ひとり劇場

呪詛の勇者

それは動く呪いと化した男の話し…(訂正版)

化け物(デフォルメ)(3号)
馬鹿げた話をしよう
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人を救う為に人を辞め、そのせいで破滅に堕ちた英雄の話を
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その昔、魔王がいた
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その魔王は強力な力を持っていた
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何人もの勇者が挑み、殺されていった
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そして、何百人目か分からない今度の勇者はただの冒険者だった
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一般人より強いが、その前の勇者達と比べると格段に弱い
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そして男は魔王を目指して旅立った
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誰からも期待されずに
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そしてやはり、男は途中で行き詰まる
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歴代勇者なら楽々と超えていった場所でつまづき、死にかける
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洞窟に逃げ込んだ男の前に、一つの鎧があった
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禍々しく、邪悪な鎧
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明らかに呪詛の類が掛かっている
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男はコレを着て、魔王討伐に行くか、鎧を着らず逃げ出すかを迫られた
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そして男は
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鎧を着た
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湧き上がる力、溢れ出る生命力、体を蝕む腐食、心を削る怨嗟の声
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それらに耐え、男は進む
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そしてまた行き詰まる
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毒の沼地、様々な毒が混濁し、踏み入るものをジワジワ殺す沼地
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悲嘆に暮れる男の前にまたもや邪具が現れる、いや鎮座する
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今度は靴まである足鎧だ
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鎧の内側は無数の棘で埋め尽くされ、装備するものを痛めつける
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しかし、コレを付けねば到底渡りきれない
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なので激痛に耐え、叫びながら鎧を装着する
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やはり体に力が湧き起こる、そして体を蝕む炎のような幻痛、地獄から生者を呼び込まんとする肉削ぎの呪い
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竜に会いては魔剣を握り、巨獣に会いては呪われた盾を取る
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巨人に会いては籠手を嵌め、魔精霊に会いては邪神の外套を羽織る
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そして巨鳥に会いては歪な兜を被り、亡霊に会いては人を呪う首飾りを付け
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男は人を辞めながら進んで行った
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鎧の下は最早骨しかない、魔物にしか見えない身体になっても進み続けた
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風の噂では自分は死んだ事になっているそうだ
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そして次の勇者は自分より遥かに強い男
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男はここで辞めればまだマシな結末に終わっただろう
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しかし
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悲しいかな、男は進み続けた
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人を辞め、心は死に、しかしなお誇り高き信念を抱いて
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人の為に頑張り続けた
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そして魔王城
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城内部の魔物を機械的に屠って行く
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もう痛む身体もなければ、気負う心もない
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男は生きる呪いと化した
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形を得た凝縮された呪い、この世にこんなにも呪いを背負ったものはいないだろう
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それでも、呪いに負けそうになる心を民のためと奮わせた
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人ではない怪物を殺すには、もはや人では叶わない、ならばもう人を辞めればいい
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そう、心を騙して魔王の間へ
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…………
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呆気なく終わる魔王戦
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もはや人の形をした呪い
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痛みも感じないこの身体では敵にもならなかった
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そして考える、自分はどうなるのだろう
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魔物じみた姿では何処にも行けない
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いや………魔王を倒したのだ
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国に戻れば報酬くらいはあるだろう、そしてその報酬で一人静かに暮らそう
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そうして人知れず国に戻った男
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そして、魔王を倒したのだと告げる為に町の中に入ろうとする
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「おい、待て怪しい奴め、その兜を外してみせろ」
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番兵に呼び止められる
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「すまない、外れないんだ、この兜は。それより国王様に言伝を頼む、不肖この私、魔王討伐の任、果たしてきました」
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久し振りに出す声、しかし、その声は生者を威圧し、怯えさせ、恐怖させる……さながら魔王の様な声であった
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そして当然周囲は狼狽える
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言葉を理解する前に声に反応する
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取り囲まれる男、しかし、男から見た番兵達は隙だらけであり、碌な訓練もしてないのだとわかった
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そして、男は一旦引き下がった
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これ以上、悪戯に刺激しては通れるものも通れないと
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そして次の日
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門の前は完全武装した軍隊が揃っていた
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しかし、臆せず前に出て、声を掛ける
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「魔王討伐の任、果たしてきました」
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その声とその内容に騒ぐ軍隊を一喝し、纏め上げる老齢の武将
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国王陛下よりの至言だ、心して聞け
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「貴様の様な人に在らぬものを勇者と断じた記憶は無い、しかし魔王を倒したのならその功績に免じて命だけは助けてやろう、そうそうに国から出て行くがいい」
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ようはこう言ったのさ「お前なんて知らない、さっさと国から出て行け」
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あぁ、哀れだな
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人を助ける為に地獄の苦しみに毎日耐え
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人を救う為に自らの身体を亡者と呪詛に売り払い
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賞賛を求めたわけでもなく、栄誉も、権力も求める事は無かったのに
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ただ、静かな暮らしをしたかっただけなのに
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こんな事なら途中で諦めればよかったのに
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そしたらこんなクソみたいな結末にはならなかったはずだ
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しかし
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しかし、それでも男は耐えた、その侮蔑の言葉に耐え、静かな余生を送る為に
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そうして山に篭った
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しかし、数日経つと刺客が訪れる
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男を殺そうと、ありとあらゆる手を使ってくる
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毒、魔物、天災、住処の破壊、山の焼き討ち
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考えられるであろう残虐非道な手を駆使して、男を殺そうとした
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しかし、呪われた生にしがみ憑かれている男は死なない、いや、死ねない
化け物(デフォルメ)(3号)