差し伸ばす手と掴む手
【戦姫絶唱シンフォギア 】【雪音クリス】
- 差し伸ばす手と掴む手
- 放課後
- ねーねー!この後、カラオケ行かない?
- いーよ!なら、駅前の所でいいよね?
早く行こうッ!
- (はぁ…。)
雪音 クリス
- (…アタシ、何してんだろ……)
雪音 クリス
- (こんなとこで呑気に…。
…アタシ、こんなに平和ボケしてていいのかな…)
雪音 クリス
- 雪音クリス。
戦争で親を亡くした天涯孤独の少女。
雪音 クリス
- 現在は、特異災害対策機動部二課に身を預けている。
風鳴弦十郎の提案で、1人で定住するには広すぎる家まで貰い、
立花響や風鳴翼、小日向未来が在学するリディアン音楽院に通うことになった。
雪音 クリス
- 勿論本人は気づいていないが、彼女は周りに「なんか放っておけない」と、
とても愛されているのである。実際、何度か昼食や遊びの誘いを受けているが、
それらを素直に受け取ることは、未だに出来ていない。
雪音 クリス
- そして当然、転校生の立場ながら「愛されキャラ」として
注目を集めている彼女を、快く思わない輩も居るわけで______
雪音 クリス
- ねぇ
- 明らかに穏やかな口調ではないクラスメイトの問いかけに対し、
負けじと強気に返すクリス。
雪音 クリス
- あ?何だ?
雪音 クリス
- アンタさ、転校生のクセに注目集めて、
何様のつもり?さぞかし居心地の良いことだろーね
- (コイツら…突然何だ??)
雪音 クリス
- (ってか、アタシって注目されてんのか?)
雪音 クリス
- (…アタシからしたら、ヘンに注目集めてんなら
逆に居心地悪ィんだけど…)
雪音 クリス
- …それは悪かったな。
アタシも、好き勝手に集めてたワケじゃないんだ。
勿論、計算してたワケでもない。
雪音 クリス
- 不器用な自分なりに、最大限に穏便な、謝罪の言葉と己の意思を述べた言葉。
雪音 クリス
- ただその言葉は、地味な彼女らにとっては見下されているようなものだった。
雪音 クリス
- はぁ?何アンタ、喧嘩売ってんの?
- は、はぁ?
雪音 クリス
- 頭悪いのも、どうせ計算してんだろ?
- 全部答え書いて合ってないなんて、
答えわかってなきゃ出来ねーよ
- それに何?その白髪。
ストレスで早くも白くなっちゃった?
- そのクリスってキラキラネームも何だよ?
- (キラキラネーム…?って何だよ…?)
雪音 クリス
- (…とにかく、パパとママから貰った名前を
バカにされるのは、心地よくねぇな…)
雪音 クリス
- (それにテストは、
ゼロから自分なりに頑張った結果だ。)
雪音 クリス
- (頭悪ィのは、今まで学校なんて
縁遠いトコに居たんだし、仕方ねえだろ…。)
雪音 クリス
- (………ま、それをこいつらに説いたって、
理解してくれるワケがないか…)
雪音 クリス
- (…やっぱり、アタシの居場所は無いのか……)
雪音 クリス
- ねえアンタ、何か言ったらどう?
- いや、言い返す言葉もないでしょ?
- アンタなんか、誰も要らないんだよッ!
- 早く消えてくれる?死んでくれない??
- (消えろ、か…)
雪音 クリス
- (…ハッ、なら、お望みどおり消えてやるさ。)
雪音 クリス
- ーーあぁそうさ。アンタらの言う通りだ。
結局、アタシを必要としてる奴なんざ、
世界のどこにも居やしねぇ。
雪音 クリス
- つまり、だ。アタシが消えても悲しむ奴なんて、
居ないワケだ。
雪音 クリス
- そう。社会不適合者。ただの奴隷。
こんなアタシに、存在価値なんてない。
雪音 クリス
- ならーーー
雪音 クリス
- ーー「お望みどおり、消えてやる。」
雪音 クリス
- その言葉は、思いがけぬ第三者達に遮られた。
雪音 クリス
- …ねぇ、何でそんな酷い事言うんですか…?
立花 響
- あ、響…ッ!
小日向 未来
- …?
- 一年生は早く帰ったら?
- 後輩に対してその口調。
先輩として、見過ごす訳にはいかないな。
風鳴 翼
- か、風鳴先輩…ッ!?
- 何でそうやって、人を傷つけるの…?
ただ、気に入らないから…?
立花 響
- なら、もっとクリスちゃんの事を
知ってあげてください!そしたら、
もっと仲良くなれるはず…ッ!
立花 響
- なに綺麗事吐いてんだッ!後輩のクセにッッ!!!
- …彼女も、慣れない居場所の中で模索して
努力しているんだ。
風鳴 翼
- そんな人が居るならば、同じクラスメイトとして、手を差し伸べるべきではないか?
風鳴 翼
- あ、アンタも芸能人だからって、
調子乗ってんじゃないよッ!
- ちょ、ちょっと!トップアーティストに悪口なんて言ったら、Twitterで拡散されて、身元特定されて、テレビに載っちゃうよッ!?
- そ、そんなちょっとした事であるワケーーー
- 万一にでもあったら、大変なことになるよ!?
- ッ…
- 世間の批判の目に晒される可能性に怯えたのか、彼女らは逃げるように帰っていった。
- お前ら、なんでこの教室に…?
雪音 クリス
- クリスちゃん、大丈夫?!
立花 響
- 大丈夫って…何がだ??
雪音 クリス
- 悪口言われた事だよッ!
小日向 未来
- …なんだ、そんな事か
雪音 クリス
- アタシがここに馴染めてないだけの事。それなら、アタシがこっから消えればいいだけの事だろ?
雪音 クリス
- 違うッ!そんなのは絶対違うよクリスちゃんッ!
立花 響
- 雪音を必要としている人々は、 間違いなく居る。
風鳴 翼
- ノイズが現れる度そのイチイバルを纏い、
厄災から人々を、その歌で救っているだろう?
風鳴 翼
- それに私…ううん、私達だって、
クリスを必要としてるんだよ?
小日向 未来
- 少なくとも私達は、クリスちゃんと友達になって、色々な事を知りたい。
立花 響
- クリスちゃんとなら、師匠も翼さんも未来も私も、いつだって手を取り合って、頑張っていけるよッ!
立花 響
- (……ホント、なんなんだろこいつらは…
こんなアタシの存在価値を必死に説いて…)
雪音 クリス
- (………こういう時は、
「ありがとう」って言えばいいのかな…?)
雪音 クリス
- …あ_______……
雪音 クリス
- …ぁ、ありが、とう…
雪音 クリス
- うんッ!
立花 響
- 先程は先輩の立場を使ってしまったが…
あまり通えていない私が言えた事では無かったな…
風鳴 翼
- そんな事ないですよ。私と響は、
翼さんの背中を追いかけてるんですから!
小日向 未来
- …そうか、そう言ってもらえるのならば、嬉しい。
風鳴 翼
- だって!未来ッ、クリスちゃんッ!
立花 響
- もう、響はすぐに調子に乗るんだから…
小日向 未来
- 一昨日提出するはずだった課題は、
もう終わったんだっけ?
小日向 未来
- あ
立花 響
- …まさか?
風鳴 翼
- ご、ごめん未来ぅ!手伝ってぇ〜!!
立花 響
- だーめ。自分で頑張って?応援はしてあげるから。
小日向 未来
- (…ハッ、何なんだ、このバカは)
雪音 クリス
- 私も、小日向と同意見だ。
風鳴 翼
- そ、そんなぁ…。
立花 響
- あッ!クリスちゃんッ!
立花 響
- クリスちゃんなら手伝ってくれるよねッ!?
立花 響
- …アタシも、そこの二人と同意見だ!
雪音 クリス
- せいぜい頑張る事だな、このバカ
雪音 クリス
- く、クリスちゃんまでぇ…ッ!!!
立花 響
- よくぞ言った、雪音ッ!
風鳴 翼
- 時には、厳しくする事も大事だからね(笑)
小日向 未来
- (…前言撤回だ。この場所は________)
雪音 クリス
- そういえば、先程の女子達が言っていた、
ついったーとやらは何だ??
風鳴 翼
- え
小日向 未来
- その単語は頻繁に耳にするし、緒川さんが私の
公式ついったー?の管理をしてくれているから、
存在は知っているのだが…
風鳴 翼
- さ、さすがSAKIMORI…
立花 響
- …あぁ、アタシも気になってたんだ。
お前らはわかるか?
雪音 クリス
- ほら見ろ!雪音も知らないと言っているぞ?
風鳴 翼
- Twitterは、ネット上で自分から情報を発信できる
アプリの事ですよ
小日向 未来
- …わかったようなわからねぇような……
雪音 クリス
- そういえば…緒川さんがあの時やっていたのは、
何かを発信していたのか?
風鳴 翼
- …え、まさか翼さん、
公式Twitterを緒川さんに任せてるんですかッ!?
立花 響
- 私だと扱いきれないからな…。
だが、偶に質問に答えたりはするぞ?
風鳴 翼
- そんな当然みたいな顔されても…苦笑
小日向 未来
- prrrrrrr______
小日向 未来
- ッ!はい、響ですッ!
立花 響
- 警報は鳴っていませんが…緊急出動ですか
風鳴 翼
- 『あぁすまない、違うんだ。』
風鳴 弦十郎
- 『今、緒川と藤尭と友里で「ふらわー」に
来てるんだが、お前らもどうだ?俺の奢りだッ!』
風鳴 弦十郎
- え、やった!未来も連れてっていいですか!
立花 響
- 『あぁ、勿論だッ!』
風鳴 弦十郎
- !ありがとうございます!!
小日向 未来
- し、しかしそれは申し訳無いのでは…
風鳴 翼
- こういう時は、相手の好意を受け取らない方が
失礼なんですよッ!行きましょうッ!
立花 響
- わッ!ちょッ…立花ッ!?
風鳴 翼
- ほら、クリスちゃんも行こうッ!
立花 響
- …し、仕方ねえから着いてってやるよ
雪音 クリス
- もう、クリスちゃんったらツンデレさんだなぁ〜
立花 響
- ッ、う、うるせぇッ!///
雪音 クリス
- ほら、行くんだろッ!
雪音 クリス
- (…当たり前のように、周りに居てくれる。)
雪音 クリス
- (当たり前のように、
手を差し伸べて繋いでくれる奴らが居る。)
雪音 クリス
- ほらクリスちゃーん!!
立花 響
- どうしたのだ、雪音?
風鳴 翼
- 早くふらわーに行こう!
小日向 未来
- (それを掴む手は、まだ迷いがあるけど____)
雪音 クリス
- …おう!
雪音 クリス
- _______この繋いだ手だけは、絶対に放さない。
雪音 クリス