ソードアート・オンライン 黒紫の英雄譚 第33話
25層も終わりに近づいています。ところでアリブレ楽しくないですか?(唐突)
- 迷宮区前でヒースクリフと合流し、ひょんな事から一緒に迷宮区攻略をすることになったキリト達。彼らは25層を突破するため、今日も命をかけて攻略するのであった。
ヒースクリフ
- 既に迷宮区内に突入してから3時間が経過した。相変わらず迷宮区内は複雑だが、気をつけていればどうということはなかった。そろそろボス部屋が見つかってもいい頃だがまだ扉は姿を見せない。
ヒースクリフ
- (やはりこの層は前の24層に比べても難易度が高い....ちょうど4分の1だからか?)
キリト
- はぁっ!スイッチお願いします!
サチ
- いい動きだサチくん。後は任せたまえ!
ヒースクリフ
- ヒースクリフはサチとの連携でモンスターを倒した。相変わらずヒースクリフの動きは無駄がない。
サチ
- ふぅ...中々に骨の折れる相手だな。
ヒースクリフ
- その割には平気そうな面してるけどな。
キリト
- この世界では精神の疲れが生死に影響する。本当に大事なのは心のケアではないのかね?
ヒースクリフ
- アンタはそっち方面でも問題ないだろ。
キリト
- 既に一緒に攻略をしてそこそこの時間が経ち、普段ボス戦以外で話すことのないメンバーとの交流も深まりつつあったが、やはりキリトとヒースクリフの間のなんとも言えぬ溝は健在だった。
キリト
- 本当に仲悪いな...あの2人。
エギル
- 悪いというよりキリトが一方的に嫌ってるだけのような...
ユナ
- もう...キリト君は疑い深いわね。
アスナ
- でも...キリトの気持ちも分かるかも。
ユウキ
- え?
アスナ
- あのヒースクリフって人...強さがズバ抜けてるもん。キリトじゃなくたって少しは警戒しちゃうよ。
ユウキ
- ....
アスナ
- それについてはアスナも考えていなかったという訳ではない。むしろ何度かそう思ったこともある。ある日突然最前線に現れたヒースクリフは盾を駆使した攻防を繰り出し、鬼神の如き力を見せつけた。その強さに惹かれて彼の元で共に戦いたいというプレイヤーも少なくない。彼が近頃建設する予定のギルドには、間違いなく多くの人が集まるだろう。
アスナ
- おい!あれ見ろ!
エギル
- エギルが指差した方向にはボス部屋の扉らしきものがあった。3時間以上も探索しているのだからあってもおかしくはない。が、そこには厄介な問題が立ちはだかっていた。
エギル
- モンスター居るね。しかもそこそこデカい。
ユウキ
- どれどれ....
キリト
- キリトは索敵スキルでモンスターを拝むことにした。名前は《ソデーラ・ザ・マーシレス・レイザー》。カマキリ型のモンスターで図体はでかいが胴体は細い。
キリト
- HPゲージは2本...さしずめ中ボスってとこか。
キリト
- 来るぞ。戦闘準備だ。
ヒースクリフ
- ヒースクリフの言う通り、ボス部屋の扉前にそびえ立つモンスターは羽を動かしながらこちらへ接近してきた。スピードは中々のものだ。
エギル
- 全員が武器を構えて身を引き締めるが、1人だけ既に顔色が悪い者がいた。
ノーチラス
- あの羽の動き...気持ち悪い...
ユナ
- ユナ...カマキリ苦手だもんな。
ノーチラス
- おえっ...チーン
ユナ
- ユナァァァ‼︎
ノーチラス
- 確かにあれは女子にはキツいかもな。
エギル
- このぉぉ!ヌメヌメしたスライムに比べればこんな虫ぃ!どうと言うことはない!
ユウキ
- お化けに比べればこんな羽虫!蹴散らしてやるわ!
アスナ
- 何かよく分からないけど、虫は平気!突撃ー!
サチ
- ....
エギル
- 頼もしい女性たちだな。私のギルドができたら1人欲しいくらいだ。
ヒースクリフ
- 絶ッッッッッ対にやだね。
キリト
- おい、無駄口叩いてないでいくぞ。
ノーチラス
- 先発して突っ込んでいった女性達(1人除く)を追う形で、キリト達も参戦した。
ノーチラス
- ユナ!そこの影に隠れていろ!
ノーチラス
- ごめんエーくん...カマキリは無理。
ユナ
- 大丈夫だから!
ノーチラス
- そこ!◯しない!
アスナ
- 戦闘開始から10分
キリト
- (この中ボス...動きが早いがそれ以外は大したことない!行ける!)
キリト
- エギル!ヒースクリフ!次に鎌の振り下ろしが来たらガード頼む!その瞬間俺とサチでパリィを決める!
キリト
- パリィが成功したら、動けるやつは全員でソードスキルを打ち込んでくれ!
キリト
- あいよ!タンクは忙しいぜ!
エギル
- 君のタンクとしての技量、見せてもらうよ。
ヒースクリフ
- 振り下ろし、来ます!
サチ
- ハッ!
ヒースクリフ
- ハッ!
エギル
- 2人同時にボスの鎌を盾で支え、威力を相殺する。
エギル
- 今だ!
キリト
- いくぞサチ!
キリト
- うん!
サチ
- キリトとサチは中ボスの隙をついてパリィを行う。これにより中ボスの態勢が大きく崩れた。
サチ
- ここだ!ソードスキルよろしく!
キリト
- 行くぞー!
ユウキ
- ハァァ‼︎
アスナ
- 倒れろぉ!
ノーチラス
- ((((;゚Д゚)))))))ガクブル
ユナ
- ユウキの《ホリゾンタル・スクエア》、エイジ《シャープ・ネイル》、アスナの《シューティング・スター》がそれぞれボスにヒットし、HPを大きく削る。
ノーチラス
- では私も行くとしよう。
ヒースクリフ
- ヒースクリフは《ソニック・リープ》を放ち、見事弱点に当てた。
エギル
- 止めはエギルくんに譲るとしよう。
ヒースクリフ
- お気遣いありがとよ!
エギル
- エギルは止めの一撃となる、両手斧の連撃系ソードスキルの《ラウンドトリプル・スラッシュ》を放ち、ボスのHPを0にした。
エギル
- ふぅ...
エギル
- お疲れさま。どうだ、ラストアタックを決めた気分は?
キリト
- いつもボス戦でお前がラストアタックを取ってる時どんな気分か分からなかったが...中々に爽快だな。
エギル
- ふぅ...良かった。
サチ
- サチ君もご苦労だったな。最近参加したにしては上手い連携だった。
ヒースクリフ
- みんな?余韻に浸るのもいいけど、この先のボス部屋を確かめなくていいの?
アスナ
- そうだよ!みんなでボスの顔とか少しでも攻撃パターンとかを見ておかないと!
ユウキ
- そうだな...念のため、みんなHPを全回復しといてくれ。
キリト
- キリトの指示に従い、先程の戦闘で消耗したHPを全員回復した。
キリト
- 行くぞ..
キリト
- サチさん?フロアボスを見るのは初めてでしょ。心の準備大丈夫?
ユナ
- 平気。覚悟はできてる。
サチ
- 開けるぞ。
キリト
- キリトはゆっくりボス部屋の扉を開ける。そして恐る恐る中に入った。
キリト
- 暗い部屋だな...
キリト
- ボスは...?
ユウキ
- .......
ヒースクリフ
- ......
ユナ
- ゴゴゴゴ
ノーチラス
- !
サチ
- 何か気づいたのか?
ノーチラス
- 注意して....目の前にいる‼︎
サチ
- 何ッ!
キリト
- キリトの声と同時に部屋全体が明るくなり、ボス部屋の全貌とフロアボスが姿を現した。
キリト
- そしてサチの言う通り、フロアボスは目の前に居た。
ヒースクリフ
- 全員退避!
ヒースクリフ
- ヒースクリフの掛け声と同時に、全員がそれぞれ散らばった。
ヒースクリフ
- でか....
ユナ
- キリト君!
アスナ
- どう!?索敵スキルで何か分からない!?
ユウキ
- 今やってる所だ!
キリト
- 見えた...!
キリト
- ボスは双頭の大型巨人。持っている武器は鎖のついたハンマーと巨大な斧。そして名前は..
キリト
- 《The・titan・diablos》
キリト
- ボスの名前はザ・ティターン・ディアボロス‼︎
キリト
- HPゲージは...5本!?
キリト
- 本当だ...
アスナ
- 嘘でしょ...
ユウキ
- 今までとは桁違いという事か。
ヒースクリフ
- ....!!
サチ
- チッ!でも少しでも情報を集めるしかないぞ!
エギル
- 当然だ。HPゲージが何本だろうと関係ない!
ノーチラス
- 攻撃来るぞ!
キリト
- ボスはキリトに狙いをつけ、斧を振り下ろした。
キリト
- これくらいなら回避でき...
キリト
- が、そこで終わりではなかった。斧を下ろした地点から広範囲の衝撃波が発生し、キリトはそれに巻き込まれてしまった。
キリト
- ぐぁぁっ‼︎
キリト
- キリト君!
アスナ
- なるほど..斧攻撃は着地地点に広範囲の衝撃波...覚えておこう。
ノーチラス
- 何呑気に感心してんだ‼︎少しは心配しろや!
キリト
- どうせこの程度じゃ死なないだろ!
ノーチラス
- エーくん!ボスがこっち来てる!
ユナ
- 今度は...突進か!?
ノーチラス
- ノーチラスの読みは外れた。いや、正確には合っていた。確かにボスは突進をしてきたのだがそれはただの突進でなかった。鎖で巨大なハンマーを振り回しながらの突進だったのだ。
ノーチラス
- ちょっ!こんなの回避不可能...
ノーチラス
- エーくん‼︎
ユナ
- ぐほぉぉぉ‼︎
ノーチラス
- ノーチラスは盛大に吹っ飛んでいった。幸いHPは半分も減ってないが。
キリト
- なるほど...ボスの突進は素直に防御か、後ろに回避した方が良さそうだ。
キリト
- おいお前‼︎何納得してるんだ!
ノーチラス
- さっきのお返しだ。
キリト
- お前...!!
ノーチラス
- 随分賑やかな攻略だな。
ヒースクリフ
- もうあの2人の口喧嘩は慣れました。
ユナ
- それより、これ少し厳しくない!?ボスの動きが激しすぎて迂闊に近寄れないよ!
ユウキ
- ユウキ君もそう思うか。私も同感だ。エギル君と私のような盾持ちならまだしも、剣のみの君達ではこのボス相手にこの少人数で情報集めは不可能だろう。
ヒースクリフ
- よって、私の出す案はこうだ。私とエギル君そしてキリト君が残り、他のメンバーは一足先に主街区に転移。どうだろうか?
ヒースクリフ
- ちょっと待たんかい‼︎なんで俺が残るんだよ!俺タンクじゃないんだせど!バリバリのアタッカーなんだけど!?
キリト
- キリト君は指揮を取るリーダーなのだから残って当然ではないかね!?
ヒースクリフ
- でも..キリトが死んじゃう!
サチ
- いや、ここはヒースクリフの案に乗ろう。
ノーチラス
- エーくん!?
ユナ
- ボクもそう思うよ。キリトならこんな事で死んだりしないよ。
ユウキ
- ....少し危険だけど私は賛成。
アスナ
- 後は...キリト君次第でしょ?
アスナ
- (おい!断りづらい雰囲気を作るな!)
キリト
- キリト....!
サチ
- チッ!
キリト
- 分かったよ!俺は残る!他のメンバーは攻略組を集めておいてくれ!戻ったらすぐに攻略会議を始めるからな!
キリト
- 了解!
アスナ
- アスナの呼応に応え、ユウキ・アスナ・ノーチラス・ユナ・サチは主街区へ転移した。
ユウキ
- さて、覚悟はいいか?
エギル
- ボス戦のための情報収集と行こうじゃないか。
ヒースクリフ
- 行くぞ‼︎
キリト
- ............
キリト
- 第25層主街区 ラーベル
ヒースクリフ
- まだかな....
ユウキ
- キリト達と離れてから既に30分が経過していた。未だにキリト達は帰ってこない。まさか...といつ心配をしても無理はないだろう。
ユウキ
- .......
サチ
- おい、何暗い雰囲気作ってるんだ。
ノーチラス
- ちょっとエーくん...
ユナ
- あいつらを信じて送ってやったのに、そんな気持ちで居たら意味ないだろう。
ノーチラス
- そうよ。キリト君達は戻ってくるわよ!
アスナ
- アスナが言うと同時に転移門前に3人のプレイヤーが転移してきた。それは....
アスナ
- ふぅー...疲れたぜ。
エギル
- 中々に激闘だったな。
ヒースクリフ
- ......
キリト
- もう死にそう....
キリト
- キリト君...顔色悪いよ?
アスナ
- あのボス絶対許さねぇ!俺ばっか狙いやがって‼︎
キリト
- キリトって前からそうだけどタゲ集中されやすいよね。
ユウキ
- 無事で良かったよ...
サチ
- そんな事は後だ後!攻略組は集まってるか?
キリト
- 私達で声をかけたらすぐ集まったわ。今広場に全員居るから早くいきましょう?
アスナ
- 早く早く!
ユウキ
- ユウキに押され、攻略組が集まっている広場に一行は向かった。
ユウキ
- ほう...見たところほぼ全員居そうだな。
ヒースクリフ
- じゃ、攻略会議を始めるか。
キリト
- キリトさんとヒースクリフさんが一緒に居る...!?これは現実か!?
モブプレイヤー
- えー...これから第25層ボス攻略会議を始めます。
キリト
- まずボスの名前は、《ザ・ティターン・ディアボロス》。双頭の大型巨人でHPゲージは今までのフロアボスより1本多い5本だ。主な武器は鎖のついた巨大ハンマーと巨大な斧の2つ。
キリト
- 攻撃パターンは鎖のついたハンマーを振り回しながらの突進、衝撃波付きの斧の振り下ろし、斧の範囲攻撃、拳を使った攻撃、地面を揺らす、が主な攻撃パターンとなる。
ヒースクリフ
- 防御力がとても高く、今まで以上の持久戦となるだろう。アイテムの補充は充分に行うべきだ。
ヒースクリフ
- 立ち回りだけど...タンクを積極的に前衛に出して、他のメンバーはスイッチを繰り返して時々パリィをする、を繰り返していくべきだ。
キリト
- 当然最後のゲージになったら攻撃パターンが変わると思うから、注意してくれ。
キリト
- 以上で言いたい事は言った。他に何か意見のある奴?
キリト
- ..........
キリト
- ではボス攻略は2日後の13時からにしよう。それまでに準備をしっかり整えておくように。
ヒースクリフ
- これで解散とする!
ヒースクリフ
- ふー!準備だ準備!
モブプレイヤー
- やけにあっさり終わったわね。
アスナ
- 本当だよ、びっくり。
ユウキ
- ではキリト君。私はパーティーの皆のところに戻るとするよ。次はボス戦で会おう。
ヒースクリフ
- あぁ。
キリト
- ヒースクリフはパーティーメンバーと思われる数人の団体の所へ向かって行った。
キリト
- さてと...全員居るか?
キリト
- 居るけど...
アスナ
- その...みんなに話しておきたい事があるんだ。
キリト
- 何だ...?もう「死ぬな」の一点張りは飽きたぞ。
ノーチラス
- その...ユウキにはもう言ったんだが、みんなにも言っておきたい事があるんだ。
キリト
- ?
エギル
- この層は今まで以上に何が起こるか分からない。俺は自分のギルドメンバーを信じてるが...もしもの事があった時、大切な仲間に伝えたい事を伝えきれなかったら辛いだろ?
キリト
- だから...今の内に言っておきたい事がある奴、言ってくれ。
キリト
- キリトはこれだけは言っておきたかった。ユウキとはお互いに今の現状が幸せだという結論に至ったが、他のみんなは違うかもしれない。その思考はここで答えを出さなければ頭の隅から消えないままだろう。
キリト
- 何だそりゃ。遺言でも残せと?
ノーチラス
- そうだ。
キリト
- 僕らはこの世界で死ぬつもりなんて毛頭ないですよ?
ノーチラス
- それは全員一緒だ。それでも現実に亡くなってるプレイヤーが居る。
キリト
- 私は特に言う事はないよ。
ユナ
- ユナ...
キリト
- だって私の事を導いてくれるリーダーと、助け合える仲間、それに私を命懸けで守ってくれる人がいるもん。
ユナ
- ......!
ノーチラス
- 私も同感。
アスナ
- ひょっとしてキリト君は、自分のギルドメンバーは全員守ってやらなきゃダメとか思ってるのかもしれないけど、ここにいる人はそんな弱くないわ。
アスナ
- 確かにな。攻略組のトッププレイヤーの男が作ったギルドに就いてるんだ。生半可な覚悟じゃできねぇよ。
エギル
- 何度も言うが、俺達は誰1人として死ぬつもりもねぇよ。だからここで言葉は遺さねぇ。
エギル
- ねぇ、キリト。
サチ
- 私の仲間は私1人を置いて行って全員行ってしまったけれど、その時誰も後悔なんかしてなかったよ?それは文字通り命をかけて、守りたいものの為に戦ったからじゃない?
サチ
- .........俺がバカだった。
キリト
- 前にアルゴに聞かれた。ユウキを。アスナを。自分のギルドメンバー以外は守ってやれないかもしれないと思ってるんだろと。しかしそんな事を気にする必要もなかったのだ。ここに居るのは皆、自分が守ってやらなければいけないほど貧弱なプレイヤーではない。このデスゲームを今まで生き残っている猛者達だ。
キリト
- 2日後のボス戦、全員命をかけて掛かれ!俺らの全力を、この世界にぶつけてやるぞ‼︎
キリト
- 俺はお前達を、誰よりも信じてる‼︎
キリト
- いい顔になったね、それでこそキリトだよ。
ユウキ
- 全く...こんな当たり前のことで悩まないでくれない?
アスナ
- いいじゃねえか、若いんだから悩みはあるだろ。
エギル
- サチさん!頑張ろう!私達が付いてるよ!
ユナ
- うん...絶対に勝つ!
サチ
- 絶対に生き残るぞ。誰1人欠けることなく。
ノーチラス
- ああ..!!
キリト
- キリトの決意。仲間の志。それらはより一層深い絆を生んだ。
キリト
- To be continued...
キリト