ソードアート・オンライン 黒紫の英雄譚 第17話
日常回...というだけじゃない!
- 第5層が解放されて今日で4日目。場所だけなら迷宮区も発見され、攻略は順調に進んでいた。が、そんな時にキリトがとんでもない事を口走ったのだった。
ユウキ
- (....シーンってなったぞ。おいクライン!全然ダメっぽくないか!?)
キリト
- キリトはついさっきまでクラインというプレイヤーと話していた。日頃から攻略ばかりでユウキとアスナに女の子らしい事もしてやれなかったキリトは悩んでいた。そんな時にクラインがキリトにこの案を教えたのだが...
キリト
- キリト...ちなみにデートってどういう意味か分かってる?
ユウキ
- 分かってるわ!
キリト
- えーっとね。デートっていうのは基本好きな人同士、つまり2人でやるのが基本っていうか...
アスナ
- 3人でやるのは違うんだよ...?
アスナ
- あ、言い方の問題か?デートって言っても攻略を休憩してのんびり買い物でもしないか?って事なんだけど...
キリト
- 女の子と買い物行くのはデートだ、と教えてもらったからさ。
キリト
- それ教えたの誰よ!?
アスナ
- 一概に間違ってるとは言えないけど....
ユウキ
- ボクらは付き合ってもないし、デートっていうよりは休暇だね、この場合。
ユウキ
- (΄◉◞౪◟◉`)
キリト
- あ!でも別に嫌ってわけじゃないからね!その知識が間違ってるから正してるだけで!
アスナ
- そ、そうだよ!ボクだってそれには賛成!久しぶりの買い物ならボク達はすごい嬉しいし!
ユウキ
- .....あなた方は天使か?
キリト
- (...絶対心傷ついてるね、これは。)
ユウキ
- (キリト君...たまには人を疑おうね?)
アスナ
- (クライン...形は違ったけど何か成功したぞ。ありがとう。)
キリト
- じゃあなんか締まらないけど、明日一緒に出かけないか?
キリト
- 2人だって、そろそろ休みが欲しいだろ?
キリト
- うん!明日が楽しみだなー!ありがとね、キリト!
ユウキ
- たまには気が利くわね。感謝しておくわ。
アスナ
- (この2人が人気の理由が分かった。心が浄化されるな。)
キリト
- 宿屋にて
キリト
- 第5層の宿屋は下の層に比べて部屋が広い。その特徴の一つとして2つのベッドがある。おかげでユウキとアスナは同じ部屋で寝れる。
キリト
- キリトは相変わらず1人だが。
キリト
- しかし...さっきはめっちゃ恥ずかしかった...ログアウトボタンがあったらそのまま押してるぜ。
キリト
- いや〜いきなりデートしようって言われて驚いたね!
ユウキ
- 本当よ!彼は時々世間知らずな所があるわ。
アスナ
- でも、あれだけ攻略攻略言ってたキリトがそんな提案をしてくれるなんてさ、ちょっと意外じゃない?
ユウキ
- どうせクラインって人と話した時に盛り上がっただけじゃない?
アスナ
- そうかもしれないけどさ、きっとキリトなりにボク達を気遣ってくれたんじゃないかなーって思ったんだよ。
ユウキ
- ...むしろ私達が労いたいくらいよ。
アスナ
- 第1層の時から、キリト君に頼ってばっかで...最近は迷惑かける事も減ったと思うけど...攻略メンバーのリーダーの彼に、私はちょっと縋りすぎたんじゃないか、って最近思うのよね。
アスナ
- ...それはボクも同感かな。
ユウキ
- キリトはボク達はもう充分強いって言ってくれるけど、それは結局キリトが居なかったら無理だったんだよ。
ユウキ
- きっとキリト...すごい疲れてるよね。
ユウキ
- 明日は...キリト君にもゆっくり休んでもらいましょう。これ以上無理をさせて、キリト君がもし死んじゃったら....
アスナ
- 考えたくないね、そんな事。
ユウキ
- ええ、そうね。
アスナ
- キリト...別にボクはね?キリトが良ければ....
ユウキ
- デート...でも良いんだよ?
ユウキ
- ユウキ?何ブツブツ言ってるの?早く寝ましょう?
アスナ
- えっ!声に出てた!?聞こえてた!?
ユウキ
- いいえ。何も。
アスナ
- ごめんね、アスナ。ちょっと疲れちゃってるみたい。
ユウキ
- 明日のためにも早く寝ましょう?私達が疲れてたらまた彼が心配するし。
アスナ
- うん。おやすみ〜
ユウキ
- そう言うと電気を消して、ユウキとアスナは布団に入った。
ユウキ
- ぐー...ぐー...
ユウキ
- .......
アスナ
- (聞こえてたよ。ユウキ。)
アスナ
- 次の日
アスナ
- おはようユウキ、アスナ。よく寝れたか?
キリト
- バッチリだよ!せっかくの休みをたのしまないとね!
ユウキ
- 私達もだけど、キリト君も羽を伸ばした方がいいわよ。
アスナ
- え。
キリト
- あなただっていつも攻略の事しか頭に無いんだから。今日はリラックスして過ごしなさい。
アスナ
- アハハ...なんかすまん。
キリト
- ねぇねぇ!まずはどこ行く?
ユウキ
- そうだな...5層は楽しめる所あまり無いし...
キリト
- とりあえず主街区で買い物でもするか?
キリト
- おっけー!
ユウキ
- じゃ、行きましょ。
アスナ
- 第5層 主街区 ショップ
アスナ
- おいおい!何だこの装備!?盾は持たない主義だが、このステータスはすごい!...買おうかな?
キリト
- でもその盾、見た目すごい刺々しいデザインじゃない!...それつけてフィールドは歩けないわ。
アスナ
- 見て見てアスナ!このネックレスすごく可愛いよ!
ユウキ
- うわ、本当だ!...でも値段が高いわね。
アスナ
- うん...ボク達2人のお金じゃ買えないね。
ユウキ
- 俺が買ってやろうか?
キリト
- えぇ!でも悪いよー!
ユウキ
- そうよ、キリト君だってお金に余裕あるわけじゃないでしょ?
アスナ
- いや、俺ならエネミー討伐繰り返してればすぐ貯まるから。気にするなよ。
キリト
- じゃあ...お言葉に甘えて。
ユウキ
- じゃ、買ってくるから少し待っててくれ。
キリト
- これから彼は財政難ね。
アスナ
- 優しいなぁ....本当に...
ユウキ
- ほい!買ってきたぞ。
キリト
- ...ありがとうキリト!大事にするね!
ユウキ
- 付けてみたら?
アスナ
- うん...!
ユウキ
- そう言うとユウキは自分のステータス画面を開き、装備画面から先ほど買ってもらったネックレスを付けた。
ユウキ
- うわぁ...!似合ってるよ、ユウキ‼︎
アスナ
- 本当だな!買った甲斐があったぜ!
キリト
- てへへ...照れるなぁ...///
ユウキ
- (良かったわね...ユウキ。)
アスナ
- あ、それとアスナ?
キリト
- ほい。アスナの分。
キリト
- !?え、ええええ!?
アスナ
- アスナもこのネックレス欲しそうに眺めてたからな、買っておいたんだよ。アスナだって女の子なんだから、お洒落の一つくらいしたいだろ?
キリト
- あ...あ...ありがとう...
アスナ
- 良かったね、アスナ!お揃いだよ!
ユウキ
- うん...!ありがとうね、キリト君!
アスナ
- でもさ、良かったの?あのネックレス相当な値段だよ?なのに2つも買って大丈夫なの?
ユウキ
- 問題ないさ!まだ予算は残ってるしな。
キリト
- 流石ね...ゲーム内通貨の管理も完璧。
アスナ
- さすがキリト...
ユウキ
- さて...買い物も終わった事だし、次はどうする?
キリト
- あれ?さっき気になってた盾はいいの?
アスナ
- やっぱり俺は盾無し片手剣スタイルの方が合うからな。
キリト
- 次か...疲れを癒すなら....
キリト
- 第4層の温泉はどうだ?疲れ取れるぞ。
キリト
- 温泉!行きたーい!
ユウキ
- 温泉.....!最高じゃない!
アスナ
- (ユウキ、嬉しそうだな。アスナは満面の笑みだ。相当温泉に行きたいんだな。)
キリト
- 第4層 温泉
キリト
- じゃあ後で会いましょう。ごゆっくりね。
アスナ
- そっちこそな。
キリト
- キリト〜、また後でねー。
ユウキ
- 男湯にて
キリト
- 俺以外にもプレイヤーが何人かいるな...
キリト
- 温泉に浸かるのは久しぶりだな。前に4層攻略してた時には攻略優先で入れなかったからな。
キリト
- (アスナはあんなに喜んでたし、きっとお風呂が好きなんだろうな。今度また温泉を見つけたら連れて行ってやるか。)
キリト
- 体を洗って、キリトはお湯に浸かる。
キリト
- ふぅ......いい湯だ。これまでの疲れが洗われるようだぜ。
キリト
- 明日からはまた攻略だからな。休める内に休んでおかないと。
キリト
- そうすると、キリトの近くに1人の男性が入ってきた。
ノーチラス
- .........
ノーチラス
- ふぅ....癒されるわー。
キリト
- おい。
ノーチラス
- ん?どうかしましたk....
キリト
- ......
キリト
- .......
ノーチラス
- お、エーくんじゃないか!お前も温泉に浸かりにきたのか?
キリト
- Shi☆Ne
ノーチラス
- 女湯サイド
ノーチラス
- うわー...女性プレイヤー少し居るね。
アスナ
- このゲーム、女性プレイヤー少ないけど温泉には集まるんだね。
ユウキ
- とりあえず体洗ってきましょう。
アスナ
- そうだね!あ、そうだ!アスナの体洗ってあげるよ。
ユウキ
- え!良いの?少し恥ずかしいかも。
アスナ
- 女の子同士だしいいじゃん!
ユウキ
- むぅ...分かったわ。じゃあ私もユウキのから洗ってあげる。
アスナ
- こうして2人は洗いあった。
アスナ
- アスナって綺麗な体してるね。羨ましいなー。
ユウキ
- ユウキの体だってすごく綺麗よ。男性プレイヤーは悩殺できそうね。
アスナ
- えへへ。照れるなー。
ユウキ
- さ、お湯に入りましょ?
アスナ
- うん!
ユウキ
- あぁ〜疲れが取れる〜。
アスナ
- あぁ〜疲れが取れる〜。
ユウキ
- いい湯だね。疲れがなくなっていくのを感じるよ。
ユウキ
- 本当ね。明日からは攻略再開だけど、また定期的に訪れたいわ。
アスナ
- あら?アスナさんとユウキじゃない!
ユナ
- ユナ!キミも浸かりに来たの?
ユウキ
- うん..エーくんが連れてきてくれたんだ。
ユナ
- へぇ〜。彼、口悪そうだけどいい所あるのね。
アスナ
- そして30分後...
アスナ
- あ、キリト君と...ノーチラス君も居るわね。
アスナ
- おーい、キリト〜!
ユウキ
- エーくん!
ユナ
- だからな、お前のパートナーのユナはアインクラッドのプレイヤーには大人気だから気を付けろよ。
キリト
- 何...だと!?
ノーチラス
- おのれ...ユナの魅力は分かるが、絶対に手は出させない!
ノーチラス
- 心配するなよ。彼女はお前にしか寄り添わないだろ。
キリト
- どーやら...ユナさんの話してるみたいね。
アスナ
- もう!恥ずかしいなー!
ユナ
- あ、ユナ!!いいか?近頃では君を狙う変なプレイヤーが増えてきたらしい。気をつけるんだぞ。絡まれたらすぐに言え。
ノーチラス
- もう心配性だなぁ。
ユナ
- キリト。どうだった?ここのお湯。
ユウキ
- !そうだな...疲れが取れたよ。
キリト
- ボクもだよ!また来ようね。
ユウキ
- むしろ毎日来ても良いわよ?
アスナ
- 毎日は...手間がかかるな。
キリト
- 冗談よ。
アスナ
- (...ヤバい。風呂上りのユウキとアスナの色気が増してる!!)
キリト
- (可愛い!こんな可愛いプレイヤーと一緒に冒険できてる俺はひょっとして一生分の運を使い果たしてるんじゃないか!?)
キリト
- あ、キリト。ごめーん、ちょっと飲み物買ってくるねー。
ユウキ
- 良いぞー。俺は既に買ったし。
キリト
- 私も。行ってらっしゃいユウキ。
アスナ
- うん!すぐ戻るから。
ユウキ
- そう言うと、ユウキは飲み物を買いに行った。
ユウキ
- .....
アスナ
- ねぇ、聞きたい事があるんだけど。
アスナ
- ん?どうした?
キリト
- キリト君はさ...ユウキの事どう思ってるの?
アスナ
- どう思ってるって...
キリト
- 好きなの?ユウキの事。
アスナ
- す...好きぃ!?
キリト
- まだ知らない面もあると思うけど、ユウキとはSAO開始初日から知り合ったからな。当然この世界で最も信頼してるプレイヤーの1人だよ。
キリト
- .......
アスナ
- 背中を預けて、共に戦う仲間だからな。俺はユウキが好きだ。
キリト
- (そう。)
アスナ
- (それって仲間としてでしょ。私が聞いてるのはね、1人の女の子としてなの。)
アスナ
- 分かったわ。変な事聞いてごめんなさいね。
アスナ
- いやいや、当たり前のことだぜ?
キリト
- お待たせー!キリト、アスナ!
ユウキ
- 見てこれ!この世界の温泉にも牛乳が売ってるよ!
ユウキ
- 何!?βテスト時代にそんな物は無かったぞ!
キリト
- へっへーん!キリトがそう言うと思って買ってきたんだよ!もちろん、アスナの分もね。
ユウキ
- マジか!恩に着るぞユウキ!
キリト
- ふふっ!キリトって面白いね!たまに妙に子供っぽいし。
ユウキ
- 何だと〜!そういうユウキだって、たまには幼く見えてるからな?
キリト
- キリトとユウキは言い合いを始めた。が、全く不穏な空気は流れていない。とても見てて微笑ましい光景だ。
ユウキ
- (...ユウキもキリト君のこと、仲間として好きって言ってたわね。)
アスナ
- (...私も、よね?)
アスナ
- (私も...キリト君に仲間として好かれてるよね?ひとりだけ...外れてないよね?)
アスナ
- (どうしてかな...最近、あなた達が仲良くしてるの見てると...妙に心配になる。)
アスナ
- (最低ね。私は。)
アスナ
- .....
アスナ
- ユウキ!私にも飲ませて!
アスナ
- はーい、アスナ!
ユウキ
- こうして温泉で一騒ぎあってから、キリト達は第5層の宿屋に帰還した。
ユウキ
- じゃあ今日はこれで。ゆっくり休めたか?
キリト
- もちろんよ。この世界で1番疲れの取れた日だったわ。
アスナ
- うん!明日からはまた、頑張るぞ!
ユウキ
- そっか。おやすみ。
キリト
- うん!また明日ね!
ユウキ
- おやすみなさい、キリト君。
アスナ
- (明日はまた攻略だ。キリト、また宜しくね。)
ユウキ
- 部屋
アスナ
- よし、明日からは切り替えて攻略再開だ。
キリト
- もう体の怠さは取れた。また攻略に身が入るってもんだ。
キリト
- (...一つ気になったが、アスナ。彼女はなんであんな質問したんだ?それに...なんか、寂しそうな顔をしてたような。)
キリト
- (...気のせいかな。)
キリト
- ユウキとアスナの部屋
キリト
- ....zzzzzzz
ユウキ
- ....
アスナ
- 部屋に戻ってすぐ、ユウキは寝てしまった。
アスナ
- が、アスナは何故か寝付けずにいた。そして、キリトの買ってくれたネックレスを眺めていた。
アスナ
- (キリト君は...私にお洒落して欲しくてこれを買ってくれたのよね。)
アスナ
- (これを貰った時..すごく嬉しかった。なんか、今まで感じたことない感覚。)
アスナ
- (ユウキもよね。本当にキリト君は優しすぎるんだから。少しは厳しくしても良いのに。)
アスナ
- ......
アスナ
- (何か、最近キリト君の事考えること多くなったな。)
アスナ
- (それだけ...私が彼を信頼してるって事よね?)
アスナ
- (現実でも...そこまで信じれる人は居なかったはずなのに。)
アスナ
- ......
アスナ
- (私にも、仲間として『好き』って、言ってくれるかな?)
アスナ
- (そうしたら....ユウキと対等になれるよね。この心配感も消えるよね?)
アスナ
- アスナは気付いていなかった。なぜユウキと対等でないと怖いのか。なんで自分がキリトの事ばかり考えているのか。なぜキリトとユウキの仲良くしてる姿は見てて嫌なのか。
アスナ
- そう。アスナも、そしてユウキもこの時はまだ、気付いていなかったのだ。自分がキリトに抱く思いが、徐々に変わり始めている事に。
アスナ