捨てられた僕
捨てられた僕の気持ちになって作ってみました。僕とは誰か、想像しながら読んでみてください。
- 「ああ…寒いよ。暗くて何も見えない。」
- 色んな音が混じり合って脳内で処理しきれない。
- なにかが足元に打ち付ける音。
- 自分の出す声と似た音が微かに聞こえる。
- 「お腹もすいたなあ。ああ、体もそこらじゅう痒くて痒くて耐えられない。」
- うまく手足は動かない。
- お腹はずっと前から空いているけれど、そもそも食べ物を受け付けられる体ではない。
- 寒さで体はこごえ、空腹で鳴く力も弱まる一方だった。それにも気づくことができない。
- 微かに残っている記憶。母親の暗くて暖かい胎内から明るい場所に出てきた。でも、それからどうしたっけ?
- 「そうか…確か大きな何かに体を包まれて気づいたらここにいたんだ。」
- なぜ?
- 「なんでなんだろうな…。僕ってなんなんだろう。なぜここにいるのだろう。」
- 次第に減っていく声の数に気づくこともできないまま、鳴き叫んだ。ただ暖かさと食べ物が欲しかった。あと、出来れば体を綺麗にして欲しかった。
- ここ数日で仲良くなった小さな虫さんが彼の身体中を歩き回るから。
- 「きっと鳴いていればそのうち僕のことを助けてくれるんでしょう?」
- 「お願い、お母さんに会いたいの。」
- 「せめてあの暖かい体の中に戻りたい。戻りたいよ…。ここにはいたくないんだよ。」
- 彼は鳴き疲れ、やがて近くにいた屍で暖をとりながら眠りについたのだ。
- それが自分の愛すべき兄弟である事も認識できずに。
- 何もわからない。何もない。生まれた時から虚無の世界。しかしその世界さえ認識できない。
- ただ体から自然に湧いてくる不満を叫ぶことしかできない。
- それさえも意味をなさないとしても