あり得たかもしれないあり得てはいけない未来
これは、あり得てはいけない物語である
- …………
勇者#戦闘A
- そんなに思い悩むのなら辞めちゃえば?
僧侶#戦闘A
- そうもいかんのだろう
魔法使い#戦闘A
- ………本当に私達は必要ないの?
戦士(キャストオフ)#戦闘A
- あぁ、コレは俺と姉さんの問題だ
勇者#戦闘A
- ………でも…とっても哀しい目をしてるよ?
格闘家#戦闘A
- うん、まるで死にたがってる、罰して欲しそうな目
斥候#戦闘A
- 私にはどうしようも出来ないよ、貴方とウェルクリアさんがとても仲が良かったのを覚えているから
聖騎士#戦闘
- 決別なんて先送りにすればいい、だから、もう辞めよう?
狩人#戦闘
- それでも、いつかは決着をつけなくちゃ……もう先送りには出来ないんだよ
勇者#戦闘A
- 勇者の手には一枚の令状がある
- 「78代目勇者ヘイル=ヴェルハインよ、魔王ヘイル=ウェルクリアを討伐せよ」
- この簡潔な文章が、いままで歪な関係だった姉弟の関係をぶち壊しにした
- じゃあ、行ってくる
勇者#戦闘A
- そういうと、勇者は闇の中へ消えた
- ………待っていたぞ、勇者よ
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- その目は泣き腫らした跡がある
- ッ!
勇者#戦闘A
- 無言で剣が振るわれる
- 相変わらず速いな……(剣を大剣で受け止めながら)
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- (高速の3連斬を放つ)
勇者#戦闘A
- 無駄だ(手を前にかざす)
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- そうすると、勇者の身体は地面に沈み込むように倒れた
- 『重力』………の……力か……
勇者#戦闘A
- あぁ、歴代最高峰と言わしめた能力の一端だ
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- はは……出し惜しみなんて出来ないや………
勇者#戦闘A
- 『加速————
勇者#戦闘A
- ————世界』
勇者(加速世界)#戦闘A
- 勇者の目からは全ての色彩が消え、輪郭だけがはっきりと見える
- 対して魔王側は勇者の目が黄色に染まる様子がはっきり見えた
- 人体の禁忌区域か……
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- (なぁ……本当に殺し合わなくてはならないんだろうか……)
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- (無言で剣を振る)
勇者(加速世界)#戦闘A
- チッ、重力も無駄か、牙流で流される
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- 喰らえ(腰を落とす)
勇者(加速世界)#戦闘A
- マズイ!
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- 呑龍!(音を置いて行くほどの速さで剣を振り抜く)
勇者(加速世界)#戦闘A
- なっ……
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- ふぅ……冷や汗をかいたぞ(空間が捻じ曲がり、剣が逸れている)
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- やっぱりその能力は厄介だよ、姉さん
勇者(加速世界)#戦闘A
- 星姫の名は伊達じゃないのさ
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- 『重力』『空間』『時間』、そして魔王としての能力で『星』。コレだけチート能力を安売りされちゃかなわないよ
勇者(加速世界)#戦闘A
- なら降参すればよかろう、私は寛大だぞ?
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- 巫山戯ないで姉さん。『俺達』は魔王を殺す平気だろ?逃げるわけないじゃん
勇者(加速世界)#戦闘A
- だがどうだ?お前では私を絶対に倒せない
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- そこに戦う意味があるのか?
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- あるね、例え倒せなくても
勇者(加速世界)#戦闘A
- お前は私に剣で勝ったことがあったか?魔術でも、体術でも、勇者としての力でも
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- なぁ、無駄な争いは辞めてまた仲良くしよう
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- 姉さん………
勇者(加速世界)#戦闘A
- さぁ
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- 一つ……勘違いを訂正しましょうか
勇者(加速世界)#戦闘A
- 勘違い?
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- 次の瞬間、勇者は魔王の背後に居た。そしてその間には空に舞う魔王の左手
- 姉さんとの勝負で本気を出したことなんてないんだよ?
勇者(加速世界)#戦闘A
- ッ!?
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- (時間を巻き戻して腕を再生する)
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- それにね………コレにはもう一段階『先』があるんだよ
勇者(加速世界)#戦闘A
- 『血統魔術 〈秘奥〉英雄————
勇者(加速世界)#戦闘A
- なんだと!?血統魔術は失伝(ロスト)したはず!
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- ————雷天』
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- 金色に染まる勇者の頭髪、そして真紅に染まる勇者の瞳
- 魔力変色体質……しかも二重(ダブル)だと……
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- なぜ失伝(ロスト)した筈の血統魔術、それも秘奥をお前が体得しているのかは聞かないでおこう
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- しかし………それは身体がついて来れるのか?
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- その為に鍛えてたんだ(身体がブレる)
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- またもや空に舞う魔王の右肩からその先
- よ(剣を振り終わる)
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- チッ、見切っても避けられない……
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- それにね………
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- コレで本気だと誰が言った?
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- ッ!仕留める
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- 魔王が手をかざすと勇者に向かって岩の槍、雷の鉄槌、炎の蛇、水の刃……大量の星の力が襲いかかる
- 『蝕王紋』!(勇者の身体を黄色の紋様が埋め尽くす、それはさながら人を喰らわんと這いずり、身体を埋めつくさんとする金色の蛇さながらである、明滅するその紋様は神々しさを通り越して不気味なまでもある)
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- そして勇者から発せられる覇気により全ての攻撃は消失した
- なんだそれは……
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- そんなものがあり得るのか……
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- 『星』の力で分かるのかい?
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- そんなモノ自ら死に寄り添うようなものだぞ
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- コレで仕留められるなら本望さ
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- さて、大詰めだ
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- 姉さんは歴代勇者の事をどれくらい知っている?
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- 人並みには……
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- 2代目勇者の能力は?
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- 知らない……少なくとも一般公開はされてない筈だ
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- あぁ、そうだろうね
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- 何故なら今!俺が持っているのだから!
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- 馬鹿な!勇者の力で具現化させたままの物が残る筈が無い!
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- そうだよ
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- 彼の能力は具現じゃなく
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- 『召喚、創造』だからね
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- 姉さんを確実に仕留める為には……
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- チッ(魔王の周りに何重もの結界や瓦礫、魔術障壁が展開し、魔王を守るようにその数は増えて行く)
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- 【暴食】(勇者やその周りの影から無数の影で出来たような鞭が出てくる)
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- 削り喰らえ(一斉に魔王に向けて鞭は振るわれる)
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- (常時命と魔力を削るから短期決戦に持ち込みたいが……魔力は障壁を削り食らうから回復するが命は……)
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- くっ……!(みるみるうちに防壁は削られて行く)
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- チッ【第二罪】『万象喰らう暴食の影』(全ての影から鞭が出て来て影の鞭が更に増える、そして命と魔力の減衰は止まる)
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- ぐぶぅ!?(かなりの量の吐血をする)
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- やはり……人の身では有り余る力か
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- ぐ……あ、あぁ……ひ……ぐはっ……ごぼっ……げほっ……ぁぁぁぁぁぁあ!!!!
魔王「ヘイル=ウェルクリア」#戦闘
- 強大な力はね、出させなければいいんだよ。姉さん
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- 安らかに眠ってね(無数の影の鞭が魔王を埋め尽くす)
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- 馬鹿だな、姉さん。慈悲なんて、甘い考えなんて持たなければ俺を殺せたのに……
勇者「ヘイル=ヴェルハイン」(英雄雷天)#戦闘A
- …………(戦闘が終わったことにより気絶)
勇者#戦闘A
- なんて酷い結末なのでしょう……
僧侶#戦闘A
- 姉殺しか……
魔法使い#戦闘A
- そんなものでしょう、いずれにしろいつか来た終焉
戦士(キャストオフ)#戦闘A
- そう……ね
格闘家#戦闘A
- 安らかな眠りあれ……
斥候#戦闘A
- 酷いよ……こんなのって無いよ………
聖騎士#戦闘
- 今は勇者を看病しよう、死にかけだよ?
狩人#戦闘
- そう……だね
僧侶#戦闘A
- (勇者の治療を開始する)
僧侶#戦闘A
- ……治りが遅い……内臓がボロボロ……いつ死んでもおかしくないよ……
僧侶#戦闘A
- ……っ(目を覚ます)
勇者#戦闘A
- あぁ、僧侶か
勇者#戦闘A
- ありがとう、もう大丈夫だ
勇者#戦闘A
- そう……
僧侶#戦闘A
- 少し……一人にしてくれ
勇者#戦闘A
- 分かったわ……みんな、行きましょ
僧侶#戦闘A
- 勇者の仲間は勇者を一人にする為、その場を離れた
- ………………
勇者#戦闘A
- なぁ……何が正しくて、何が正義なんだ?
勇者#戦闘A
- 勇者ってなんだ?そもそもこの戦いに意味はあったのか?
勇者#戦闘A
- くそっ……何が正しいんだよ……
勇者#戦闘A
- あぁ……身体も家族も失って行く……
勇者#戦闘A
- このままだと仲間も失うんだろうか……
勇者#戦闘A
- こんな死にかけの身体で何が出来るんだよ………
勇者#戦闘A
- 失うくらいならいっそ………
勇者#戦闘A
- この言葉の続きは想像に任せよう
- そして勇者がそれを実行したかのかもご想像にお任せしよう
- 何故ならこの物語はIFなのだから
- 貴方が望む結末、それこそがこの物語の終わりにふさわしいのでしょう
- さて、最後に哲学的な質問をしよう
- 正義とは何か、正義とは存在するのか
- 貴方はどう思う?
- では、このあり得たかもしれない物語を読んでくれてありがとう