薬研と審神者とリップクリームの話。
激甘。少し過激な表現があるかもしれません。適度に控えていますので、ゆったりとした気分で見てください。
- 薬研、それなぁに?
審神者
- 仕事も終わり、暇を持て余して薬研の部屋に遊びに来た。
いつも通り薬品の香りがするこの部屋は、本や薬、たくさんの物が備えてあって面白いのだ。
- 薬研は筒状の小さな物を指でくるくる回し話し相手になってくれていたが、どうもその小さなものが気になって聞いてしまった。
- これか?リップクリームだ。
薬研藤四郎
- え、唇切れちゃった?
審神者
- 薬研、リップクリームなんて使うんだ…
- 正直、普段ちゃんとした生活をしている彼が唇を切るのは意外だった。
- んなわけねぇだろ、見ての通り何ともないぜ
薬研藤四郎
- 大丈夫なの?と聞く私に、ほら、と人差し指を唇に当てる薬研。
- あ、ほんとだ切れてない。
- 薬研の唇はいつも通り、羨ましいほど綺麗だった。
- あれ、じゃあなんでリップクリーム?
審神者
- 正確に言うと口紅、ってやつだな。こいつは俺っちが作った優れものなんだ。
薬研藤四郎
- 薬研はリップクリームのキャップを外して見せてくれた。
- 薬研が作ったんだ…
- 流石としか言えない出来栄えに、思わずほう、と息が出た。
- ところでその優れもの、ってどういうこと?
審神者
- 真っ白なリップクリームを見せ、見てろよ、と握り直す薬研。
- こんな仕草さえも格好良く見える。そんな彼が、つい最近彼氏になったなんて。
今でも信じられない位贅沢な事だと思う。
- これはな、自分が誘惑したい相手のことを思い浮かべると、そいつ好みの色に変わるんだ。
薬研藤四郎
- 例えば、と言って目を瞑る薬研。
- 鶴丸の旦那ならこの色。
薬研藤四郎
- すると、真っ白だったリップクリームが、みるみるうちに少しオレンジ色がかかった元気な色に変わっていく。
唇につけるには少し目立っちゃうと思うけど、似合う人は似合うのかな。
- わ、すごいねこれ
審神者
- そうだろ?
薬研藤四郎
- すると薬研は再びを目瞑る。
- すると今度は淡いピンク色に変わった。
- これ…
審神者
- 私の好きな色。
- へぇ、大将はこんな色が好きなんだな。
薬研藤四郎
- 何かを企むようなその笑みにドキリとして、思わず固まってしまう。
- 薬研はそのまま髪を耳にかけ、リップクリームを唇に近づけた。
- 彼はずるい。私のドキリとする仕草を知っているんだから。
- リップクリームをつけ、怪しく笑う薬研。
- どうだ、大将。
薬研藤四郎
- 声なんか耳に入ってこなくて、ただただずっと、言葉の通りに動く唇を見つめていた。
- キス、したくなったか?
薬研藤四郎
- その言葉で目が覚めたように意識が戻ってきて、ハッとする。
どうしよう。
したい。したいけど、このまましてしまったら私は、また、
彼に溺れてしまう。
まだ昼間の彼の部屋で?
嗚呼、それもいいけれど、昼間は短刀が遊びに来るじゃない。
したくない、なんて言えるはずない。だってしたい気持ちはあるから。
でも…
ずっとどもるばかりの私に、薬研は笑って。
- なぁ、
薬研藤四郎
ちゅ
- とリップ音が響くと同時に、優しく頬に手が添えられた。
- ちょ、っと、やげ、はなして、
審神者
- 5秒くらい経っただろうか。いや、実際はもっと短いのかもしれない。
頬が熱い。何もかもが熱くなって、クラクラする。
有り得ないほど薬研にドキドキしてる。
心臓が口から出そうなくらい。
自分の胸の鼓動が薬研に伝わっていないだろうか。
しかしそんなことを考える余裕さえも無く、今はなんだか息が続かなくって薬研の胸を叩いたら、ん、と離してくれた。
- 素直じゃねぇのは感心しねぇなぁ、たいしょう。
薬研藤四郎
- するり、と薬研の腕が伸びて、頭の後ろに回る。
- そのままぐっ、と引き寄せられて、耳に吐息がかかった。
- もっと、
薬研藤四郎
- 素直に欲しがったっていいんだぜ?
薬研藤四郎
- っ、ぁ、
審神者
- 耳元の甘い声が、私を伝って溶けた。
それと同時に甘い声が出て、腰が抜けて立てなくなる。
ばっ、と耳を塞げば、目の前に怪しい笑顔の薬研。
本当に薬研はずるい。
- なんだ、大将。俺っちは囁いただけだぜ。
薬研藤四郎
- み、耳弱いの知ってるでしょ!
審神者
- おっと、そりゃあ初耳だな。いいこと聞いた。
薬研藤四郎
- なっ…!!!!!
審神者
- 熱い頬がさらに熱を帯びたのがわかった。
- ~~~~~~っ薬研!!!!!/////
審神者
- 悪かったって、ふはっ
薬研藤四郎
- わ、笑うな!
審神者
- 笑ってな、ふ、
薬研藤四郎
- 笑ってるじゃん!!
審神者
- もーー!!
審神者
- 笑いながら部屋を出ていく薬研を走って追いかける。
少し、本当に少しだけ期待していた気持ちは
リップクリームみたいに、私と薬研に混ざって消えた。