ソードアート・オンライン 黒紫の英雄譚 第37話
リアルの事情で投稿がかなり遅れてすみません。現在進行形で作業に追われていますが、とりあえず上げときます。 今回から新キャラ登場です!
- アインクラッド34層ボス部屋
ヒースクリフ
- 2023年6月15日。この日、アインクラッド第34層ボスモンスター《アーマディロン・ザ・バーリー・ブラスター》に攻略組は48人のフルレイドで挑んだ。ボスの容姿は背中に無数の刺を生やした巨大なアルマジロ。トゲの発射攻撃や丸まって体当たりなどの攻撃をしてくるボスモンスターで、タンクを多く必要とする戦いとなった。
ヒースクリフ
- 一見苦戦するかに思えたが、25層を突破した直後にヒースクリフによって設立された新ギルド《血盟騎士団》の的確な連携により、僅か20分での突破となった。
ヒースクリフ
- 短期決戦でボス戦が終わった事で、早速次の層のアクティベートに向かう攻略組の面々だったのだが...
ヒースクリフ
- 何故か黒紫の剣豪団は上の35層ではなく、11層のタフト、その中のアクセサリー屋に来ていた。
ヒースクリフ
- さて....確かこの店に居るんだよな、エギル?
キリト
- 勿論だ。フレンド登録してあるから位置は把握してる。
エギル
- おーーーい。リズーーー?居るか⁉︎
キリト
- かなり大きめの声で鍛冶屋の名を呼ぶ。
キリト
- へぇっ⁉︎
リズベット
- 変な声を出した主はリズベット。SAO内で優秀な鍛冶屋の1人で、攻略組の8割が彼女の鍛冶屋を利用してるとまで言われている。が、今日は鉄を打つ仕事を休み、女の子らしくショッピングを楽しんでいたらしい。
リズベット
- 悪いな、アクセサリーの試着中に呼び出して。急用があるんだ。
キリト
- はぁ....今日の私は鍛冶屋おやすみ中なんだけど?
リズベット
- 頼むよ....このままじゃいよいよユウキの剣がぶっ壊れそうなんだ。
キリト
- そう。ユウキの持つ剣である《聖剣ラグナロク》は25層でかなり乱暴に扱ったため、ボス戦終了時点で耐久値がかなり減っていた。なのにユウキは聖剣ラグナロクを使い続けたのだ。結果.....
キリト
- これなんだけどさ....
ユウキ
- 「」
リズベット
- リズベットは絶句していた。恐らく現時点で最も最高級の代物であるはずの聖剣ラグナロクが......とても聖剣とは言い難い見た目をしていた。剣先の刃こぼれは酷く、全体的に黒ずんでいる。
リズベット
- ちょっと預かるわよ....
リズベット
- 恐る恐るリズベットは武器の詳細を確認する。
リズベット
- 聖剣ラグナロク
片手直剣
必要筋力値 45
耐久値 7/7000
リズベット
- 耐久値残り7⁉︎あと一回攻撃したら壊れるわよこれ‼︎
リズベット
- 危なすぎる.....
ノーチラス
- あと一歩遅かったら大変な事になってたね。
ユナ
- それでリズ、どう...?直せそう?
アスナ
- こんなになるまで放置されたら正直難しいわよ.......
リズベット
- えぇぇぇ‼︎
ユウキ
- でも....日数をかければできない事もないわ。
リズベット
- 1週間くれない?ただでさえ最高級レベルの剣だから修復に時間かかるのよ。
リズベット
- 1週間か....その間違う武器をユウキにあげなきゃな....
キリト
- キリトはブツブツ言いながら自分のメインメニューを操作する。
キリト
- アニール・ブレードで良いか?ユウキ。
キリト
- 良くないよ‼︎それ第1層で最初に受けれるクエストの報酬武器じゃん‼︎
ユウキ
- 冗談だ。俺の使ってない片手剣をあげるよ。
キリト
- キリト君、そんなに武器余ってたの?
アスナ
- 何を隠そう、今アスナが使っている剣...つまりアスナの消えてしまったキング・フルーレの代わりもキリトから提供されたのだ。
キリト
- まあ....ラストアタックボーナス取りまくってるからな。
キリト
- さすがラストアタックボーナス常習犯だな。
ノーチラス
- 刺のある言い方だな。
キリト
- ノーチラスの多少の嫌味を受け流しながら、キリトはユウキにギルドを送る。中身は《ソード・オブ・ホライゾン》という片手剣だ。現在自分が使っている《エンド・スパーダ》と同等以上の性能を誇る。当然《聖剣ラグナロク》には劣るが。
リズベット
- ほい、ユウキ。しばらくはこの剣で行こうな。
キリト
- はーーい。って...これ強化してあるじゃん!キリト使ってたんじゃないの?
ユウキ
- あぁー実はその剣....いや、なんでもない。
キリト
- 単純に代替として強化してただけだよ。
キリト
- 本当に.....?
アスナ
- アスナがこちらをじっと睨んでくる。
アスナ
- じ、じゃあリズ、頼んだぞ!俺たちは35層の攻略に出掛けるからな!
キリト
- はいよー!気をつけてね!
リズベット
- ちょっ!待ちなさいよ!
アスナ
- (代わりの剣はありがたいけど....キリト何か隠してる?)
ユウキ
- 35層の主街区は既に攻略に向かっていたメンバーにマッピングされていたため、転移門から転移できた。
ユウキ
- 35層 ミーシェ
ユウキ
- これは...村がモチーフの層か?
エギル
- 主街区を覆っているのは白い壁ね....内部は農村って感じ。
アスナ
- のんびりしたい雰囲気の層だが、あまりゆっくりは出来ないな。
ノーチラス
- どうする?今日はもう夕方だし明日から攻略にする?
ユナ
- その方が良いな。今日はもう解散でいいぞ。
キリト
- あ...解散する前にちょっと良いか?
エギル
- どうしたエギル。
キリト
- すると咳払いしてエギルは衝撃の発言をした。
キリト
- 実は俺...商人を始めようと思うんだ。
エギル
- え!本当ですか⁉︎
アスナ
- エギル....別に深刻な事じゃなくない?
キリト
- いやな?商人になったら攻略に今みたいに参加できねえだろ?だからよ...
エギル
- あぁ成る程な。
キリト
- 別に気にするなよ。エギルがやりたいんだろ?だったら自由にしろよ。俺たちが止める権利なんてないぜ?
キリト
- うん!自分のやりたい事をやれるのはとても大事だからね!
ユウキ
- 商業を始めたら呼べよ。余ってる素材を大量に売ってやるよ。
ノーチラス
- ありがとよ.....!
エギル
- えっと、いつから始める予定なんですか?
ユナ
- とりあえずこの層は一緒に攻略するぜ。そっから先は...ギルドに顔出せるか分からないけどよ。
エギル
- 了解だ。じゃ、今度こそ解散!明日10時半に転移門前に集合!
キリト
- 全員が頷き、解散が完了した。これからキリトとユウキとアスナの3人トリオは宿を探すのだが....重大な問題が発生していた。
キリト
- ないよぉ!空いてる部屋ないよぉ!
キリト
- えぇ....(困惑)
ユウキ
- この層の宿屋小さいもんね....一瞬で埋まっちゃったみたい。
アスナ
- .....下層の宿屋に行くか。でも下層は最前線じゃないから人が結構居るんだよな.....結局満室じゃないか?
キリト
- うーん...
キリト
- うーん...
ユウキ
- うーん...
アスナ
- ・・・・・・
アスナ
- よし、アイツに頼るか!
キリト
- キリトはウインドウを操作してとある人物にメッセージを送った。
キリト
- 10分後...
キリト
- おいキー坊。こう見えてもオレッチは忙しいんだゾ?
アルゴ
- よく来てくれたなアルゴ。重大な件をお前に相談したいんだ。
キリト
- 重大....?
アルゴ
- あぁ。現在空いてる宿屋教えてくれ。
キリト
- そんな事かヨ⁉︎それならオレっち呼ばずに自分で探せヨ!
アルゴ
- いや...お前に聞いた方が早いと思って....情報料は払うからさ。
キリト
- ハァ....分かった、教えてやるヨ。
アルゴ
- 今オレっちが宿泊に利用してる22層の宿屋なんかどうだ?いつもガラッガラだゾ。
アルゴ
- よし決定!ユウキ、アスナ!22層に転移するぞ!
キリト
- アルゴ!情報料はいくらだ?
キリト
- 8000コル寄越セ。
アルゴ
- 8000円...ま、良いや。
キリト
- アルゴのお望み通りの額をアルゴにギフトとして送信してキリトは転移門に向かった。
キリト
- はぁ...オレっちを何だと思ってるんダ?
アルゴ
- 22層 宿屋前
アルゴ
- うわ〜綺麗な主街区ね!
アスナ
- 湖畔と森に包まれた大自然の層だね!
ユウキ
- 和やかな層だが....あまり知られてないのか人はそれほど居ないな。
キリト
- で、肝心の宿屋は....木製の宿屋だな。木のいい香りがする。
キリト
- 毎度思うが、SAOの宿屋は現実世界の宿屋に限りなく近い完成度だ。正直現実で出掛けなくてもこういう宿屋がゲームで泊まれるならこっちの方がお手軽なのではないかと思う。
キリト
- 値段はまぁまぁだな。いつも通り割り勘するぞー。
キリト
- ほーい。
ユウキ
- はーい。
アスナ
- いつも通りキリトの1人部屋とユウキ・アスナの2人部屋に分かれた。現在の時刻は18時。夕食は各自取ることにした。なぜならキリトとユウキ・アスナの部屋はかなり離れているため一々集まっていると効率が悪すぎるのだ。重要な件があったら各自メッセージを飛ばすようにした。
アスナ
- そして時間は経ち深夜2時。この時間はキリトにとって大切な時間となる。
アスナ
- ふぅ.....!
キリト
- キリトはひたすらモンスターを倒す。寝床として使っている22層ではなく35層で。
キリト
- そして.....自分ですら把握し切れていないスキルの熟練度上げをしていた。
キリト
- 数ヶ月前....
キリト
- はぁぁー。もう朝かよ....昨日の25層ボスとの戦闘の疲労が抜けきってないのに....
キリト
- うん...?お知らせ画面にスキル取得....?
キリト
- 何だ.....?新しい戦闘系のスキルでも取得したのか?それとも戦闘回復《バトルヒーリング》スキルの奥義を習得したのか⁉︎
キリト
- しかしそこに表示されていたのは自分が見たことも聞いたこともないスキル名だった。
キリト
- 二刀流
片手剣を2本装備して戦う。
キリト
- は?
キリト
- 改めて調べ直しても過去に《二刀流》というスキルを取得したプレイヤーは居なかった。積めるところこれは未だ俺にしか出てないのか、もしくは《ユニーク・スキル》の可能性がある。
ヒースクリフ
- 普通に考えて攻略組に報告するべきなのだろう。が、キリトには敢えてこのスキルの事を誰にも言わない理由があった。一つ目はネットゲーム故のイザコザを避けたかったからだ。自分は仮にも攻略組でそこそこ上位のレベルを持っているが、こんなスキル持ってると知られたら他のプレイヤーに付け回される確率も0では無いだろう。そうなれば俺自身だけでなく周りの人にも迷惑がかかる。それだけは絶対に避けたい。二つ目は単純にまだこのスキルについて十分に慣れていないからだ。熟練度の問題もそうだが、2本の剣を使って戦うのは今まで片手剣で戦ってきた癖のせいで中々慣れない。コツを掴むまでは実戦投入はかなり厳しいだろう。
ヒースクリフ
- しかしこのスキル、中々に強力なため熟練度を上げて損はない。故にこうして週に4日間深夜の2時〜4時まで熟練度上げで練習しているわけだ。その代償として寝不足だが、現実世界では徹夜でオンラインゲームなど平気でしていたのでそこまで酷じゃない。
キリト
- せやぁぁぁぁっ!
キリト
- キリトは初期から使える二刀流ソードスキルの一つである二刀流範囲技《エンド・リボルバー》を放った。片手剣の範囲技よりも火力と速度が高く、敵に囲まれた際の突破口として優秀な技だ。最も今敵対してるモンスターは一体だが。
キリト
- ふぅ...撃破っと。
キリト
- 35層の時点でキリトのレベルは48。
片手剣熟練度は1000。索敵熟練度は850.5。投擲スキルは760.8。武器防御熟練度は890.7。そして二刀流熟練度が351.2だ。1人でやってる上、時間が限られているせいで二刀流だけ熟練度の上昇が著しく低い。
キリト
- 正直このスキル公開して堂々と熟練度上げしたいけど....我慢我慢。
キリト
- はぁー。にしても普段パーティーでやってるせいでソロが中々キツいな。βテスト時代はずっとソロだったのに....慣れとは恐ろしいな。
キリト
- いっその事、誰かと一緒に熟練度上げしたいけど...最前線に真夜中に来るやつなんて大体攻略組だからな。そう簡単にはいかないか。
キリト
- そう思ってキリトがフィールド内の森に入ったその直後、幸か不幸かキリトの願いは叶ってしまう。
キリト
- ん...索敵スキルに反応?これは....プレイヤーか⁉︎
キリト
- ヤバっ!絶対攻略組だろ!隠れなきゃ....
キリト
- しかしキリトの目の前にゴリラ系モンスターが数体立ちはだかる。
キリト
- チッ!邪魔だぞ!
キリト
- キリトはこの間取得したばかりのソードスキル、《カウントレス・スパイク》を打ち込む。敵が密集してる時には有効打となる技だ。
キリト
- さっさと人の居ない所に...!!
キリト
- 敵を無事倒し、さっさと人目のつかない所に去ろうとしたキリト。が、一足遅かった。
キリト
- おいおい...またモンスターかよ。今日は随分とポップが多いな!
キリト
- 再び剣を取ろうとするキリト。が、それは取り越し苦労となった。何故なら後ろから剣が数本飛来し、そのモンスターは消えたからだ。
キリト
- はい?
キリト
- 思わず後ろを見たキリト。そこには....
キリト
- 赤髪のロングヘアと2本の剣を携えた女性がいた。
キリト
- えーと...大丈夫ですか?
レイン
- あ....うん。
キリト
- (ヤバいヤバいヤバい‼︎二刀流状態の俺を見られた!どうす.....る?)
キリト
- しかしキリトは気付いた。よく見たら自分の目の前にいる剣士も2本の剣を所持しているのだ。つまり、このプレイヤーも自分と同じで人目のつかない所で修行しているのでは?と。
キリト
- ならば過度に避ける必要はないだろう。
キリト
- あの、援護サンキューな。俺の名前はキリト。君は?
キリト
- 私はレインだよ。よろしくねキリト君。
レイン
- (レイン....こんか真夜中に最前線に居るって事は結構ガチ勢だよな。にしては名前を聞いたことないぞ。)
キリト
- ところで....その、『2本』なんだね。
レイン
- あぁ.....やっぱり気づいた?
キリト
- その、君もなの?
レイン
- そうだろうな。いや、良かったぜ。俺以外にも同じ境遇の人が居て。
キリト
- そっかあ...私だけじゃなかったんだねー。
レイン
- 次に2人は同時に言葉を発した。
レイン
- 二刀流のスキル習得者!
キリト
- クエスト報酬のオリジナル・ソードスキル!
レイン
- しかし.....内容はお互いに空ぶっていた。
レイン
- は?
キリト
- え?
レイン
- この仮想世界でも勘違いはあるようだ。
レイン
- To be continued...
レイン