ソードアート・オンライン 黒紫の英雄譚 第10話
10話ですが未だに第1層は終わっておりません。ヒロインも後々増えていきます。ゲーム版のキャラを出すかは脳内審議中です。
- ハァ....ハァ....
アスナ
- また外れだった。もう5回目だ。この手の嘘に騙されるのは
アスナ
- 何が緊急ログアウト方法よ....完全なデマじゃない。
アスナ
- 茅場明彦によるデスゲームが始まって今日で9日。はじまりの街では未だに泣き叫ぶプレイヤー、怒りに震えるプレイヤー、自ら命を捨てるプレイヤーなど、哀しみと怒りで溢れかえっていた。
アスナ
- 現在、プレイヤー内では緊急ログアウト方法が見つかった、という何の根拠もないデマが多く流れていた。思考が正常なら軽く流せるが、今アインクラッドにいるプレイヤーは皆、死の恐怖に怯えきっている。この状況で形がなくとも希望が見えてくればそこに縋る者がいるのも当然だった。
アスナ
- そう。今まさに騙されたプレイヤー。彼女の名はアスナ。
アスナ
- 緊急ログアウト方法の噂を知り、モンスターがうろちょろしている洞窟まで来たというのにログアウトどころかクエストの一つも無かった。完全に無駄足だ。
アスナ
- もう絶対信じない....
アスナ
- ......
アスナ
- デスゲームが始まって9日が経ったが、その時点で死者は何人も出ていた。はじまりの街の転移門広場付近には黒鉄球という場所があり、そこには剣士の碑と呼ばれるプレイヤー全員の名が書かれた碑がある。
アスナ
- そこに刻まれた名前の上に赤い線が引かれた者は死を意味する。
アスナ
- (現時点で死亡が確認されている人数は812人。約12人に1人は死んでいる事になる...)
アスナ
- 状況ははっきり言って絶望的だ。まだゲーム開始して2週間も経っていないのに800人以上が死んでいる。さらに攻略が進んでいるわけではない。100層のうち1層のクリアにすら到達していないのだ。こんな状態ではいつ全滅してもおかしくはない。
アスナ
- (遅かれ早かれ...どうせみんな死ぬんだわ。)
アスナ
- もう...どうしたらいいの?
アスナ
- よオ。お姉さん、こんな所で何してるんダ?
アルゴ
- .....誰?
アスナ
- 情報屋って聞き覚えないカ?
アルゴ
- 無いわ。何?貴方も嘘の緊急ログアウト方法を教えにでも来たの?
アスナ
- 随分こっぴどくやられてるナ...
アルゴ
- その言い草じゃ、何回か騙されたのカ。
アルゴ
- ....貴方は?
アスナ
- 騙された事は一度もないナ。ただ、デマのログアウト方法を情報屋が流した、という風評被害が出始めて困っている所ダ。
アルゴ
- 違うの?てっきりそういう人たちが流してると思ってたわ。
アスナ
- そんな笑えない嘘を流してるのは人の心を煽って楽しんでる悪質なプレイヤーくらいなもんダ。
アルゴ
- 情報屋は確信のない情報は基本流さなイ。少なくともおれっちはそうダ。
アルゴ
- そう....変な事言ってごめんなさい。
アスナ
- いやいや、こんな状況ダ。人間不信に陥っても致し方ないだロ。気にしてないサ。
アルゴ
- ところでお姉さん、名前ハ?
アルゴ
- 結城明日菜。
アスナ
- !?ち、違う違う!現実じゃなくて、このゲームでのプレイヤーネームのことダ。
アルゴ
- あっ...ごめんなさい。アスナです。
アスナ
- 今のは聞かなかった事にするガ、オレっち以外に現実の名前を言ったらダメだぞ。間違いなく拡散されるからナ。....オレっちはアルゴだ。にしてもアスナ....アーちゃんて呼ぶナ。
アルゴ
- アーちゃん....?分かりました。アルゴさん。ところで、何しに来たんですか?さっき騙された事はないって言ってましたけど...
アスナ
- ....いやぁ普通にレベル上げしてたんだけどナ。帰りにアンタがフィールドでボーッとしてたもんだから放って置けなくてナ。
アルゴ
- え?そんなにボーッとしてました?
アスナ
- あぁ...今は周りにモンスターが居ないからいいガ、これから考え事は圏内でする事だ。
アルゴ
- 何か...すみませんね。一々迷惑かけて。
アスナ
- 何を言ってるんダ。デスゲームになっちまったこのゲームで助け合うのは基本だロ?まぁオレっちの持ってる情報が欲しいなら流石にタダ、ってわけにはいかないが...。
アルゴ
- いえ....結構です。情報を買った所で、私が明日生きている保証なんてどこにも無いので。
アスナ
- ....そんなのどのプレイヤーも一緒ダ。オレっちは情報屋だからこの先恨まれる事もきっとあるシ、この先どのプレイヤーも死なないなんて保証はどこにもなイ。
アルゴ
- でもナ....別に死にたいわけじゃないんだロ?
アルゴ
- まぁ...
アスナ
- だったラ、希望がなくても必死に生きるんだナ。
アルゴ
- そうでもしなきゃ、この9日の間に、希望を掴むために戦って死んだ奴らに申し訳がたたないからナ。
アルゴ
- アルゴさん....。
アスナ
- (そうだ....私だけじゃない。みんなが明日を迎えられる保証を持っていない。この世界が終わる、その時までは...!だったら、私に出来る事は?この世界から脱出するために...私は、何をすればいいの?)
アスナ
- アルゴさん...お願いがあります。
アスナ
- なんダ?
アルゴ
- お金はきちんと払うので....私に、この世界で生きる術を教えてくれませんか?
アスナ
- え!?あぁ.....そうだナー....。
アルゴ
- 別に情報じゃないから金は取らないんだけどナ....
アルゴ
- え?
アスナ
- (正直...教える事はできるが、この子が言ってるのは間違いなくガチ攻略のための戦術を学びたいってことだよナ...)
アルゴ
- (それなら....)
アルゴ
- あー、そうだな...アーちゃん?オレっちに聞くより適任なやつを1人知ってるからさ、そいつに教わるのはどうダ?もちろん金は取らないしオレっちも同伴するゾ。
アルゴ
- 情報屋であるアルゴさんの知り合いですよね?なら信頼できます!お願いします!
アスナ
- (随分早く信頼されたナ....)
アルゴ
- 分かった。じゃあオイラとフレンド登録してくレ。アイツと連絡が取れたらアーちゃんにメッセージ送るかラ。
アルゴ
- 分かりました。何から何までありがとうございます。
アスナ
- Asunaとフレンドになった
アスナ
- Argoとフレンドになった
アスナ
- じゃあ、オレっちはレベル上げに戻ル。アーちゃんはどうするんだ?
アルゴ
- 私は今日は街に戻ります。戦術を教わるまでは大人しくしてますね。
アスナ
- そうカ。気を付けろヨ。
アルゴ
- はい!
アスナ
- そう言うとアスナは街の方角へ向かった。
アスナ
- ふー....。
アルゴ
- キー坊とはまだフレンド登録してなイ...直接会いに行くしかないのカ....
アルゴ
- キー坊がいるのは恐らくこの層の迷宮区だよナ...レベル上げは十分したし、死ぬ事はないと思うが...行くカ。
アルゴ
- (自分が他人のためにここまでするのは久しぶりダ....でも、あのプレイヤーを...アーちゃんを見たら、なぜかやる気がしてきたんだよナ...。きっとあのプレイヤーはこれから強くなるはずダ...。)
アルゴ
- (まぁ、オネーサンも負けてられないけどナ!)
アルゴ
- その頃....第1層フィールドでは...
アルゴ
- 嫌ァァァァァァ!!!
ユウキ
- お、落ち着けユウキ!落ち着いて深呼吸するんだ!
キリト
- 何あれぇ!気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪〜い!!
ユウキ
- キリト達は今日は迷宮区に潜らず、店で販売しているポーションより一段階回復力の高いポーションを生成するための素材を集めていた。ユウキのレベル上げが目標値の13に達したため、次はボス戦の準備を先駆けてやっていたのだ。さっきからユウキに拒絶され、散々罵倒されているのは何かと言うと、敵エネミーだ。それも食虫植物系の。キリトは全然平気だが、ユウキにとっては身震いものだったらしい。
キリト
- 一旦落ち着けユウキ!確かにお世辞にも綺麗とは言えない敵エネミーだし、女性受けは確かに悪いだろう!でもよく見てみろよ、花の咲いてるところとかは可愛げがあるだろう?
キリト
- キリトは目に状態異常患ってるんじゃないの!?どこが可愛いのさ、仮想世界なのに吐き気がしてきたよ!
ユウキ
- なん...だと!?
キリト
- (俺の感性はおかしいのか?あれより気持ち悪いエネミーを見たことがあるから感覚が麻痺ってるのか!?)
キリト
- うわーん!キリト代わってよー!
ユウキ
- でも、こいつを倒さないとボス戦で使うポーションが作れないぞ。それにまぁまぁ経験値も入るから、この層の中ではダントツで狩ると効率の良いモンスターなんだ。
キリト
- 何それぇぇぇ!
ユウキ
- 頑張ろうぜユウキ。今日中に後2〜30体は狩るぞ。
キリト
- もう!キリトの意地悪!
ユウキ
- (....もうこのデスゲームを始めて9日。いまだに第1層すらクリアできてないのは正直遅い...かと言って他のプレイヤーを待つのは無駄だ。その間にできる事をした方がいい。)
キリト
- (俺の聞いた情報が正しければ、死者が800人を超えたと聞く。想定していたよりはるかに死者が多い。このままじゃ....)
キリト
- こらぁ!逃るなぁ!!変な動きするなぁ!
ユウキ
- ボクは今、ものすごくイライラしてるの!
ユウキ
- (....それはそれとして、さっきの泣き顔のユウキ...可愛かったなぁ。)
キリト
- ねぇ、キリト。今変な事考えてない?
ユウキ
- え?どうして?(まずい...声に出てたか?)
キリト
- 顔がニヤけてるよ。ちょっと引くくらい。
ユウキ
- (俺ってすぐに顔に出るんだな)
キリト
- 後で詳しく聞くからね!!
ユウキ
- はぁ....
キリト
- (けれども真面目な話、攻略メンバーがあまりにも少なすぎる。なんとかしないとな。)
キリト
- おイ。
アルゴ
- !?誰だ!
キリト
- 人が足りなくって困ってるって顔してるナ。キー坊。
アルゴ
- お、お前は!アルゴ!?アルゴじゃないか!
キリト
- βテスト以来だナ、キー坊。
アルゴ
- 何でここが分かった?
キリト
- キー坊に用があってナ。迷宮区にいると思ったから迷宮区を目指してきたんだガ...
アルゴ
- 見つけたのはたまたまダ。運命の出会いって奴だナ。
アルゴ
- で、何のようだ?情報の取引にでもしに来たのか?
キリト
- 違うナ。今日オレっちが来た理由はただ1ツ。
アルゴ
- 先程プレイヤーの1人に遭遇してナ。詳しいことはプライバシーのため省くガ、どうやらこの世界で戦う道を選ぶらしイ。それで戦術を教わりたいそうダ。
アルゴ
- ふーん。で?
キリト
- キー坊。今お前、女のプレイヤーとパーティを組んでるんだろウ?戦術を教えながラ。
アルゴ
- だから....
アルゴ
- ついでにもう1人追加で、オレっちが見つけたプレイヤー、お前面倒見てやってくれないカ?
アルゴ
- .....はい?
キリト
- βテスト以来に再開したキリトとアルゴ。が、アルゴは再開して早々にキリトへプレイヤーの育成を依頼する。果たしてどうなるのか....
キリト
- To be continued ...
キリト