- ぺた
宏考
- (…!止まった…?)
宏考
- どうやら教室の前で止まり、中をじっとみているようだ
宏考
- (早く…早く行け!早く!)
宏考
- (なんで行かない…?まさかバレてる…?)
宏考
- (もう出ていって思い切り走って逃げた方が…?でも一体どこへ…)
宏考
- ぺた
宏考
- !
宏考
- ぺたぺたぺた
宏考
- (…行ったか)
宏考
- (…いやまて、ホラー映画とかだとこういう安心したところでギャーっとなるんだ。俺知ってる。油断しない。)
宏考
- …
宏考
- …あ、ほんとに行った…?
宏考
- キイ、と扉を開け、廊下へそっと頭を出す。どうやら誰も居ない
宏考
- はーーーー…たすかった
宏考
- ゲームとかだとよく見るけど、まさか実践するとはな…
宏考
- そのゲームだって実況で見るだけで、プレイすることはない。だって怖いから。
宏考
- もともと怪談、心霊現象の類いが本当に苦手で夜中にトイレへ行く際は弟を叩き起こす程度には怖がり。なのにこんな状況だ。まじむりしんじゃうだれかきてはやく
宏考
- この廃墟へだって、あいつに呼ばれなきゃ来たくもなかった
宏考
- そういえば、桐島。
あいつはここにいるのか…?
宏考
- そうだ。最後の記憶では一緒にいたはずだった。気がついたら消えていたんだ
宏考
- あーーー。そうか、じゃあしょうがない。
置いて帰るわけにもいかないか
宏考
- よーし、がんっばるぞー!
元気出してこーーーー!
もうあれだな!歌でも歌おっかなーーーーー!!
やっぱまたあれ来たらヤバイからやめとこ…
宏考
- こわごわ歩き出す。手のかかる後輩を探して。
宏考
宏考
- ぺたぺたぺた
- ぺたぺたぺた
- 水風船のように膨れ上がった体を引き摺るように、ずるずると歩く
- 飛び出した目玉を忙しなく回転されて、探す、探す、探す
- 張りつめた頬の、口一杯に溢れた舌の、僅かな隙間から、古い布を引き裂くような声が漏れ出る
- 大半がおぞましい雑音となり、ただ断片的に聞き取れる、いくつかの言葉の並びが
古い廊下の片隅に響く
- オイエ フ ビブ ァ ァ キャ
- オ オオ オオオ
- ヒオ ヒオ ヒオ
- 既読2 再会を目指して