ストレリチア1-4
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- 1章「死神と死を告げる者」4
- スカーレットと若
- スカーレット、君は長い仲だから話しておこうと思う
シュエット(若)
- 何?
スカーレット
- アルが死ぬ予知夢を見た。何としても防ぎたい
シュエット(若)
- …………
スカーレット
- 君の赤い眼は近い未来を視る目だ。力を貸して欲しい
シュエット(若)
- あら、あなただって未来を視ることが出来るでしょう?
スカーレット
- 俺が視るのは遠くにある結果だけだ
シュエット(若)
- ……パパが死んだ時のように?
スカーレット
- そうだね。あの時確信したよ。自分の能力を…ね
シュエット(若)
- もう少し早く気付いて欲しかったものね
スカーレット
- その件に関してはすまない。だけど…未来は変えられる。そう信じているからこそ、君はもっと早く気付いて欲しいと思ったのだろう?
シュエット(若)
- …………
スカーレット
- 協力して欲しい。クリムゾンを喪う未来を生きたくはない
シュエット(若)
- ……分かった。あの人は私にとっても幼馴染の腐れ縁だから。馴染みの顔が見れなくなるのも癪だわ
スカーレット
- いい返事をありがとう
シュエット(若)
- どうも
スカーレット
- ……私はあなたほど先は見えない。でもね、あなたが見るのは遠い未来の断片
スカーレット
- 近い未来の動きは私の方が分かる。あなたの見る物が変われば、私の見る物も変わるのでしょうね。もし変ったとしても、選ばれなかった分岐は誰も知らない。私とあなたを除いては…
スカーレット
- 補い合いましょう。向こう側の未来と、こちらの未来。繋ぎ合わせることでいい結果をつかめるわ。
スカーレット
- 頼むよ。
シュエット(若)
- その予知能力、引き続き秘密にしておくの?
スカーレット
- そうだね。俺だって見る夢が毎回予知夢なわけじゃない。それに、見えすぎる予知は災いを招く。そして未来は変わることもある…
シュエット(若)
- 皆が予言を信じ、自らの未来について考えることをやめるのが最も恐ろしいことだ。
シュエット(若)
- 俺だって永遠の命ではない。残された人間に自らの未来を掴み取る思考能力が備わっていなかったら、ストレリチアのような大規模な組織はすぐさま崩壊するだろうね
シュエット(若)
- ……そうね。私もあなたの能力を最初から知っていたら、恨んでいたかも知れないわ
スカーレット
- あなたを恨んでも仕方ない。
スカーレット
- 分かっていても怒りの矛先は近くて向やすい存在に向くもの。
人々の怒りを受けるのは、あなたの役目ではないわ
スカーレット
- ふふ、ありがたい
シュエット(若)
- ……それで、これからクリムゾンの様子を見に?
スカーレット
- 当たり前じゃないか。俺にも人並に幼馴染を心配する心はある
シュエット(若)
- スカーレットは?来るかい?
シュエット(若)
- あなたが一人いれば十分でしょう?
スカーレット
- そうか。
それじゃ、行ってくるよ
シュエット(若)
- 行ってらっしゃい。くれぐれも出過ぎないようにね
スカーレット
- 夜、郊外
- やれやれ…郊外までネズミが入ってきてたら追い回すにも骨が折れるな
クリムゾン
- クリムゾンサーン!
ターミガン
- おう、ターミガンか。どうした?
クリムゾン
- いやー、久しぶりに顔見たと思ってな!
ターミガン
- しかし大変だよな!戦闘部のドンの息子なのに、こんなネズミ退治の任務なんか来てたら!
ターミガン
- あー…。親父がメンバーに組み込んでてな
クリムゾン
- 「お前を特別扱いは一切しない、他の奴らと同じように前線に出て戦ってこい」
クリムゾン
- ……てのが教育方針みたいでな。
よく抗争メンバーに組み込まれんだよ
クリムゾン
- マジか!親父さんキビシイなー!
ターミガン
- 親の期待背負うのも楽じゃねーんだよ
クリムゾン
- ターミガン、またお喋りか?
カメリア
- カメリアサン!
サボってないぞ!こみゅにけーしょんを取ってたんだ!
ターミガン
- おう。クリムゾンもいるからな。
カメリア
- あたしもいるネ!
ネズミのにおいを探すのは得意ヨ!
ルピナス
- 揃ってんなぁ。ま、せいぜい大怪我しないように頑張ろうぜ
クリムゾン
- (しかしこのメンバーで夜戦か…敵の動きによっちゃ用心しねーと。どうするかな…)
クリムゾン
- ……クリムゾン?
シュエット(若)
- ?!
クリムゾン
- なんでいんだよ?
クリムゾン
- 楽しみに来たんだ
シュエット(若)
- は?!
クリムゾン
- たまに戦いたくなるんだよ
シュエット(若)
- そうかよ。そんなことより、その格好何なんだよ。ゴロツキか?
クリムゾン
- 変装だよ。俺だってバレたらいけないだろう?
シュエット(若)
- 手斧とか持ってどうした?
クリムゾン
- たまには武器で敵を倒すのもいい。
シュエット(若)
- 敵の絶望する顔を近くで見れるのは、武器を持って戦う醍醐味じゃないか
シュエット(若)
- そうかよ。俺にはよく分からんな。
クリムゾン
- クリムゾンサーン!仕掛けるぞー!
ターミガン
- ……呼ばれたね
シュエット(若)
- 行くか
クリムゾン
- シュエット
クリムゾン
- ?
シュエット(若)
- 怪我すんなよ
クリムゾン
- はは。君こそね、アル
シュエット(若)
- ……はぁ
クリムゾン
- (調子狂うからやめろよ…)
クリムゾン
- あれ?!シュエットサン!
ターミガン
- シュエットさん!何でネズミ退治の任務なんかに?!
カメリア
- クリムゾンが心配だったのかしらネ?
ルピナス
- (即バレてんじゃねーか…意味ねぇ…)
クリムゾン
- 宵闇深い郊外の草原
- 敵はそんな多くねぇ!多くねぇが、用心して行け!
クリムゾン
- 任せろー!
ターミガン
- 追い払ってやるネ!
ルピナス
- おーい!!お前ら!応援に来たぜ!!
ジェット
- クリムゾン!新しいのが来た!
カメリア
- 破壊神ジェット!参上っ!!
ジェット
- 何だあれ…
クリムゾン
- お前らがストレリチアの奴らだな?!
くらいやがれ!
ジェット
- ジェットが地面を殴ると、土埃をまき上げながら衝撃波が走ってきた。
- あっぶねぇな!
クリムゾン
- お前は…紅の死神!
ジェット
- おうよ。俺がストレリチアの紅の死神、クリムゾンだ
クリムゾン
- 俺のこと知ってるなんて感心だな?
クリムゾン
- なんか聞いたことあった!
ジェット
- 俺は破壊神ジェット!
死神と破壊神、どっちが強いか勝負しようぜ
ジェット
- 望むところだな。
クリムゾン
- ていうか紅っていう割に赤少なくね?
ジェット
- うるせぇ。
てめーの返り血で赤く染まってやろうか
クリムゾン
- そういうことか!それは嫌だな!
ジェット
- ……君、どこの組織かな?
シュエット(若)
- ?
ジェット
- あんた誰だ?
ジェット
- 俺なんか誰でも良いだろう?
どこの者だと聞いている
シュエット(若)
- 名乗らない奴に教える名前はないぞ
ジェット
- そうか
シュエット(若)
- さっきジェットって言ったじゃねーか
クリムゾン
- そうだったー!!
ジェット
- とにかくお前たちを追い払うのが仕事なんだ!ここから出て行くんだな!
ジェット
- ストレリチアのシマで出てけと言われる筋合いはねーよ。
地獄の炎で焼いてやるぜ!
クリムゾン
- クリムゾンサーン!こっち終わったぞ!手伝う!
ターミガン
- あたしも行くよ!
カメリア
- ジェットとかいったな。
形勢不利だぜ?どうするよ?
クリムゾン
- マジかよ…せっかく来たのに!
頑張りすぎて死ぬのはごめんだぜ!この辺で帰るか!
ジェット
- おう、帰れ帰れ!
クリムゾン
- じゃあな!!
ジェット
- ジェットは疾風のように去っていった。
- いいのかー?逃しちゃって
ターミガン
- ほぼ何もせず帰ってっからな
クリムゾン
- それに、お前らが蹴散らしたあいつの仲間の死を知らす奴が必要だろ?
クリムゾン
- まあね。ちょっとやりすぎたかも知れないくらいだ
カメリア
- 終わったのヨ!!
ルピナス
- ルピナスもこの様子だ。あんたより真っ赤だよ、クリムゾン?
カメリア
- うわぁ……
クリムゾン
- 引かないでヨ!
ルピナス
- 頑張って狩ったんだから、褒めてよネ!!
ルピナス
- お、おう。今回もルピナスがナンバーワンだろうな
クリムゾン
- しっかしルピナスがやった後は相変わらずひでぇ現場だな
クリムゾン
- 狼の牙は獲物を引き裂くネ!!
ルピナス
- 文字通りの状態だもんな
カメリア
- 獲物たちはどうする?
ターミガン
- 燃やしておこうか。遺物を取りに来るほどの人物でもないだろう
シュエット(若)
- さて、クリムゾン?
シュエット(若)
- あー、はいはい…燃やせば良いんだろ燃やせば
クリムゾン
- うん。その通り。物分かりが良いクリムゾンは好きだよ
シュエット(若)
- 変なこと言ってねぇで燃やしやすい環境でも作れよな
クリムゾン
- そうしよう。では、ターミガンとルピナスは周囲の警備、カメリアは幹部への報告をお願いするよ
シュエット(若)
- 合点承知!
ターミガン
- 任せてくださいネ!
ルピナス
- はい。すぐ行ってきますね
カメリア
- 草原に打ち捨てられた敵の亡骸を燃やしながら、シュエットとクリムゾンはそっと話し合う。
- シュエットさ、ジェットとかいう奴が来た時だけ絡んだろ?どうしたよ?
クリムゾン
- ……今朝見た夢に出た男と、とても似ていた。あんな髪型ではなかったけれども
シュエット(若)
- 俺は夢見てねぇから分かんねーぞ。あいつが何だって?
クリムゾン
- 壮絶な戦場で、君を追い詰めたのがあいつだったんだ。
シュエット(若)
- ただ、戦場はここではない。そして、俺の予知がこんなに早く実現するわけもない。遠くの未来だからね
シュエット(若)
- あの時、組織を聞き出せれば良かったのだけど……
シュエット(若)
- 君をあいつと接触させなければ、悲劇は起きない筈だと思ったんだ。だから、調べて先回りしようかと思ってね
シュエット(若)
- なるほどな
クリムゾン
- 調べりゃ情報上がってきそうなものだけどな。組織内にも人探しが得意な奴いるだろ?
クリムゾン
- ああ、何人か思い当たるね。彼の特徴を忘れないうちに、情報部へ指令を出しておこうか…
シュエット(若)
- そうしとけ。情報は集まってるに越したことはねーし……この戦場の処理もそろそろ終わるからな
クリムゾン
- ったく何度やっても慣れねぇ。
鼻がもげそうだ
クリムゾン
- クリムゾン!そろそろ終わったネ?
ルピナス
- ああ、これ消したらな。帰るぞ
クリムゾン
- 任務達成ってな!
ターミガン
- ふふ、よくやってくれたね。後処理ほルピナスには少々きつい環境だったかな?
シュエット(若)
- 臭いのこと?しかめっ面になっちゃうけど…我慢できるネ!
ルピナス
- 我慢強いね。我慢しすぎて鼻が利かなくならないようにね
シュエット(若)
- うん!ありがとうネ、シュエットさん!
ルピナス
- さて、さっさと帰るぞ
クリムゾン
- そうしよう。夜の静寂とベッドが恋しいよ
シュエット(若)
- 勝手について来て何言ってんだか
クリムゾン