ヒプノ☆マギカ
『ヒプノシスマイク×魔法少女まどか☆マギカ』ケツピンに死を
- 某日━━
観音坂独歩
- 『見滝原市』…か。シンジュクから電車で一時間。結構長旅だな。
観音坂独歩
- ……しかし、先生は何故俺達をあそこに呼ぶんだろうか?
観音坂独歩
- まあなんでもいいっしょ!先生の頼みなら、どこへだって秒で飛んでいくだろ?
伊弉冉一二三
- ……まあ、間違ってるわけではないが……。
観音坂独歩
- そーそー!それに、最近独歩もそこまで遠出してないしぃ?ちょっとした旅行と思って、パーっといこうぜ?
伊弉冉一二三
- ……そうだな。その通りだ。
…最近は、休日でも自宅で寝てるばかりの毎日…
観音坂独歩
- その上、有給なんて取ろうものならハゲ課長になんて嫌味を言われるものか…
観音坂独歩
- 俺の余暇って…俺の人生って…俺って……
観音坂独歩
- ほーら独歩!まーた陰気な顔になってるっつーの!
伊弉冉一二三
- …ハッ!…また取り乱したみたいだな…ん?
観音坂独歩
- ? どした?
伊弉冉一二三
- いや、目の前の席に座ってるの、ホストかなって思ってさ。服装からして。
観音坂独歩
- あー、そういえばそうだな…
伊弉冉一二三
- …ったく、言い訳とかさせちゃダメっしょ。稼いできた分は全額きっちり貢がせないと。女って馬鹿だからさ。ちょっと金持たせとくとすぐ、くっだらねぇことに使っちまうからねぇ?
ホストA
- いや~ほんと女は人間扱いしちゃダメっすねぇ。犬かなんかだと思って躾けないとね。アイツもそれで喜んでる訳だし、顔殴るぞって言えば、まず大抵は黙りますもんね。
ホストB
- ……うわ……会話がエグい……めちゃくちゃエグい……
観音坂独歩
- …………。
伊弉冉一二三
- んー、独歩!俺っち、ちょっとトイレ行ってくるわ!
伊弉冉一二三
- ん?ああ。前の車両にあったぞ。
観音坂独歩
- …けっ、ちょっと油断するとすぐ付け上がって籍入れたいとか言いだすからさぁ甘やかすの禁物よ 。ったくテメーみてーなキャバ嬢が10年後も同じ額稼げるかってーの。身の程わきまえろってーんだ。なぁ?
ホストA
- (……これ、もうエグいというより……胸糞が悪い。
こんな会話、よりによって電車の中でするのか……。)
観音坂独歩
- 捨てる時もさぁホントウザいっすよね。その辺ショウさん巧いから羨ましいっすよ。俺も見習わないと…
……お?
ホストB
- ……ねぇ、そこの二人……
その話、もっと聞かせてよ?
伊弉冉一二三
- (ん?一二三…?なんでアイツスーツ着て戻って…!?まさか…!)
観音坂独歩
- おい、一二三!何するつもりだ!?
観音坂独歩
- 確かに、見返りのない愛なんて稀だろうね…僕たちホストにとっては、特に。
伊弉冉一二三
- それでも、相手が欲しているものを悟って、一時だけでも幸せな時間を過ごしてもらう。
それが僕たちの仕事にして、矜持だ。
伊弉冉一二三
- お金が欲しいからって、女の子を愛さないでプライドを捨てるのは、向上心のない証拠だよ?お二人さん。
伊弉冉一二三
- …なんだあんた…?
同業か…?って!
ホストB
- まさか、あんたは…!
シンジュクナンバーワンホストの…!!
ホストA
- ふふっ…buon giorno(こんにちは)。
伊弉冉一二三
- ━━━━━━━━━━━━
神宮寺寂雷
- やあ、恭介くん。腕の具合はどうだい?
神宮寺寂雷
- はい、お陰さまで元通りです。
上条恭介
- けど、まるで夢みたいだ…。こうしてまた、あの時みたいにバイオリンを弾けるなんて…。
上条恭介
- …確かに、腕の症状は難しいものだった。けど、それがここまで治ってしまうとは…。
神宮寺寂雷
- 興味深い。私も、まだまだ勉強が足りないようだ。
神宮寺寂雷
- そんなこと…!寂雷先生のお陰で、僕はこんなによくいられたんですから!
上条恭介
- ふふっ、ありがとう。でも。よく覚えていて欲しいことがあるんだ、恭介くん。
神宮寺寂雷
- ……何でしょう?
上条恭介
- 君がこうしていられるのは、僕たち医者だけの力ではない。
神宮寺寂雷
- 君の家族や友達、君のことを大切に思う人達がいたからこそ、君はここまで来れたんだ。
神宮寺寂雷
- 職業柄オカルトはあまり信じないが…奇跡っていうのは、そういうものの積み重ねで生まれるものなのかもしれないね。
神宮寺寂雷
- ……先生。
上条恭介
- ……実はそのことについて、相談したいことが…
上条恭介
- なんだい?
神宮寺寂雷
- ━━━━━━━━━━━━
神宮寺寂雷
- …そっか。友達に、ひどい言葉を浴びせてしまったのか。
神宮寺寂雷
- はい……。さやかは僕のことを凄く心配していたし、何よりも回復を祈ってくれていた。
上条恭介
- だけど、治らないって聞いて、自分でもどうしたらいいか分からなくて…よりにもよってさやかに当たり散らしてしまって…。
上条恭介
- ……恭介くん。
神宮寺寂雷
- はい。
上条恭介
- 私達の持っている言葉というものは、時として何者をも傷つける鋭利なナイフになる。確かに、彼女を傷つけてしまったのは事実だろう…。
神宮寺寂雷
- はい……。
上条恭介
- それでも。
言葉は、使いようによってはどんな薬よりも効く素晴らしい力になる。
神宮寺寂雷
- それに、だ。私達の奏でられる『音楽』も、同じような力を持っている。
神宮寺寂雷
- 恭介くん。君の腕は動くようになったし、君の口は今も紡げる。
…『言葉』や『音楽』が持つ力、今こそ試してみるべきじゃないかな?
神宮寺寂雷
- 先生……。
僕、やってみます。先生やさやかの前で、感謝の証明を。
上条恭介
- うん。…それで、こちらからも一つ頼みたいことがあるんだけど…
神宮寺寂雷
- ━━━━━━━━━━━━
神宮寺寂雷
- まっっったくお前は!!本当にビビらせてくれるなぁ!
観音坂独歩
- 本当に申し訳ない、我が無二の親友よ!
……どうしても、許せないものがあったから……。
伊弉冉一二三
- ……まあいい。とりあえずこれも貸しの一つだ。
それに、案外俺も言い出せなかったこと、言ってくれたからな。
観音坂独歩
- 独歩くん……
伊弉冉一二三
- しかしだいぶ遅れたな…先生を待たせてないだろうか?
観音坂独歩
- やあ、独歩くんに一二三くん。
神宮寺寂雷
- 先生!本日はお待たせしてしまい、大変申し訳ありません!
伊弉冉一二三
- いや、いいよ。むしろ丁度よかったくらいだ。
…今日は一二三くんはスーツか…。
神宮寺寂雷
- ええ、まあ…色々ありまして。
観音坂独歩
- それも丁度よかった、かな。
今日の頼みというのはだね。彼のバイオリンの演奏を聞いてほしいんだ。
神宮寺寂雷
- バイオリン、ですか…?
観音坂独歩
- はい。上条恭介と言います。よろしくお願いします。
上条恭介
- あ、私は美樹さやかです!
美樹さやか
- 恭介くんに、さやかちゃんか。よろしく。
さやかちゃんは、恭介くんの彼女さんかい?
伊弉冉一二三
- へ、へっ!?
美樹さやか
- !?
上条恭介
- !?!?!?
観音坂独歩
- か、彼女だなんてそんな!!わわわ私は、ただの幼なじみで……!
美樹さやか
- 一二三ィ!?何言ってんだお前!?あぁぁ、すみませんすみませんすみませんっ!!
観音坂独歩
- い、いやいやいやいや!そんな謝らないでください!
美樹さやか
- そうですって!気にしてないですから!
上条恭介
- (…本当に、奇跡的なマッチングだと思うよ……)
神宮寺寂雷
- それじゃあ改めて、演奏をさせて頂きます…。
上条恭介
- うん、よろしく。頑張ってくれ。
神宮寺寂雷
- はい。いきます…。
上条恭介
- ~~~♪~~~♪
上条恭介
- これは……。
伊弉冉一二三
- G線上のアリア…か。それにしても上手いな…。なんていうか、癒される音だ。
観音坂独歩
- (そう。それにただ上手いだけじゃない。彼の感謝や想い、様々なものが籠められている…。)
神宮寺寂雷
- ………恭介………。
美樹さやか
- (ふっ、恭介くん。どうやら君の想いは、しっかり彼女にも届いているようだ。)
神宮寺寂雷
- ~~~♪~~~♪
上条恭介
- ━━━━━━━━━━━━
上条恭介
- いやぁ、素晴らしい演奏だったよ恭介くん!
伊弉冉一二三
- ああ。本当に…良かった。なんていうか、それしか言葉が思い浮かばないくらいに。
観音坂独歩
- あ、ありがとうございます!
上条恭介
- 恭介……
美樹さやか
- ……さやか……。
上条恭介
- ……うん……うん!とっても、とってもいい演奏だったよ!
美樹さやか
- ……ありがとう。
上条恭介
- 独歩くんに一二三くん。今の演奏を、よく覚えておいて欲しい。これが、人を動かす音楽の力だ。
私達にはヒプノシスマイクという、これを何倍にも膨らます力がある。
神宮寺寂雷
- そのことを踏まえて、次のテリトリーバトルに臨んで欲しい。何人にも、私達の思いと覚悟が届くように。
神宮寺寂雷
- 先生……。
観音坂独歩
- ……しかと、心に刻んでおきます。
伊弉冉一二三
- ふっ。それでは、今日はここまでにしよう。二人とも、ここまで足を運ばせてしまって済まないね。
神宮寺寂雷
- いえ、素晴らしい演奏と教えを頂いたんです。これくらい……
ん?
観音坂独歩
- い、いたぞ!
ホストA
- 一二三さんだ!一二三さーんっ!
ホストB
- 君たちは…さっきの?
伊弉冉一二三
- ど、どうか俺達を弟子にしてくださいっ!
ホストA
- 俺達、もっと上に上がりたいんですっ!どんなことも頑張りますっ、だからっ!
ホストB
- ………え?
伊弉冉一二三
- ……独歩くん、これは……
神宮寺寂雷
- ……もう知らん。
観音坂独歩