ソードアート・オンライン 黒紫の英雄譚 第18話
メインヒロインに、奇跡舞い降りる。
- デスゲームが始まりそろそろ2ヶ月になろうとしていた。先日に休息を取り、今日から第5層迷宮区の攻略だ。が、街の人達の会話に気になる点があったキリトは、先に別の事を優先した。
騎士
- 久しぶりだなアルゴ!情報屋が近くに来てるって情報を聞いたから探したぜ?
キリト
- .....
アルゴ
- で、アルゴ。前にお前、俺にとっておきの情報を教えるって言ったのにアスナを預けてからそれっきり俺の前に姿を現さなかったよな?
キリト
- そろそろ教えてくれないか?現時点での最高の情報を。
キリト
- チッ、そろそろ潮時だナ。
アルゴ
- ....まぁ確かに約束を破らなかったのは無責任だったナ。だが理由があるんダ。
アルゴ
- 理由だと?
キリト
- あの後、第1層のボス攻略会議を始めるなんて言い出すもんだからナ?オレっちはガイドブックの最新版の制作を優先せざるを得ない状況だったわけダ。
アルゴ
- その後、キー坊に会いにいく予定ではあったんダ。でも第1層のボスが使用する武器がタルワールじゃなく野太刀だった事で情報屋としての信頼を失イ、オレっちは一部のプレイヤーに追われる羽目になったんダ。
アルゴ
- まぁ今は落ち着いたが、追われながらも攻略ガイドブックの配布は続けてたんだけどナ。キー坊に会いに行けなかった事ハ、申し訳なく思ってたからナ?
アルゴ
- まぁ、事情があったのは分かったよ。
キリト
- じゃあ会えた事だし?情報を教えてもらおうか。
キリト
- ....分かっタ。オレっちが持ってる今最も価値のある情報を教えてやろウ。
アルゴ
- 内容は...犯罪者プレイヤーについてダ。
アルゴ
- ....!
キリト
- 前にキー坊達のパーティーが襲われたらしいナ。
アルゴ
- そうだ。
キリト
- でも被害はそれだけじゃなイ。第3層を突破した辺りからカ?カーソルがオレンジのプレイヤーが増え始めてきたんダ。現在のその数は約150名。
アルゴ
- その内60名ほどは、人を殺してカーソルの色が変わった奴らダ。
アルゴ
- レベルもそこそこあるみたいですナ。殺されるプレイヤーが最近増えてきてるのが現状ダ。
アルゴ
- ....後、これは可能性が五分五分だが一応伝えておク。何でも殺人を犯したプレイヤーだけで構成された、《ギルド》があるらしイ。実際は噂で見た奴は居ないからナ。オレっちも今検証中なんダ。
アルゴ
- 《ギルド》か...。
キリト
- この世界ではギルドと呼ばれる組織を作る事ができる。6人くらいの少人数でもいいし、30人以上の人数を所属さて大規模ギルドを作ることもできる。が、その用途は主にゲーム攻略だ。犯罪者プレイヤーのみで構成されたギルドなど、このデスゲームにおいて...他のゲームにおいてもほとんど存在しない。
キリト
- それはかなり重要だな。...攻略メンバーにも話しておく必要があるな。今度の攻略会議で話題の一つに上げておくよ。
キリト
- そうした方がいいナ。フィールドで出会っちまったら危険すぎるからナ。
アルゴ
- じゃ、俺はそろそろ行くぜ。迷宮区が発見されたから攻略を進めに行く。
キリト
- そうカ。くれぐれも死ぬなヨ?キー坊。
アルゴ
- いくら情けをかけない情報屋とは言エ、知り合いが死んじまったラ...オネーサン悲しいゾ?
アルゴ
- だったらフレンド登録すればいいだろ?そうすればメニュー画面から死亡確認できるし。
キリト
- キー坊とフレンドになるとこき使われそうだから控えたんだが...まぁいいカ。
アルゴ
- (βテスター同士なんだからもっと早く登録しても良かった気がする。)
キリト
- んじゃ、これでフレンド登録完了ダ。オレっちも仕事があるから忙しいんでナ?またナー。
アルゴ
- おう。お前こそヘマして死ぬなよ。
キリト
- そう言う頃にはアルゴは既に俺の視界から消えていた。
キリト
- さて...今頃アイテム調達中のユウキ達と合流するか。
キリト
- やぁ、キリト。話は終わったの?
ユウキ
- あぁ。1つ頭に入れておきたい情報を手に入れた。
キリト
- へぇ。どんな情報だったの?
アスナ
- ...嫌な話になるけど、この前俺らを襲った奴居るだろ?ソイツと同じように、犯罪行為を繰り返すプレイヤーだけで構成された組織があるって話だ。
キリト
- なにそれ!怖いなぁ...
ユウキ
- その情報は確かなの?だとしたら大問題じゃない。他の人にも相談した方が...
アスナ
- 俺だってそう思うけど、確証も無いのに他の人に相談しても動いてくれるわけがない。...でも、確証が出てからじゃ遅いんだよな。
キリト
- だよね...
ユウキ
- 全く...どこの世界にも居るものね。何考えてるか分からない人。
アスナ
- とりあえず、いつも通り攻略を進めよう。怖くなって動かずに攻略が遅れたら元も子もない。
キリト
- まぁそうね。その組織とやらにも警戒しつつ攻略していきましょうか。
アスナ
- よーし、じゃあ出発だよ!
ユウキ
- そう言うと3人は、フィールドに移動した。
ユウキ
- しかし..便利だよな。転移結晶。
キリト
- うん。これのお陰でいつでも緊急離脱できるしね。
ユウキ
- 死亡数を大幅に減らせると思うわ。
アスナ
- 転移結晶とは、結晶アイテムの一種だ。これを手に持って転移先を叫べば、そこに大抵の場合テレポートできる。
アスナ
- まぁ、その分費用が高いがな。慎重に使っていこう。
キリト
- ええ。
アスナ
- で、今日はどこ攻略する?やっぱり迷宮区とか?
ユウキ
- そうだな。折角発見したんだし迷宮区を...
キリト
- ...?どうかしたの?
アスナ
- いや...迷宮区前になんか居る...
キリト
- お化けじゃない?この層全体的にホラー系多いって言ってたし。
ユウキ
- 嫌ァァァァァァ!!私、帰るぅぅぅぅ!
アスナ
- よく見ろよ。カーソルが黄色いな。ありゃNPCだ。
キリト
- NPC。non player characterの略で、カーソルの色はプレイヤーとは違い黄色。
キリト
- 店にはNPCはたくさん居るが、こういうフィールドにいるNPCは、十中八九クエスト依頼だ。
キリト
- クエスト...?そういえばあまり私達やってないわね。
アスナ
- どんなクエストなの?キリトβテストの時にやらなかったの?
ユウキ
- いや、βテストの時にあんな場所にNPCは居なかった。ひょっとすると正式版で実装されたのかもしれない。
キリト
- それって...完全初見のクエストって事?
アスナ
- そうだな。内容も報酬もさっぱりわからん。
キリト
- 面白そうだね!受けようよ、そのクエスト!
ユウキ
- えぇ!?お化け大量に出てきたらどうするのよ!
アスナ
- その時はアスナは動くな。下手に動くと危ないし。
キリト
- ....承知。
アスナ
- (さて、NPCに話しかけるか。)
キリト
- すまみせん?何か困り事でしょうか?
キリト
- 困り事なの?
ユウキ
- そなたらは剣士か?
騎士
- はい。そうです。
アスナ
- (なんかめっちゃゴツくない、この人!?)
アスナ
- 困り事か...確かに困難に打ちのめされている所だ。ここに居るという事はそなたらも歴戦の剣士の証。力を添えてくれてはくれぬか?
騎士
- クエストを受けるかの選択肢が出たな。YESと。
キリト
- Quest start
騎士を滅ぼす暗黒の獣
キリト
- 何だこのクエスト名...間違いなくお気楽系のクエストではない...
キリト
- (獣系のモンスターを数十体倒す系か?)
キリト
- 私はかつて、そなたらと同じ剣士だった。昔は多くの仲間が居た。が、それらはある日たった1匹の魔物に滅ぼされたのだ。
騎士
- 魔物...
ユウキ
- 私は仲間の仇を討とうとしたが...滑稽に敗北し、深傷を負い、戦える体ではなくなってしまったのだ。
騎士
- そこでそなたらに、代わりに魔物を滅ぼしてはくれぬか?場所は私が案内する。
騎士
- ....分かった。アンタの仲間の仇は俺が討つ。
キリト
- ボク「達」がね!
ユウキ
- 任せて、騎士さん。
アスナ
- うむ。感謝する。では、魔物のいる場所まで転送する。無事を祈っているぞ...
騎士
- 強制転移!?まさか....
キリト
- うわわ!何これ!
ユウキ
- ....キリト君!
アスナ
- 気を付けろ!恐らくこれは...生半可なクエストじゃない!
キリト
- キリト達が転移して先はどこかの廃墟のような場所。そこには....
キリト
- うわ、モンスターだ!デカ!
ユウキ
- 見たところドラゴンね。私でも分かるわ。
アスナ
- えーと、名前は...
キリト
- 《Knight killing of dragon》
キリト
- (騎士殺しの竜?)
キリト
- てかキリト!このモンスター倒すの!?
ユウキ
- あぁ、そうみたいだ!でもこれは...
キリト
- HPゲージ4本...フロアボス並じゃない!
アスナ
- 気を付けろ‼︎迷宮区前のクエストだから、この層のボスと同じステータスって事はあり得ないだろうけど、警戒しなきゃ死ぬぞ!
キリト
- 了解‼︎命優先で行くよ!
ユウキ
- えぇ!
アスナ
- そうすると竜はツノの先から紫に輝く光線を放ってきた。
アスナ
- 回避ー‼︎
キリト
- 続いて竜はこちらへの突進を仕掛ける。
ユウキ
- うわ!早いねー!
ユウキ
- あの巨体での突進...まともに食らえば危ないわね。
アスナ
- まず10分くらいはこのモンスターの攻撃パターンを探ろう!攻撃はそれからだ!
キリト
- 10分後...
騎士
- なるほど..大まかな攻撃パターンは6つ。突進攻撃・光線による牽制・翼での風起こし・四足の足で攻撃・尻尾での範囲攻撃...そして、空中からの炎の球の射出。
キリト
- ボスのHPはゲージの多さに対して実際はそこまで多くないし防御も薄い。削る事自体は簡単だ。でもよく動き回る上に空中からの攻撃で剣が全く届かない...!
キリト
- キリト!何か作戦思いついた!?このままだとポーションがなくなるよ!
ユウキ
- 私も!
アスナ
- 分かった!すぐに考えるから少し耐えてくれ!
キリト
- (どうする?さっきから攻撃を当ててこっちは回復しての繰り返しだが、あの竜の攻撃力が高すぎて回復ポーションを頻繁に使わないといけない。俺も正直ポーションの残りが心許ない。なのに相手のHPゲージは残り2本か。...まずいな。)
キリト
- (...いや、待て待て。そもそもここは第5層だぞ?上にまだ95の層があるのに地上戦なら兎も角、空中戦を仕掛けてるボスなんて明らかにおかしい。ゲームバランス崩壊だ。)
キリト
- (つまり、アイツには何かしらの弱点があるはず!)
キリト
- キリト!火の玉攻撃来るよ!
ユウキ
- 火の...玉!
キリト
- キリトは1つの案を思いついた。これが正しければこのボス戦はクリアに近づける。だがもし違った場合、いよいよ死は目の前だ。
キリト
- キリト君!?火の玉来るよ、避けて!
アスナ
- 恐らくこの玉は!!
キリト
- (行くぜ!)
キリト
- パリィ!
キリト
- キリトのパリィが成功した。それだけではない。その衝撃で火の玉がボスの元へ跳ね返っていく。
キリト
- そしてボスに大ダメージが入り、ボスは地上に落下してダウン状態になった。
キリト
- 今だ!全力でソードスキルを打て‼︎
キリト
- 了解!せやぁぁぁぁ!!!!
アスナ
- やっと剣が届くね!くらぇぇぇ!
ユウキ
- アスナの放つ細剣突進技のソードスキル、シューティングスター。ユウキの放つ片手直剣斬撃技のソードスキル、ホリゾンタル・スクエア。そして、キリトの放つ片手直剣斬撃技のソードスキル、デッドリーシンズは、ボスのHPを瞬く間に削り、そして...!
ユウキ
- 竜はHPが0になった。
キリト
- やった!倒したよ!
ユウキ
- ふぅー...久し振りに死ぬかと思ったわよ。
アスナ
- にしても、よく気づいたわね。ボスの火の玉が跳ね返せるなんて。
アスナ
- 子供の頃、ボスの攻撃を跳ね返して倒すのを何回もやってた事があってな。それを思い出したんだよ。
キリト
- ねぇキリト?あれを倒したらボクらはどうなるの?
ユウキ
- 周りのフィールドが消え始めてる...おそらく迷宮区前に強制転移だな。
キリト
- クエストクリアよね。これで。
アスナ
- そう言った刹那、3人はクエストを受諾した迷宮区前に転移した。
アスナ
- 戦いは見させてもらった。私ですら超えられなかったあの竜を倒すとは...そなたらは本物の剣士だ。
騎士
- どれ、これは私からの報酬だ。
騎士
- そうすると3人は武器を受け取った。名前は...
騎士
- 《Unknown》 ?何だこれ?
キリト
- 後で手に持ってみるが良い。その武器は持ち主に最も相応しい形になる代物だ。
騎士
- すごい...!
ユウキ
- ありがとうございます!
アスナ
- さて、私はそろそろ消えるか。
騎士
- え!?
ユウキ
- 無論、存在が消えるわけではない。折角生き残ったのだ。死んでいった友の分も生き抜いてみせるさ。
騎士
- ...
アスナ
- それと..貴様らはこの奥にいる魔物も倒すのか?
騎士
- ...!そうだ。
キリト
- ならばついでに教えといてやろう。
騎士
- この奥にいる魔物は「ゴーレム」なる名を与えられている。自分に刃をむけるものはその巨躯に生えた両手両足で薙ぎ払う。その時受ける損傷には十分注意する事だ。
騎士
- 攻撃を受ける際に、魔物は合図に似た何かを表す...それも気をつけるとよい。
騎士
- これってボス攻略の情報か..!
キリト
- ありがとう騎士さん!
ユウキ
- 私の望みを叶えてくれたのだから礼は不要だ。そなたらの戦いに、光が灯り続けることを祈っている。
騎士
- そうすると突然NPCの騎士は消え、目の前に《Quest Clear ‼︎》の画面が表示される。
騎士
- つまり何?このクエストはボス攻略情報を手に入れるための重要クエストだったってわけ?
アスナ
- あぁ。多分NPCが消えたのはボス攻略も一回きりだからだ。このクエスト自体が、全プレイヤーで一回しかクリアされない仕組みなんだ。
キリト
- つまり...受けられたボク達はラッキーだったってことだね!
ユウキ
- あぁ。この情報を攻略メンバーに届けよう。それに...報酬でもらった武器、みんな気になるだろ?
キリト
- 一旦、カルルインに戻ろう。
キリト
- 第5層 カルルイン 広場
キリト
- unknownと表示されたこの武器..どうなるんだ?俺も分からないぞ!
キリト
- 装備してみましょうよ!
アスナ
- そうしよう!
ユウキ
- 3人は一斉に装備した。すると武器が輝き、名前も変化して、1つの武器となった。
ユウキ
- まず俺のは...《エンド・スパーダ》。片手直剣だな、レアリティは....3!?
キリト
- SAOの公式サイトに書いてあったのは、武器のレアリティは5段階。つまり俺は序盤で3段階目の武器を手に入れたというのか?もしそうだとしたら、攻略がかなり捗る‼︎
キリト
- 私のは...《キング・フルーレ》。キリト君と同じレアリティ3ね。
アスナ
- アスナ!もっと喜べよ!
キリト
- どれくらい凄いの?
アスナ
- 例えるなら、高校1年生なのに大学から君、入学しない?ってお誘いが来るくらい凄いな。
キリト
- 分かるような分からないような...
アスナ
- ねぇキリト...これ何?
ユウキ
- ん?武器の名前は?
キリト
- えっと...《聖剣ラグナロク》?だね。レアリティは...
ユウキ
- 何これ。《System breaker class》?
ユウキ
- 日本語に直すと、システムブレイカー級...?
キリト
- 待てユウキ!もしかしてそれは..
キリト
- なんか、説明書いてあるけど...
ユウキ
- ...ちなみに、何て書いてある?
キリト
- 「全ての悪と闇を断ち切る剣。制御困難のため無限生成ダンジョンに封印した。使用者に英雄としての力を授ける...」
ユウキ
- なんか...凄いわね、解説が。
アスナ
- .......
キリト
- .......
キリト
- .......
キリト
- ユウキ...それは...
キリト
- 所謂、「ぶっ壊れ」。ゲームクリア後とかに解放される裏ダンジョンとかでゲットする武器だ。
キリト
- え?それってどういう事?
ユウキ
- つまりな!今ユウキがそれを手に入れるのは.....
キリト
- システム的におかしいんだよぉぉぉ!!!!!!!
キリト
- なんで!?なんでクリア後要素の武器が今手に入るんだ⁉︎おい茅場明彦!これが人間のやる事かよぉぉぉぉぉ!!!
キリト
- キリトとアスナはレアリティ3の武器を手に入れ、ご満悦だった。が、ユウキの手に入れた武器は2人とは次元が違った。
キリト
- レアリティ最大。システムブレイカー級。第5層でこれを手に入れたユウキは、果たして。
キリト
- To be continued...
キリト