【孫とお爺さん】
投稿第二弾です。『語り部猫さん』が延々と話す、ある意味チャット形式を台無しにする作りとなってしまいましたが、これまた時間ある時にでも気軽に読み進めて頂けると嬉しいです♪
- 【孫とお爺さん】
【語り部猫】
- 珍しく、そのお爺さんの家の電話が
鳴ったのは丁度去年の今頃でした…
【語り部猫】
- お婆さんが亡くなってからから一人暮らしのお爺さんには
身も心も一段と寒く感じ始める丁度年の暮れの頃のお話。
【語り部猫】
- 電話越しに聞こえる受話器の向こう側には
何年も顔を見ていない孫の姿が映っていた
【語り部猫】
- …どーやら仕事で何かトラブルがあったらしい。
【語り部猫】
- そーいえば小さい頃から本当に不器用な奴じゃった…
そぉ考えると、どこか懐かしさもまた込み上げてくる。
【語り部猫】
- 『急ぎで必要なんじゃな!!』
【語り部猫】
- 『…と、とりあえず200万ならスグに準備出来る。』
【語り部猫】
- 『それ以上だとすぐには難しいんじゃが…大丈夫か??』
【語り部猫】
- 『そーか…』
【語り部猫】
- 『明日の朝一番に取りに来るんじゃな、分かった!』
【語り部猫】
- …ガチャ。
【語り部猫】
- きっと受話器の向こう側にいるその《ニセモノ》は
きっと溢れんばかりの笑みを堪えていたに違いない…
【語り部猫】
- 今になって思えば、そんな風に感じるやりとりだった。
【語り部猫】
- 何年も独り身の生活に浸って弱っていたお爺さんにとっては
お金の事よりも、孫との再開で一杯だったのかもしれない。
【語り部猫】
- ~そして翌朝~
【語り部猫】
- ピーン、ポーン♪
【語り部猫】
- とっくの昔に電池が切れていたのでは??
と思う程に鳴る事の無かった玄関チャイムに
驚き気味で反応をするお爺さん…
【語り部猫】
- 『おお、よく来たな!今開けるぞい。』
【語り部猫】
- そしてお爺さんが玄関を開けると、どことなく
懐かしい孫の様な面影の…若者が立っていた。
【語り部猫】
- 『おはようございます!!…お孫さんに頼まれて
大切な荷物を代わりに受け取りに来ました。』
【語り部猫】
- 確かに…お爺さんには全く聞き覚えの無い声だった
【語り部猫】
- 『お主は、一体何者なんじゃ?!』
【語り部猫】
- その若者の話しによると、どーしても本人が来れなくなり
信頼出来る同僚の自分に頼んで来たとのコトだった…。
【語り部猫】
- 息子との再会も叶わず内心とてもガッカリしていた
そんなお爺さんの口からは思わぬ言葉が飛び出した。
【語り部猫】
- 『少しだけ、ワシの話し相手になって貰えんかの…
お主にはあまり時間は取らせんから…頼む。』
【語り部猫】
- ~その若者は考えた~
【語り部猫】
- この荷物の受け渡しまではまだ時間にも余裕があるし
寝坊する訳には行かないと思って、朝ご飯も食べずに
そのまま飛び出す様に出て来ちゃったんだよなぁ…
【語り部猫】
- 『いいですよ、少しぐらいなら。
何なら何処かでご飯食べながらでも…』
【語り部猫】
- 元々人が良いのか?それともいい人を演じてるだけなのか?
そんな事とは無関係にお爺さんの表情は少し和らいでいた。
【語り部猫】
- 二人はそのまま駅の裏側にある小さなファミレスに
移動すると、食事をしながら色々と雑談をしていた
【語り部猫】
- そして、孫の様な話し相手を見つけたお爺さんの口からは
懐かしいお孫さんとの思い出話がとても沢山出てきていた。
【語り部猫】
- 『いやぁ…お前さんを見た時は本当に
孫と雰囲気がそっくりで驚いたわい!』
【語り部猫】
- 『…流石に声を聞いたら別人だとスグにわかったがなw』
【語り部猫】
- 『声だけなら、昨夜の電話の相手だって本当に
孫の声だったかは正直自信ないんじゃ…』
【語り部猫】
- 『流石にこの歳となると、物忘れも激しくてのぉ…。』
【語り部猫】
- 少し寂しそうにそぉ語るお爺さんは、
やはりどこか悲しげな目をしていた。
【語り部猫】
- 『また、良かったらいつでも遊びに来てくれw
そんな金で良ければ幾らでもくれてやるから…』
【語り部猫】
- 『えっ!?…お孫さんじゃなくて僕にですかー?!』
【語り部猫】
- 重い腰を上げて席を立とうとするお爺さんをよそに
照れ笑いをしながら受け答えするその若者は、ふと
ひとつの疑問が心をよぎっていた。
【語り部猫】
- 『お、お爺さん…まだ時間あるので家まで送りますよ!』
【語り部猫】
- 今度は若者からの意外な提案に
少し照れながらもお爺さんは…
【語り部猫】
- 『なんじゃ何じゃー
ワシになんて気を使わなくて良いぞ!!』
【語り部猫】
- 『そんなんじゃないですから、気にしないで下さいw
その代わり…ひとつだけ寄り道させて下さいねー。』
【語り部猫】
- そんな和やかな会話をしながらファミレスを後にすると
お爺さんを連れて二人が立ち寄ったのは、駅の向かいに
構えた小さな交番だった…。
【語り部猫】
- 『こちらのお爺さん、何かとても嫌がってるみたい
ですけど、どーかされましたか??』
【語り部猫】
- そんなお巡りさんからの質問に若者は…
【語り部猫】
- 『いえ、悪いのはきっと僕の方です。』
【語り部猫】
- 『多分このお爺さん、オレオレ詐欺に騙されて
お金を取られる所なんだと思います!!』
【語り部猫】
- そーして若者が語り始めたのは、数日前に街中で
割のいいバイト話を持ちかけられたコト…
【語り部猫】
- 大切な顧客からの重要な書類を受け取って
依頼者に渡すだけのとても簡単な指示内容。
【語り部猫】
- そしてバッグの中からおもむろに紙袋を
取り出すと、若者はそのまま話を続けた
【語り部猫】
- 『恐らくこの中身は、書類ではなくて札束です。』
【語り部猫】
- 『…そーですよね??お爺さん。』
【語り部猫】
- 正直な所お爺さんには、真っ直ぐ自分を見つめて
話しかけてくる若者の眼差しがとても辛かった。
【語り部猫】
- 『いいんじゃ、もぉやめてくれないか…
ワシは別にお金が惜しい訳じゃない。』
【語り部猫】
- そんなお爺さんを脇目にかなり険しい表情になった
お巡りさんからは当然、二人はこの後も事情聴取を
色々と受ける事になった。
【語り部猫】
- 話を要約すると…
【語り部猫】
- 詐欺だと知らずに加担させられた若者。
【語り部猫】
- 詐欺だと気付いていながらも現金を受け渡したお爺さん。
【語り部猫】
- そしてそんなやり取りの中で若者が一番驚いたのは…
【語り部猫】
- お爺さんの孫は実は数年前に他界していたという事実。
【語り部猫】
- 就職を控えた所での交通事故だったらしい…。
【語り部猫】
- 『そ、それなら電話あった時点でナゼ?!』
【語り部猫】
- 思わず声を張り上げてしまった若者にお爺さんは…
【語り部猫】
- 『思い出に浸る時間が欲しかったのじゃ…ワシは。』
【語り部猫】
- そして、そんなやりとりを静かに見守る警官に
お爺さんはすがる様な感じで言葉を付け足した
【語り部猫】
- 『どーかこの子の事は許してやって欲しい。
この若者はワシの大切な孫なんじゃから…』
【語り部猫】
【語り部猫】
- ~後日談~
【語り部猫】
【語り部猫】
- 若者からの情報提供によって、詐欺グループは
そのリーダーと共に無事逮捕出来たとの事。
【語り部猫】
- その若者も、被害者本人からの強い要望によって
あくまで厳重注意とゆーコトで済んだとか…。
【語り部猫】
- 丁度幼い時に祖父母を亡くしていたその若者は
その後もお爺さんのお世話をしながら、一緒に
過ごすコトになったみたいです。
【語り部猫】
- p.s.
…どこまでが本当なのかまでは定かじゃないですけど
半年程前に聞いた、少しホッコリする様なお話でした。
【語り部猫】
- ~おしまい~
【語り部猫】