ソードアート・オンライン 黒紫の英雄譚 第7話
エイジとユナの緊急参戦によりIFルートは加速する。てか、時系列的にはまだデスゲーム開始して1週間も経ってません。一体何話で第1層が終わるのか。
- なんか....違う。
キリト
- 消耗した剣の補強及び強化を依頼しに鍛冶屋に来たはいいが、居たのはNPC。やってくれる強化は基本中の基本。最低限の強化。無いよりはマシだがあっても差し支えないレベルだ。本当は鍛冶屋というのは、鍛冶屋のスキルを取ったプレイヤーが行うのがβテスト時は基本だった。が、このデスゲームが始まってまだ3日だ。混乱すら収まっていないのに、鍛冶屋のスキルを取っているプレイヤーはやはり居なかった。いや、居たらそれはそれで慣れすぎィ!とドン引きしてる所だが。
キリト
- NPCの強化は、プレイヤーが行う強化よりはっきり言って貧弱貧弱貧弱ゥ!
キリト
- 第1層のボスくらいまでならNPCの強化でも行けるか?いや...妥協は許されないぞ。でもそこらのプレイヤーに無理やり鍛冶屋スキル取れって言うのもおかしな話だ。
キリト
- ....もう2時か。
キリト
- (ユウキが言っていた期間は明日までだ。果たして返事は来るのだろうか。このままバックられる事も一瞬想定したが、彼女のあの言葉を信じることにした。)
キリト
- 今日する事はないし....
キリト
- 今日は宿屋でゆっくりするか。
キリト
- 数時間後....
キリト
- んん.....ないよぉ!もう食べられないよぉ!
キリト
- ・メッセージが届きました。
キリト
- フガァッ!寝てた!
キリト
- ん?メッセージ?
キリト
- (俺が今フレンド登録してるのはクラインとユウキだけだぞ。)
キリト
- (つまり、2分の1の確率でユウキ...!)
キリト
- 何の要件だろう。
キリト
- メッセージ Klein
・キリト!調子はどうだ?俺か?俺はな、仲間と一緒に地道にプレイヤースキルを上げてるぜ。いつかお前にも絶対追いついてやるからな!後、お前もなんかあったら連絡寄越せよ。もう俺たちはダチなんだからな!
キリト
- クラインか。
キリト
- ........
キリト
- あれ?何か.....
キリト
- 気づくとキリトは涙を流していた。思えば彼に「友達」と呼べる存在は限りなく少なかった。ソロの彼に取ってはクラインのちょっとしつこい程の漢気は、キリトにとっては安堵だった。
キリト
- ダチか....。
キリト
- アイツとなら、悪くないな。
キリト
- それは嘘偽りの無い、心からの言葉だった。
キリト
- ・メッセージが届きました
キリト
- またクラインか?今度は何の用だ....
キリト
- メッセージ Yuuki
キリトへ。明日の10時に、村に来てくれる?そこで僕の答えを言うよ。待ってるから。
キリト
- ついに来た...!
キリト
- この返答次第で俺のプレイスタイルは大きく変わる...
キリト
- (もしユウキが戦いたく無いなら俺はソロで活動するだけだ。でも、もし戦う覚悟を決めたなら、俺は...)
キリト
- ユウキだけじゃ無い。俺も...覚悟を決めなきゃな。 背中を預ける覚悟を。
キリト
- 数時間前.....
キリト
- てやぁっ!!
ユウキ
- ハッ!!
ユウキ
- せいやぁぁぁ!
ユウキ
- (今日中に答えを決めて、明日キリトに伝える!)
ユウキ
- 今ユウキは村からすこし離れたフィールドでモンスター狩りをしていた。....正確にはずっと続けていた。デスゲームとなったこの世界に命を賭けるか否か、彼女は迷いに迷っていた。...結果、いてもたってもいられずに、またしてもフィールドに出てしまったのだ。考えなしに。
ユウキ
- (ねえキリト。ボクは役に立てるかな?たったひとつの選択をするだけの事に3日もかかるようなボクが、本当にこの世界のために、役に立てるのかな?)
ユウキ
- 何十体倒したかは分からない。が、新たに1匹斬り伏せた時、大事が起きた。ユウキの目の前に、見た事もないエネミーがポップしたのだ。
ユウキ
- (!!何このエネミー...デカイ。そして、間違いなく今まで戦ったエネミーより遥かに強い。分かるんだ。感覚で。これがキリトの言ってたフルダイブの適正ってやつなのかな?ビンビン感じるよ。)
ユウキ
- でも...コイツに勝てなきゃ、どっちにしろゲームクリアなんて、出来るわけがない!
ユウキ
- ....が、甘すぎた。
ユウキ
- ユウキの推測通り、このエネミーはユウキが今まで戦ったどの敵よりも強力だ。なぜならこのモンスターはレアエネミー。所謂珍しいエネミーだった。が、その強さはこの周辺のモンスターとは比べ物にならない。はじまりの街の次の村を拠点にしているユウキが行っているレベル上げでは絶対に勝てないほどのステータス差。
ユウキ
- ぐはっ....
ユウキ
- (一撃でHPがごっそり持ってかれた!あと一発喰らったら....)
ユウキ
- (死ぬ....まだ迷いを断ち切れてないのに...姉ちゃんともまだ話したいことが沢山あるのに...!)
ユウキ
- (ごめんね...キリト。ボクには適性なんか無かったよ。やっぱりただの運だったんだよ。村にたどり着けたのも。....キリトみたいなプレイヤーに会えたのも。)
ユウキ
- (本当に....ごめん!)
ユウキ
- 死ぬ。そう確信した。
ユウキ
- おい!後ろに回避しろ!
ノーチラス
- !?
ユウキ
- その言葉を聞いて、ユウキは反射的に動けた。何故だろうか。絶対に間に合わないと思ったのに間に合った。
ユウキ
- よく動いた!後は任せろ!
ノーチラス
- 待って!ソイツの強さは...!
ユウキ
- この程度、問題ない!
ノーチラス
- 突然現れたプレイヤーはそういうと、ソードスキルを発動させた。使っている武器は自分と同じ片手直剣だが、見たことないスキルだ。という事はこの人は自分より強いという証拠だった。
ノーチラス
- (ソニック・リープ!)
ノーチラス
- そうすると、彼は自分が苦戦していたモンスターをあっという間に倒してしまった。
ノーチラス
- 大丈夫か?災難だったな、こんな場所に高レベルのモンスターが湧くなんて。
ノーチラス
- ありがとう...キミは?
ユウキ
- ノーチラスだ。
ノーチラス
- ボクはユウキ。....助けてくれて...ありが.....
ユウキ
- おい、大丈夫か!?
ノーチラス
- (HPが0になったわけじゃなく、気絶したのか。流石にこのまま放置しておくわけにはいかないよな...)
ノーチラス
- ユナの元に帰るのが遅くなっちゃうなぁー。まぁ仕方ないか。
ノーチラス
- ん...?
ユウキ
- お目覚めか。思ったよりずっと早かったな。
ノーチラス
- ノーチラス、だよね?何でいるの?
ユウキ
- そりゃ、モンスターがいる圏外で気絶したプレイヤーを放置してはいけないだろ。
ノーチラス
- 別に宿屋に運べば良かったのに。
ユウキ
- 知らないのか?異性が勝手にアバターに触れると、《ハラスメントコード》ってのが出るんだよ。君が寝起きにハラスメント警告のボタンで寝ぼけて《はい》を押してみろ。僕は監獄送りになる。
ノーチラス
- そうなんだ。迷惑かけてごめんね。
ユウキ
- もう動けるか?じゃあな。
ノーチラス
- うん。ありがとうね。ボクこの世界に来てから励まされたり、助けてもらったり、他人に迷惑しかかけてないなぁ...
ユウキ
- .......
ノーチラス
- 俺で良ければ相談に乗ろうか?もちろんエネミーのいない圏内で。
ノーチラス
- 良いの?
ユウキ
- 同じデスゲームに入った者同士だろ。細かい事気にするなよ。
ノーチラス
- ....で?何かあるのか?話したくないなら別にいいけど。
ノーチラス
- 実はね...
ユウキ
- ノーチラスは、ユウキから事の大部分を聞いた。今自分が村にいる理由も。悩んでいることも。
ユウキ
- なるほどね。キミにはフルダイブの適正があるから、一緒にこの世界を終わらせてプレイヤーを救わないかと持ちかけられた...か。
ノーチラス
- で、その答えを出すのが明日なわけか。
ノーチラス
- (確かに...さっきの回避、あれは普通のプレイヤーなら間に合ってない。フルダイブの適正の高さはおそらく相当だな。)
ノーチラス
- (でも....)
ノーチラス
- はっきり言うけど、君はフルダイブの適正はあっても精神面が弱い。だからこの世界を攻略したいなら、心を強く持つことが重要だと思う。君がなんで戦うのか、その理由を知る必要がある。
ノーチラス
- 今キミは、自分に適正があると言われて、やらなきゃいけないんだ。という強迫観念に囚われている。その状態じゃ例えレベルをいくら上げても長くは続かない。
ノーチラス
- どうすればいいの?どうすればボクはボクでいられるの?ボクは....逃げてもいいの?
ユウキ
- 逃げたいなら逃げればいいじゃないか。死ぬくらいなら逃げて生きる道を選んだほうがよっぽどマシだ。
ノーチラス
- でも、そのキリトってプレイヤーは多分、キミも気付いてない本当の強さに気づいたから誘ったんだと思うよ。
ノーチラス
- ボクの....強さ
ユウキ
- それって一体....?
ユウキ
- それは僕には分からないよ。そこから先は誰かに指示してもらうんじゃなくて、自分で見つけなきゃいけないものだからね。
ノーチラス
- .....!
ユウキ
- まぁ...精々頑張れよ。僕から言えるのはもうこれくらいだ。生憎、そこまで器用じゃなくてね。後は自分で切り開くんだ
ノーチラス
- (ボクの中にある...強さ。ボクだけの強さ。それを見つけるには...!)
ユウキ
- ありがとう。ノーチラス。キミのお陰で覚悟に近づいたよ。
ユウキ
- 僕は綺麗事しか言えない人間だけどね。それでもそう言ってくれると嬉しいかな。
ノーチラス
- もう良さそうだね。僕は僕の守るべきもののためにそろそろ行くよ。
ノーチラス
- じゃあね。機会があれば僕の仲間とも仲良くしてくれる?歌の上手さは保証するよ。
ノーチラス
- うん。楽しみにしてるよ。
ユウキ
- そうしてノーチラスははじまりの街へ向かっていった。彼には彼だけの戦いがあるのだと、ユウキは悟ることができた。
ユウキ
- キリト...決めたよ。僕。
ユウキ
- 明日、10時に村に来てね...っと。メッセージ送信完了!
ユウキ
- そして、迎えた次の日...
ユウキ
- 来てくれたね。キリト。
ユウキ
- 当たり前だろ。ユウキ。
キリト
- じゃあ早速だけどさ....
ユウキ
- ......!
キリト
- ボクと戦って、キリト。ボクの強さを、本当のボクを見つけるために!
ユウキ
- .....そう来たか。
キリト
- 遂に再開を果たしたキリトとユウキ。ユウキがキリトに申し込んだ戦いの真意は如何に!?
キリト
- To be continued...
キリト