ソードアート・オンライン 黒紫の英雄譚 第13話
第1層は次回で終了!次回はさらに新章の幕開けです!
- ボス戦が始まって15分が経過した。この層のボスはHPゲージが4本あり、最後の一本になると武器をタルワールに変えてくる。現在のボスのHPゲージは3本目だ。
ディアベル
- 取り巻きのルインコボルト・センチネルは3体おり、ボスのHPゲージが一本失われる度にリポップする。合計12体の討伐が必要になるわけだ。この取り巻きも舐めてたら手痛いダメージを喰らう。それを処理するのがキリトとノーチラスのパーティーだ。
ディアベル
- エーくん!スイッチ宜しく!
ユナ
- 任せろ!
ノーチラス
- てやぁぁぁぁ!!!
ノーチラス
- ユナとノーチラスのスイッチにより、ルインコボルト・センチネルの内1体は消えた。
ユナ
- 他の2体は!?
ユナ
- ...心配なさそうだぞ、ユナ。
ノーチラス
- アスナ!スイッチ頼めるか?
キリト
- 任せて、キリト君!
アスナ
- せいやぁぁぁぁぁぁぁ!!
アスナ
- (この敵は鎧を着てるけど、首には鎧がない!そこを狙う!)
アスナ
- アスナの狙い通り、首を狙う事で弱点ヒット。センチネルの2体目は消えた。
アスナ
- ユウキ!そっちはどうだ?
キリト
- そう聞く頃にはもうユウキは1人でセンチネルを倒していた。
キリト
- 問題ないね!キリトに比べればこんな敵、ただ名前の長い雑魚だね!
ユウキ
- (流石だ。単独でセンチネルを倒すとは。やはり天才か。)
キリト
- おい!お前ら!ボスのHPゲージが1本になったぞ!
ノーチラス
- !攻撃パターンが変わる!
キリト
- ほう...情報通りみたいやな。
キバオウ
- さぁて!このコボルト野郎に、1発決めたろか!!
キバオウ
- そう言うとキバオウはソードスキルをボスに向けて放った。
キバオウ
- が....
ノーチラス
- 下がれ、俺が出る!
ディアベル
- ちょっ、ディアベルはん!?
キバオウ
- ソードスキルで突っ込んだタイミングでリーダーのディアベルが自分の前に背を向けて出てきたのだ。
キバオウ
- 一度発動したソードアートスキルは当たるまで止まれない。
キバオウ
- 避けてぇぇ!ディアベルはぁぁぁん!
キバオウ
- え?何だいキバオウs....
ディアベル
- 危ない!全力で横に跳べぇぇぇ!
キリト
- しかし、時すでに遅し。
キリト
- キバオウの放ったソードスキルは、なんたる因果か、ディアベルを貫いた。
キリト
- うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
ディアベル
- 当たった部位は心臓。致命的だ。さらになんたる事か、クリティカルヒットのエフェクトが出ている。
ディアベル
- こうなれば....ディアベルを待つのはただ一つ。
ディアベル
- あ.......が.....
ディアベル
- 嘘や.....嘘やぁぁぁぁ!!!
キバオウ
- その瞬間、ボスの攻撃が無慈悲に迫ってきた。
キバオウ
- 馬鹿野郎!!下がれ!
キリト
- キリトは2人にボスの攻撃の直撃を防ぐために特攻するが、どう考えても間に合わない。
ノーチラス
- そしてボスの斧が振り下ろされる。
ノーチラス
- が、それをキバオウは喰らう事は無かった。何故なら..
ノーチラス
- ディアベルはん.....!
キバオウ
- ディアベルが剣を引き抜き、キバオウを横に突き飛ばしたからだ。
キバオウ
- .....!!
ユナ
- 嘘.....
ユウキ
- そんな....!
アスナ
- 先程の事故によるダメージに加え、ボスの攻撃を近距離で喰らったディアベルはHPゲージの数ドットすら残らなかった。
アスナ
- ディアベル!!
キリト
- 待ってろ!今ポーションで回復を!
キリト
- .....いい。
ディアベル
- そのポーションはボス戦に取っておいてくれ。
ディアベル
- !?
キリト
- 俺はもう死ぬ。俺の視界に表示されたHPゲージはもう0だ。
ディアベル
- それに....俺は密かにラストアタック・ボーナスを狙おうとしていた。キバオウさんの言うプレイヤーは俺でもある。
ディアベル
- そんな俺に...罰が当たったんだろう。
ディアベル
- ...お前も、βテスターだったのか。
キリト
- ....頼む。ボスを倒してくれ。
ディアベル
- みんなの....
ディアベル
- 最後まで言い切ることなくディアベルは消えた。
ディアベル
- ワイは...ワイはなんて事を!!
キバオウ
- ......!!
エギル
- 嘘だろ!ディアベルさん!
モブプレイヤー
- キバオウ!てめー何考えてんだ!
モブプレイヤー
- 自分が何したのか分かってんのか!?
モブプレイヤー
- .......
キバオウ
- プレイヤー達は混乱していた。リーダーを失い、さらにそれを失わせたのは同じく攻略メンバーだ。ほとんどの人が言い合いをしている。...が、モンスターはそれを待ってはくれない。
キバオウ
- 武器を持ち変え、こちらにじわじわ接近してくる。
キバオウ
- .....ボスが!
ユウキ
- 皆さん!しっかりしてください!
アスナ
- ......
モブプレイヤー
- もうだめだ。
モブプレイヤー
- (くそッ!)
ノーチラス
- お前らは何をしてるんだ!リーダーを失って悲しんでる場合か!?ディアベルが言ってただろ!「勝とうぜ」って!それをあんたらは無駄にする気か!
ノーチラス
- ....ノーチラス。お前の言う通りだ。
キリト
- 戦う気が失せた奴は下がれ!もう無理して戦わなくていい!後は...
キリト
- ボク達で....
ユウキ
- ケリをつける、でしょ?
アスナ
- 当然、私もね。
ユナ
- お前達には見えねぇのか!?あの勇敢なプレイヤーが!悲しみの前に、俺らのリーダーの意志を継いでやろうとは、思わねえのか!?
エギル
- ディアベルさんの....意志。
モブプレイヤー
- くっ....そうだ!ディアベルさんの意志を、俺たち自身が否定してどうする!
モブプレイヤー
- あの人の気高い志は、俺たちが継ぐ!
モブプレイヤー
- ....初めからその意気になれよ!
ノーチラス
- 後ゲージ一本!全力で削るぞ!!!
キリト
- おう!!!!
キリト
- それは、そこにいたプレイヤー全員の掛け声だった。...たった1人を除いて。
キリト
- 武器の持ち替え、くるぞ!!!!
キリト
- そう言うとボスは丁度武器を持ち替えた。
キリト
- タルワールじゃない!野太刀だ!!みんな!βテストの時と違う!野太刀のソードスキルが発動したら、早急に後ろに回避しろ!
キリト
- ...お前!?
ノーチラス
- 話は後!今は集中だよ!
ユウキ
- 行くぞユウキ!スイッチだ!
キリト
- よっ!せやぁぁぁぁ!!!!
ユウキ
- 2人の連携がボスにヒットする。が、そこで取り巻きのセンチネルがリポップする。
ユウキ
- (...まずい!硬直時間が解けるより先に攻撃される!)
キリト
- 任せな!!
エギル
- 行くぜ!役目をスイッチだ!
モブプレイヤー
- 今度は俺達が雑魚を引き受ける!ボスへの最後の攻撃は、アンタらで決めろ!
モブプレイヤー
- ...言ってくれるな。キリト!僕とユナでボスの攻撃を止める!お前らのパーティで止めをさせ!
ノーチラス
- ノーチラス...!
キリト
- 行くぞユナ!
ノーチラス
- もちろんだよ、エーくん!
ユナ
- 本来なら2人きりでボスの攻撃を止めるなど危険行為だ。が、この2人の連携力はキリトとユウキにも勝る。
ユナ
- エーくん!スイッチ!パリィ宜しくね!
ユナ
- 勿論だ!ここを最後の一撃に繋げる!
ノーチラス
- 宣言通りノーチラスはパリィを実行。
ノーチラス
- 今だ!決めろぉぉぉぉ!!
ノーチラス
- この受け継いだ想い!無駄にしない!
キリト
- ユウキ、アスナ!最後の攻撃、一緒に頼む!
キリト
- 了解!
ユウキ
- 了解!
アスナ
- うぉぉぉぉぉおおおおお!!
キリト
- せやぁぁぁぁ!!!!
ユウキ
- はぁぁぁぁぁ!
アスナ
- 3人の攻撃が次々にボスにヒットし、そして。
アスナ
- ユウキとキリトの剣が同時にボスに当たったその瞬間、
アスナ
- パリィィィィィン!!!
アスナ
- ......やったの?
アスナ
- ボスは...消えたよね。
ユウキ
- .....!
ユナ
- やったぞ...!
ノーチラス
- あぁ、これで第1層はクリアだ!!
キリト
- そうキリトが明言した途端、
キリト
- うぉぉぉぉ!!!
キリト
- プレイヤーの歓声で、ダンジョンが大きく揺れた。
モブプレイヤー
- やったぁぁぁ!勝ったゾォ!生きてるゾォ!
モブプレイヤー
- 俺たちの!勝ちだ!
モブプレイヤー
- 見ててくれたか!?ディアベルさん!
モブプレイヤー
- やったね....!エーくん! ギュッ
ユナ
- ゆ、ゆゆゆゆ、ゆゆゆ、ユナぁ!人前で抱きつくな!恥ずかしいぃ!
ノーチラス
- はぁぁぁぁ....
キリト
- お疲れ様。ナイスプレイ?って奴だったわ。
アスナ
- 最後の連携気持ち良かったね!!やっぱり僕らは最高のパーティーだよ!
ユウキ
- お疲れ。ボスに勝てたのはあんたらが失いかけた指揮を取り戻してくれたからだ。congratulation!この勝利は、間違いなくあんたらのもんだ。
エギル
- そうだ。ありがとよ!
モブプレイヤー
- 今日のMVPはお前らだ!
モブプレイヤー
- なんかその台詞言う人違う気がするぞ。
モブプレイヤー
- 勝利に浸るプレイヤー達。しかし、そこに水を差すように1人の断末魔が響いた。
モブプレイヤー
- なんでや!!!!
キバオウ
- ...
キリト
- ...
アスナ
- ...
ユウキ
- なんで...なんでワイはディアベルはんを殺したんや...!
キバオウ
- そうだったな。お前の処分がまだだった。
モブプレイヤー
- どう責任取るんだ!?お前のせいで死者が出たんだぞ!!
モブプレイヤー
- これは流石に....
アスナ
- 庇いようがないよ....ね。
ユウキ
- ......
エギル
- 一ついいか?
エギル
- どうした?
モブプレイヤー
- このキバオウさんは、本当に自分のした事を悔いている。そんな人を弁明を聞かずにただ罵るのはどうかと思うぞ。
エギル
- ....半分賛成だな。
キリト
- もう半分は何なんだよ?
エギル
- 弁明も何も、ディアベルは死際にキバオウさんの事をあえて何も言わなかった。それはディアベルの意志だったはずだ。それを俺達が掘り返すのは、反対だよ。
キリト
- おまん...
キバオウ
- でもな、俺だって怒ってるんだぜ?
キリト
- あんた、ボスが情報通りに動いてたから油断して1人で突っ込んだよな?
キリト
- ...!
キバオウ
- そのせいで陣形が崩れた。変なこと言うようだが、ディアベル1人で犠牲者が済んでまだマシだった。もしレイドが全滅してたら、あんたはどうする気だったんだ!!
キリト
- ....アンタは圏外でプレイヤーに手を出した。よってアンタのカーソルは緑色からオレンジになっている。その状態じゃ攻略どころか、街にいる事すら困難になる。
キリト
- SAO内で罪を犯した者は、カーソルの色が変化して緑色からオレンジになる。この状態では転移問の使用不可や宿屋の使用不可などあらゆる面で苦労をする事になる。とても攻略などしていられない。
キリト
- ....とても面倒臭いクエストだがな、カーソルの色を戻すクエストがある。まずは普通のプレイヤーに戻る事だな。それまでは俺は、アンタと攻略する気にはとてもなれない。
キリト
- ....俺ももうこの件に関しては何も聞かねぇ。ただしなキバオウさん、アンタは今日命を1つ奪ったんだ。それを心に刻むんだな。
エギル
- ......
キバオウ
- しばしの沈黙が訪れると、キバオウはボス部屋の入り口に無言で戻っていった。
キバオウ
- こらからどうなるんだ?
モブプレイヤー
- リーダーは居ねえ。こらから誰か指揮をとって攻略するんだ?
モブプレイヤー
- ......
モブプレイヤー
- お前らは、指示がなきゃ動けないのか?
ノーチラス
- ノーチラス君の言う通りね。何度も言うけどディアベルさんは私達に意志を託したはずよ。それを繋ぐためにも、今は攻略を進めましょう。
アスナ
- そうだ。俺たちは進まなきゃいけないんだ。
キリト
- いつか解放される...その日まで。だよね、キリト?
ユウキ
- あぁ...。
キリト
- .......
キリト
- 後、みんなに謝らなきゃいけない事がある。
キリト
- 俺はいわゆる...βテスターなんだ。会議の時黙っててすまなかった。俺にも文句がある奴は...好きなだけ言ってくれ。
キリト
- しかし、続いたのは静寂だった。
キリト
- あれ?
キリト
- お前バカなのか?
ノーチラス
- は!?何だお前いきなり!
キリト
- あのな、お前の指揮でみんなが闘志を吹き返したんだぞ。なのに今ここにいる奴らの誰がお前を責められるよ。
ノーチラス
- そうだそうだ!
モブプレイヤー
- むしろ感謝してるぜ
モブプレイヤー
- 目を覚ませてくれてありがとよ!
モブプレイヤー
- .........
キリト
- ...ありがとな。ノーチラス。それに、みんなも!!
キリト
- 良かったね。キリト。
ユウキ
- 幸せそうね、彼。
アスナ
- なんか...泣けてきちゃった。
ユナ
- 良いんじゃねえの?涙の数だけ女は美しくなんだぜ?
モブプレイヤー
- ユナに近づくな。...まぁ、美しいって所は否定しないが。
ノーチラス
- .....///
ユナ
- かくして、第1層の攻略は終わりを告げた。が、まだこの世界の終わりには程遠い。この後99の壁が、彼らを待っているのだから。
キリト
- To be continued...
キリト