ひとり劇場

沢桔梗のバラッド 1特異な才能

とある女子高生と先生とその周りの話

沢桔梗のバラッド
〜沢桔梗のバラッド〜 1−特異な才能
四月になって私は中学最後の年を迎えることになった。しかし、受験生になる訳ではなく、ただ来年の高校進学を待つのみだ。何故なら、私は小学生の時に中学受験をしており、見事この私立進学校に入ったからである。
私は財源が裕福な方であるが、私の家庭は少し複雑だ。
父親はいなく、母親は夜の世界で働いている。そんな母親は3年前から再婚し、金持ちの男が家に上がり込んで来た。いや、正確に言うと私達がその男の家に上がり込んでいるのだ。
新婚当初は熱も上がっていたが、今では母は元より好きな旅行に行き、父親となった男とはスケジュール上あまり会っていない。仕事が忙しいのである。
そしてその家庭と呼べなくなった家庭で、私は中学私立受験もそうだが、要求されることをこなしていった。その時の私はただただ、無感情だったと思う。

♦︎







それから時が過ぎて、中3の夏休み前のこと…
3ーCの担任で私達の教師。高木先生が、私を職員室に呼び出した。
私と先生はあまり繋がりがなかったので、何事かと思ってしまった。
いろんな不安を抱きつつ、私は職員室へと足を運んだ。






♦︎
ー職員室ー
ガラッ
職員室のドアを開け、高木先生のデスクに向かった。
若林 梓峯
先生。
高木 義博
おぉ、若林。来たか…
若林 梓峯
? あのぉ…
先生は、何やら必死に打っていたパソコンから目を私に向けた。
高木 義博
あぁ、若林が不安に思っていることの話じゃないぞ。期末テストの成績とかな…
若林 梓峯
‼︎〜〜顔に出てました?
高木 義博
若林、お前面白い顔になってたぞ
若林 梓峯
以後気をつけます…
(先生ってこんな軽い感じの人だったっけ?)
それで何ですか?
…先生はその状況を一通り笑ってから、突然声を出した。
高木 義博
実はな…
それから先生は小声で話し始めた。







若林 梓峯
…つまり、こういう事ですか?
余計が多い、先生の話を簡潔にまとめる。
今から3週間程前、先生に大手企業の人から声がかけられたという。
その人はハッカー適性試験を受け合格すると正式な社員となることを先生に約束した。先生は、若い頃の夢であるホワイトハッカーを追い、ハッカー適性試験を受けることに決めたらしい。
しかし…
若林 梓峯
何故、その話を私に…?
高木 義博
それ、聞いちゃう?
若林 梓峯
…え。
高木 義博
いやー。此処で言うとなー。
先生だらけの職員室を私達はぐるりと見回した。


ということで、"放課後のPCルーム"に私達は移動した。此処なら誰もいない筈だ。
ーPCルームー
高木 義博
ここ、座れ。
キィ…
先生はパソコンを起動させていた。
若林 梓峯
で、この話を何故私に?
タイミングを見計らい、先生に声をかけた。筈だ。
が、少しの沈黙が訪れた……………





高木 義博
…沢桔梗。
若林 梓峯
えっ!
高木 義博
沢桔梗さん教えてくれよ〜。
な、何故それを!!!
高木 義博
?おい。
…それは私が、昔使っていたアイコンの名前だった。ちなみにそれで天才ハッカーと謳われていたこともある。
若林 梓峯
ど、うして…
若林 梓峯
どうして、知っているんですか?
若林 梓峯
情報が漏れてるのか?何で?そうなの?どうしよう。あぁ、は?。ああああ…
若林 梓峯
えっ、何で…
私はその言葉で酷く動揺してしまったらしい。
高木 義博
おい、大丈夫か。
若林 梓峯
っ…
先生が私の視界に入った。そこで、頭の中が整理出来た。
若林 梓峯
…すみません。
あの、どうして高木先生はそれを知っているんですか。
高木 義博
あぁ情報屋から、手に入れたんだよ。そいつが、沢桔梗っていうのは優秀だから手伝ってもらえるかもってな。だから沢桔梗さんを探す事にしたんだ。そしたら丁度、沢桔梗とお前の今のアイコン…梓音が酷似していたんだよ。まぁそこは想定外だったけどな。
若林 梓峯
酷似ですか…比べられる程の沢桔梗の情報って、どこら辺まで分かったんですか?
高木 義博
ちょっとな。
そう言って先生は、スマホ画面のメモ欄を見せた。



…思ったよりも少なかった。
若林 梓峯
こんな少しの情報でよく私って、分かりましたね。
高木 義博
もうそこは賭けだったがなー。
情報屋から、いい報告を貰うまでの。
若林 梓峯
情報、屋…から?いい、報告⁇
高木 義博
おっと口が滑った。だが、結局のところ情報屋からはいい情報、報告してもらえなかったがな。
若林 梓峯
でも何かしら情報屋に代償払ってはんですよね。まさか、個人情報と交換してませんよね?
情報屋は好きですからねー…個人情報なんて特に。
高木 義博
若林 梓峯
えっ、冗談じゃないんですか?
は、犯罪ですよ⁉︎
若林 梓峯
…どこの情報売ったんですか!
もしかして学校のですか!
高木 義博
そこでお前の情報と沢桔梗の情報は似てるって気づいたんだ。
…もちろんお前の情報を売る前だぞ!
若林 梓峯
一体何人売ったんです。
高木 義博
クラスのあいうえお順…
若林 梓峯
私は「わ行」ですよ!
おいおい。先生が犯罪者とは…
今後の授業に支障をきたすよ。
しかも私のことお前って言ってるし。
高木 義博
すまないとは思ってるよ。
若林 梓峯
あたりまえじゃないですか。
それでどうして沢桔梗なんですか?
高木 義博
えっ?それは、"試験出場条件"が3人参加だったからだな。
若林 梓峯
はぁ⁈
…誰でもいいなら、他の人誘ってください。
高木 義博
えーー。優秀な沢桔梗さんがいいし、また情報屋に依頼しないといけないしー。
若林 梓峯
お断りしま…
高木 義博
待てよ。
…沢桔梗さんは"ウルフグール"の奥情報が欲しいんでしょ?

…えっ。

若林 梓峯
先生がなんでアレの事知っているんですか?
高木 義博
俺も伊達にハッカーの夢追ってない。それくらいの事知っていて当然だろ。
この人、ウルフグールの本当の怖さ知らないのか?それとも私が思っている以上の腕前?でも、流石にそれはない。だって、情報屋に情報を売るくらいクズで、平気でウルフグールとか口にしちゃてる人がプロな訳無い。
若林 梓峯
高木先生はそれ知って何しようとしてます?
高木 義博
取り引きをしようとな。沢桔梗さんにとっても悪くない条件だ。
取り引き⁈ ウルフグールの情報と交換に先生の試験助けろと〜
しかもそれ危なくないか?先生がウルフグールに関わるって事になるよね。
若林 梓峯
自ら、アレに関わるんですか?
高木 義博
だってそれしか方法はないだろ。
いや、普通にあるし。でも…確かに悪い条件ではない。アレについての情報が分かるかもしれない。それに…私に害はない筈だ。(←ここ一番大事。)
若林 梓峯
…危険な目に会いますよ?
先生が今やろうとしていることは危険性がある。何故ならウルフグールに関わるのだ。あのウルフグールに。
高木 義博
それはもうとっくに覚悟している。
えー。マジで?
若林 梓峯