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ひとり劇場

人狼ゲームinアルスト

1日目[朝]〜ニセモノ〜

魔物ちゃん
「それじゃあ、ルールをおさらいするね!」
時刻は9:00。一同は神妙な面持ちで、会議室に着席していた。
魔物ちゃん
「君たちは話し合いをして、1日に1人、人狼だと思しき人物に投票を行います!最も票が集まった人は処刑!同時に人狼も1日に1人、人間の中から投票で選んで、最も票が多かった人物を襲撃します!」
技巧士キャンディス
「ニ、ニコルみたいに頭が吹き飛ぶんすか!?」
魔物ちゃん
「それは違うよ!あの時は見せしめだからわざとグローくしたけど、ゲームでの死は穏やかに訪れるから安心して!」
料理人エイダ
「ワーオ、良かったデス!」
拳闘士ユータ
「全然良くあらへんがな!」
画家パトリシア
「嫌だ……嫌だよ……」
アイドルロメオ
「大丈夫だよパトリシア。大丈夫」
魔物ちゃん
「ちなみに初日は処刑も襲撃もありませーん!正確には、襲撃はあるんだけど……その対象は放浪者ニコルってことで!」
メイドシルヴィア
「今日誰かが死ぬことはないってことねっ……」
魔物ちゃん
「役職の内訳は国民5人、占師1人、霊能者1人、騎士1人、共有者2人、人狼3匹、狂人1人、妖狐1匹!合計15人!人狼が全て処刑されれば人間の勝ち。残ってる人の数の半数を人狼が占めれば人狼の勝ち。この二つの条件が満たされた時点で、妖狐が生きてれば妖狐の勝ち!わかったかな?」
吟遊詩人ダリウス
「ああ、こんな時でも僕様は美しい……」
お針子リリアン
「…………ウザ……」
ギャンブラーケリー
「クク、理不尽なゲームだなァ……チームが勝利しても自分が死んでるんじゃよォ、意味なくねェ?」
魔物ちゃん
「そんなことないよ?昨日も言ったけど、ここは冒険者の加護が届かない特殊な空間!ここに閉じ込められてる以上、君たちが死んだらその魂は、永久にここから出られないんだよ!」
見習い冒険者アネリ
「ちょっと、何よそれ……!」
戦士レオン
「マジかよ!?そういうことは先に言ってくれ!」
バイオリニストセリーヌ
「なんて冒涜的なのでしょうか……」
魔物ちゃん
「でも人間が勝って、この空間が解放されれば、魂はちゃんと天に還れる。だからやっぱり、例え死んでても勝ちを目指さないとね!」
アイドルロメオ
「死んだ父さんと母さんのとこに行けないのは絶対ヤダ!頑張る!」
バーテンダーラスティ
「まぁ、死なないのが一番いいんだけどねぇ……」
花屋ハーヴィー
「とにかくやるしかないみたいだな」
魔物ちゃん
「もういいかな?それでは話し合いスタート!」
見習い冒険者アネリ
「(始まってしまった……。この中に人狼がいるなんて信じたくないけれど、それでも疑わないと皆死んじゃうんだわ……!)」
画家パトリシア
「ス、スタートって……な、何を話せばいいの?」
戦士レオン
「しのごの言ってねーで、拳で決めるか!?」
花屋ハーヴィー
「ルール聞いてたのか?」
アイドルロメオ
「よーし皆目をつぶって、人狼は手を挙げよー!」
メイドシルヴィア
「アホなの!?挙げるわけないじゃないっ!」
拳闘士ユータ
「全部見たことあるで。その辺にしとき」
司書エラリー@共有
「騒がしい猿どもだ。聞け。俺は【共有者】だ」
吟遊詩人ダリウス
「ほう?」
技巧士キャンディス
「共有者って確か、二人一組の奴っすか?」
司書エラリー@共有
「そうだ。文句のある奴はいるか。いるなら出てこい」
見習い冒険者アネリ
「文句とかはないけど……」
お針子リリアン
「…………」
司書エラリー@共有
「決まりだな。俺は共有者。つまり現時点で、人間側であることが確定している唯一の人物だ」
料理人エイダ
「ホントに?信じちゃっテ、良いのデスカー?」
花屋ハーヴィー
「エラリーが偽物なら、本物が黙っていないだろう」
バーテンダーラスティ
「それに共有者には相方がいる。偽物が出てきても、その相方が本物の潔白を証明してくれるね」
バイオリニストセリーヌ
「人狼ならばタッグを組んで嘘をつくことも可能ですが……」
拳闘士ユータ
「まとめて処刑されてお終いや。そんなリスクは取らへんやろな」
アイドルロメオ
「エラリーは人狼じゃないんだねー!僕はわかってたよ!ほんとはいい人だもんね!」
メイドシルヴィア
「これはそういう話じゃないわよっ!」
見習い冒険者アネリ
「(ここまでは、エラリーさんの想定通りね……)」
昨晩
司書エラリー@共有
『時間があまりないから要点だけ伝える。明日、俺はいの一番に自分が共有者だと名乗り出る。お前は適当に国民を演じていろ』
見習い冒険者アネリ
「わ、わかったわ。でも、名乗り出てどうするの?」
司書エラリー@共有
『はぁ……』
見習い冒険者アネリ
「…………」
司書エラリー@共有
『このゲームは投票によって処刑先を決定する。もし、各々が勝手に投票を行っていたらどうなる?』
見習い冒険者アネリ
「どうって……まとまりがなくなるわね」
司書エラリー@共有
『そんなとこだ。周りが全員敵に見えている国民に対し、人狼は仲間がわかっている。つまり、場の主導権は人狼が握りやすくなるだろう』
見習い冒険者アネリ
「じゃあエラリーさんは共有者だと名乗って、場のまとめ役になるってことかしら?」
司書エラリー@共有
『お前は思っていたほど馬鹿でもないみたいだな。共有者は二人一組である以上、信頼を最も得やすい人間だと言える』
見習い冒険者アネリ
「でも、そんなことして、人狼に狙われないかしら……」
司書エラリー@共有
『やっぱり馬鹿なのか?そんなことを懸念している場合ではない。お前は俺よりも自分の身を案じろ』
見習い冒険者アネリ
「私の?」
司書エラリー@共有
『もし人狼に、お前が俺の相方であると勘づかれたら、真っ先に殺されるのはお前だ』
見習い冒険者アネリ
「…………」
司書エラリー@共有
『だから国民を演じるんだ。絶対に悟られるな』
見習い冒険者アネリ
「…………やってみるわ」
司書エラリー@共有
「そういうわけだ。これから先、俺が進行役を買って出る。俺の指示には絶対的に従ってもらう」
バイオリニストセリーヌ
「大丈夫なのでしょうか?独裁政権の幕開けな気がしてなりません」
司書エラリー@共有
「あくまでも事項の最終決定権を持つと言っているだけだ。一人で勝てるほどこのゲームは甘くない」
見習い冒険者アネリ
「じゃあ進行役さん。私たちは次にどうすればいいのかしら?」
司書エラリー@共有
「ああ、お前たちに議論してもらう内容は、占師の名乗り出るタイミングについてだ」
画家パトリシア
「え、ええっと……」
お針子リリアン
「……占師…………強い……大切……隠れてもらう……」
花屋ハーヴィー
「確かに人間の切り札でもあるからな。人狼に狙われるリスクは避けたい」
戦士レオン
「んーでもよ、隠れてた占師が死んじまうのが一番やばくね?」
吟遊詩人ダリウス
「ふーむそうなると、人狼側に占師を乗っ取られるリスクが生まれてしまうね」
拳闘士ユータ
「あー、それだけは避けなアカンな」
技巧士キャンディス
「それなら、しばらくは隠れててもらうのがいいんじゃないっすかねー」
バーテンダーラスティ
「しばらくって、どれくらい?」
技巧士キャンディス
「ええとそれは……」
見習い冒険者アネリ
「今日は人狼の襲撃、ないのよね。だったら少なくとも今日は隠れてていいんじゃないかしら」
ギャンブラーケリー
「クク……じゃあ今日は何について話し合えばイイんだァ?俺は直ぐにでも出るべきだと思うなァ」
アイドルロメオ
「だからー、すぐに出ちゃうと狙われちゃうんでしょ?明日まで待てばいいじゃん!」
メイドシルヴィア
「ねえ、今日も明日も変わらなくないっ?日の間にあるのは、占いだけなんでしょっ?」
料理人エイダ
「ンー、難しいネー」
バイオリニストセリーヌ
「今日も明日も変わらないのなら、早い方を選ぶべきだと思います。わたくしとしては、明後日以降に名乗り出るのは考えられません」
戦士レオン
「さっき言ってた乗っ取りのリスクがあるからな」
花屋ハーヴィー
「言われてみれば、占い師がわかっていた方が、狩人の護衛もつけやすいか……」
吟遊詩人ダリウス
「ならやはり、今すぐに出てきてもらうということでいいんじゃないのかい?」
画家パトリシア
「そ、そう、だね」
お針子リリアン
「…………不安……」
司書エラリー@共有
「……わかった。総合的に考えて、すぐにでも出てきた方が有意だと俺も考える」
司書エラリー@共有
「我こそは占師だと言う奴は、挙手をしろ」
おもむろに、二人の人物が手を挙げた。
拳闘士ユータ
「!?ア、アホな!」
バイオリニストセリーヌ
「……予想はしていましたが……」
料理人エイダ
「オー!コレ、ドユコトー?」
アイドルロメオ
「ええーっ!占師って一人じゃないの!?なんでユータとセリーヌ、二人なの!?」
技巧士キャンディス
「バグ!?本来一人なのに二人がなっちゃったっていうバグっすか!?」
戦士レオン
「世界観的にあり得なくはねーけど、多分ちげーと思うぜ」
お針子リリアン
「……簡単……どっちか……偽物……」
司書エラリー@共有
「拳闘士ユータと、バイオリニストセリーヌ……占い師「候補」はこの二人か」
バーテンダーラスティ
「もしまだ隠れてる人がいるなら、すぐに出てきた方がいいと思うよ。後からやっぱり占師ですなんて言っても、信じてもらえないでしょ」
見習い冒険者アネリ
「ちょ、ちょっと……二人いることにすごいツッコミたいわ」
ギャンブラーケリー
「フッ、べつにおかしな話じゃねェさ」
吟遊詩人ダリウス
「どういうことかな?説明を求めるよ。おっと、僕様はどうしてか理解しているよ?でもね、わからない人たちのために」
メイドシルヴィア
「足震えてるわよっ!アタシも意味不明だけどっ!」
花屋ハーヴィー
「人間側の役職で一番強いのは間違いなく占師。絶対的な占師が一人いれば、そいつに従ってるだけで人間は勝てる」
画家パトリシア
「そ、それは、たしかに」
見習い冒険者アネリ
「そっか……だから人狼は嘘をつくのね。まさに今私たちは、ユータかセリーヌ、どっちが本物かわからず混乱してる」
戦士レオン
「嘘ついてんのが人狼とも限んねーな。狂人かもしれねー」
メイドシルヴィア
「じゃ、じゃあ……ユータかセリーヌ、どっちかがアタシたちの敵なのねっ……!」
アイドルロメオ
「そんなぁ……どっちも味方であって欲しいよ!」
拳闘士ユータ
「オレっちのセリフや!まさかセリーヌはんが人狼側やったなんて……なんで!?なんでやねん!?」
バイオリニストセリーヌ
「ユータ様、演技が誠にお上手ですのね。悲しい気持ちはわたくしの物が真実です」
画家パトリシア
「あわ、あわわ……」
戦士レオン
「クソ、どっちが偽物系!?」
見習い冒険者アネリ
「全然わからない……どうすればいいのかしら」
司書エラリー@共有
「直ぐに判明するはずがないだろ。時間をかけて、推理していく他ないんだ」
技巧士キャンディス
「改めて、残酷なゲームだと実感するっす」
お針子リリアン
「…………同感……」
司書エラリー@共有
「おい魔物ちゃん。会議の時間はいつまでだ。指定の時間より早めに切り上げることは可能なのか?」
魔物ちゃん
「ん?10:00までだけど、もちろん早く終わらせてもいいよ!」
司書エラリー@共有
「だそうだ。朝の会議は一旦お開きとする」
バーテンダーラスティ
「いいの?」
司書エラリー@共有
「お前らの粗末な頭を冷やす時間は必要だろう。聞け。今夜は処刑はないが占いはある。ここでユータかセリーヌのうち、本物が妖狐を占えば、一発で本物が判明する」
アイドルロメオ
「おおー、すごいや!」
司書エラリー@共有
「誰が誰を占うか。これは非常に重要なファクターだ。占って欲しい奴を、各自考えておけ」
怒涛の初日朝会議は、こうして幕を閉じた。

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投稿日時:2018-03-19 00:08
投稿者:ヤオ
閲覧数:1

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