ソードアート・オンライン 黒紫の英雄譚 第34話
25層ボス戦です。次回衝撃の展開になるので今回はギャグ入れときました。
- 2023年5月15日 25層 宿屋にて
キリト
- 明日はいよいよボス戦だ。気を引き締めていくぞ。
キリト
- この場にはキリトが団長を務めているギルド、「黒紫の剣豪団」のメンバー全員が集まっていた。
キリト
- 絶対に勝つぞ。みんなで26層に行くんだ!
キリト
- うん!
ユウキ
- 毎回このパターンだけど、これに尽きるわね。
アスナ
- 初めてのボス戦で緊張するけど...絶対負けない!
サチ
- 初ボス戦のサチがこんなに意気込んでるんだ。古参の僕らが負けてはいられないな。
ノーチラス
- さて、明日に備えて今日は解散か?
エギル
- あぁ。みんなコンディションを整えておいてくれ。また明日!
キリト
- 明日はこれまで以上に激しく危険な戦いとなる。今のうちに体調を整えておいておくのは必須であろう。皆もその意図を汲み、それぞれの帰路についた。
ヒースクリフ
- 深夜1時
ヒースクリフ
- 既にキリト、ユウキ、アスナは就寝していたその真夜中にキリトへ一件のメッセージが届いた。
ヒースクリフ
- 何だ?こんな夜中にメッセージ...?
キリト
- message
キリトへ。もしこのメッセージを見てくれたら25層の広場まで来てもらえますか?
Sachi
キリト
- サチ?
キリト
- キリトはメッセージの意味が気になって広場に向かった。
キリト
- そこには1人の少女がいた。辺りは闇夜に包まれているが広場の電球の灯りに照らされてサチは立っていた。
サチ
- キリト...来てくれたんだね。ごめんね、こんな真夜中に。
サチ
- どうしたんだ?寝れないのか?
キリト
- 寝れはしたんだけど....怖い夢見ちゃって....
サチ
- 怖い夢か....
キリト
- 別に子供っぽいとは思わなかった。こんな世界じゃ怖い夢を見たら不安になるのは当たり前だろうし、昔から妹が怖い夢を見て寝れなくなった時は傍にいて寝かしつけてやった事もある。
キリト
- ........
キリト
- 嫌なら話さなくていいけど、夢の内容を他の人に話すとスッキリする事もあるぞ。
キリト
- 分かった。話すね。
サチ
- なんていうか...不思議な夢だったの。
サチ
- 私と...今は居ないメンバーがいて....一緒に攻略してる夢。
サチ
- (何だ?今の所普通な気が...)
キリト
- でもそこにはキリトも居たんだ。
サチ
- ファッ⁉︎
キリト
- みんなが少しずつ強くなって...もう少しで攻略組になれる、って感じだったの。
サチ
- でもメンバーの1人がトラップ踏んじゃって....そこに居た人は全員死んじゃったの。......もちろん私も。
サチ
- .........
キリト
- キリトは....夢の中でも凄く強かったから大丈夫かもしれないけど.....
サチ
- 私が死ぬ瞬間キリトが見せてた顔は....とても辛そうにしてて....
サチ
- .........
キリト
- その夢はこの世界では何よりの悪夢であろう。キリト自身もそういう夢を見た事がないわけではない。夢だと割り切ってても、もしかしたらと考えずには居られなくなるのだ。
キリト
- 夢だって分かってても...明日ボス戦だから余計に怖くなっちゃって...
サチ
- もういい。サチ。
キリト
- その夢のことは忘れるんだ。
キリト
- 俺が...そんな事にはさせない。
キリト
- 君の事は...俺が...《黒紫の剣豪団》が絶対に守る。
キリト
- ふふっ。ありがとうキリト。でもその台詞、誰にでも言っちゃダメだよ?
サチ
- 『勘違い』しちゃうよ?
サチ
- ん?勘違い?
キリト
- 何でもなーい。ごめんね、こんな遅くに起こして。また明日〜!
サチ
- そう言うとサチは吹っ切れたのか、一目散に部屋に戻っていった。
サチ
- 勘違い...何をだ?
キリト
- キリトには疑問が残っていた...
キリト
- 翌日 25層広場
キリト
- どういう事だ?今日は迷宮区前に集合じゃなかったのか?
キリト
- 今朝方、攻略組全域を通して集合場所を迷宮区前から25層の広場に変更するという伝達があったのだ。意図がわからず困惑する者が多かったが、そこに居た1人の男の発言でその不安は断ち切られた。
キリト
- いやすまないね。本当は迷宮区前に集合予定だったのだが、あそこに行くまでに大きな山を越えていかなければならないだろう?それだけで幾分か体力を消費してしまうだろうからその分の短縮を図ろうと思って...《回廊結晶》を使用する事にした。
ヒースクリフ
- おぉ.....思い切ったな。
キリト
- キリトは素直に感心した。この男に気を許すなどあってはならない事(自分の意見)だったのだが、これに関しては感心せざるを得ない。
キリト
- 回廊結晶....名前だけなら聞いた事あるけどどんなだっけ?
ユウキ
- 私も知らない。
サチ
- 僕も
ノーチラス
- 私も
ユナ
- キリト君は何か知ってるの?
アスナ
- はぁ...いいか?《回廊結晶》てのは任意に設定した目的地へプレイヤーを運ぶアイテムの事だ。ただしこれは転移結晶と違って多くのプレイヤーを同時に移動させられる超便利なアイテムなんだ。
キリト
- そう。確かにこのアイテムは便利なのだが、その分入手方法が明細には分かっていない。キリトもいつの間にか持ってた事が一回あったきりでそれ以降はお目にかかれていない。アイテム取引でも現在進行形で高値が付けられる代物で、現時点で易々と使う者は居ない。
キリト
- それを目の前にいるヒースクリフという男は平然と使ったのだ。これには感心せざるを得ないだろう。
キリト
- この回廊結晶は行き先をボス部屋前にセットしてある。これを使えばすぐにでもボス戦を始められる。皆、準備はいいかな?
ヒースクリフ
- もちろんだ‼︎絶対に勝つぞ!
モブプレイヤー
- 死亡者ゼロで突破してやんよー!
モブプレイヤー
- では...行こうか。
ヒースクリフ
- コリドー・オープン
ヒースクリフ
- ヒースクリフがそう言い放つと、回廊結晶が光に包まれて次第に光のゲートのようなものが錬成されていった。
ヒースクリフ
- プレイヤー達はその光に吸い込まれるようにゲートを通ってゆく。
ヒースクリフ
- キリトは回廊結晶を使った事がないため、実際使った時に得られる感覚は初めてだった。
キリト
- うわ...こんな感じなのか。現実だったら絶対にありえない感覚だから不思議な気持ちになる...
キリト
- ワープって不思議だね。
ユウキ
- お喋りはそこまでよ。今私たちはボス部屋の前に居るんだから。
アスナ
- ギルドリーダーらしく激励の1つでもくださいよ。
ノーチラス
- そうだな。絶対に勝つぞ‼︎もうそれ以外言う事ない!
キリト
- うん。みんなで生き残ろうね!
サチ
- よぉキリト。お前らも喝入ってるな。
クライン=おっさん
- おうクライン。生きてたのか。
キリト
- 当ったり前だ‼︎当然今日も勝ち残るぜ?
クライン=おっさん
- では皆んなの気合いも入ったところで突撃に入る。よろしいか?
ヒースクリフ
- おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
ヒースクリフ
- では全員....
ヒースクリフ
- 突撃ィィィ‼︎
キリト
- うぉぉぉぉ!!!
キリト
- キリトとヒースクリフの掛け声でプレイヤー全員がボス部屋の扉をこじ開け、ボス部屋に突入した。
キリト
- 真っ暗だな....
クライン=おっさん
- 気をつけて!近くにボスが居るはずよ!
アスナ
- サチ...見えそうか?
キリト
- ちょっと待っててね.....
サチ
- ......居た!ユナさん避けて!あなたの目の前!
サチ
- え
ユナ
- サチが警告した瞬間、ボス部屋が一瞬で明るくなりボスの姿が全プレイヤーの前に現れた。そしてボスは最初にユナに襲い掛かった。
ユナ
- ユナ‼︎
ノーチラス
- ノーチラスはユナを助けようとユナの元に全力で走る。が、盾もないノーチラスにユナを助ける事は出来ないだろう。
ノーチラス
- 来ちゃダメ、エーくん‼︎
ユナ
- エギル!
キリト
- どうせ俺が呼ばれると思ってたよ!
エギル
- ユナ!下がってろ!
エギル
- そう言うとエギルはユナの前に出てボスの攻撃を受け止めた。
エギル
- すみません...!
ユナ
- 早く下がるんだ!
エギル
- おいおい...随分とデケェな!
クライン=おっさん
- 全員固まるな!まずは敵の攻撃パターンをしっかりと覚えるんだ‼︎
ヒースクリフ
- ボスは続いて鎖をぶん回しながら突進してきた。
モブプレイヤー
- うわぁぁぁぁぁ‼︎無理だ避けられない‼︎
モブプレイヤー
- ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ‼︎
モブプレイヤー
- 近くにいた2人のプレイヤーがその攻撃に巻き込まれてしまう。
キリト
- .....!
サチ
- サチ、君は出るな!俺が行く!
キリト
- それよりも君の視界の広さを生かしてできるだけ戦況を把握しておいてくれ!
キリト
- 分かった!
サチ
- ちょっとぉ!置いてかないでよキリト!
ユウキ
- 全くよ!1人でプレイヤー2人を助けて更にボスを引き離す気!?
アスナ
- 全く....!持ち場を勝手に離れるなよ!
キリト
- 私達の持ち場は君の傍よ!
アスナ
- 絶対に離れないからね!
ユウキ
- あぁ.....もう.....
キリト
- 俺がプレイヤーを救助するから10秒間ボスの足止め頼んだぞ‼︎
キリト
- はーい!
ユウキ
- 行くわ!
アスナ
- (相変わらず頼りになるぜ...!)
キリト
- 第1層からずっと共に戦い続けたこの3人のコンビネーションは攻略において大きな戦力となっている。
キリト
- おい!大丈夫か!?
キリト
- 先程巻き込まれたプレイヤーは2人ともHPが半分ほど減っていた。
キリト
- 動けるか!?後ろに下がれ!
キリト
- くっ....!そぉ!
モブプレイヤー
- .....!
モブプレイヤー
- おい!どうした!?
キリト
- すまない....あの鎖に当たってから....身体が動かないんだ。
モブプレイヤー
- まさか...ボスの持っているあの鎖にはランダムで「麻痺」を付与するデバフ効果があるのか!?
キリト
- 俺らの事は見捨てて...攻略に戻ってくれ。
モブプレイヤー
- 馬鹿言うな!待ってろ、今麻痺解除のポーションを....!
キリト
- しかしキリトはここで内心気づいていた。もう10秒経ったことに。つまり...
キリト
- ごめんキリト君!もう抑えられない!
アスナ
- そっち行くよ!気をつけて!
ユウキ
- くそっ!ボスが...!
キリト
- 逃げろぉぉぉぉ‼︎‼︎
モブプレイヤー
- 1人のプレイヤーは麻痺から解放され、奇跡的に動いた。が、今更動いてもボスの攻撃は避けられない。キリトを含めた3人が攻撃に巻き込まれるだろう。
モブプレイヤー
- ドサッ
モブプレイヤー
- お前‼︎
キリト
- 麻痺から解けたそのプレイヤーはキリトを思い切り突き飛ばし、ボスの攻撃範囲内から撤退させた。
キリト
- 俺たちのことは気にするな‼︎
モブプレイヤー
- 勝利のために!前を見てくれ‼︎
モブプレイヤー
- ボスの斧が無慈悲にもその2人をなぎ払い、この世界から消し去った。
モブプレイヤー
- .......!!!!!
キリト
- ぁぁぁぁぁぁぁああああああ‼︎‼︎
キリト
- (もっと俺が早く決断できていれば2人は助けられただろうか。できたかもしれないが今更考えても後の祭りだ。今は目の前にいる敵に集中しろ..!!)
キリト
- アイツを.....絶対に倒す‼︎
キリト
- それから先は今までにない死戦が繰り広げられていった。HPゲージが1本減っても大した攻撃パターンの変化は無かったが、斧の振り下ろしやボスの移動速度の速さ自体も相まって攻撃をモロに受けてしまい、この世界から消えてしまうプレイヤーも何人も出た。
キリト
- ようやく....!HPゲージ4本目だ‼︎
キリト
- ついにボスの残り体力はゲージ2本。しかしここで今まで変化のなかったボス戦に変化が訪れた。
キリト
- キリト君!ボスの近く、何か出現する!
アスナ
- なんだ.....?取り巻きか!?
キリト
- キリトの読み通りそこには取り巻きが3体現れた。が、それはキリトや攻略組にとって想定外すぎる敵だった。
キリト
- 全体は小さい。頭全体はテレビのような四角。それでいて顔は落書きのような出来栄え。物凄く見覚えのあるそれは...!
キリト
- ニ◯ニ◯動画〜
ニコニコテレビちゃん
- .......
キリト
- .......
ヒースクリフ
- ......
エギル
- ふ、ふ、ふ....
キリト
- ふざけんてのか茅場ァァァァァァ‼︎‼︎真面目になった場の空気を返せェェェェェ!
キリト
- 何あれ可愛い‼︎
ユウキ
- ええ!すごい愛でたくなるわ!
アスナ
- 馬鹿野郎‼︎あれはこの世界のモンスターじゃない‼︎
キリト
- あれは現実世界の...ニ◯ニ◯動画のマスコット、ニ◯ニ◯テレビちゃんだ!
キリト
- おい!すごい見覚えのあるやつ来たぞ!
モブプレイヤー
- この世界は一体どうなってんだ!?
モブプレイヤー
- てか何でいきなり出てきた!?
モブプレイヤー
- 多分あれだろ...この層が25《ニコ》だから...
ノーチラス
- って!喋ってる暇ねえぞ!ボスがまたこっちに来た‼︎
モブプレイヤー
- まさか...!あのマスコットに気を取らせてその隙にパーティーを全滅させる作戦なのか!?
キリト
- いや流石にそれは無いと思うのだが...
ヒースクリフ
- ええ!?卑劣!果てしなく卑劣ね、それ!
アスナ
- ボク達女子を可愛いもので釣るなんて....最低‼︎
ユウキ
- まじかよ茅場サイテーだな。
モブプレイヤー
- 茅場明彦ォォォォ‼︎
キリト
- 攻略組の一方的な勘違いとはいえ、怒りに満ちたプレイヤー達は士気をあげていく。が....彼らはまだ知らなかったのだ。この先にどんな地獄が待っているのかも。そして...攻略組に異変が起きていた事も。
キリト
- To be continued...
モブプレイヤー