瀬田薫誕生日かおちさ
- 薫の部屋
燐子
- ……
千聖
- ……………
薫
- ……………
千聖
- おや、雨だ。千聖、傘は持ってきたのかい?
薫
- そうね……
千聖
- 千聖?
薫
- あっ、ごめんなさい。少し夢中になってて聞いていなかったわ
千聖
- ふふっ、シェイクスピアもそれだけ読み込まれたら光栄だろうね。傘は持ってきたのかいと聞いたのさ
薫
- あなたがそれを言うの?私はまだちっとも暗記できていないわ
千聖
- 読むということは暗記したかどうかじゃない。どれだけ夢中になれるかということさ
薫
- どうだか……
千聖
- それで、傘は持ってきたのかい?
薫
- ああ、雨が降ってるのね。残念ながら持ってきていないわ
千聖
- おや、それは災難だ。……そうだ!僭越ながら麗しき姫をお送りする光栄に預からせてもらっても?
薫
- お生憎様、狼にむざむざ食べられようとする程世の中に悲観してはいないわ
千聖
- それは残念だ。なら明日傘を返しに来てもらってもいいかな?今家には一本しか傘がなくてね
薫
- いいわよ。元々この続きを読みに来ようと思っていたから
千聖
- そうだったのかい。なら今夜泊まりで読んでいってもいいんだよ。君の美しさに隣で愛を囁いてしまうかもしれないが
薫
- じゃあそうさせてもらおうかしら
千聖
- え?本当に?
薫
- ええ。それとも迷惑?
千聖
- とんでもない。姫に泊まっていただけるなんて、そのような名誉に預かれるとは今日はなんて素晴らしい日なんだろうと驚いてしまってね
薫
- はあ…その口調、寝る前までにはやめてもらいたいものね
千聖
- 数時間後
千聖
- 薫の部屋
千聖
- あー、ちーちゃ……千聖。本当に一緒に寝るのかな?
薫
- あら、不満かしら
千聖
- いや、とても光栄だよ。だけど珍しいなと思ってね
薫
- まあ、そうね……
千聖
- 千聖、眠いのかい?
薫
- いえ、少しぼんやりとしていただけよ
千聖
- ふふ、きっと疲れが残っているんだろう。そうだ、腕枕を……
薫
- 薫
千聖
- うん?
薫
- 誕生日おめでとう
千聖
- え、あ、ああ!そういえば、そうだったね!
薫
- はあ……あなたって本当に自分の事はよく忘れるわよね
千聖
- ひょっとして、それを1番に言うために泊まってくれたのかな?
薫
- ……こういう時だけ鋭いのはずるいわ
千聖
- (そして、結局その口調をやめないのね……)
千聖
- (それを求めたのは私だけど、こういう時ぐらいは、と思ってしまう私は面倒な女かしら)
千聖
- ありがとう、千聖
薫
- いや…………
薫
- 「ちーちゃん」
薫
- ……!
千聖
- あなたって本当に
千聖
- ずるい人ね
千聖